中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、原作がないことが起こったがなんとか使徒倒した模様

ストック無くなればストックを作ればいいじゃないと書いてる。
もうこうなったらあとは意地と根性とイチジク浣腸と酒とつまみとアイスティーと上手い屋台のラーメンだけが支えです……でも屋台のラーメンどこ…? ここ…?
なお次話からノリがいやーキツイっす、綾波どうっすっべ…どうっすっべ…


独断専行して怒られたから原作主人公のように家出した件

「命令無視、独断専行……あなた、自分が何をしたのかわかってるの?」

「……使徒を倒しました」

「そういう意味じゃない、なんであんな無茶をしたのか聞いてるの!! 確かにこちらのミスだったかもしれないけれど、あなたがやったことは様々な規則を破ってるの!」

 

 アニメで見たなぁとぼんやりした頭で、怒鳴っているミサトさんを見る。

 上官としちゃ許せないだろうなってのはよーわかる。

 ただ見捨てられなかった。原作にないイレギュラーだったとしても、目の前の命を無視することなんて俺には出来なかった。

 

「無茶しなければ、あの二人を助けられなかったからです」

「二人を助けようとして、第3新東京市に住む何万人もの人を危険に晒したのよ、あなたは」

 

 ぐうの音も出ない正論でまいったね。

 そのとおりだ、あのときの俺の行動は褒められたもんじゃない。万が一、シンクロ率が既定値を下回っていたらエヴァが動かなくなっていたかもしれない。そう思うとミサトさんの怒りは真っ当なものだ。

 だけど俺は疲れていた、異物抱えたままシンクロしたせいか、疲労感が凄い。

 

「今度から気をつけます」

「わかってますみたいな表情しないで! あなたがダメになったら、次にエヴァに乗るのはレイちゃんなのよ」

「そうならないようにやってるっ!!!」

 

 レイのことを言われて、ぼーっとしていた頭が一気に覚醒する。

 レイのことは関係ないだろうがっ!!!

 

「事実よ、あなたのシンクロ率がレイちゃんより下回ったらあなたはエヴァのメインパイロットから下ろされるの。そして碇レイがメインパイロットになる」

「ッッッッッッッッッッッッッ!!! なんで止めなかったぁ!!!」

 

 頭に血がのぼり、ミサトさんの胸ぐらを掴む。

 だがミサトさんは表情を変えずに静かに言う。

 

「組織とはそういうものよ。あなたが本命ではないの、偶然居合わせて、偶然乗れて、偶然適正があったから乗ってもらってるだけよ」

「レイのシンクロ率知ってんだろ!! アイツに任せられるわけがない!」

「碇司令は、そうは考えていない」

 

 そうだろうよと怒り狂った頭の片隅に、冷静な俺がいた。

 本来ならエヴァのパイロットはレイだ。今はシンクロ率が低いが、土壇場では高数値を叩き出すのはわかっているだろう? それに、お前は――――。

 

「ち、がう、違うっ!!! 碇レイはエヴァパイロットじゃなく、ただの女の子だ!! どこにでもいる女の子なんだよ!! エヴァのパイロットはこの俺だ!!」

 

 頭に響く声を否定するかのように、ミサトさんの服を破かんばかりに握りしめる。

 それを冷たい目線で見るミサトさんは、そっと俺の手に払いのけると服を正して後ろを向く。

 俺は力が抜けて、フラフラと床にへたり込む。

 

「ここでのことは不問とします。民間人の許可のないプラグ内への立ち入り、命令無視、独断専行、これらを加味して自宅での三日間の謹慎処分とします……あとシンジくん、これは上司ではなく、大人としての言葉よ」

「……なんです」

「救える命には限りがある。このまま全部救おうとするなら、シンクロ率関係なくあなたをエヴァのパイロットから除名するわ。私達は正義の味方ではないの……忘れないで、使徒殲滅が私達の使命よ。ソレ以外は些末なことでしかないわ」

 

 そう言って部屋から出ていくミサトさんの後ろ姿を見送る。

 俺はうつむいて両手で顔を覆い――――そして家出を敢行した。

 

 

 

○○○

 

 

 

「サイテーだわ、私は」

 

 シンジを叱って丸一日、ミサトはリツコの研究室に入り浸っており、暗い顔で机に突っ伏していた。

 それを鬱陶しそうに見るリツコは、一旦キーボードを止めてミサトをジト目で見る。

 

「感情論で動くからよ。それに彼はこっちの尻拭いをしてくれたのだから、むしろ褒めるべきだったと思うけど」

「褒めてまた同じことしないとは言えないでしょ! ……でも言い方あったわよねえ」

 

 ミサトだって好きで見捨てろ、もうするなとは言いたくはない。

 だが使徒を殲滅しなければもっと大勢が死んでしまう。この立場になってから飲酒の量が増えたのは罪悪感を消すためでもある。

 地獄行きね、ミサトは思う。仕方がなかったとはいえ、あの時点でミサトは小さい彼らを見捨てて、使徒殲滅を優先した。

 

「……保安部には引き締めとシェルターの総点検を命じたわ」

「当たり前よ、今回みたいのが続いたらシャレにならないわ」

 

 すでに保安点検したものには処分が下っている。相当に重い処分であったが、当たり前である。ほぼ無傷で終わると想像していた使徒戦があそこまで劣勢になったのは乱入者の存在が大きい。

 人柱のような感じであるが、下手をすれば負けていたと考えると妥当である。

 

「あとお酒は飲まないでよ、私は仕事中よ。というかあなた、ウチには帰らないの?」

 

 ウチという言葉にビクリと肩を震わせるミサトは、涙目でリツコに縋る。

 

「レイちゃんの機嫌がヤバイのよ……ちょーっち、仲良しすぎかなと思ってたけど、あそこまでとは」

 

 ミサトは今日あったことを思い出す。

 

 

 作戦指揮官として、事後処理とやらかした保安部の職員に厳重注意と処分を下し帰ってきたのが深夜の3時過ぎ、流石に言い過ぎたかとミサトも夜の空気で頭を冷やしていた。

 こちらのミスでエヴァの運用に支障をきたしてしまった。それは紛れもない事実だが、規則を破ったのは確かであり、処罰しなければ組織としての体裁が良くない。

 だが大人として、頑張った子供を褒めることも出来ず、感情的に言ったのはまずかったなぁと自分の未熟さに後悔していた。

 

(せめてウチにいる間は……)

 

 そうして鍵を開けてウチに入った瞬間、ゾワリと背筋が凍ったのをミサトは感じた。

 

(な、何この……ひっ!?)

 

 ペタリと足音が聞こえた、ペタリペタリと徐々に近づいてくる足音に身を震わせるミサト。

 そしてリビングの扉がわざとらしくギギギギと音を立てながら、開くと中から幽霊のような風貌のレイが出てきて、ミサトは腰を抜かす。声が出なかったのは、余りにも怖すぎて出す余裕がなかったからだ。

 

「レ、レイちゃん? ど、どうしたの、もう子供は寝る時――――」

「シンジは、どこ」

 

 感情が感じ取れない言葉に、ミサトはヤバイと命の危機を感じるが、レイの言葉にはっと気づく。

 

「もしかしてシンジくん、帰ってきて、ない?」

「連絡しても出ないのミサトさん聞いてませんかなにかしてませんかいいえなにかしましたよねあのあとすぐにシンジのところに行ったんですからなにかしてないわけ無いですよね許さないシンジは頑張ったんですよ子供も守って馬鹿な奴らも守って見捨てて潰しちゃえばよかったのに全部守って動かなくなる瞬間までさぁ! 自分が戦った結果が辛いって言ってたのに絶対に許さない何もフォローもせずむしろ怒ったんですよね聞いてますかミサトさん!!!!」

「はい! ごめんなさい!!」

 

 怒涛のレイの言葉に、ミサトは土下座をする。

 中学生が出していい雰囲気を超えているし、カップルにしては重すぎる感情にミサトはただ謝るしかなかった。

 その後、要約するとシンジが帰ってくるまで家に帰って来るなと自分のウチから蹴り出されたのであった。

 その後保安部に泣きつき、シンジの監視をしてもらっていたのであった。なお本人は遊び歩いてるという報告を受けて、ミサトは切れた。

 

 

「……まぁ、レイちゃんの境遇だと三上シンジに依存するのは仕方ないと思うわね」

「ここまでとは思ってなかったわよ。そら一緒に寝てるとかおっかしいなぁと思ってたけど」

「あんたに保護者やらせたのは間違いだったかもしれないわね」

 

 あーんですって!! と抗議するミサトは、一通り騒いだ後俯く。

 

「保護者失格ってのわかってるわよ。十四歳、それもついこないだまでただの一般人に人類の命運をかけて、必死に頑張った結果を否定したんだもの……」

「さらに彼の急所であるレイちゃんのことを言っちゃうとかねえ」

 

 うぐぅ!! とミサトが蹲る。

 

「まぁ、事実だしあのシンクロ率だと結構危なかったし……ただ驚くのは、彼あの子どもたちを乗せて、使徒にプログレッシブナイフを突き立てた瞬間にシンクロ率が跳ね上がってるのよ、あのときは誰も気づいてなかったけど」

「へぇ?」

 

 ほらとリツコは書類を見せると、ミサトは目を見開く。

 

「シンクロ率30.9%!? 新記録じゃない」

「彼の本質かしらね、レイちゃんとの馴れ初めも守ったことによるものだし……ただミサト、あなたの言葉も正しいと思うわ」

「何が?」

「救える命には限りがある、よ。まぁ、中学生であれだけできたら上等なんでしょうけど、エヴァパイロットとしての自覚を持ってほしいところね」

 

 リツコの言葉に、ミサトはさらにうつむいて言葉を紡ぐ。

 

「私達、正しいことをしてるのよね」

「人類にとっては正しいことしてるわ。大人としては間違ってるのは確かよ」

「……シンジくんの言葉に感化されたかしらね、私達」

 

 大人、その言葉を二人共ぼんやりとしか思っていなかった。

 セカンドインパクト後の混乱は記憶にある。ちょうど今のシンジとレイの年頃だった彼女たちにとって、大人とは世界を壊した悪人で、自分たちは被害者というのが共通意識だった。

 生きるのに精一杯、ある目的のために二人共動き続けて、大人になった。

 だが、本当に胸を張れる大人になったかと言われると二人は閉口する。

 リツコは母親を、ミサトは父親を思い出す。

 研究者、母親、そして女として生きた母親。

 何も言わずに研究だけに集中し、最期は自分を救ってくれた父親。

 二人共大人かと言われたら首をかしげるだろうが、子供のために全力を尽くしたのは間違いないのだ。

 

「大人ねえ、この歳になって、あんな子供の一言が引っかかり続けるってどういうことよ」

「年取ったってことじゃない? お互いに」

「あらやだ、オバサン臭いわよあなた」

 

 冗談を言い合う二人は、苦笑しながらも真剣な表情をする。

 

「にしても立て続けね、使徒」

「前回が十五年前、今回が三週間……次回はいつかしらね」

「エヴァの修復状態は?」

「幸いにして左手と足の装甲板を交換すれば済むから、三日もあれば出撃可能よ」

 

 原作とは違い、腹部を貫かれていなかった初号機の状態はかなり良かった。

 幸いにして交換作業もスムーズのため、かなり余裕が持てる。なおゲンドウは予算に関してグチグチとゼーレに言われていたが。

 

「……あとはパイロット、か」

「大丈夫でしょう。情報部の報告では、彼、ただ遊んでるだけでしょ?」

 

 リツコがそういうとミサトは、微妙な表情をしてこめかみを指で抑える。

 

「自宅謹慎処分だっちゅーのに」

「いいじゃない、遊び歩いてストレス発散するならそのくらい……現状でまともに戦えるパイロットは彼しかいないんだから」

「そういえばレイ……あぁ、綾波のほうね。彼女はどうしてるの? 体の調子は良くなったんでしょ?」

 

 その一言にリツコは、何度目かわからないため息をつく。

 そして書類をミサトに手渡すと、そこには綾波レイの顔写真と診断結果が乗っていた。

 

「体調は回復、怪我の状態も良好、あとは零号機とのシンクロだけど……」

「今度は暴走しないでほしいわ。もう一機のエヴァが動ければシンジくんの負担も軽減するし、連携も取れるようになる」

「とれるかしらね、彼女、女の子よ……それに話来てるでしょ、ドイツからくるセカンドチルドレンの話」

「……レイちゃんの反応が怖いわ」

「頑張りなさい、作戦指揮官さん」

 

 ミサトは頭を抱えるが、心配はなかった。

 むしろシンジなら綾波レイとも良好な関係を取れると思っていた。

 だがミサトは完全に失念していた。

 女の情念の深さという魔物の暗闇を、碇レイがどれだけ三上シンジに依存していたのか、それを知るのは随分と先の話となる。

 

 

 

○○○

 

 

 

「おっちゃーん、串カツ二十本追加でー」

 

 家出生活サイコー!! フゥウウウウウウウ!!!

 あの後、そうだ、家出しようと第3新東京市に繰り出した俺は一日中飯を食っていた。

 学校? 一日くらいええやろ。

 ケイタイを家に置きっぱだけど、まぁなんとかなるし、一日程度ならレイもそこまで怒らないだろうな。

 

「坊主よく食うな、よぅし母ちゃん今日はフル稼働だ」

「あいよー!」

 

 最後にとフラッと立ち寄った串カツ屋で存分に食っていた。

 お金? NERVからたんまり報奨金もらってるからな!! 食い放題だぜ!! ただミサトさんから減らせと言われたが成長期だもの、しょうがないね。

 串カツをバクバク食いながら、一日、第3新東京市を見て回った光景を思い出す。

 人が順調に居なくなっていた。引っ越しのトラックはひっきりなしだし、駅では涙の別れやら、第3新東京市から脱出する車でごった返し……まぁいい気分ではなかった。

 やっぱりこの時点で相当数の人が居なくなってるんだなぁと実感する。

 レイと一緒に買い物するが、徐々にスーパーから人が居なくなっているのがわかるもん。

 何度も言うが、俺がやってるのは行きあたりばったりなんだろう。根本からなんとかするには、初号機を破壊して、地下のアレもどうにかするしかない……が無理なのでどうしようもない。

 

(原作を知ってても、違うことがある)

 

 最たる例がレイ、俺という異物、そして今回の小さな乱入者。

 当たり前だ、これはアニメじゃない、台本が用意されて絵コンテがあって展開を決めているわけじゃない。

 実際に息をして、動いて、飯食って、寝ている紛れもない現実なのだ。

 ままならないことなんて幾らでもある。

 追加された串カツを平らげて動きが止まったのを心配したのか、ご主人が声をかけてくる。

 

「兄ちゃん、どうしたギブアップか?」

「あと三十本追加で」

「あんたぁ!! 肉が切れるよ!」

 

 奥さんの悲痛な叫びが聞こえるが知ったこっちゃない、串カツが美味いのが悪い。

 ……ままならなくてもやらなきゃいけないだろう、こういう美味い飯屋を守らなきゃいけないし。

 追加の串カツが来たときだろうか、ガラリと店の扉が開かれて、誰かが入ってきた。

 

「なんや、もう入ってるんか?」

「おーう、鈴原の坊主か。なんだ今日も親父さんは来ないのか」

「色々あるんやと、あぁすまんな隣座らせて……お、おまっ!?」

「……モグモグ」

 

 何も言う暇もなく、トウジが俺の隣に座ってきた。

 座るまで俺に気づいていなかったのか、こちらを見たトウジはぎょっと目を見開いていた。

 そしてすぐ立ち上がるトウジの腕を掴み、強制的に座らせる。

 

「な、なんや!? な、なんか言うことあるんかワレェ!!」

「……ゴクン。店入ったら何か注文しとけ、ここはおごってやる。おっちゃーん、とりあえずジンジャーエールおかわりー」

「はいよっ! ただ喧嘩だけは止めてくれよー」

 

 そう笑いかけるご主人を見て、観念したのかそれとも言いたいことがあるのかわからないが、落ち着かなそうにこっちを見たり、どこか遠いところを見たりと挙動不審であった。

 俺はおもむろに串カツを一つつまむと、小皿の上に置く。

 

「とりあえず食えよ、そのために来たんだろ?」

「お、おおきに……てか、食いすぎやろ!?」

 

 おぉ、これが本場のノリツッコミかぁとのほほんと思う。

 とりあえずおかわりのジンジャーエールで残った串カツを流し込むとけふーとゲップが出る。

 うーん……。

 

「ハラ五分目ってところだな。よーしパパ、百本行っちゃうぞー」

「そんなにねえよ兄ちゃん、すまんな。あと二十本分で我慢してくれや」

 

 えぇーと俺はテンションを上げるが、代わりにと奥さんがキャベツ丸々一つ持ってきてくれた。

 おほー、キャベツが美味しいのよーとバリバリと食い散らかす。

 その間、トウジはうつむいて俺があげた串カツを食べずにいた……食わないなら食うぞオラァン!!

 

「なんで、なんで何も言わんのや」

「……ふぁみふぁ?(なにが?)」

 

 キャベツを口いっぱいに頬張り、噛み砕いているとトウジが暗い顔でそう言ってきた。

 

「誤魔化さんでええ! ワイは昨日――――」

「食事の席で言う話題じゃねえな。とりあえず食えよ、腹が減っては戦はできぬとよく言うだろ?」

「けど……」

「食えって、飯の席で難しい話はご法度だ。食い終わったら話そうや」

 

 まぁ、トウジの言いたいこともわからんでもない。原作を知ってりゃトウジは唆されただけで、あのメガネが一番悪いってのは知ってるしな、ビデオカメラ叩き割ったろうか。

 それに家族が、レイが巻き込まれたら――――原作キャラだろうがなんだろうが、コロス。

 ……まっ、仮定だがな。大切な人が巻き込まれたら恨み言の一つ、拳の一つは出るだろう。

 俺の言葉に納得したのかわからないが、チビチビと串カツを食い始めたトウジに、俺はイラッとする。

 

「男なら一口でいかんかい!」

「行けるか!! というかキャベツまるごと食うやつなんざ初めて見たわ!!」

「冗談で出したけど、食べちゃったわねー……もう一玉いく?」

「イキますねえ!! いきますいきます」

「なんやこいつぅ!?」

 

 ツッコんで元気が出たのか、串カツを食べ始めたトウジを見て、俺は追加注文をして腹を満たす。

 無言で食いまくって、串カツが無くなったとの声を聞いて俺たちは揃ってジンジャエールを飲み干して一息つく。ぶへー、旨かった。

 

「……転入生、お前よう食うな」

「どうせ死ぬなら腹いっぱい食いたいって思ってさ。食うために頑張ってたらこんだけ食えるようになったんだよ」

 

 ちょうどレイと出会って間もない頃だろうか。

 飯食ってるときに思ったのだ、サードインパクトのとき腹減ってたらどうなるんだって。LCLに分解されたりするだろうが、その時腹ペコとか俺は嫌だった。

 だから食べる量を少しでも増やすように頑張ったらこんな大食いファイターになったんだよなぁ。

 過食症? 知らん、どうせ十四歳で死ぬと思ってたんだ、好きに生きて何が悪い。

 

「死ぬって、アレに乗ってるから」

「んにゃ、アレに乗ったのは三週間前が初めてだ。ちなみに正規パイロットじゃないんだわ俺」

 

 息を呑む声が聞こえるが、ほんと激動だったなぁ……次も二週間ちょっとで来るし、てか次のアイツどうしようね、初撃食らったら死ぬんじゃねえの俺。

 トウジが肩を掴む。

 

「なんでや、なんでそこまで命をかけるんや!!」

「……別にさ、俺、この場所を守りたいとか、人のためとか大層な理由は持ってないんだわ。ただ俺が乗らなきゃ、別のやつが乗ってた、それが嫌だったってだけだ」

 

 レイが乗ってたらどうなってただろうか。

 俺はレイと離されていただろうと思う。二度と会えず、レイが傷つくのを知ってるのに、のうのうと暮らす……想像しただけで吐き気が俺を襲った。

 だから初号機が動いたとき、俺はチャンスだと思った。

 俺が操縦すればレイの傍に居られると思ったから。

 

「それ……アレか、お前と一緒にいた女か」

「昨日みたいにぶん殴ってええんやで」

 

 冗談でそういうとトウジはプルプルと震えて、ガバっと効果音がつくくらい勢いよく頭を下げる。

 お、おぉ? どうしたんだこいつ?

 

「その……すまん!! 転入生、わし、わしは」

「気にしてない」

 

 ピシャリと言い放つ。

 罪悪感を隠すように、俺はトウジの顔を見れなかった。

 マッチポンプのようなもんだ、俺はどうなるか知ってたしこうなるのも予想はついていた。

 反吐が出る。

 

「わしはお前のことぶん殴ったんやで?」

「妹さんのことが許せなかったのはわかる、逆の立場なら俺は馬乗りにしてやってたよ」

「でもわしは自分が許せへん!! なんも知らずに転入生殴って、ヘラヘラケンスケの言葉に釣られて邪魔してもうた……オトンやオジィにもごっつう怒られたわ」

 

 ならそれでいいじゃんと俺はさらに顔を背ける。

 引き止めたのは俺だったが、なんか、こう、やだ……人を操作してるような感じで。

 ゼーレの奴らを尊敬するよ、こんなのずっと続けてたんだろ、最強だろ。

 そんな感じで話していたら、ダンッ!!! となにかを叩きつける音が聞こえた。

 やっべ、ここ店やん!! と思ってたが一升瓶を片手で持つご主人が固まる俺たちに言う。

 

「なんか知らねえが、男同士こいつを酌み交わせば一発解決よ」

「あんた止めなって、未成年だろう?」

「あぁん? グチグチ言うくらいなら酔って全部吐き出すくらいが丁度いいんだ……それに俺たちは来月末にはここには居ねえんだ」

 

 その一言に、俺は固まる。

 

「えぇ!? オッチャンも疎開かいな!」

「あぁ、九州の方にいった息子夫婦がうるさくてなぁ……それにここまで閑古鳥鳴かれちゃ商売にならねえよ」

「あんた、子供に言うことじゃないだろうに」

 

 俺は顔をうつむかせて、歯を食いしばる。

 やっぱ、守れなかったのを見せつけられるのはきつい。

 

「……兄ちゃんが責任感じるのはお門違いだぜ。それに俺たちはあんたに感謝してるんだ」

「……なんの話です?」

「シラ切るならそれでいい。あの、ロボット? っていうのか、アイツのおかげで安心してるやつは沢山いるんだぜ? お客さんの中にもヤバイこと起きてもアレがいれば大丈夫って言うやつもいたっけなぁ」

 

 顔をあげられない。

 安心なわけないじゃん、どうせ最後はこの第3新東京市は消滅する。

 今守れても、守りきれないときが絶対に出てくる。次の敵だって新劇場版仕様ならとんでもないやつだ……守りきれるかどうかもわからない。

 

「鈴原の坊主が何したのか俺にはわからねえよ。兄ちゃんが悩んでるのもわからねえ、でもな、俺が仕事してるとき絶対に守ってるもんがあるんだよ」

「……なんです?」

「客に美味いっ! って言わせることだ。……へへっ、新東京市を守るロボットのパイロットさんに舌鼓を打ってもらえたのならこれ以上嬉しいこたぁねえよ」

 

 顔を上げて、ご主人を見る。

 奥さんも優しい目線で俺を見てくれた。

 

「こんな小さい子に任せるとか、あんたんとこの上司に殴り込んでやりたいけど、そうするしかないんだねえ」

「……恨まないんですか、お客さんが減ったのも。あなた達がココを離れるのも、俺の――――」

「子供が抱え込むな!! なーんて言えねえよ、兄ちゃんはもうちょい気軽に考えるべきなんだよ」

「せや……殴って、そこまで気にさせたわしが言うのもちゃうとは思うけど、それでも転入生……ちゃうな、シンジはわしらを守ってくれたんや」

 

 トウジに肩を叩かれながら、俺は震える唇を止めようとしてまた俯く。

 俺は…………。

 

「シンジってのか、いい名前じゃねえか。ようし母ちゃん、とっておきを出すぞ」

「はいよ、あぁお代はいいからね、二人共」

 

 店の奥に二人は引っ込んでいく。

 俺とトウジだけになり、無言が続くがトウジがおもむろに語りだす。

 

「妹にもごっつう怒られた……当たり前やな。シンジの邪魔したんや」

「……怖かったろ」

「当たり前や!! ごっつう怖くて、思い出しても震えるわ! ……あないな場所で下見ぃ暇ないやろ」

「……でも」

「あぁもうしゃらくさいわ!! シンジ、わしを殴ってくれ!!」

 

 ガバっと大きく手を開けるトウジ、目を閉じてプルプル震えていた。

 

「殴って、すんませんでしたと謝らせてくれ!! 自分勝手なのは承知済みや、でもこうせえへんとわしは恥ずかしくて生きていけんわ!」

「……トウジ」

 

 そんな恥知らずなことをしていいんだろうか。

 原作を知ってるという事実が重くのしかかってくる。

 レイに会いたい、レイが傍にいなきゃ、レイが俺を見てくれなきゃ、俺はこの世界に恐怖してるモブに戻ってしまう。

 

「はよせい! あとシンジ!! ありがとな、妹も言ってたで、助けてくれてありがとうって」

 

 ありがとう、か。

 ハハッ、ハッハハハハハッハ、人間って単純だなと思う。

 そんなありふれた一言でも嬉しくて、さっきまでの弱気だった自分がどっかに行ってしまう。

 あぁ、そうだ、レイを守る、それでいいじゃないか、ついでに、本当についでに第3新東京市も守る、ソレで行こう。

 どこまでいけるかわからない、どうにもならないかもしれない。

 でも――――

 

「まっすぐいってストレートォ!!!」

「ほぎゅぅあ!???」

 

 トウジを殴り、俺は意気込む。

 でも、今の俺はエヴァパイロットだ、やれるだけやってみるだけさ!!!

 

「すっきりした!」

「そら良かったなぁ、だけどやりすぎじゃボケェ!!!」

「あぁん!? 殴れつったのはそっちだろ!!」

「振り抜くバカがおるかい!! ったく、少し認めたわしが馬鹿だったわ!」

「あんだとバカ!」

「言うときバカ!」

「二人共そこまでにしておきな……じゃないとおばちゃん怒るよ」

 

 すんませんでしたぁあああああ!! と二人して地に頭を付ける。

 怒ったおばちゃんには逆らうな、これ鉄則な。

 結局、俺は深夜までこの串カツ屋でどんちゃん騒ぎをして、ミサトさんちに帰った。

 ただ死んだ目のレイと泣きつくミサトさんをなだめるのに、結局さらに二日ほど学校をサボることになるのであった。

 




クソガキシンジさんと感想に合ったが、まぁ、クソガキ感というかとにかく青臭いやつが書きたいんだよ!! と叫んでおく。あとシンジさんのテンションの落差がヤバイが、なんだかんだこの世界で生きることを諦めていたから、レイがいて無理やり生きようと気合で生きてる状態、。心へし折れたら間違いなく自殺するくらいには精神が危険で危ない。つまりアスカの精神へし折った使徒と相対すると死ゾ。
後半で串カツ屋のおっちゃんとおばちゃん出したが、串カツ食いてえなぁ俺もなぁと思っていただけで特に理由はない。強いて言うならOTONAを出したかった。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)
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