中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、やっぱり死んでないじゃないか、じゃあ立って戦おうか♡

とりあえず書きまくってたらなんかあと二話ぐらい必要になりそうでやばい、やばくない? 大体八千~一万程度に文章量抑えようと思ってるゾ。
ソレ以上書くとなると一日はアーイキソ……。
あと感想返信せずに寝てるやつがいるってこれマジ????


まだ目覚めてないけど友達が危ないので守った件

 突如として現れた使徒に反応したのは、旧小田原防衛線に展開していた国連軍だった。

 何故か用意されていた、戦車大隊と航空戦力。

 第二方面軍のほぼ全ての戦力が即座に対応できるようにされていた。

 偶然、ではない。ミサトやゲンドウが裏から手を回していたから出来たことだった。

 だがその総力すら、現れた使徒は鎧袖一触という具合に吹き飛ばす。

 目が光り、戦車大隊の半分がそれだけで蒸発する。

 

「なんだあいつはぁ!?」

「後退急げ!!」

 

 隊員たちが悲鳴にも似た叫び声を上げる。

 今までの使徒よりも積極的にこちらを攻撃してきているのだ。

 

「本部から報告!! N2誘導弾の使用をするとのことです!!」

「まだ航空戦力がいる――――」

 

 直後、報告をした隊員も報告を受けた隊員も蒸発する。

 地上戦力はわずか五分で壊滅したが、空も似たようなものだった。

 ミサイルも機関砲もATフィールドに阻まれ効果はない。

 さらに言えば、数十機はいたであろう戦闘機も、使徒の体からひらひらと舞っている帯状のものが四方八方に伸び撃墜されていた。

 

「くそったれ!! 使徒の連中は化け物か!!」

 

 舌打ちしながら編隊長は、減っていく僚機に歯噛みをする。

 彼は以前、使徒戦に参加した編隊長であり、前回生き残ったという実績を評価され、再び使徒戦に臨んでいたが、以前とは比べ物にならないほどの強力な使徒に、足止めすら出来ない状況だった。

 

「避難させるための足止めにもなれんとは!!」

 

 ビーッ、ビーッというなりっぱなしの警告音を聞きながら、編隊長は拳を叩きつける。

 直後、鋭く尖った帯状のヒレというべきか? その使徒のヒレが機体を貫き、爆散した。

 第二方面軍はほぼ壊滅したと同時に、複数のN2誘導弾が使徒めがけて飛んでいく。

 だが小さく展開されたATフィールドが誘導弾を受け止める。

 へし折れたN2誘導弾はそのまま爆発するが、黒煙から現れたのは無傷の使徒であった。

 

「バカな!! N2であれば体皮くらいは削れるはずだぞ!!」

「それだけヤツのATフィールドは硬いということです」

 

 府中総括総隊司令部ではでたらめな使徒の強さに、狼狽するしかなかった。

 壊滅することはわかっていた。だが、NERVからの要請で、第3新東京市の全市民の避難時間を稼ぐために向かわせた全戦力が壊滅、生存者も確認出来ない。だから虎の子のN2誘導弾を発射したのだ。にも関わらず、ダメージすら与えられないという絶望感は強い。

 万が一、使徒が来てもN2なら時間を稼げる、そう思っていた司令部の楽観は砕け散った。

 

「どうするのかね!!」

「第二波、第三波も用意!!」

 

 司令官の言葉に、上層部の者は狼狽える。

 

「ば、バカかね!! 被害を考えたまえ!!」

「そんなことを言ってる場合ですか!! ここで足止めしないと第3新東京市の市民が危険に晒される!」

 

 現在も急ピッチで避難を進めているが、とてもではないが間に合う計算ではない。

 しかし、あの破壊力でシェルターに入ったとしてもどこまで生き残れるか……司令官の冷徹な部分が計算をする。

 だがここで止まるわけには行かない。

 

「全無人機部隊緊急発進! 輸送用でも構わん、全てをやつにぶつけろ!!」

「了解、全無人機起動(アクティブ)。来年度の予算はゼロですね」

「来年度がアレばな」

 

 司令官はオペレーターの冗談に不敵に返すが、どこまで稼げるか。

 モニターに表示された使徒の進行速度は早い。

 すでに旧小田原防衛線は突破されており、その次は駒ヶ岳防衛線だが、無人機で時間を稼いでもせいぜい一時間程度しかない。

 一方、第3新東京市でも大混乱が起きていた。

 避難訓練が訓練ではなく、本番になったせいもあり、逃げ惑う人たちでごった返していた。

 

「サクラ!! 委員長! ケンスケ! 絶対に手ぇ離すなよ!」

「兄ちゃん。シンジさん、ウチらを守ってくれるよね?」

 

 その言葉に、トウジは言葉をつまらせる。

 ポストに入っていた、シンジからの手紙、いいや遺言。

 そして姿を現さないレイたちと父親たちの落ち込み具合、冗談と思えるほどトウジは鈍感ではなかった。

 もうシンジはいない、だが妹にそんなこと言えずに、トウジはなんとか笑顔を作り言う。

 

「当たり前や!! あいつはどないになってもワシらを守ってくれるんや!!」

「……そう、やね。そうや!! 紫のロボットがウチラを助けてくれるんや!」

 

 サクラの言葉に、周囲の人たちはピタリと動きを止める。

 

「そうだ、紫のロボットがいるじゃん!!」

「いっつも守ってくれるもんね」

 

 焦っていた人たちに笑顔が戻り、混乱が徐々に収まっていく。

 その光景を見て、トウジはシンジを誇りに思い、そして情けない自分に腹立たしさを覚える。

 

「トウジ、シンジはもう」

「ワシは信じんぞ!! シンジは絶対にそうなっとらん!!」

 

 ケンスケの暗い顔に、トウジはNOを突きつける。

 まだ本当に死んだとは決まったわけじゃない、大怪我をしてるだけかもしれない。

 だから、トウジは言う。

 

「ワシは信じとる。あのバカがひょっこり顔を出すってな!!」

「…………トウジ」

「鈴原、動くよ!」

 

 混乱が収まって、列が動く。

 それを委員長が伝え、トウジはギュッとサクラの手を握る。

 ワシはアイツみたいに大勢は救えん、だから……せめて妹だけは守る!! そう決意したトウジは前を向く。

 だが直後に背後で爆発音が響く。

 

「なんや!?!??!!」

 

 トウジは頭上を見上げると、兵装ビル等から凄まじい数の砲弾とミサイルがどこかに向かっていた。

 先程の旧小田原防衛線から三十分、それだけの時間で使徒は第3新東京市の目と鼻の先まで接近していた。

 駒ヶ岳防衛線に設置してある高射砲やミサイルポッドが、使徒に向けて絶え間なく発射されるが、全てATフィールドに阻まれる。

 使徒の瞳が光り、防衛線に設置されていた兵器群が消滅する。

 流れ弾のように飛来した光線は、第3新東京市の一部に着弾し、紫色の光を発しながら大爆発を起こす。

 きゃああああああ!!! と叫ぶサクラをトウジは守るように抱きしめる。

 周囲も似たようなものだった、先程の落ち着きぶりがなくなり我先と逃げ出す人々。

 委員長とケンスケは、トウジの体にひっつきながら人の流れから身を守る。

 

「畜生!! エヴァはなにやってんだよ!!」

「言うとる場合か!! 走るで!!」

「に、兄ちゃん……ごめん、腰、抜けてもうた」

 

 胸の中にいる妹から、力が抜ける。

 無理もないとトウジは思うと、急いでお姫様だっこのようにサクラを抱える。

 

「委員長! ケンスケ!! とりあえずシェルターまで走る――――」

「鈴原っ!!」

 

 委員長の叫び声が聞こえる。

 着弾の影響か、近くのビルが倒壊していた。ドミノ倒しのように倒れるビル、落ちる先は自分たちの場所だと理解した委員長は、叫び声を上げてその場に蹲る。ケンスケは逃げ出そうと走るが、間に合わない。

 

「兄ちゃん!!」

 

 スローモーションのように落ちてくるビルの破片をトウジはただ見ていた。

 あっ、これは死ぬ、と死を覚悟したそのとき、光り輝く障壁がビルを受け止めた。

 

「な、なぁっ!?」

 

 トウジには見覚えがあったそれは、周囲をよく見ると逃げ遅れた人々の頭上を守るように展開されていた。

 サクラが胸の中で呟く。

 

「……シンジさん?」

「ッ!! はよう皆逃げるんや!!!」

 

 トウジの声に呆気にとられていた市民たちは駆け出す。

 全員が離れた途端に、障壁が消えてビルが地面へと落下する。

 トウジたちは、荒く息を吐きながら一息つく。

 

「アレは、ATフィールドかいな?」

「た、多分……で、でも周囲にエヴァはいないぞ!?」

 

 ケンスケの言葉に、トウジは周囲を見渡すがたしかにエヴァの姿は見えない。

 疑問に思ったが、トウジはサクラを抱え直すと委員長とケンスケに言う。

 

「まずは安全なところに行こうや! ここらはマズイ、アイツの攻撃が直撃したらシェルターも無理や」

「で、でも徒歩じゃ……」

「おーい!! 大丈夫ですか!!」

 

 そこに国連軍のジープが次々と停まる。

 まだ街に残っている市民がいると思い、総力をあげて避難活動を行っていた。

 ジープから隊員たちが出てきて、動けない人や子供を優先してジープに乗せていく。

 トウジたちも一番最初に乗せられる。

 

「いいぞ!! 出してくれ!!」

「ちょ、ちょい待たんかい! おっちゃんたちはどうすんねん!!」

「心配すんな、逃げ遅れた人がいないか確認するだけだ! 出せ!!」

 

 バンバンとジープの車体を叩いた隊員は、そうトウジに笑いかける。

 ジープは発進し、隊員たちの姿はあっという間に見えなくなる。

 ケンスケは呟く。

 

「平気だよ、あの人達だってプロなんだ……だから、大丈夫だよ」

「鈴原、座ろ? サクラちゃんの傍に居てあげて」

 

 ケンスケと委員長が、拳を握りしめているトウジに言う。

 トウジは悔しそうに唇を噛む。

 だがやれることもないので、言われたとおりサクラの隣に座ると体育座りの格好で俯く。

 そんなトウジを抱きしめたのは、サクラだった。

 

「兄ちゃん、シンジさん守ってくれたよ」

「……アレやったのがシンジやと?」

「うん! 姿見えなかったけどああするのはシンジさんやって!」

 

 無邪気に笑う妹に、トウジは情けない気分がさらに強くなる。

 もしそうだとしたら、これで何回シンジに助けられたかわからない。

 トウジは涙を流しながら、サクラを抱きしめ返す。

 サクラは何も言わずに、痛いくらいに抱きしめてくる兄を優しく包み込む。

 ふと外を見ると再び紫色の光が、空を照らす。

 

「シンジさん……」

 

 サクラはそう呟いて、兄の体に顔を埋めた。

 

 

 

○○○

 

 

 

「市民の避難は!!」

「60%が完了。ですがこれ以上は!!」

「N2誘導弾第二波、来ます!!」

 

 時間は少し巻き戻り、N2誘導弾の第二波が使徒に直撃したところまで。

 8つの誘導弾全てを防いだ使徒の防御力に、オペレーターたちは絶望しそうになる心を必死に奮い立たせる。

 だがもはや防衛は不可能という具合であった。

 第3新東京市表層の防衛設備は軒並み消滅。ジオフロントを守る24層の特殊装甲をたった一撃で破壊されたのだ。打つ手なし、そんな考えが脳裏によぎるが、指揮を取るミサトは叫ぶ。

 

「残った防衛設備を全て使徒にぶつけて!! 地上迎撃は考えなくていい、ジオフロントに直接エヴァを配備して! 零号機、初号機は!?」

「零号機は腕部を応急処置中、初号機は……ダメです、ダミープラグを受け付けないどころか、こちらからの操作を一切受け付けません!!」

 

 ミサトは舌打ちをする。

 ここまで早いとはと思うし、避難計画をもっと早めておくべきだったと後悔する。

 だがそれらをひっくるめて、ミサトは飲み込みモニターに映る使徒を睨む。

 状況は最悪に等しい。

 エヴァの地上迎撃は間に合わない。ラミエルの時のように、リフトオフ時に焼かれるのがオチだろう。

 そして零号機は先の三号機の戦闘で破損した右腕の修復がまだ終わっていなかった。整備班が全力をあげて修理しているため、原作よりも状態はいいがそれでもベストコンディションとは言えない。

 初号機に関しては、電源すら拒否するのだ。

 まるでこのまま何もしたくないと言わんばかりに、発令所からのコマンドを全てブロックしていた。

 事態を見守っていたゲンドウが立ち上がる。

 

「葛城三佐、以後の指揮は君に一任する。私は初号機に対応する」

「碇司令……」

 

 ミサトをしっかりと見るゲンドウ。

 傍に立っていたリツコは、前に出る。

 

「私も同行します」

「君はここで補佐をしたまえ、あとは家族の問題だ」

 

 ゲンドウは冬月を一瞥する。

 

「少し頼んだ」

「あぁ」

 

 冬月はエレベーターで降りていくゲンドウを見送ると、モニターを見る。

 

「最強の拒絶タイプ、か。碇、この状況どうする?」

 

 冬月は他人事のようにつぶやき、押し黙る。

 ミサトたちは指示を矢継ぎ早に出す。

 

「市民の避難が最優先だ!! 足がない? 自前の二本があるだろ! 走れ!!」

「国連軍より入電。現在第三波を準備中」

「ありったけの武装コンテナを用意してください、急いで!!」

「アスカ、聞こえる!? 単独先行させるけど零号機を待ちながら牽制して」

 

 ミサトの言葉に、アスカは返事をしない。

 ただ一言、問いかける。

 

『役立たず、碇レイはどうしたのよ』

「……まだ、病室よ」

『……そっ、アイツ、最期まで使えないわね』

 

 アスカは心底呆れたと言う風に、吐き捨てる。

 全部私一人で終わらせる、その気持ちを持って弐号機に話しかける。

 

「ママ、いるんでしょ……お願い、アイツが守りたかったものを守れる力を貸して」

 

 ドクンと何かが弐号機内で脈打つ。

 弐号機の頭部拘束具が外れ、4つの瞳が光り輝く。

 それをモニターしていた発令所の人員がおぉ、と沸き立つ。

 

「し、シンクロ率99.9%……す、すごいです!! アスカ、凄いわ!!」

「……アスカ、あなた気づいたのね」

 

 リツコは微笑むと、応急修理が完了するまで零号機に待機しているレイに話しかける。

 

「レイ、焦りたい気持ちはわかるけど無茶だけはしないで」

『……了解、でも、早くしてください。アスカ一人じゃ、無理よ」

「わかってるわ、作業、急がせて」

「はい!!」

 

 リツコとレイの会話が終わると、ミサトは射出カタパルトに固定された弐号機を確認し、号令する。

 

「発進!!」

 

 弐号機が射出される。

 ジオフロントに降り立った弐号機の周りに次々と武装コンテナが設置される。

 無反動砲(バズーカ)、パレットライフル、ガトリング、トライデント、カウンターソードなどの武装が積み上がっていた。

 アスカはガトリングを持ち、目を閉じながら一度深呼吸をする。

 今までよりも機体の反応も、シンクロしたときの感触も違う。

 エヴァと一体になったとアスカは思う。

 そして、シンジのオカアサンと言った言葉の意味もわかった。

 初めてエヴァに乗り込んだとき、温かい気持ちになったのは間違いじゃなかった。

 ナニカの勘違いと長年否定してきたが、違った。エヴァは、ママはずっと自分を守っていてくれたのだ。

 それがわかって、アスカの心は晴れた。

 疑念はある、なぜシンジが知っていたのかもあるし、エヴァとはなんなのか考えるが、今は目の前の使徒を倒すべく集中する。

 

『使徒、ジオフロント内に侵入!!』

 

 日向の声が響き、頭上の第3新東京市の建物が使徒の攻撃に耐えきれず次々と落下していく。

 地下でこの有様なのだ。地上がどうなっているか、アスカは考えるが再び集中する。

 黒煙が上がる天井から、使徒がゆっくりと降下してくる。

 アスカはガトリングを斉射した。

 

「ッ!!! 距離が遠い!!」

 

 アスカは舌打ちをする。

 440mmの弾丸を撃ち出す6門の砲身はほとんどは使徒に向かっていくが、強力なATフィールドにより弾丸が弾かれるか受け止められていく。

 ATフィールドを中和しているが、弐号機単体の中和ではATフィールドの弱体化は不可能に近いのだった。

 それどころかいくつものATフィールドを展開し、弐号機を押しつぶそうとしていた。

 その戦い方が、アスカの癇に障った。

 

「シンジみたいなことをっ!!」

 

 この場に本人がいれば、あっちのほうが本家だゾ、と言うかもしれない。

 だがアスカは、ガトリングを放り投げるとトライデントを右手に持ち、左手にカウンターソードを持つと姿勢を低くして突撃する。

 

「こんちくしょぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 十分速度を付けると飛び上がり、逆手に持った二本の武器を突き立てる。

 巨大なATフィールドが展開されて、受け止められる。

 だがアスカはそれを織り込み済みだった。

 

「ATフィールドを扱うのは、そっちだけじゃないのよっ!!!」

 

 トライデントとカウンターソードの刃先に、ATフィールドを展開する。

 切れ味が増した二本の武器が徐々に、敵のATフィールドを切り裂いていく。

 だがやられっぱなしではない使徒は、弐号機を見つめて瞳を輝かせる。

 アスカは躊躇なく、武器から手を離すと足元にATフィールドを張ってその場から跳躍して逃げる。

 直後、使徒の目が光り、天井に着弾すると紫色の光と爆風が広範囲に広がる。

 跳躍した弐号機は、地面を削りながら武装コンテナがある場所まで戻ると予備のトライデントを持つと急いでその場からまた跳躍する。

 弐号機の頭上に多重展開されたATフィールドが落ちてきた。

 アスカはまた舌打ちをする。

 

「防御だけに使っときなさいよ!!」

 

 アスカはそう言って、こちらに向かってくる多重展開されたATフィールドに、トライデントを突き出す。

 ATフィールドを纏わせているが、こちらは一枚、数の差で弐号機が吹き飛ばされる。

 ゴロゴロと転がっていく弐号機に、ミサトは叫ぶ。

 

『アスカっ!!』

「平気、それよりも零号機はまだ!?」

『あと十分!!』

 

 遅い!!! と叫ぶ間もなく、弐号機のATフィールドに使徒のATフィールド攻撃が干渉する。

 強い拒絶の力が弐号機を襲うが弐号機の4つの目が光り輝き、同等のATフィールドを展開して押し止める。

 周辺ではATフィールド同士のぶつかり合いで、地面が砕け散る。

 

「ッ!!!! ママッ!!!」

 

 弐号機は一旦ATフィールドを切ると、地を這うように体勢を低くすると使徒のATフィールドの下をくぐり抜け、使徒に肉薄する。

 手に持ったトライデントを突き出し、両肩のニードルガンを射出する。

 貫通力が高いこの二つならばとアスカは思うが、この超至近距離でもATフィールドを完全に破れない。

 

『そんなっ』

『ATフィールドが強すぎる、エヴァ一機では中和しきれないわ!! 引きなさいっ! アスカ!!』

「……シンジなら、引かないわっ!!」

 

 アスカはそう言うとトライデントをさらに強く突き出す。

 ATフィールドが割れていく。

 一枚、二枚、三枚……だがそこまでだった。

 使徒は帯状の腕をドラム缶状に丸めると、それを勢いよく伸ばす。

 

「しま――――」

『アスカッ!!!』

 

 ミサトの絶叫が通信越しに響く。

 とっさに後ろに避けたが、弐号機の右腕と左脇が抉れる。

 クルクルと回転しながら宙を舞う右腕は、トライデントを持ったまま湖へと落下する。

 弐号機からおびただしい量の血が噴き出す。

 

「うぅっ、うぁあああ……」

『アスカッ!! 全神経接続を――――「ダメよ!!!」アスカっ!?』

 

 ミサトはこれ以上の戦闘続行は危険と判断し、アスカと弐号機のシンクロをカットしようとする。

 だがそれを拒絶したのは他ならぬアスカだった。

 高いシンクロのため、引き裂かれた右腕と左脇に激痛が走っていく。

 だがこの程度どうしたっ!!

 

「アイツは、シンジはこれ以上の痛みに耐えながら戦ったんでしょ。エリートである私が、止まれないのよぉおおおおおおおお!!!」

『アスカ……』

 

 歯を食い縛りながら、弐号機は突撃する。

 だがそれを嘲笑うかのように、再び使徒はドラム缶状に腕を丸める。

 そしてそれを突き出した。

 ミサトたちは弐号機がやられると思っていたが、そうはならなかった。

 横から突撃した零号機が、弐号機の体を抱えると横に跳ぶ。だが背中に使徒の攻撃があたり、零号機の背中から血が吹き出す。

 

「あぐぅっ!?」

「綾波っ!?」

『レイ!! 零号機の修復状態は!?』

『五分で仕上げました、いけますぜ!!』

 

 ミサトは状況確認のために、整備班に連絡するとサムズアップしながら応える零号機整備班がいた。

 

『ッ……ありがとう。レイ、動ける!?』

「なん、とかっ……くっ」

「バカッ!! 私を庇わなければあんたは無傷で戦闘できてたのに」

 

 左肩を貸しながら零号機を引き上げたアスカはぶっきらぼうに言う。

 綾波は痛みに耐えながら言う。

 

「代わりは、いるもの。それに碇さんも三上くんもいないなら頑張らないと、ね」

「バカッ!! 本当にバカよ!!」

 

 アスカは吐き捨てるが、綾波の覚悟を受け取り、零号機を肩から外す。

 戦力差こそ1:2だが、こちらは中破1、小破1と追い込まれている。

 どうにか敵のATフィールドを破らなければ勝ち目はない。

 どうする? どうするのアスカとアスカは自問自答をする。

 ATフィールド攻撃もダメ、射撃武器も、近接武器もダメ、零号機との中和作業もダメだろう、中和している間に団子姉妹になってしまう。

 

「……ちき、しょう!」

『お困りかにゃ~?』

 

 操縦桿を叩いたアスカの通信に、誰かが割り込む。

 聞き覚えがない声に、アスカと発令所の人員は困惑する。

 

『誰!? こんなときの秘匿回線に割り込むなんて!!』

『誰でもない誰かにゃ~。まぁ、それはいい、お姫様、一つだけ事態を打開できる方法があるって言ったらどうする?』

 

 バカね? と普段のアスカなら聞き入れなかっただろうが、今の状況を打開できる方法があるなら、縋り付きたい気分であった、アスカは耳を貸してしまった。

 

「こんな状況に割り込むなら、あるんでしょうね」

『もちのろん。モード反転、裏コード、ザ・ビースト……ヒトを捨てる覚悟があるならやってみ』

『何を言ってるの!? そんな機能はないわ!! アスカ!! 与太ごとよ!!』

 

 通信相手の言葉を否定するリツコだったが、アスカは一瞬目を閉じて、エヴァ(ママ)に語りかける。

 

「ママ……いい、かな?」

 

 弐号機の体が震える。

 『彼』を通して知っていた弐号機、だがそこまでして勝てる見込みは低い。

 それに娘がどうなるか、母親はそれが心配だった。

 

「ママ、私ね。好きな人ができたの……そいつがさ、必死で守ろうとしたもの、守りたいんだ」

 

 アスカは優しい笑みでエヴァに語りかける。

 NERVの職員、第3新東京市、学校の友達……そして病室で眠っているアイツもアスカにとっては守るべき対象だった。

 こんな気分になるなんてねとアスカは自分を笑う。

 病室で寝ているアイツは嫌いだ、殺したいほど嫌いだ。

 けれども好きな人が最期まで守ろうとした大切なものだ。

 だから守ってみせる、だって私は――――

 

「エリートパイロット、惣流・アスカ・ラングレーだから……だから、ママ、力貸して」

 

 弐号機は顎を少し引き、残った左腕でエントリープラグがある位置を撫でる。

 その時、使徒が目を光らせて光線を発射しようとしていた。

 状況を見守っていた綾波が叫ぶ。

 

「アスカ!!!」

「……裏コード、ザ・ビースト!!!」

 

 弐号機の目が光り輝き、傍にいる零号機を突き飛ばすと自身もその場から跳躍する。

 その間に弐号機に変化が起きていた。

 肩と背中、それに腰から正体不明の突起物が出現する。

 肩のウェポンラックも兼ねている装甲が弾け飛び、背中の左右に五本、腰にかけてから更に四本の突起物を出した弐号機は悶えるように地面に転がりながら、両手をついて使徒を睨みつける。

 それはヒトではなく、獣であった。

 

『に、弐号機の形態が変化。プラグ内がモニター出来ません!!』

『辞めなさいアスカ!! そのまま進めば戻れなくなるわ!!!』

 

 マヤの報告に、リツコは叫ぶ。

 プラグ深度マイナス、エヴァに近づき精神汚染も厭わぬアスカの行動に、リツコはシンジの姿を重ねる。

 また、失うのかとリツコの体が震えるが、ミサトは厳しい顔で宣言する。

 

『アスカ、やれるのよね?』

『ミサトッ!!』

『……零号機は弐号機のフォローを』

 

 ぎゅうううううっとジャケットを引きちぎらんばかりに握りしめるミサトは唇から血が出ていた。

 見ていることしか、出来ない口惜しさがミサトを襲うが、指揮官としてミサトは前だけを向く。

 

「ぎぃっ……あぐぅっ……マ、マ、辛い、よね? で、も、私頑張るから、ママも頑張って!」

 

 真っ赤に染まったエントリープラグ内でアスカは身を悶えさせる。

 痛みではない、溢れんばかりの戦闘意欲がアスカの感情を激しく高揚させているのだ。

 ヒトではなく獣として、目の前の獲物を狩りたい、そんな本能的な欲求に支配されようとするアスカは、感情をなんとかコントロールしようとする。

 この感情に、この衝動に塗り潰されてはいけない、そう堪えているとき、ある顔が見えた。

 脳裏にシンジの笑顔が浮かぶ。

 誰が、奪った……?

 使徒だ。

 人類の、ワタシノテキダ!!

 コロセ!!!

 コロセ!!!!

 コロセ!!!!!!

 

「ウァアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!」

 

 アスカは本能のまま叫ぶ。

 弐号機の顎の拘束が弾け飛び、獣の口が開放される。

 それと同時にリミッターも兼ねているのか、アンビリカルケーブルが自動的に脱着された。

 ヒトとしての行動をせず、荒れ狂う感情のまま駆け出した弐号機は地面を砕きながら使徒へと飛びかかった。

 先程まで強固だった使徒のATフィールドが紙障子のように砕けていく。

 

『凄い……』

 

 だが幾重にも重ねたATフィールドで弐号機を受け止める。

 弐号機は左腕を振りかぶる。指先にはまるで爪のように形状を変化させたATフィールドが展開されていた。

 

「ウラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 振り落とすと五つの軌跡が使徒のATフィールドを切り裂いて、使徒本体に届く。

 だが浅い。薄皮が削れた程度であるが攻撃が届いたということに、発令所のメンバーからおぉっ! と歓声が上がる。

 そしてその隙を見逃すほど、綾波は甘くなかった。

 

「アスカ!! 一度下がって!!」

 

 両手で持ったパレットライフルが火を吹く。

 弐号機は体を丸めて、回転しながら後方へと下がる。

 使徒のATフィールドの再展開が間に合わず、パレットライフルの弾丸が使徒本体へと着弾し、使徒が身じろぎをする。

 

「アスカッ!!」

「わかってる、ちゅうのぉおおおおおっ!!」

 

 綾波が叫ぶと、パレットライフルの射撃が一旦止まる。

 直後に弐号機が飛びかかり、使徒にマウントポジションを取ろうとする。

 だが使徒はATフィールドを再展開して、弐号機を止める。

 弐号機は再び左腕にATフィールドを集中させようとするが、使徒の目が輝き、光線が弐号機に直撃する。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「『アスカッ!!』」

 

 ミサトと綾波の声が重なる。

 腹部に直撃した弐号機を中心に爆発が起き、弐号機が地面へと転がっていく。

 綾波がカバーするようにパレットライフルを斉射するが全てATフィールドに阻まれる。

 弐号機は起き上がろうとするが、腹部のダメージと先程のダメージも相まって体に力が入らない。

 その状況を見て、ミサトは日向に聞く。

 

「初号機はまだなの!?」

「状況不――――いえ!! 初号機、起動しています!!」

 

 日向の言葉に、発令所がどよめく。

 初号機が起動している、つまりパイロットが乗ったということだろう。

 だが今のパイロットは――――。

 そこまで思考したミサトの耳に、レイの通信が入る。

 

『待たせました。碇レイ、発進します!!』

「レイちゃん……お願いするわ! 出撃準備!!」

「了解、第一ロックボルト解除!」

 

 マヤがキーボードを打ち込み、初号機を固定しているロックを外していく。

 モニターではアンビリカルブリッジが移動し、射出口まで移動していく。

 

「安全装置を解除!!」

「外部電源接続異常なし!」

「進路クリア、オールグリーン。いけます!」

 

 オペレーターたちがミサトの方を向く。

 ミサトはモニターで、戦っている零号機と必死に動こうとしている弐号機を見る。

 初号機一機が参加してどうにかなるとは、ミサトは楽観的にはなれない。

 だがあの状態から起き上がって戦おうとしている今のレイに、ミサトは賭けた。

 息を吸って、ミサトは叫ぶ。

 

「エヴァンゲリオン初号機、発進!!」

 

 




新劇のゼルエルくん強すぎワロエナイ。映画見ながら「あっ、こいつやべーわ」と再確認した模様。アスカばっか書いてるけど、次回はレイちゃん活躍するから見とけよ見とけよー……主人公? 全力で使徒に抗ってるからもうちょっと待ってて。食べ終わったら参加するから。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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