中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について 作:re:753
とりあえずまた暗いけど許して、あと超展開も許して。
あと感想返信進まなくてごめんね、4ページくらい返すと心が壊れるのよ。んにゃぴ、30ページから減らないンゴ。
「シンジくん、たまには男二人で汗を流さないか?」
そう加持さんから言われたのは、あの零号機暴走事故から数日経った頃だった。
あの事故のせいで現在エヴァ全機整備中の上、零号機は綾波以外は乗せないということになった。
俺はエヴァとのシンクロを禁じられ、ボーッと家にいたところへ訪ねてきた加持さんにそう言われて頷いた。
何かしていないと頭がおかしくなりそうだった。
だから加持さんの畑で土を弄っていた。
これが意外に楽しいと言うか、無心になれる。
ジオフロントの環境のせいか、蒸し暑くはないし、畑は高台にあるので湖を一望できた。
なにより何も考えなくていい、草むしりをしながら俺は手についた土を払う。
「様になってるじゃないか」
「……さっき、スイカまた食いましたからね」
オレ、スイカマルカジリという具合に、今日は2つほど食った。
うん、おいC!
「2つ食われた時はびっくりしたよ……そのう、なんだ……」
「気を使わなくていいですよ、加持さん。知ってるんでしょ? シンクロ率、更に下がったって」
頬を掻きながらこちらを見る加持に微笑む。
笑顔になっているかはわからない。だけど笑う。
父さんがよく言っていた、どうにもならないときこそ笑ってと。
ただ加持さんの顔が強張るのを見ると、どうも失敗したらしい。
「シンジくん、君のせいじゃない。葛城が今ウチにいるのは……」
「良いですよ、レイと離されないだけ有情だと思ってますから」
そうレイとの生活は続いている。
普通は離されると思う、が多分赤木さんかミサトさんが止めているんだろう、ありがたいことだ。
離されたら最後、俺の何かが壊れる、そんな気がした。
というか壊れているのだろう。
露骨に、俺はエヴァから離されていた。
多分、精神汚染? の影響が抜けきっていないのだろうな。
「……俺達に出来ることがあったら」
「ないですよ、それに加持さん『アルバイト』大変でしょうし」
破れかぶれだったのかもしれない。
俺の言葉に加持さんがひどく驚いた表情をしたあとに、真面目な顔になる。
「なんのことだい?」
「大変ですよね、ここの仕事しながら、もう2つくらいやってるんだから」
加持さんの顔から表情が消え、雰囲気が重くなる。
俺はそれを無視して草むしりを続ける。
……あー、雑草って抜くのが大変だ。
「シンジくん、君は――――」
「言ったじゃないですか、俺ってイレギュラーだって」
草を引き抜き、今できる最高の笑みを加持さんに向けた。
○○○
最初は先輩の息子だというから見守っていた。
だが加持は踏み込めるほどシンジを知らなかったし、自分が接触してゲンドウたちがどういう行動を取るのか未知数だったため、中々構えずにいた。
『アルバイト』にかこつけて、自分の目的を達成するために奔走していたのも相まって何もできなかった。
いや違う、何かするのが怖かったのだ。
表面化するシンジの闇に、誰もが近づけずにいた。
だがミサトの真剣な頼みで、加持はシンジを連れ出して土を弄らせた。
気晴らしになると思ったし、何かのきっかけで復調するかもしれないと思ったからだ。
だが現実は最悪の方向に突き進んでいく。
『アルバイト』、その一言に加持は内心驚いた。
先日、ミサトにはバレてしまったが、自分が日本政府のスパイであると。
だがシンジはその先も知っていたのだ、自分がゼーレのスパイであることにも。
(血は争えない、のか?)
シンジの父親の姿が、今のシンジにダブる。
現役時代、伝説であり公式、非公式記録すら残っていない人物、なんでも見通し、なんでも知っていた人物。
自分の目的も教えていないのに、一発で看破された時は度肝を抜かれた。
そのときの光景がデジャブする。
(先輩、聞いてないっすよ)
親子、というべきか、笑う姿がよく似ていた。
何も教えていない、というが親が子に似るというのは往々にして聞く話だ。
監視されてはいるが、シンジならやりかねない……と加持は勝手に勘違いをしていた。
加持は底冷えするような笑顔を向けるシンジに、降参も兼ねて苦笑しながら両手を上げる。
「……シンジくん、君は何を言ってるのかわかってるのかい?」
「別に? 殺したきゃ殺せばいいさ」
淡々と応える姿に、加持はシンジに恐怖を覚えた。
何がどうなればここまで壊れるのか、加持ですら掴めなかった。
当のNERV側も、シンジの精神不調の理由がわからなかった。
原因としてはアスカとの接触、レイとの接触、零号機の接触もあるが、
「シンジくん、そんなこと言っちゃいけない」
「
シンジからの圧力が強くなる。
加持は自然と一歩下がり、懐にある銃へと手が伸びた。
シンジが無表情のまましゃべる。
「死にたいって言っちゃダメなんですか? 辛いって言ってどうにかなるんですか? 助けてくれないでしょう? だから頑張らなきゃいけないんだ。守って守って守り抜いて!! どうにかするしかないんだよ!!!」
「シ、ンジくん」
無表情だった顔がドンドン変化し、叫んだシンジに加持は何も言えなかった。
助けてくれない、あぁそうかと加持は納得する。
そのとおりだ、助けなかった。
もっと早く誰かがシンジに手を差し伸ばしていたら、こうはならなかったのだと加持は理解する。
辛くないわけがない。
エヴァというわけのわからないものに乗って、第3新東京市の市民の命を背に背負って、体がボロボロになり、体の機能が消失して、大人たちの期待に全部応えて……あぁ、なんて、なんてこったと加持はへたり込む。
シンジがおかしくなって当然だったのだ。
誰もシンジの身を案じながら、それを止めろと言っていなかった。
無理をしていないわけがない、辛くないわけがない、死にたいと思わないわけがない。
大人になりきれなかった自分たちのツケの結晶が彼なのだと気づいた加持は、顔を両手で覆う。
あの頃、加持がまだシンジくらいだったとき、誰も助けてくれなかった。
その頃の自分とシンジが重なってしまった。
だがシンジは、あの時の、仲間を売ってしまった自分とは違う。足掻いて抗ってそして自分の体も精神も、全てを捧げて守ろうとする。
その姿を加持は直視できなかった。
そんな加持の肩に手が乗る。
加持が顔を上げると、シンジがこちらを見ていた。
「大丈夫、加持さんも守るから」
「――――」
ダメだ! と言葉が出なかった。
こうしてしまったのは誰だ? 自分たち大人だ、守れ、守れと言い続け、それを体現してしまったのがシンジだった。
そうすることでしかシンジは生きていけないことを悟った加持は、何も言えなかった。
シンジが笑う。
「大丈夫、俺が全部守るから」
「シン――――」
その時警報が鳴り響いた。
シンジは加持から手を離すと背中を向ける。
「待て、シンジくん、待ってくれ」
「……」
走り出すシンジの手を掴もうとした加持を避けるように、シンジは猛スピードで走る。
掴み損ねたシンジの背を捕らえようと、加持は必死に手を伸ばす。
だが走りつづけるシンジの背はあっという間に消え、加持は両手を地面に付けると感情のまま拳を打ち付ける。
痛みで多少マシになった頭で、加持は端末を操作し、電話の相手に叫ぶ。
「葛城、シンジくんをエヴァに乗せるな!! これ以上、彼が戦えば心が死ぬぞ!!!」
一方出撃ハンガーではシンジの代わりに、レイがプラグスーツを着て準備をしていた。
レイもここ最近のシンジの様子を見て、心を痛めていた。
(……あいつのせいだ)
だが自分のせいもあるとは欠片も思っていなかった。
赤い機体に乗る少女に憎悪を燃やす。
アイツさえいなければ、シンジは元に戻る。
そのためにはアイツより、僕が優秀だって見せつけてやる、と見当違いの決意をしていた。
もっともアスカも似たようなことを考えていたのだが、レイは知る由もない。
プラグスーツの調整を済ませ、いよいよエントリープラグに入るというところで整備員たちの動きがピタリと止まった。
なんだと思ったレイの視界に、シンジが映った。
肩で息をしながら、こちらを見る目は暗かった。
「し、シンジく、ん」
初号機の整備班長が意を決して声をかけるが、シンジはズンズンとレイの前まで行くと、レイの頭に付けていたインタフェースを無理やり取って、自分の頭につける。
レイは何も言えずに、シンジを見た。
シンジは口を開く。
「レイ、お前は乗らなくて良いんだ。俺がやるから」
そう言ったシンジはエントリープラグに入ると内側からロックし、レイをその場に置き去りにしてしまう。
ペタンと座り込んだレイを整備員たちは見るが、使徒らしき物体が接近途中ということで初号機の出撃準備を始める。
だがエントリープラグ内では、LCLが電化せず真っ暗の中、シンジがいた。
そのときに通信が入る。
『三上シンジくん、今の貴方にエヴァの操縦は認められません。降りて、碇レイと交代しなさい』
硬いミサトの声に、シンジは口を開く。
「早くしてください。使徒が来てるんでしょ」
『まだ使徒だとは決まっていないわ。それにプラグスーツなしで、今の貴方ではシンクロ率に問題があります。二度は言わないわ、降りなさい、シンジくん』
『構わん、初号機パイロット、やれるのだな?』
意外なところからGOサインが出る。
発令所では言葉を発したゲンドウに、冬月も含めた全員が驚いていた。
ミサトは叫ぶ。
「待ってください! 彼のシンクロ率は下がる一方で、現状では碇レイのほうがシンクロ率は高い。それに先程の加持リョウジからの報告がありました。精神的に危ないと、その状態で出撃させるのはムリです!」
「パイロットのメンタルケアも、葛城三佐、君の仕事だ。それにやつには実績がある」
「碇、それは危険すぎる! お前もヤツを英雄などと囃し立てるわけではあるまいな!?」
ゲンドウの一言に、ミサトはぐうの根も出ないほどに打ちのめされる。
代わりに冬月が声を荒らげて咎めるが、ゲンドウはそれを無視してシンジに語りかける。
「もう一度聞く、やれるのだな?」
『……何度も言ってる。俺は初号機パイロットだ!!』
「全員聞いたな、出撃準備」
ゲンドウの言葉に、オペレーターたちは何か言いたげな表情をするが、消え入るような声を出して了解する。
ミサトは何もできない、何もしなかった自分に苛立ちと羞恥心を覚え、俯く。
加持のあんな声、初めて聞いたし、今モニターに映るシンジの顔を見たらいつものようにやってくれるとは信じ切れなかった。
だが何も言えない、そんなミサトにリツコも握りしめた拳から血が出るほど握りしめ、射出カタパルトまで移動する初号機を見るしかなかった。
シンクロ率、15.8%。奇しくも初出撃と同じ数値に、リツコはただ祈った。
どうか、どうかあの子を守ってください、碇ユイさんと。
「葛城三佐から引き継ぎ、今回は私が指揮を取る。初号機は先行して威力偵察、弐号機、零号機はバックアップだ」
『ま、待ってください、碇司令! シンジ、初号機パイロットの状態では先行は危険です!!』
流石にゲンドウの言葉に、アスカは異を唱える。
現状、シンクロ率、操縦テクニックともにトップなのは自分だ。
そして今の初号機ではろくな動きも取れないと誰もが想像がついた。だからこそ、アスカは口を開く。
『私が行きます!』
「命令が聞けないか? 弐号機パイロット」
その一言にアスカは何も言えなくなってしまった。
通信越しでもわかるほどの威圧感に、アスカは気圧されてしまった。
だが、意外なことに綾波も異を唱えた。
『司令、弐号機パイロットの言うとおりです。ここは三上くんではなく、私達が先行します』
『ファースト、あんた……』
病院での出来事がアスカの脳裏によぎる。
シンジに抱きしめてもらっていた、殺したいほど羨ましかったが、自分ですら気圧される今のゲンドウに異議を申し立てる綾波の姿に感心にも似た思いを思っていた。
だがゲンドウは変わらずに言う。
「初号機先行だ、それは変わらん」
「碇!! あの状態の初号機で何が出来る!!」
再び激高する冬月の声に、オペレーターたちも同意するがゲンドウは何も返答せず、組んだ両手に頭を乗せてモニターをじっと見ていた。
射出カタパルトに接続された初号機、その隣に弐号機と零号機が並ぶ。
「発進」
「……ッ、了解っ!!」
オペレーターがスイッチを押し、射出されていく3機のエヴァ。
地上に出ると初号機はリフトオフされた瞬間に走り出す。
『シンジ!?』
『三上くん!?』
『シンジくん!! 止めるのよ!! 今の彼はいつもの彼ではないわ!!』
アスカ、綾波、ミサトの驚愕の声が出るが、それをゲンドウは制する。
『構わん、いつもどおりにやれ、パイロット』
『碇司令ッ!!』
責めるようなミサトの言葉にも応えずに、ゲンドウはモニターだけを見る。
走り出した初号機は、手に持っていたパレットライフルを構える。
操縦している少年はもはやまともな思考はしていなかった。
ただ守る、目の前の敵を倒す、だから撃つ、そんなことしか考えていない。
原作知識? 発狂した時点でそんなものは頭から消し飛んだよ。
「ッ!!」
トリガーを引き、第3新東京市上空を浮遊する謎の球体に射撃する。
使徒ではあるが、今現在はパターンオレンジ、ATフィールドも確認されていない謎の物体X、パレットライフルの弾丸が球体に当たる直前に消えた。
『消えた!?』
『パターン青! 使徒です!!』
「……」
シンジはその場に停止し、パレットライフルを投げ捨てる。
その行動に発令所ではリツコが叫んだ。
『シンジくん!? 何を……逃げなさい!!』
武器を投棄したシンジを責める前に、初号機の足元に黒い影のようなものが広がる。
まるで底なし沼に引きずり込まれるように、初号機が影の中に沈んでいく。
シンジは通信を送る。
「アスカ、綾波来るな……ミサトさん、使徒の内部でどうにかします」
『シンジくん!! シンジくん!!! アスカ、レイ!! 初号機の救出急いで!!』
『ダメだ、弐号機と零号機はその場で待機。初号機パイロット、いつもどおり使徒を倒せ』
ゲンドウの言葉に何度目かわからない絶句が発令所に満ちる。
現場では弐号機と零号機が命令を無視して、初号機の元に走り出そうとするが、シンジが叫ぶ。
「大丈夫だから!!! 大丈夫、いつもみたいにうまくやるよ」
『バカシンジ!!!!』
『いやっ、いやぁっ!!!!』
アスカの怒号と綾波の悲鳴を最後に、初号機が影に飲み込まれた。
○○○
「頑張れー!!」
テレビの前で誰かが笑っていた。
薄暗い部屋の中、子供がテレビにかじりつくように目を向けていた。
そのテレビでは四つん這いの紫色のロボットが、敵を咀嚼していたシーンだった。
グロいとは思わなかった、むしろかっこいいとすらその子供は思っていた。
……俺の、前世の記憶。
「無邪気だよな。この時はさ」
誰かの声が聞こえる。
いつの間にか子供の背後に黒い影が立っていた。
それは笑いながら俺を見る。
「この世界に行くとわかったらお前は笑ったか? エヴァンゲリオンという救いのない世界でお前は笑えたか?」
「……アニメだ」
「だけどもう現実だ」
影はゲラゲラと笑う。
誰かが俺の背後に立つ。
『さすがシンジ!』
レイの声がする。
『さすがシンジくんね!』
ミサトさんの声がする。
『さすがバカシンジね』
アスカの声がする。
『さすが三上くんね』
綾波の声がする。
『さすがロスト・チルドレンだな』
加持さんの声がする。
『さすがイレギュラーだな』
ゲンドウの声が聞こえる。
多くの人が言う。
『英雄だ!』
『すごい子だ!』
『彼がいれば勝てる!』
『あぁ、行ける!!』
『すごいわ!』
『憧れる!』
大勢の人の声が聞こえる。
誰もが笑いながら褒める。
「気持ちいいよな、褒められるのは。ただのモブ、ただの一般人、ただの死にたがりやのガキが今や英雄だ……気持ちよかったよな、ズルして得た名声はさ」
「……」
何も言えなかった。
ズルしてる、ずっと思っていた。
使徒との戦いで頑張れたのも、原作知識というある種のチートがあったからだ。
頑張れば勝てる、そうしたからこそ勝てた。
ATフィールドの活用だって、旧劇のアスカと新劇の使徒を見ていたからこそできたのだ。
別にすごくともなんとも無い、なのに皆俺を褒め称える、それがたまらなく嫌だった。
「嘘だよ、お前は確かに喜んでいた。英雄、ヒーロー、気持ちよかったよなぁ、物語の主人公だって思い込んでさ……けど本当のお前はこれだよ」
エントリープラグに乗り込む俺がいた。
数値が表示される、50%と。
ツイスターゲームをする俺がいた。
リズムに乗り切れずに転倒した。
学校のテストが返された。
赤点の数字が見える。
生活している俺がいた。
レイがいなければ何もできない俺がいた。
「本当のお前はこれだ。中途半端で、役立たずで、バカで、怠惰なのがお前だ」
「……嫌だ」
目を塞ぐ、耳を閉じる。
嫌だ、嫌だ!!!!!!!!!
「気持ちよかったよな、エヴァに乗ってればお前は全てが見逃される。長所しか見られず、短所はスルーされる。……けど、最近はそうじゃなかった」
休憩室で休憩するNERV職員が見えた。
『最近さ、シンジくん伸び悩んでるよな』
『そりゃそうだろ、彼って土壇場の力はすごいけど平時だとダメダメじゃん』
『ばっかお前、
『ハハッ、どやされるだけだろ? なら僻みくらい許せよ』
エヴァを整備する整備員の姿が見える。
『あの子は無茶ばっかするよなぁ、ったく何回オーバーホールすりゃいいんだ?』
『ぼやくなぼやくな、英雄様の活躍には俺たちが頑張るしかねえんだから』
『ったく気楽でいいよな、英雄様は』
学校の教室が見える。
『三上って勉強ダメダメなのにいいよな、事情で補習免除らしいぜ?』
『そりゃそうよ、私達を守ってくれてるんだもの……けどもうちょっと頑張ってほしいわよね』
『だよなぁ、俺達だって頑張ってるのに』
「止めろ、止めてくれ!!!」
「これは全部お前の評価だよ、受け入れるんだよ」
原作のシンジくんが目の前に現れる。
「そこにいるのは僕だったのに、なんで君がいるんだ? 母さんも、綾波も、アスカも、ミサトさんも、父さんも君に期待してるんだよね。羨ましいよ」
「あ、あぁっ」
笑うシンジくんがレイへと変わる。
「僕を依存させて気持ちよかった? 僕に慕われて嬉しかった? 君しかいないって僕に言わせて楽しかった? 僕にキスされて興奮した? 僕を守るって嘘ついてよかった?」
「れ、レイ」
「僕はシンジだよ、シンジ」
レイがシンジくんへと変わる。
「僕が可哀想だと思った? 僕がだめなやつだと思った? 僕が手遅れだと思った? 僕が世界を滅ぼしたと思った? 僕がひどいやつだと思った?」
「そんなこと思ってない!」
「「嘘だ」」
レイとシンジくんが俺を見下ろす。
「僕じゃダメだと思ったから」
「僕が君に依存してたから」
シンジくんとレイが交互に話す。
「僕では変われないと思ったから」
「僕を守らなきゃと思ったから」
二人が笑う。
「「僕らじゃ世界を変えられないと思ったから君はあのときエヴァに乗ったんだよね」」
「あ、あああああああああっ!!!!」
頭を掻きむしり、地面に膝をつく。
だが鏡写しのように、地面にはアスカがいた。
「私のことどう思った? かわいい? 強い? 守らなきゃ? 違うでしょ? 可哀想だと思ったのよね」
「ヒッ……」
アスカの右腕が裂ける。
旧劇場版のように真っ二つに裂けて、血が吹き出す。
「私はこうやって死んだ。そしてこうなった」
「やめ――――」
複数のロンギヌスの槍がアスカの体を射抜く。
俺は見たくないと目をつぶろうとして、無理だった。
誰かが俺の頭を固定した。
全身を射抜かれたアスカが笑う。
「可哀想でしょ? ひどいでしょ? でもひどいのはアンタよね、私がこうなるのを画面越しに見てたんだから」
「アス――――」
グシャリとアスカの体が弾け跳ぶ。
ぐちゃぐちゃになった肉塊が俺の目の前に転がる。
臓物が飛び散り、バラバラになったアスカが俺を見る。
「ねえ、シンジ、愛してよ。こんな私を愛してよ」
「――――」
頭を必死に動かして、逃げようとする。
だが固定された頭を動かすことはできない。
ズルズルとバラバラになったアスカが俺の側に這い寄る。
「愛してよ、愛してよ、愛してよ、かわいそうと思ったんでしょ、ひどいって思ったんでしょ、人形を娘だと思って自殺した母親が酷いって思ったんでしょ、愛してよ!! 愛せって!!!」
「もう止めてくれ」
「そうやって逃げるのね」
頭が上向きになる。
そこにいたのは色白の綾波。
肩と足から羽を生やしていた。
「肝心なことから逃げ出す。あなたは未来が怖いんじゃないの、自分が変えた未来が怖いんでしょ?」
「違うッ!!」
「違わない」
俺の全身に複数人の綾波が絡みついていた。
「碇レイを変えた、エヴァの未来を変えた、葛城ミサトの未来を変えた、赤木リツコの未来を変えた、NERVの未来を変えた、国連軍の未来を変えた、戦自研の未来を変えた、惣流・アスカ・ラングレーの未来を変えた、綾波レイを変えた、けどあなたはそれを怖がった、もう予測できないから」
レイがキスをしてきた。
「変えたんだよ、シンジは。僕を、こんな風にさ」
アスカがキスをしてきた。
「変えたのよ、アンタは。私を、こんな風にね」
綾波が手を握ってきた。
「変えたの、あなたは。私を、こんな風に」
皆が口々に言う。
「あなたが変えたのよ」
違う。
「君が変えたのさ」
違う。
「お前が変えたのさ」
違う、
「お前が変えたんや」
違う。
「三上、お前が変えたんだろう?」
違う。
「貴様が変えたのだろう?」
「違う!! 違う!!! 違う!!!! 俺はただ原作通りに動こうとしただけだ!! 何も変えてない!! 変わって欲しくなかった!!!」
俺は絶叫する。
こんなつもりじゃなかった。
熱血なんてするつもりもなかった。ただがむしゃらにやっていたらこうなったんだ。
「本当に?」
そうだ、俺は全部救おうなんて思ってなかった!! ただレイと笑って過ごせてればよかった!!!
「本当に?」
エヴァが動いたんだ! あのときエヴァが動かなければ俺はこんな体にならずに済んだ!!
「本当に?」
悪いのは俺じゃない!!! この絶望しきった世界が悪い!!!
「「「「それは違うよ(わ)」」」」
シンジくんとレイ、アスカ、綾波が見つめる。
「君が悪いんだ」
「シンジが悪いの」
「あんたが悪い」
「三上くんが悪いの」
「「「「君(あんた)(あなた)がシナリオを変えたから」」」」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
叫ぶ、叫び切る、心が壊れていく。
自分が隠し通していた罪悪感も、聞こえていた称賛も、嫌味も、恐怖も全てが曝け出される。
俺の頬に誰かが触る。
目の前にいたのは黒い影だった。
「だからさ、楽になっちゃえよ。それが俺の望みだろ?」
違う。
バキン!!!!!!!! と世界にひびが入る。
「なっ!?」
目の前の影が狼狽える。
俺はゆっくりと立ち上がる。
あぁ、違う。
「なんで! お前のトラウマは全部ほじくり返した!! お前は死にたがってただろ!!」
「あぁ、そうだな」
目の前の
胸糞悪いことしやがって、と思う。
だけど、おかげで吹っ切れた。
「どうしてだ!! 何を支えに立ち上がる! なんで拳を握っている!! 心は砕けたはずだろ!」
「……業腹だけどお前のおかげだよ」
拳を握りしめる。
手が初号機のソレとなる。
「なぜだ、理解できない!! 理解することを拒絶する!!」
「そりゃそうだろ、だってお前は使徒だ」
黒い影がこちらに向かってくる。
ATフィールドがそれを阻む。
「バカな、なぜそれを展開できる。お前達のソレは肉体を形成するだけの脆弱なものだろう!!」
「だったら気合でどうにかすりゃいいだろ、人間舐めんな」
ガンガン!! と叩いてくる黒い影を、拳に纏わせたATフィールドでぶん殴る。
黒い影がすごい勢いで飛んでいく。
おー、やるやん俺のATフィールド。
黒い影がエヴァンゲリオンの姿を形取る。
「恐ろしいだろ!? これがお前の恐怖だ」
「だけど俺の憧れだ」
背後から何かがせり上がる。
エヴァンゲリオン初号機、俺の憧れだ。
「なぜだ!!」
「開き直ったから」
黒い影がキョトンとしたように動きを止める。
うん、開き直ったからだ。
悩むのは止めた。
「バカな……どうしてそれが出来る!!」
「悩んだところでどうしようもないじゃん」
うん、そうだ。
どうしようもない。多分俺はこれからも変わった皆に恐怖するし、罪悪感にも見舞われるだろう。
だけどコイツのおかげで思い出したんだ。エヴァンゲリオンが俺にとってどういう存在だったのか。
捕食するエヴァを、俺はかっこいいと思った。
使徒を食ってるあのシーンだ。バカだと思うだろうがマジだ。あの時の俺は確かにそう思った。
年月が経って、旧劇を見た。
救いがなく、どうしようもない結末、それに恐怖した。
新劇を見た。
何がQだよ!!! と憤慨した。
でも俺はエヴァンゲリオンという物語もずっと見守っていた。
悲しかった、苦しかった、どうしようもなかった、けど根底にあるのはかっこいいという憧れだったのだ。
それに――――。
「俺は英雄なんだろ、かっこいいところ見せなくっちゃ」
後ろを振り向くと大勢の人がいた。
ミサトさんがいた。
赤木さんがいた。
加持さんがいた。
トウジがいた。
マヤさんがいた。
日向さんがいた。
青葉さんがいた。
寺田さんがいた。
ケンスケがいた。
俺が出会ってきた皆がそこにいた。
「おーすっげ、心象世界だからポンポン人が出てくるわ」
父さんが笑っている。
母さんが怒ってる。
アスカが拳を振るってる。
綾波が手を振っている。
レイが――――笑っている。
「使徒、名前忘れたからただの使徒って言うけどな。人間の最強の武器を教えてやるよ」
いつの間にか視界がエントリープラグに戻っていた。
ぐっと操縦桿を握るとLCLが電化し、真っ白な空間が目の前に広がる。
だが白い空間に焦りのような気持ちを感じるのは気の所為ではないのだろう。
ありがとな、使徒、おかげですげースッキリしたゾ!!
「人間はなぁ、気合と!」
エヴァとシンクロする。
「根性と!!」
体全体にATフィールドを纏わせる。
「現実逃避があるんだよ!!!! ぶっ壊れろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
体のATフィールドを全方位に射出する。
空間をATフィールドが切り裂いていくと赤いコアらしきものが出現する。
背中に張ったATフィールドで、初号機を押し出してコアへと接近する。
そのまま飛び蹴りの体勢を取る。
なんか某仮面なライダーみたくキックで決めてること多いなぁ!!
「うぉりゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
コアを蹴り砕き、勢いのまま空間を切り裂いていく。
白い空間が歪んでいき、俺はそのまま白い空間を突き破った。
ぶっちゃけシンジの精神の不調は作中書いたとおり、持ち上げられすぎたから。原作知識でズルしたと思っていたから、ずーっとしこりに残ってて、レイにキスされてどんだけレイ=原作シンジくんを変えてしまったか理解してしまった。
でも自分は結局モブで、シンクロ率も劇的に上がらない、音楽センスなし、勉強もできない、レイに生活依存してるとか負い目あって、職員やクラスメートたちの陰口でストレスが溜まってた。
そして原作シンジの役目を奪ってしまった負い目と旧劇で惨殺されたアスカへのトラウマ、早期の綾波の変化でさらに精神ズドン。アスカのキスと自分に好意があると気づいてさらにズドンとなってた。
そこに今回の使徒さん付け込んで、シンジの精神を破壊して、シンジに成り代わろうとしていた……のだけど、最初になんでエヴァンゲリオンという物語を見たのかっていうことをシンジですら思い出してなかったのに、思い出させてしまったせいでシンジの心が点火、バキバキに折られた精神だけど俺英雄じゃん、皆期待してくれてるじゃんとまさかの再構築。で、アカン! シンジが死ぬぅ!! とユイさんが援護したおかげで俺のATフィールドも捨てたもんじゃねえなと自信アップ、そして現実逃避に自分に都合のいい人達を思い出して無理やりテンション上げて、使徒撃破という流れ。
死にたいのは変わらないし、罪悪感もあるけどとりあえずもうちょい頑張るか! となったのが今回の話。
ちなみに作者、シンジが責め立てられるシーンはニコニコ笑顔で書いてた。
逆に今回エヴァに乗らない、使徒がちょっかい出さないとかしなければシンジは自殺を選んでたから、戦犯使徒だったりする。あとこの使徒こんなやつだったかと思ったけど書いてて楽しかったからヨシ!
ちなみに作者の覚えてる限り、最初に見たエヴァはゼルエルくん捕食シーン。グロいと思わず、いつぞやどっかで書いてたかもしれんけど美味しそう、かっこいいとかいうトチ狂った感想抱いた模様。その数年後、旧劇見て無事弐号機の最後がトラウマになった模様
ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?
-
いいゾ~これ(両方ともIKEA)
-
(ifストーリーだけ)INしてください?
-
(その後の話だけ)はい、よういスタート
-
どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)