中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、皆悲しんでるけど主人公は眠れてるからハッピーエン……たまに起こすの止めろや(怒りゲージチャージ中)

わりと心配してくれる人多いけど、大丈夫。まだ書ける。ここで止まったら本当に失踪してしまう、それだけは絶対にヤダ。それにシン・エヴァが年明けにやるならここで止まるわけには行かねえだろオラァン!!! 完結してシン・エヴァ気持ちよく見てやんよぉ!!!


死んでると思ったら死ねてない上に世界の結末を見て絶望したけどやっぱ立ち上がった件

 リツコはコツコツと暗い通路を歩いていく。

 彼女が歩いているのはNERVがこうなる前にあった組織の名残が残った場所。

 ゲヒルン、赤木リツコの母親の罪が色濃く残った場所である。

 そして娘であるリツコの罪がある場所でもあった。

 フラフラと覚束ない足取りで歩いていくリツコは、ここでやってしまったことを思い出す。

 道具のように扱い、疎んじていたことを。

 

「……ウッ……」

 

 口を押さえるが胃液が漏れ出し、床を汚す。

 ハァハァと息を荒く吐きながらも、涙を零す。

 ここでやったこと、あったこと、その全てを『彼』が知っていたと知ったとき、リツコは叫びたかった。

 見られたくない、そんな綺麗ごとを思ってしまった。

 そして自分に笑顔を向けてくれるむす――――。

 

「私に、そんな資格ないのよっ!!!」

 

 思い浮かんだ笑みをかき消すように、リツコは叫ぶ。

 そんな資格はないのに心を許してしまった、心を預けてしまった。

 侮蔑されるべきなのに、あの子は笑ってくれた。

 綾波レイ()は私を慕ってくれたのだ。

 それが嬉しくて、悲しくて、情けなかった。

 

「私は……私は……っ」

 

 みっともなく泣きながらも、リツコは立ち上がる。

 この先にある罪を消すために、全てを償うために。

 いいや違う、自分の罪を消すためにだ。

 結局、自分は大人になれなかった。

 女にもなれず、母親にもなれず、科学者にもなりきれなかった。

 

「母さん……」

 

 母親を思い出す。

 自分を女手一つで育て上げてくれて、最期は女として死んだ母親。

 侮蔑する気持ちもあった。だが今はそんな気持ちが湧き上がることはない。

 むしろ母親を尊敬する気持ちすらあった。

 最期は悲惨だったが、女として生きた母親。

 科学者としてミスをし、守ろうとした子供を殺してしまった自分と比較して絶望してしまったのだ。

 そしてとある部屋へと辿り着いた。部屋の中央にはカプセルのような容器があり、そこに繋がる太い配線。

 ここはダミープラグの製造場所であり、赤木リツコの罪の象徴のような部屋だった。

 部屋の明かりを付ける。

 

「……」

 

 部屋を囲うように設置された水槽にはLCLが注入されており、無数の『綾波レイ』がプカプカと浮かんでいた。

 眠るように目を閉じていた『綾波レイ』たちは、一斉に目を開くとリツコに笑いかける。

 リツコは白衣のポケットに入っているリモコンを取り出す。

 この部屋を操作するリモコンだが、機密保持のため自壊装置が取り付けてある。

 モニターに表示された電子スイッチを押せば、即座にこの場にいる『綾波レイ』は処分できる。

 だがリツコは出来なかった。

 

「う、うぅ、うぅうううううっ!!!」

 

 膝から崩れ落ち、リモコンが床を滑っていく。

 罪を清算するには、リツコは綾波レイと仲良くなりすぎた。

 この場にいる『綾波レイ』たちは、厳密に言えば綾波レイではない。

 魂を持たないただの容れ物、だがそう思えない自分を科学者としてのリツコが嘲笑う。

 

「でき、ない、出来ないわ、私はレイを殺せないッ!!」

 

 リツコは泣き叫ぶ。

 そしてあのとき、シンジを殺した初号機(碇ユイ)の強さを讃えていた。

 殺したくなかっただろう、助けてあげたかっただろう、でもユイはシンジを殺した。

 それがどれだけ苦しかったか、リツコには想像もつかない。

 自分はただ救われたいだけ、目の前の罪を清算してシンジに詫びたいだけだ。

 ダミープラグを製作したのは自分なのだ。

 少なくとも作動すれば、ユイを傷つけることはなかった、その不甲斐なさが苦しい。

 

「シンジくん、どうして……どうしてこんなものを遺したのよっ!!」

 

 リツコはぐしゃぐしゃになったシンジの遺書を懐から出す。

 そこに書かれていたのは、リツコへの感謝とゲンドウとの関係について、そしてダミープラグに関して。

 だがリツコを責める言葉はなかった。

 

『赤木さんがどうしてそういう選択したのか、わかるなんて言えません。

 間違ってるなんて俺には偉そうには言えないから、俺はわかっていても皆に何も伝えなかった。

 全部知ってたのに黙ってたんです。だから、何も言いません。

 でも赤木さんのことを信じてます。きっと今の赤木さんならレイたちを守ってくれる。

 俺の知ってる赤木リツコさんは、優しい大人だから』

 

 違う、殺そうとしたことがあった。

 でも情が沸いて殺さずにいた汚い大人なのだ。

 シンジが思っているほど立派な大人ではない。

 リツコはどうすればいいのかわからなくなってしまっていた。

 その時、足音が背後から聞こえ、リツコは振り返るとフッと諦めたように笑った。

 そこに立っていたのはゲンドウだった。

 

「……碇司令」

「……」

 

 無言でリツコを見下ろすゲンドウの表情は、サングラス越しでは見えなかった。

 リツコはうつむいて、吐き捨てるように言う。

 

「壊す、つもりでした。ダミーシステムを、でもできない、出来ないんです」

 

 涙が止まらずに、リツコは両手で顔を押さえながら叫ぶ。

 

「貴方のことを愛していました。けれどシンジくんが心地よくて! レイが慕ってくれるのが嬉しくて、貴方から離れてしまった!! 私は……最低の大人です」

「……」

 

 ゲンドウは何も言わない。

 リツコはそんなゲンドウの様子に微笑んだ。

 

「貴方はいつだってそう。抱くときも、話すときもニコリともしない。けど私は、私達親子は、愛してしまった……」

「……」

「殺すなら、殺してください。もう、疲れました」

 

 リツコはそう呟く。

 コツコツと足音を立てながら歩くゲンドウ。

 彼はリツコの前に――――立たずにそのまま歩いていき、床に転がっていたままのリモコンを手に取る。

 リツコは驚いた表情で、ソレを見た。

 

「……赤木くん、最低なのは私の方だ」

「碇、司令……?」

 

 フッと笑うゲンドウにリツコは驚く。

 笑ったのだ、あのゲンドウが、自分に対して。

 詫びるように言葉を紡ぐゲンドウは続ける。

 

「今まですまなかった、赤木くん」

「碇司令……待ってください、それはダメです!!」

 

 いつもと違うゲンドウの言葉に、違和感を覚えたリツコは叫ぶ。

 だがゲンドウの指は、自壊ボタンを押しており、LCLの色が赤く染まっていく。

 すると水槽に浮かんでいた綾波レイたちが笑いながら、溶けていく。

 リツコは、呆然とその光景を見て、正気に戻り叫んだ。

 

「何故ダミーシステムを壊したのですか!?」

「ダミーシステムではない、ここにいたのは綾波レイだ」

 

 その言葉にリツコは衝撃を受けた。

 碇ゲンドウという人間はこんなだったのか? 確かに綾波レイを大事にしていたが、ここまで入れ込んでいたのか? ここまでこの人は、父親らしい姿を見せた事があったのか?

 リツコの中に考えが渦巻く。

 ゲンドウはリモコンを床に落とすと、溶けていくレイたちをじっと見つめる。

 

「……今更だ、今更どうしようと私の罪は消えん」

「……ゲンドウ、さん」

「だが君は違う」

 

 ゲンドウは振り向き、膝をつくとリツコの肩に優しく手を置く。

 

「まだ引き返せる。君は私のようになってはいけない」

「ゲンドウさん」

「私は計画を止める気はない。娘に恨まれようと、ユイが拒否しようとも、私は最期までやり切る」

 

 その言葉に、リツコは肩を震わせる。

 ゲンドウの計画、委員会の……いいやゼーレの補完計画とは違う、ゲンドウの補完計画。

 まだ続けるというのか、とリツコは仰天するが、ゲンドウはリツコの肩から手を離すと立ち上がる。

 

「ダミーシステムはシステムの不具合のため計画破棄。研究中のものも全て破棄した……そういうことでいい」

「委員会に睨まれますよ」

「構わん。どうせ奴らの狙いは三上シンジの遺体だ。時期が来ればくれてやるさ」

 

 リツコはその言葉に憤りを感じるが、かすかに震えているゲンドウの拳を見て眉を顰める。

 彼も、シンジに変えてもらった一人なのだろう。葛藤し、それでもやろうとする、これも一つの選択ではある。

 リツコは立ち上がり、決別もこめて言い放つ。

 

「させません。シンジくんは私達が守ります。あの子はもう、静かに眠らせてあげるべきなんです」

「……一週間後、三上シンジの遺体を移送する」

 

 ゲンドウはそれだけ言うと歩いていく。

 一週間後、つまり一週間だけ時間を作ってくれるとのことだろう。

 リツコはゲンドウに感謝する。

 昔のゲンドウなら、こういったことは言わないし、シンジの遺体も躊躇なく使っていただろう。

 これもシンジの起こした変化というなら……私は、それを使ってなんとかする。

 

「シンジくん……もう少し、もう少しだけ待ってて、必ず貴方が安心して眠れるようにするわ」

 

 リツコはそう決意して、しっかりとした足取りで部屋から出ていく。

 部屋の照明が消えていき、完全な暗闇となる。

 ぼうっと小さな女の子が、立ち去っていくリツコの後ろ姿をじっと見て……そして消えた。

 

 

 

○○○

 

 

 

 

 真っ暗な闇の中で俺は膝を抱えながら目を閉じる。

 痛いのも、苦しいのも、辛いのも、ここには何もない。

 静かな海の……いや違う、母親の腹の中にいるような安心感に包まれていた。

 ナニカがたまに俺にちょっかいかけるが、無視して目を閉じる。

 うるさい、もういいじゃないか、もう十分頑張っただろ。

 モブキャラとしては破格の活躍だっただろうが。

 体を犠牲にして、精神を犠牲にして、大切な人の心を犠牲にして、それでも抗って死んだ、これ以上どう頑張れっていうんだよ。

 もう俺の体は動かない。

 オカアサンに潰してもらった。

 もう頑張りたくないんだよ……だから寝かせてよ、もう、嫌なんだ、言い訳するのも、頑張るのも、誰かのために戦うのも疲れたんだ。

 

「でも、まだ終わってないぞ」

 

 うるさい、いいかげんにしろよ、俺。

 もう頑張るなよ。

 

「この後がどうなるか、お前わかってんだろ? 旧劇ならレイは溶ける、新劇なら世界を滅ぼすきっかけを作る。だけど俺が変えてしまったんだ、どうなるかわからないだろ」

 

 うるさい。

 

「どうした、一回ぶん殴っただろう? それで起きたじゃないか、起きろよ、起きろって、お前はまだ――――」

「うるさい!!!!! うるさい!!!!!!!!! もうごめんなんだよ!! 他人のために戦うのも!! 自分を犠牲にするのも! 自分のせいで誰かが傷つくのもごめんだ!!!」

 

 俺は(精神)に叫ぶ。

 もうたくさんだ!! ただの一般人なんだぞ、そんなのが世界をどうこうできるわけがないじゃないか!! それに握り潰されて俺は死んだんだ! もう黙ってろよ!! 黙ってくれよ……。

 

「諦めるのか?」

 

 そうだ、全部諦める。

 エヴァに乗ることも、生きることも、戦うことも、レイに会うことも、アスカと会うことも、綾波に会うことも、ミサトさん、赤木さん、トウジ、ケンスケ、サクラちゃん、NERVの皆や両親に会うことも全部、全部諦める。

 諦めさせて、くれよ。

 

「じゃあ最初から諦めれば良かったじゃないか。なんで戦ったんだ?」

 

 レイのためだ。

 レイが大事だから、レイを守りたかったから、レイに傷ついて欲しくなかったから。

 レイ、レイ、レイ、レイ、レイ……レイっ。

 

「違う、君が見てるのは碇レイじゃなくて、この僕でしょ?」

 

 見なくてもわかる。

 そう言っているのは碇シンジくんなんだろう。

 

「君は碇レイを見てないよ。だって君は彼女から逃げてたんだ、彼女の気持ちを知りながら逃げたんだ」

 

 うるさい!! 開き直ったことを責めるんじゃない!!!

 逃げて何が悪い、レイが俺をどう思ってたかなんてわかるに決まってる!! だって、だって俺だって、俺だって伝えたかった!!!

 

「嘘つき、あんたがそれを言うわけないじゃない」

 

 アスカの声が聞こえる。

 シャワーを浴びながら、裸のアスカが目の前にいた。

 

「あんたはこうしても私に応えてくれなかった。好きなのに、大好きなのに、なのに応えてくれなかった」

 

 アスカの手が俺の首を絞める。

 

「殺してやる、殺してやる、殺してやるッ!!」

 

 殺してほしかった。

 殺して楽にしてほしかった。

 なのに、お前は楽にしてくれなかった!!!!

 

「そうやって責めれば良かったのに」

 

 綾波の声が聞こえた。

 コトコトと何かを煮込みながら、俺の方を向かずに言う。

 

「誰かを責めれば良かったのに、あなたはそうはしなかった」

 

 ……言ってどうなる。

 どうにもならないだろうが!!! 誰も助けてくれなかった!! 誰もが余裕がないって知ってるから助けを求めなかった!!

 

「その結果、あなたは皆を悲しませた」

 

 いろんな人の泣いている姿が、フラッシュバックのように浮かび上がる。

 ……もういい、だろ、もういいじゃないか、どうにもならないよ。

 動きたくても動けないんだ。

 死んでるから動けないんだ。

 

「「「シンジ(三上くん)」」」

 

 レイ、アスカ、綾波の声が聞こえる。

 ――――してよ。

 

「なんで、俺ばっかり頑張ってるんだよ。本当は頑張らなきゃいけないのはお前らだろ? 頑張れよ、俺を見るなよ、俺に頼るなよッ!!!! 俺を、俺に優しくしてよ!!!!!」

「自分で自分をここまで追い込んでおいて、優しくしろって言う虫のいい話あるわけないじゃん」

 

 聞き覚えのない声に、俺は顔を上げる。

 学校の屋上で、目の前にはメガネをかけた少女が呆れ顔でこちらを見ていた。

 聞き覚えのない声、だが俺はこの声を知っていた。

 

「マリ……?」

 

 真希波・マリ・イラストリアス、新劇に登場したエヴァパイロット。

 経歴不明、正体不明、目的不明と不明づくしの謎のキャラ。

 マリはため息を吐きながら、俺を見る。

 

「優しくしてほしいなら心を開くべきだった。結局、キミも方向性としてはわんこくんとおんなじ、誰にも心を開かず、話さず、関わらず、だから君は死にかけてる」

「……死にかけてる?」

 

 はっ、何を言ってるんだ、俺は――――。

 

「使徒と同化して、握り潰された程度で死ねるとでも思ってるの?」

「……えっ?」

 

 使徒と、同化?

 ふと手を見る、青い何かが手を覆っていた。

 いや手だけじゃない、胴体も、足も覆われていた。

 

「ヒッ――――」

「君が死にたいと願ってるから死んでるように見えてるだけ。仮死状態みたいなもんよ」

 

 マリの言葉を無視して俺は、体を覆うナニカを振り払っていく。

 だが振り払っても振り払ってもソレはピッタリと俺にくっついてきた。

 

「頑張りすぎたんだよ、君は。何も抵抗しなければ、ここまで侵食はされなかった。ATフィールドを張れたのがその証拠だよ、今の君は使徒だ」

「俺が、使徒……?」

 

 ドクンと心臓が鳴る。

 学校の屋上が崩れていき、真っ暗な空間が出てくる。

 

「君には二つの選択肢がある」

 

 マリの服装がプラグスーツになっており、ニヤッと笑いながら指を立てる。

 

「一つ、このまま使徒に身を任せて使徒となり、守ったはずの人たちを殺す」

 

 暗い空間に皆の横たわった死体が現れる。

 ご丁寧に俺の手は血で汚れていた。

 

「二つ、いつもみたいに気合でどうにか使徒を塗り潰して、また守るために起き上がる」

「――――だ」

「なぁに?」

「嫌だっ!!!」

 

 俺は頭を抱えて叫ぶ。

 ヤダ、ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!! 起きたくない、やっと、やっと楽になったんだ!!

 誰にも邪魔されずゆっくり眠れると思ったのに、なんで、どうして!!

 

「どうしてだよ、俺が何したんだよ……」

「わんこくんと同じ。君は自分の気持ちを優先して、周りを見なかった、その報いだよ」

「報いってなんだよ。必死にやってきたのが間違いだっていうのかよ!!!」

「皆を泣かせたことは間違いじゃないの?」

 

 その一言で、シンジは何も言えなくなる。

 マリはシンジの目を見る。

 

「結果には責任が伴う。君がどう思おうが、君が行動した結果、いろいろなものが変わった。けど、過程が変わっても結末までは変わらない」

 

 暗い空間が晴れて、赤い海に満点の星空が見える。

 そして二人の女の子が砂浜で重なっていた。

 いや違う、上に乗った女の子が……レイが、アスカの首を絞めていた。

 

「あっ……」

「そう、これがこの世界の結末。変わったよ、皆変わった、けれどもゲンドウくんは最期までやりきった」

 

 ボキンと何かが折れる音がした。

 力なく横たわるアスカの首が、変な方向に曲がっていた。

 レイはそれを無言で見下ろし、直後にワンワンと泣き出した。

 ち、がう、こんな結末じゃない、ここまで救いがない結末なんかじゃなかった!!!

 

「細部は違うかも知れない。けど二人戻ってきて、首を絞める。絞め殺したって差異はないでしょ?」

「あるに決まってんだろ!!! これじゃ、これじゃあレイは一人ぼっちだ!!」

「なら変えなよ」

 

 マリの一言で、再び風景が真っ暗な空間へと変わる。

 

「起きて戦うんだ。そうすれば変わる」

「……」

 

 起きて、戦う。

 その一言に俺は恐怖を感じる。

 だけど…………あんな最期は嫌だ。

 

「ほうら、戦う気になった」

 

 マリが笑う。

 ケタケタと面白そうに笑う。

 死にたい、眠りたい、静かになりたい、けどレイたちがああなるのはもっと嫌だ。

 マリが何を考えているのか、本当にああなるかはわからない。

 だけれども、俺がまた起きればああならないのなら――――

 

「すごいね、君。寝ててもいいんだよ?」

「……十分寝たよ」

 

 あぁ、十分寝た。

 怖いし、辛いし、死にたい、楽になりたい、でも俺は誓ったんだ。

 レイを守るって、これが俺の罪悪感が生み出したものか、あるいは体に巣食う使徒が見せているのかはわからない。

 だけれどもレイが泣いてるんだ。

 なら立ち上がる理由にはなるさ。

 

「君は破綻してるよ、どんな精神状態なのさ。死にたいのか、守りたいのかわからないよ」

「んなもんだろ、人間の心なんて」

 

 俺は体を覆うナニカ……いいや、使徒に触れる。

 そうすると使徒が大きく広がり、俺を包み込んだ。

 視界がゼロになり、徐々に意識が遠くなる。

 プッツリと意識が途切れる直前、マリが言った。

 

「君は全てを救うよ。けれど、自分だけは絶対に救えない」

 

 あぁ、知ってる。

 その思考を最期に『人間』としての俺は今度こそ、完全に死んだ。

 

 

 

○○○

 

 

 

「……暇だな」

「それが一番ですよ、先日みたいな戦いは起きないほうがいい」

 

 国連軍の兵士たちは、四日前の三号機暴走事件に参加しており、そこで見た光景が忘れられずにいた。

 兵士たちの中には、辞職を考えたものもいたが現場指揮官であった立花が、子供を守れなかった者が逃げるな!! と一人一人を奮起したため、辞めなかった。

 現在、国連軍は第3新東京市で行われる大規模避難訓練に協力していた。

 そして二人はこれから来る、バス群の誘導のため護衛艦が並ぶ港の駐車場にいた。

 三日間の大型避難訓練に、兵士は眉を顰める。

 

「にしてもこの時期に避難訓練ったぁ……NERVはな~に考えてやがる」

「……もしもに備えて、じゃないっすかね」

「ここまで大掛かりにか? 噂じゃNERVの強権使ったらしいぞ」

 

 えぇ!? と驚く新人兵士に、中年の兵士は笑う。

 

「その割に避難めっちゃスムーズに進んでますね」

「……紫のロボットが守ってくれる」

 

 中年の兵士が息子に言われたセリフを口ずさむ。

 新人兵士は微妙な顔をする。

 

「でも、アレの元のパイロットは……」

「ウチの息子もそうだが、いま第3新東京市に残ってる連中は本気でそう思ってんだよ」

「守りますかね。アイツ、コックピット潰したんですよ」

「……あぁ」

 

 憤る新人隊員の気持ちもわかるが、どうしても中年の兵士は、握り潰す前の初号機の動きが気になっていた。

 躊躇し、愛おしそうに撫でる動き、まるで母親のようだったと思ってしまうのだ。

 エヴァンゲリオンへの不信感は日に日に高まっているが、躊躇したという点では甘い兵器だなと一定の年齢の兵士たちは思っていた。

 ……イカンなと中年の兵士は空を見上げて――――目を疑った。

 

「は、はぁ?」

「先輩どうし……へっ!?」

 

 見上げた先に、何かが浮いていた。

 仮面のような顔、ひらひらと帯状のものが巻きついている胴体、そして胸には赤い球体があった。

 あっけにとられている二人だったが、我に返った中年の兵士が無線を使う。

 

「使徒発見!! 繰り返す、使徒発見!」

『こちらでも視認した。NERVにも連――――』

 

 停泊中の艦に通信を入れ、返答を聞いている最中、使徒の目が光り、次々と護衛艦が消滅していく。

 表現が誇張だと思うかも知れないが、事実である。

 目から放たれる光線が護衛艦に当たると、跡形もなく消失するのだ。

 中年の兵士が無線を持っていた手を力なく降ろすと、ものの三十秒ほどで待機していた五隻の護衛艦が全滅していた。

 新人兵士はあまりの光景に、開いた口が塞がらず、恐怖からか足の力が抜けてその場に座り込む。

 

「せ、先輩……あ、アレ」

「第3新東京市に行くつもりか」

 

 中年兵士はゆっくりとどこかに向かう使徒を見送る。

 やれることはあまりにもない。

 だが、それでも彼らは国民を守る兵士であった。

 

「車を出せ!」

「せ、先輩、まさか追いかけるんですか!?」

「違うわバカ!! 近くの大型通信設備がある場所に行くんだよ! まずは本部に報告、いいな?」

「了解!」

 

 新人兵士は元気よく返事をし、震える体を抑えながら車を取りに走っていく姿を見届けると息を吐く。

 少し見ただけでわかった、あの攻撃性能。

 中年の兵士は、今のNERVが、いやエヴァンゲリオンが対抗しきれるのか、不安になった。

 いつも頼みの綱にしていた彼はもういない。その事実に震えるが、どうにかするしか無いと戦意を高めた。

 

 




ゲンドウはシンジの死に心痛めて、こんな悲しみをなくすために補完計画への決意をさらに固めた模様。ちなみに遺体移送するとか言ってるが、移送中に事故と見せかけてシンジの遺体を滅却するつもりな模様。マダオとは違うのだよ、マダオとは!
シンジはゆっくり寝てたいけど、使徒のせいで完全に死んでいなかったから残ってるガンギマリ精神が、必死に起こそうと頑張ってた。そこにマリがシンジの罪悪感を煽って、観測した結末をシンジに見せた。その結果、旧劇の結末に納得してないシンジのガンギマリ精神が完全復活、体も使徒と同化してるせいで、中身も完全にかいふくしたもんだから、あとは神経にいる使徒を気合で殲滅するだけで復活するゾ。死にたいし、楽になりたいのは本音だけど、ソレ以上にレイの結末が許せねえ!! とハッピーエンド脳に目覚めた模様、ただその中に自分入れてないから死にたがりは治ってないゾ。
感想で某聖人の云々とか書いてくれてたけどまーったく考えてなかったゾ……このSSは偶然の産物で出来てます(白目)

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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