中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、ぶん殴られてテンションガタ落ち

毎回毎回、感想で気付けることがあってすげえなぁと思う今日のこのゴロ。
ちなみに作者はノリで書いているので、伏線とか一切考えて、ないです(正直)
このまま一週間くらい毎日更新続けたいけど、仕事もあるんで寝落ちがね(体力不足)
あとね、話のストック切れた(絶望)


テンション低いまま戦ったら予想外のことがあってズタボロにされた件について

 NERV本部に急行した俺は、プラグスーツに着替えて早々にエントリープラグ内で待機していた。

 作戦会議? そんなものありませんが何か?

 ぶっちゃけ作戦会議しようにも、相手の出方がわからないし、エヴァのATフィールド中和が大前提の戦いだ……ただ次の使徒、このノリで行くと機体大破するからどうにかせんとなぁ。

 っと、アカン、意識集中しないと。

 

「ミサトさん、そっちの様子はどうですか?」

『今、領海内に入って、国連軍が税金の無駄遣いをしてるわ』

『全くね、その予算こっちに寄越してくれればいいのに』

「使わなきゃ困る人たちがいるんでしょ、エヴァもだけど」

 

 俺の一言に赤木さんがギャーギャーなんか言ってるが、実際俺も無駄だと思っている。

 現場の軍人さんたちは決死の覚悟だろうけど、ATフィールドを中和、もしくは貫通させないと使徒にはなんらダメージが行かない。

 通常兵器で足止めしようにも、無駄の一言なのだ。

 …………考えない、あの中で死んでる人がいるとか考えない。

 

『シンジ、聞こえる? 政府の要請でエヴァンゲリオンの出撃が許可されたよ』

「……レイがオペレーターとかびっくらだわ」

 

 サブパイロットのレイは、出撃の際には俺の専属オペレーターとしてサポートしてくれることになった。

 まぁ、俺が武器コンテナの場所とかまーったく覚えられないから、業を煮やした赤木さんが付けるように、ミサトさんに直談判した、ってのが本当のところだが。

 レイが見てるならかっこ悪いところは見せられねえな。

 

『頑張ってね、無茶はしないで』

「んっ、じゃあミサトさん、気合の入る出撃点呼、お願いします!」

『任されたわ。では総員出撃準備! 初号機は地上に射出後、火器で目標を撃破して』

 

 脳内でいつもの出撃BGMをかけるが、イマイチ気分が乗らない。

 ……トウジのことや今までの人々の会話が頭の中でリピートされる。

 あぁくっそ、シンジくんほんと君ってすげえや。こんな精神状態でシンクロ率維持して戦ってたんだよな。

 

『シンクロ率13%……大丈夫でしょうか?』

『立って銃を撃つくらいはできるわ。シンジくん、私との特訓の成果見せて頂戴』

「目標をセンターに入れて、スイッチ……次はもうちょいマシなもんでお願い――――」

『発進!』

「だから最後まで言わせてぇっ!!!」

 

 叫びながら、プラグスーツのおかげでマシになったGに歯を食いしばる。

 訓練で何度もやったからな!! おかげで大抵の絶叫マシーンには大丈夫だろう、多分な。

 今回は原作のようにコンテナ型のビル内に、到着し一気にハッチが上がる。

 できるできる、原作のようにやればいいだけだ、そうすれば勝てる。

 

「ッ!!!」

 

 勢いよく飛び出してトリガーを引く。

 爆炎が上がり、使徒がその中に隠れてしまう。しまった、指切りしようと思ってたのに無我夢中で……。

 

『バカ、爆炎で敵が見えないッ!!』

「だったら三点バーストに……おっぶえっ!?」

 

 ミサトさんの悪態に反論しようとしたとき、光り輝く触手が迫ってきていたので後ろに飛び下がる。

 爆炎で見えないが、触手が見える場所に射撃を続ける。

 あぁもう!! 実戦で指切りできる軍人さんのなんと凄いことか!!

 ただどれだけ撃っても効いてる気がしねえ!!

 

「目標をセンターに入れてスイッチしても倒せないんですがぁ!?」

『シンジ落ち着いて、ATフィールドを中和してるから効いてないわけじゃない……ミサトさんっ!』

『ちょっち待って……シンジくん、訓練ではやってなかったでしょうけど近くの兵装コンテナにガトリングを送るわ。今持ってるライフルを破棄してもいいから、それを受け取って撃って撃って撃ちまくって頂戴』

「ゴリ押しぃ!? 嫌いじゃないけどさ!!」

 

 後退しながらライフルを撃ちまくるが、相手も見えないのかやたらめったらに触手を振り回している。

 原作で効いていないように見えたが、アレはシンジくんが怯えてしまって攻撃を中断してしまったせいらしい。

 確かに触手の速度も切れ味もヤバイが……オイオイ、ビルがバターみたいに切られまくってるよ。

 

『シンジ! 隣のビルに送ったよ』

「ナイスゥ!!」

 

 ちょうどパレットライフルの弾丸が切れた瞬間、移動した先の兵装ビルが開き、ゴツくて黒光りしたガトリングがあった。

 パレットライフルを使徒に投げつけて、ガトリングを構える。

 

『シンジくん、基本的にライフルと同じよ……遠慮はいらないわ、ぶっ放しなさい』

 

 赤木さんの言葉に返事をせず、トリガーを引くとすさまじい速度で弾丸が使徒の体に着弾する。爆炎で再び使徒の体が見えなくなるが、撃って撃ちまくるだけだ。

 時折触手が飛んでくるが、基本後退していればなんとかなる。ただ後退しすぎるとATフィールドが中和できないのでレイや他のオペレーターの指示を聞きながら撃ちまくる。

 トリガーハッピー状態だったのだろう。銃が撃つ感覚だけが、俺を支配する。

 使徒の動きが鈍くなっていた。このままなら勝てる、そんな気の緩みがあっただろうか、エントリープラグ内に表示された警告に気づけたのは。

 最初はエヴァか、ガトリングの故障でも起きたのかとチラ見しただけだったが、違う表示で思わず二度見し、絶句した。

 

「なん、で?」

 

 トリガーにかかっていた指が自然と離れた。

 どうして、なんでという疑問が俺を支配する。

 

『シンジ!? 嘘っ、ミサトさん!! 民間人が足元に!』

『なぁんですって!?』

 

 ビルの一角、その物陰に人が居た。

 小さな男の子と女の子……原作にねえぞこんな展開っ!!

 

「ミサトさん、回収できますか!?」

『無茶言わないで!! あぁもう!! 保安部の連中全員退避したって言ったじゃないっ!!』

 

 ミサトさんのヒステリックな声を皮切りに、司令室にも動揺が広がる。

 どうする、このまま後退したら間違いなく巻き込まれる。そしたら……っっ!!

 触手の攻撃がビルに当たり、瓦礫が子どもたちの上に降り注ぐ。

 

「間に合えよっ!!」

『シンジ!?』

 

 武器を投げ捨て、エヴァで子どもたちを包み込むようにして守る。

 瓦礫が体に落ちる感触がしたのち、焼けるような熱さを感じる。

 そらそうだ、敵が無防備に背中を向けているとか攻撃してくれと言ってるようなもんだからな。

 

「ッ!! ぐぅううううっ!!」

 

 かろうじて展開しているATフィールドのおかげで、ダメージを軽減してるがこのままやられ続けたらエヴァの装甲、いいや拘束具が持たない。

 だが反撃しようにも、触手の攻撃が激しいのと方向転換をしたら子どもたちがどうなるか。

 苦痛に耐えながら、俺はこの状況をどうするか考える。

 無線では怒号が飛び交っていたが、硬い声のミサトさんの声だけは良く聞こえた。

 

『シンジっ!! ミサトさん!!』

『わかってる!! シンジくん……見捨てなさい』

 

 その一言に背筋が寒くなるのを感じた。

 

「馬鹿なこと言わないでください、ミサトさん!!」

『けどそのままだとエヴァが持たない! ……割り切ってとは言わない、恨んでくれても構わないわ。でもエヴァだけは失うわけにはいかないの』

 

 ミサトさんの発言に、怒鳴ろうと思ったが止めた。

 食いしばるような声と無線から聞こえる息を呑む声で、どういう状況かわかる。

 そう、エヴァを失うわけにはいかない。特に初号機は絶対に。

 俺は息を吸って、吐いて、一瞬の隙をついて体を前に向けて振りかぶろうとしていた触手を掴む。

 

「ぐ、ぐぅううううううううううっ!!!!!」

『接触面融解っ! シンジ無茶だよ!!』

『シンジくん!! 命令を聞きなさいっ!!』

「きょ、ひするぅううううううう!! あと、ごめんなさい!!」

 

 腕に激痛が走りながら、俺は操縦桿から手を離し、プラグ内のスイッチを押す。

 緊急用のエントリープラグ排出スイッチだ。漫画版で、シンジくんが使っていたからあるか探してたら見つけたのだ、何に使うのかわからんが、こういうとき用ではないのは確かだ。

 

『まさか、エントリープラグに乗せる気!? 止めなさい! あなたのシンクロ率がさらに低くなったら』

「こうするしかねえだろ!! 聞こえるか坊主、お嬢ちゃん!! 今からロープを垂らす、死にたくなかったら早くつかめ!!!」

『あぁもう!! 勝手な行動しないで! レイちゃん! 申し訳ないけど最短の回収地点を算出して!! シンジくん! 二人を回収したら撤退よ! いいわね!』

 

 しばらくすると子どもたちがエントリープラグ内に入ってくる。

 二人共LCLに驚いて暴れるが、元気あるならヨシ!

 

「とりあえず回収成功っと、あと、うわぁああああああっっ!!???」

 

 いつの間にか足に巻き付いていた触手が、エヴァの体勢を崩していた。

 く、くそ、ここは原作通りかよ!? 魚の釣りのように引き上げられたエヴァを使徒は振り回す。

 

「こわいよぉおおおお」

「お兄ちゃんが一番怖いんだぞ!!」

 

 少女が泣きながら言うが、マジで一番怖いし、痛い思いしてんのは俺なんだよぉ!! ああああああああああああ、足いたぁあああああああああ!!!

 

『脚部接触面融解!』

『シンジッ!! ……まずい、ミサトさん、アンビリカルケーブルの耐久力が!!』

『もうめちゃくちゃよぉ!!』

 

 こっちが言いたいわぁああああ!!! と心のなかで叫びながらブンブンと振り回されて投げ飛ばされる。

 その時、ブチィという音とともに背中のアンビリカルケーブルが引きちぎれた。

 無理もないと言うかアレだけ触手に攻撃されて切れなかったアンビリカルケーブルくんに感謝するが、どんだけの馬鹿力で投げられたのか、エヴァは第3新東京市の郊外の山に落下する。

 叩きつけられた衝撃がシンクロとして、背中に伝わりたまらず血を吐き出す。

 起き上がろうとするが、上手くエヴァが動いてくれない。

 

『神経パルスにエラーが発生!』

『当たり前よ! ただでさえ低いシンクロ率に、異物2つ抱えているのよ、機能停止しないのが奇跡よ!』

『言ってもしょうがない! シンジくん、なんとか離脱して頂戴、そこじゃ回収できないわ』

『残り時間4分20秒! シンジ、そこから一番近い回収場所はね――――』

「……すまん、そりゃ無理だわ」

 

 冷や汗を垂らしながら、俺は奇跡的に指の間で縮こまっている、トウジとメガネくんを視認する。

 こういうところで原作通りなのは、ホントずるいと思います。

 

『シンジくんたちのクラスメイトぉ!? 保安部の連中、ほんとなにやってんのよ!!』

「……聞こえるか、そこの二人。死にたくなきゃ絶対にそこから動くなよ!!!」

 

 俺はできる限り早くエヴァを起き上がらせて、左肩からプログレッシブナイフを取り出す。

 流石に四人も乗せたら今のシンクロ率じゃどうしようもない。いざとなれば暴走って手もあるが……またやってくれる保証もない。

 なら一か八か、いいややるしかない。

 

『シンジ、何する気!? 無茶だよ、あと3分しかないっ!!』

「坊主、嬢ちゃん、あとでしこたま怒られるだろうが、今は祈ってくれ……初号機、突貫しますっ!!」

『ちょ、ちょっとシンジくん!? あぁもう!!』

 

 ナイフを構えながら、その場で跳躍する。

 機体は重いがなんとか飛び上がり使徒の上を取った。

 

「ふわふわ浮いてんじゃねえええええ!!!」

 

 プログレッシブナイフを使徒の体に突き立てると、痛覚があるのか体をくねらせて地面に墜落する。

 バタバタと触手を振り回すが、やぶれかぶれのためナイフを持っていない左手で両方とも掴む。

 じゅーっと音とともに激痛が走るがもう知るか。

 

「ぐ、ぐあぁああ、ぐぅうううううううっっ!!!!」

『左腕接触面、融解速度が急上昇してます!! このままじゃ保たない!』

『シンジ、あと1分!』

「死ねよやぁあああああああああ!!!」

 

 そのまま足で、頭? 頭なのかわからないがその部分を蹴り上げて、コアを見える位置に持ってくる。

 そしてナイフを力強く握りしめ、コアに突き刺す。

 火花が飛び散り、コアに亀裂が入るが使徒は動き続けていた。

 

『残り30秒!!』

「早く、早く早く早く早く早く早く早く早く早くッ!!」

『お願い、早くッ!!』

 

 左腕の感覚が無くなってきた。

 だがここで離せば原作のように串刺しだ……どっちがいいかって言ったら左手が溶けるほうが遥かにマシだな!

 レイのカウントダウンボイスだけが耳に聞こえる。

 

『15秒! 間に合わない……?』

「押して駄目ならぁ――――」

 

 ナイフを一旦手から離し、体勢を低くする。

 

『残り5秒ッ!!!!』

「さらに押し通せぇえええええええ!!!」

 

 飛び上がり、ナイフめがけて膝蹴りをかます。

 奥深くに入っていたナイフだったが、膝蹴りの衝撃でさらに奥に入り何かが砕ける音が響き――――エントリープラグ内の照明が一気に暗くなる。

 何も音が聞こえない……痛みも感じなくなった。

 暫くしても衝撃もなにもないので、ゆっくりと操縦桿から手を離し、息を吐く。

 

「なんとか……なってねえよなぁ」

「あ、あの……」

 

 気が重くなる。

 原作を知ってるからって同じ展開になる……そんな甘い話はないらしい。

 オドオドと俺に話しかけてきた少年の頭を掴み、げんこつを落とす。

 

「い、ってぇ……」

「生きてる痛みだ、嬢ちゃんも来い、痛いだろうが俺からの叱りだ」

 

 ビクリと体を震わせる少女だったが、目をつぶりながらギュッと口をしぼめていた。

 いい覚悟だ、だからこそ手加減抜きでげんこつを落とした。

 

「痛い!」

「兄ちゃんもクソ痛いわ……なんであそこにいたんだ?」

「その、えっと……ロボット、見たくて……」

「良かったな、実際見れたし、乗れたな。なんていうかバカタレ」

 

 ヒッと怯えた声をあげる子どもたちに心が痛むが、心を鬼にして言う。

 

「助けられたのは偶然だ、死ぬ確率のほうが高かった、ロボットみたいならアニメだけにしとけ。現実は瓦礫から都合よく守ってくれないぞ」

「……守ってくれたじゃん」

「死ぬ確率の方が高かった!! ……いいか、お前らが死んだら親御さんが悲しむ。そうならないように戦うのが俺の役目だ」

 

 ヒリヒリと痛む左腕を抑えながら、俺は説教を続ける。

 子どもたちは何も言わないが……反省してりゃいい。

 

「いいか? 周りの子達にも言っとけ、俺とこのロボットが絶対にお前らを守るからおとなしくシェルターに籠もってろ、いいな。泣くぞ、すぐ泣くぞ、ホラ泣くぞ、絶対に泣くぞ、俺はあんま強くないんだ……人が死ぬところは見たくない」

 

 嘘偽りない言葉を俺は子どもたちにぶつける。

 二人共言葉が出ないようだったが、口をモゴモゴさせて小さい声でこういった。

 

「「ご、ごめんなさい……」」

「おう、これからこわーいお兄さんたちと親御さんたちからの説教が待ってる……だから言っとく、お前らを助けられて、本当に良かったよ」

 

 俺は二人を抱きしめてそういう。

 本当に、良かった……もしも助けられていなかったら、俺は……。

 その後、救出班が来るまで俺は子どもたちを抱きしめ続けた。助けた命を確かめるように、自分が助けたというちっぽけな達成感を噛みしめるように。

 

 

 

○○○

 

 

 

 妹が怪我をしたのはあいつがヘボパイロットだから、そう鈴原トウジは思っていた。

 それを確かめるため、親友である相田ケンスケの誘いに乗って、シェルターから抜け出し、その戦いを見て……考えを改めた。

 

「フルバーストでぶっ放すやつがいるかよ!? あぁでも避けてるし、的確に当ててる。やるじゃん」

「ケッ、あないな戦い方するから巻き込むんや」

 

 ケンスケはエヴァの戦いを褒めるが、トウジは認めなかった。

 だがエヴァと使徒の戦いを見て、とてもじゃないが足元なんて見られない、そんな考えが頭をよぎるが振りかぶってその考えを飛ばす。

 

(いいや、あいつのせいや! あいつがもっとやってれば妹は……)

「って、なにやってんだよぉ!?」

 

 その言葉に、トウジは顔を上げるとビルの一角にうずくまったエヴァが、触手に何度も叩かれている場面だった。

 

「なんやあいつ! 怖くなったんか!」

「違う、なんかいきなり武器を放り投げて……あぁっ!?? お、オイ、トウジコレ見ろよ!!」

 

 素っ頓狂な声を上げてケンスケが、ビデオカメラをトウジに押し付ける。

 倍率がかかっているようで、何がなんだかわからないとトウジは思う。

 

「あのロボットの手元見てみろよ、そりゃ動けないに決まってる」

「手元って……嘘やろ!?」

 

 エヴァの手元を見たトウジも声を上げる。

 妹と同じくらいの男の子と女の子が泣きながら身を寄せ合っていた。

 何故そんなところにという感想が思い浮かぶが、必死に二人を守るエヴァを見てふつふつと怒りが燃えてくる。

 

「アイツっ……妹は助けんで、なしてあの子達は助けてるんや!!!」

 

 理不尽なのは自分でもわかっていた、だがそれでもなんで助けてくれなかったんだという思いを抱くトウジは何も悪くはない。

 ケンスケもそれがわかっているからか、何も言わずにビデオカメラをトウジの手から離す。

 そうしているうちに、素早く体勢を変えたエヴァが触手を掴むと背中のナニカが動き、棒状のものが突き出る。

 

「救助する気か? この状況でやるじゃん」

「今度学校に来たらしばき倒し……やばいで!!」

 

 一瞬の隙をつかれ、足を掴まれたエヴァ。

 そのまま投げ飛ばされるが、落下地点は二人の方向で……。

 

「「ぎゃああああああああああああああああああっ!??????」」

 

 叫びながら咄嗟に体を庇った二人は、奇跡的にエヴァの指の間に入る形で生きていた。

 衝撃でクラクラする頭と死ぬかもしれない恐怖に身を震わせるトウジは、紫色の巨人を見てこう思った。

 

(アイツ、こないな恐怖の中で戦ってたんか?)

 

 ただ見ているだけ、巻き込まれるだけで足が震え、恐怖で涙を流してしまった自分。

 現在進行系で化け物と戦っている転入生、それを比べてしまったのだ。

 

『……聞こえるか、そこの二人。死にたくなきゃ絶対にそこから動くなよ!!!』

 

 外部スピーカーからそんな声が聞こえ、エヴァは立ち上がりナイフを取り出す。

 もはや、二人は言葉も出さずにそれを見ているだけだった。

 

『坊主、嬢ちゃん、あとでしこたま怒られるだろうが、今は祈ってくれ……初号機、突貫しますっ!!』

 

 外部スピーカーが入れっぱなしになっていたのか、周囲にシンジの声が響き渡る。

 恐怖を感じさせない勇ましい声に、トウジは呆然とエヴァを見ていた。

 

(あいつ、なんで立ち向かうんや……怖いのに)

 

 トウジはそう思っていると、エヴァは跳躍し、使徒にナイフを突き刺してその巨体が地面に落ちた。

 そして二本の触手を掴み、頭部分を蹴り飛ばした。

 

『ぐ、ぐあぁああ、ぐぅうううううううっっ!!!!』

 

 苦悶の声が聞こえる。

 トウジはへたり込みながら、蹴り飛ばしたエヴァが赤い球体にナイフを刺すのを見て、思わず叫んでいた。

 

「がん、ば……頑張れ転入生!! もうちょいや!!!」

「ト、ウジ……そ、そうだよ、頑張れー!! 後少しだ!!!」

 

 トウジはシンジを許す事はできない、だが今無理しているのは自分たちがここにいたからというのは薄々気づいていた。そんな羞恥心と守ってくれたという感謝の気持ちで、二人はエヴァを応援していた。

 激しく火花が散るが決定打には至っていない。

 

『押して駄目ならぁ――――さらに押し通せぇえええええええ!!!』

 

 叫び声とともにナイフめがけて膝蹴りをかましたエヴァ。赤い球体が大きくひび割れ、そこから血を連想する赤い液体が噴き出し、使徒の体が崩れていく。

 それと同時に、エヴァもまるで電池の切れた人形のように動きを止めると地面に轟音を立てながら落下する。

 

「た、倒したんか?」

「わ、わからないけど……でもアイツ崩れちゃったし、多分倒した、のかな?」

 

 現実味がない戦いが終わったと自覚した二人は、息を大きく吐き地面に倒れ込む。

 命が助かったという安心感と邪魔をしたという羞恥心、そしてもやもやする感情にトウジは苛まれる。

 

(助けてくれたんや……ワイを)

 

 感謝の気持ちが湧き上がるが、妹のことを思うと複雑な気持ちになる。

 

「なぁ、トウジ……見ただろ、転入生の戦い」

「ん? あぁ、この目で見たで」

「アイツを庇うってわけじゃないけど、戦い方が素人のそれなんだよ……銃の撃ち方も、救助だってそうだ、戦いの最中に操縦席を空けるとかありえない」

「何が言いたいのか、さっぱりわからんわ」

「つまり、アイツ戦いに関して素人なんだよ、多分」

 

 推測だけどね、と言うケンスケにトウジは返答もせず青空を見上げる。

 妹を傷つけたのは間違いない、シンジも認めていた。だが、実際に戦いを見て、声を聞いてトウジはシンジを恨むことに疑問を持ってしまっていた。

 

(あないな怖い思いして、戦う、オマケに素人が……? なんでや)

 

 わからない、わからないがこのままでいいのかとトウジは思う。

 このまま恨みを押し付けて、暴力を振るって、それで自分はのうのうと暮らしている、本当にそれでいいのか?

 

『兄ちゃん、あのロボットのパイロットさんに会うことがあったら言ってほしいことあるんよ』

『なんや、恨み言なら兄ちゃん幾らでも言ったるで』

『うぅん、ありがとうって! ウチらを守ってくれてありがとうって言ってほしいんよ、ええやろ兄ちゃん』

 

 妹との会話を思い出す。

 頭を打って、未だに入院している妹。

 笑っていた妹が理解できなくて、一番つらいのは妹だと思って……違う、現実に耐えきれなかった自分が憂さ晴らしに殴っただけなのだ。

 妹はただの建前だった。

 

『後悔するさ、あぁすっごい後悔したよお前の話聞いて、けどどうしろってんだ俺に!!!』

 

 あのときの泣きそうな転入生、シンジの顔を見てその後殴らずに去ったのは自分の羞恥心に気づいて、それを悟られまいと逃げたからだ。

 ……あぁ、自分は。

 

「情けなくて、腹立つわ」

「トウジ?」

 

 ケンスケの声に、トウジは返事はしない。

 だがこの後どうするかだけは決まった。

 男同士なら腹割って話す、そして謝る、そうするしかないと思った。

 

 その後、二人はNERV職員、学校の先生、親からこっぴどく叱られたのであった。

 

 




流石に原作と一緒にしたらトウジくん殺されかねないので、イレギュラー要素を。
実際、トウジとケンスケが抜け出せたし、割とシェルターってガバガバなところあるんじゃと思ったから。
あとレイちゃんがトウジを消しかねないという感想が多かったけど、現時点じゃまだそこまでやろうとする気はないから安心しろって!(やらないとは言ってない)

唐突に大体のシンジくんを思うみんなの感情

○レイちゃん
ク ソ で か 感 情 。絶対に自分を見捨てないという安心感と依存具合がスーパーベストマッチ、ガタガタゴットンゴットンズターンズターン。現時点ではお話のみで解決するが、この先はどうなるかわからない。ただ切れると血に沈める暴走ガールへと大変身。シンジとは恋人だと(レイの視点では)思っている。ちゃんと話し合う気はさらさらない、言わなくてもシンジはわかってくれるという安心感とひな鳥のような信頼感で致命的なことをしてる。ちなみにプロローグでシンジ絞め殺そうとしてたのは、色々あってレイの感情が爆発した結果、つまりやべーことが未来で起こることは確定してるが作者は何も考えてない。

○マダ……ゲンドウ
息子に付けるはずだった名前持ちの覚悟ガンギマリ男子に複雑な思いをもつマダオ。現状ではシンジに対してはいい感情は持ってないが、レイに寄り添ってくれたこと事態は心の奥底で感謝してるクッソ面倒くさいやつ。ただ妻の中にいるのは許さねえからなぁ? ナニカしでかしたらパイロットから閉め出してやる。

○ミサトさん
よく食べる男の子(白目)。エヴァに乗れる少年として高く評価してるが、感情が思春期特有の安定のなさに頭を抱えている。元恋人を被せるが、別に好きとかそういう感情は一切ない。レイとの関係性は少し羨ましく思うが、次回まではクソでか感情には気づいていなかった、節穴ァ!!

○リツコさん
殺さなきゃ(女としての使命感)と支えななきゃ(大人としての使命感)、調べなきゃ(科学者としての使命感)が三角形になってしゃぶり合ってる糞めんどくさい人。現状では3、4、3という割合で大人としての使命感が勝ってる。シンジのレイに対するスタンスを青臭いと思ってるが、嫌っておらず好ましく思ってる。ただ訓練中に寝るなオラァン!!

○エヴァ初号機の中の人
例のあの人、元凶とか散々のいわれようであるが一応、無理やりシンジとのシンクロ率を上げてくれてる人。逆に言うとシンジのテンションが低いとシンクロ率がアカン死ぬぅ!となる模様。現状ではただ好ましいとしか言えない。何故シンクロしてくれるのかは言えないので許して。ただレイとゲンドウの次に、シンジは気に入っているとだけは言っておく。ただ最近娘が塩対応で辛い、辛いさんなのだ。ゲンドウくん? 話し合って(自分のこと棚上げ)

こんな感じゾ。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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