中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、地味に精神崩壊しそうだったのを食い止めてトウジを全力でぶん殴った

ストックねえ!! 仕事忙しい!! てかこれ書いてるときいつもの投稿時間一時間前!! と焦ってるアホ作者なのでした。



レイとレイが被ってややこしいけどなんとか話してみた件について

 唐突であるがこの世界は四季が夏しか無い。

 夏! 夏! 夏! 夏! 季節がなくて恥ずかしくないのかと言いたくなるが、地軸がズレて夏になった程度ならいいだろうと思う。実際は食糧問題やらなんやらで現在進行系でヤバイことが起きているが、それは置いといて。

 

「シンジィ、見てみ。水着やで」

「……レイの見たらぶん殴るからな」

 

 夏といえば水、水といえば水着、水着といえばプール授業。なお男子と女子で一緒にやらない模様……かろうじて残っている前世では中学まで、下手すれば高校までプール授業は一緒だった記憶があるが、まぁ前世の記憶なんてエヴァの記憶くらいしか残っていない。

 武装コンテナの場所覚えられないので気づいてほしいが、俺の頭の出来はそこまで良くない。勉強? 死ぬから遊んでよと後ろ向きに考えてまーったくやってこなかったからだ。レイがいなかったら、以前の中学でも赤点取っていた自信がある。

 

「メガネ、お前もだぞ。万が一レイの写真売り捌いたら、ビデオカメラ今度こそ破壊するからな」

「メガネじゃなくてケンスケ、わかってるよ……はぁ、売れ行き良かったのになぁ」

 

 トウジたちとは結局の所、原作のような形で落ち着くことになった。

 ただ最後喧嘩したせいか、センセではなくシンジと呼び捨てにされるようになった。ソッチのほうが気安いからいいんだが……問題はこのメガネだ。

 すっかり忘れてたが、こいつ、原作ではアスカや他の女子の写真売りさばいていた。

 気づいたときにはレイの写真が出回っていたのだ……そして覚えてないが烈火のごとくブチギレて、トウジ含めた数人に取り押さえられたらしい。

 まぁ、ため息ついてる時点で反省の色はないようだがな……ユイさんに話したら自律行動して、叱ってくれないかな。というか作られた時代が時代とは言え、盗撮した写真売りさばくとかこいつもよーやるわ。

 

「ほんまわかっとるんか? あのときのシンジの切れようと言ったら鬼だったで」

「忘れられるもんか、本気で殺されると思ったもん」

「人の逆鱗に触れたのを理解しろ……てか女子いいなぁ、ホント」

 

 キャッキャウフフと遊んでいる女子に羨望の眼差しを向ける。

 何が悲しくて男子はサッカーとランニングせにゃいかんのだ。畜生作られた時代か……。

 

「そう言って、実は水着を見たいだけじゃないのぉ?」

「せやせや、ええ乳みたいだけやろ」

「お前らノンケかよぉ!?」

 

 そんな風に冗談を言い合う……そういえば前世のこと思い出してから、男友達なんていなかったなぁ。

 どうせ死ぬなら、美少女と一緒にとかいう邪な気持ちからだったが、やっぱ男子のほうが気安くていいな。

 レイとかだと、こういう猥談? 猥談なのかわからないが、この手の話は言えないから物足りなさはあった。

 

「シンジは時々不思議な言葉使うのう」

「せやろか」

「せやせや」

 

 冗談を言い合うと俺はちらりとプールサイドに座り込んでいる綾波レイを見る。

 結局、綾波と話す機会はなかなか訪れなかった。

 ……俺って基本原作なぞることしかやってなくねえかと思うが、実際に代わってみろ、あの無表情、無口、無感情……は言いすぎだが、近寄りがたい雰囲気は無理だって。

 アレで、マダオと話すときは満面の笑みってのがなぁ。だから人気出たのかなとふと思う。

 再放送組だから放送当時の熱狂は知らんのよなぁ、俺。

 ただレイの様子が怖かったが、ゲンドウと綾波の様子を伝えたんだが……。

 

『シンジ、シンクロテスト終わったよ』

『あ、あのレイ、その……ゲンドウと綾波の方のレイが楽しそうに話してるんだが、その――――』

『気にしないよ、僕にはシンジがいるんだし、綾波には父さんをあげるよ』

 

 そういう問題じゃねえだろ!? と言いたくなったが、オペレートをしていたマヤさんに聞いてみたが、ごく自然な様子だったらしい。同じようにオペレートしていた人たちは一瞬息が止まったらしいが。

 なーんか嫌な予感がするんだが、どうすればいいのかわからない。

 わからないが、そろそろだろうな、綾波レイのIDカードをシンジくんが渡すのは……大まかな使徒は覚えてる、劇場版の展開も、ただTV版は細かなところを忘れているのが痛い、痛いですね。

 まさか紙に描けるわけもないし言うわけにもいかないし、喋ったら今度こそモルモット行きだろう。

 ……未来がわかるキャラが苦悩するのもわかる、わからないのも怖いが分かりすぎるのも怖いのだ。

 

「シンジなんや……あぁ、綾波の方のレイが気になるんか?」

「おぉ、つまりレイちゃんに飽きたと。鬼畜だねえ」

「……どうすっかねえ」

「「いててててててて!!!???」」

 

 二人の頭をトマトクラッシュするように片手ずつで掴み、力を込める。

 本当にどうしようかなぁ。

 

 

○○○

 

 

 

「男子がこっち見てるわ」

「鈴原とかいやらしー目で見てるわ……碇さんも気をつけてね、あいつスケベだから」

「うん」

 

 碇レイは水泳の授業が嫌いだった。

 理由は単純明快、シンジ以外に見せる気がない肌を見せなければいけないからだ。

 それは同性でも変わらない。

 シンジのためだけに、シンジに見せるために、シンジに捧げるために磨いているのに、うるさいのが寄ってくるが、無下には出来ない。

 転入前の土地ではシンジとレイの関係は有名だったし、お話の結果放っておいてくれた。

 だがここは完全にアウェーであるし、シンジのために演技をしていた。

 幸い、ここ数年でかなり上達したと思う。

 

「あら、三上くんこっち見てるわ」

「えっ、シンジが?」

 

 ぱぁっと顔を明るくするレイに、周りの女子たちは微笑ましいものを見るように笑う。

 恋する乙女とはここまで輝かしいものなのかと興奮を覚えるものも居たが、そのくらいシンジと話しているときのレイは可愛らしかった。

 だからむやみに突っつかず、こういうときだけお喋りするという所謂淑女協定のようなものがクラスでは敷かれていた。

 しかし、明るかったレイの顔が徐々に暗くなり、目の色も若干黒ずんできたように見えた。

 ヒュイと周りの息を呑む声が聞こえた。

 シンジは隠してるつもりだが、クラスメート、特に女子がシンジに話しかけるだけでもこの雰囲気を醸し出していたのだ。重い、と思ったがまぁ、地元から一緒に来た二人だもんねとかる~く考えていた。内情はもっとヤバイのであるが。

 だからこそ、三上シンジが誰を見ているか、アイコンタクトで彼女たちは探していた。

 

(誰ー!! 誰なのー!?)

(あ、あたしだったりして)

(そこ顔赤らめない!! 死ぬわよ!)

(あんたさっきからチラチラ三上くん見てたでしょ)

(み、見てないわよ)

(見たけりゃ教室でこっそりにしなさいよ!! あぁ、誰なの……あっ)

 

 じーっとレイの視線が固定される。

 そこにいたのは水着に着替えたが見学すると、ずーっと体育座りをしている綾波レイ。

 

(((((れ、レイレイ対決来ちゃったかぁ))))

 

 いつか来るんじゃないかと思っていましたと全員が思う。

 レイとレイ、名前もそうだがこの二人顔立ちもどことなく似ていた。

 だからいつかシンジが見るときが来るんじゃないかと。

 

「……綾波さん、水泳、しないの?」

((((行ったぁっ!!!!))))

 

 もはやクラスメートは修羅場に巻き込まれた被害者のごとく、プールサイドの端に逃げていた。

 教師もただならぬ雰囲気に気圧されて、同じように逃げていた、ほんまつっかえ!

 

「……検査、あるから」

「そう。でもそこからじゃ男子から丸見えだよ、向こうに行こうよ」

(普通の会話なのにナンデ!?)

(これが修羅場、現実で見るとヤベーイ!!)

 

 レイは綾波に近づくためにプールから上がる。

 ペタペタと近づき、綾波を見下ろすレイ。

 無感情に見上げるレイを見る綾波。

 

「……ねえ、シンジが見てる」

「……あなたはいつもそれね。司令が寂しがってたわ」

 

 瞬間、レイの全身から憤怒の感情が飛び出し、気圧された者たちの腰が抜けかける。

 

「寂し、がる? あいつが?」

「えぇ、寂しがってた。司令の目は私を見てないもの。私を通して誰かを見ていた」

「…………そっ」

 

 その一言にレイの感情の高ぶりが一気に沈静化した。

 今更、今更なのだ。

 もしもそのことを第3新東京市に来たとき、エヴァにシンジが乗る前に聞いていたら、レイはシンジだけを見ることを止めていたかもしれない。

 そうかもしれないだけだ。

 レイの中では、父親は自分を作ってくれた人でしかない。

 何も、思ってはいない。

 

「あいつが寂しいならあいつの傍に居てあげてよ。一応、あなたには心を開いてるんでしょ」

「……多分、違うと思うの」

 

 一瞬だけ、ほんの一瞬だけだったが綾波の表情が変わった。

 寂しそうな表情に、レイの胸が鳴った。

 

(何、これ?)

 

 不快感のような、それでいて怒りのような言葉に言い表せられない感情にレイが戸惑った。

 

(なんで……シンジが見てるハエなのに……っ)

 

 ドクンドクンと胸打つ心臓を抑える。

 胸に宿った感情がわからず混乱するが、ふと前にもこれと似たような感情に襲われたことがあった。

 ……あれは確か。

 

(初号機のシンクロテストのとき――――)

 

 プラグスーツを着て、初号機に乗り込み、LCLに包まれたときにレイは言いようもない気持ち悪さを感じた。

 だがシンジが見てる手前、心配かけまいとシンクロを行い……似たような不快感に襲われた。

 誰かが包み込むような温かさなのに、自分の心はそれを拒絶していた。

 例えるなら温かく包み込んでいる誰かの抱擁を振りほどこうとしてもがいても、力任せに抱きしめられるようなものだ。

 あの不快感に似ている、だが何故自分が目の前の少女にそんな感情を持つのか、わからない。

 

「君は……なに?」

「……綾波レイ」

 

 その時キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。

 どうやら授業が終わったらしいとレイが時計を見ると綾波は立ち上がり、ペタペタと足音を立てて更衣室へと歩いていく。

 それを呆然と見送るレイに、事態を見守っていた教師はポツリと呟く。

 

「次の授業、遅れるわよ」

「「「「そこぉ!?」」」」

 

 同じように事態を見守っていたクラスメートが盛大にずっこけた。

 

 

 

○○○

 

 

 

 辺りからは工事の音が絶え間なく聞こえてきていた。

 辛うじてマンションだとわかるソレは、廃墟と言っても差し支えがなかった。

 

「こんなところに住んでるんだ」

「らしいな……」

 

 授業から翌日、朝出かける際にミサトさんから渡されたIDカードを綾波に届けるため、俺達は綾波の住むマンションに向かっていた……んだが、なーんかレイの調子が変だ。

 そわそわしてるというか、落ち着きがない。

 無理もないかなと思う。昨日水泳の授業中に、レイと綾波が一触即発の事態に陥ってたと聞くが、多分綾波の顔を見て母親を思い出したんじゃないかと思う。

 ぶっちゃけると綾波レイは碇ユイ、レイのお母さんのクローンにとある魂を入れた特殊な存在だ。

 今までは包帯をしていて、顔が隠れていたが今はすっかり良くなったのか顔が見えている。

 何かを感じていてもおかしくないと思う。

 

「レイ、無理しなくていいんだぞ」

「う、うぅん、女の子の部屋に行くなら僕も行くよ、シンジが何かしないか心配だし」

「何もしやしないよ」

 

 団地の番号を確認した俺達は綾波の部屋の前まで行く。

 ゴミが散乱していてますます廃墟感が出てる……あのマダオ、ホント綾波のこと大切ならもうちょいマシな場所に住まわせろや。まぁ、大切つっても道具でしか無いからな、この扱いは正しいのかもしれない。

 胸糞悪くなるがな。

 

「あれ? インターホンがならない」

「こんだけ古いんだ、壊れてるんだろ」

 

 壊れていることを知っているがシレッと答える。

 そのままドアノブに手を伸ばしたレイが、軽くドアノブを回すとガチャリという音とともに扉が開いた。

 

「開いてる?」

「おっ、開いてんじゃーん! ……すいません、言いたかっただけです」

 

 ジト目で見られたのでレイから視線をそらす。

 アニメそのまんまの部屋で驚くが、俺は扉に背を預けるとレイに言う。

 

「すまんレイ、見てきてくれ。一応女の子の部屋だし、男が勝手に入るのもな」

「そうだね、いなかったらいなかったで別にいいし、少し行ってくるよ」

 

 まっさかシャワー浴びてる綾波がいますとは言えないので、レイだけで中に入ってもらう。

 そのまま直進したレイはリビングを見渡すが、そこにはいないゾとも言えない。

 ……そういえばシャワーの場所ってどこなんだろうと首をかしげていると、リビングの手前のカーテンが開く。

 あっ、そこなんだと思考が停止する。

 真っ白で傷一つ無い肌を茶色いタオルで拭いている綾波は、なぜかリビングではなく俺の方を向いていた。

 

「「……」」

 

 お互いに無言で見つめ合う。

 女の子の肌なんてレイ以外のは初めて見たなーと場違いな考えが思い浮かび、鋭いレイの声で正気に戻った。

 

「シンジっ!!」

「待って、レイ誤解だから!!」

 

 正気に戻った俺は瞬時に目を閉じるが、少し怒ったような足音が聞こえる。

 原作の展開なんて頭吹き飛んでいた。

 

「きゃあっ!?」

「レイッ!?」

 

 レイの悲鳴で閉じていた目を開くと、そこには百合の花でも咲き誇りそうな光景が広がっていた。

 レイとレイが重なって倒れていた……訳わかんねと思うだろうが俺もわからん! 何故かレイが綾波を押し倒す形で倒れ込んでいるのである。

 あら~~~百合の花が咲き誇りますわぁとお嬢様口調で脳内音声が流れるが、レイは飛び上がるように起きて俺の背中に隠れて綾波に叫ぶ。

 

「いるならいるって言ってよ!!」

「不法侵入したのは俺たちなんだよなぁ、すまんな綾波」

 

 レイの叫びも俺の謝罪も聞いていないかのように、綾波は起き上がり……あっ、目塞がれた。

 

「シンジは見ちゃダメ!!」

「せやな」

 

 暫く暗闇の中で過ごす。視覚情報がないからか、耳が綾波の服を着る音を的確に運んでくる。

 本当なら見る気はなかったんだが、シャワー室を確認してなかったこっちの落ち度だわな。向こうが感情の起伏が少ないとは言え、見知らぬ男に裸見られるのは嫌だろうに……いや、そういう感情すら知らないのかね。

 そしてまた何かの足音がして、目の前に誰か立っているような気がする。

 

「……どいてくれる?」

「あぁ、すまん」

 

 綾波の無機質な声が聞こえて、レイとともに一歩、二歩、三歩と後ろに下がる。

 へっ、目が見えなくても俺とレイならシンクロアタックなんざ一日でやれらぁ! ってくらい行動のシンクロは可能だ……嘘ですごめんなさい、昔、シンクロアタックごっことかやって練習した成果です。

 レイがパッと手を離すと、目の前に綾波の顔がドアップで映る。

 こうしてみるとホントにレイに似てるなと思う。

 そのまま歩き出そうとした綾波に、俺は咄嗟に手を握ってしまう。

 ……いや、呼び止めても行くとしても手握るって何ヤッてんだ俺!?

 

「何?」

「IDカード、赤木さんが支給し忘れたってさ」

「シンジ、手離そうか」

 

 アッハイとレイの圧力が増したので手を離す……造り物とは思えない、温かい手だったなぁ。

 

「更新日?」

「うん、だからはい、これ」

 

 レイが綾波の顔写真入りのIDカードを渡すが、セキュリティ強化のためとは言えIDカードを結構な頻度で変えるのは面倒だなぁと思う。

 IDカードを受け取った綾波は、何も言わずに立ち去ろうとするので俺は後ろから声をかける。

 

「おーい、行くところ一緒だから少し話さねえか」

「……」

 

 何も言わずに歩いていく綾波に、俺は頭を掻きむしりながら駆け寄る。

 綾波は流石に驚いたのか、こちらを目を見開いて見る。

 

「三上シンジだ、今まで挨拶もしなくて悪いな」

「……綾波、レイ」

 

 条件反射かわからないが、驚いた顔で挨拶する綾波。

 そのまま三人で歩くが、会話はない、というかレイが妙に綾波を警戒するもんだから話しかけづらいと思う。

 ただ……さっき握った手の温かさが忘れられない。

 綾波レイ、絶大なエヴァの人気を支えたと言っても過言ではないヒロイン。00年代、似たようなタイプのヒロインは綾波系ヒロインとすら言われた……が何度も言うが、俺はアスカ派だ、ツンデレというか感情を高ぶらせるヒロインが好きなのだ。

 だから綾波レイにそこまで惹かれなかった、そのはずなのに――――。

 

(放っておけない)

 

 そんな気分が湧き上がる。

 何故かと自分の気持ちを探って、一つ思い当たる節があった。

 

(……あぁ、出会った頃のレイに似てるんだ)

 

 無感情、というほどでもなかったが、出会った頃のレイに綾波はよく似ていた。

 叔父叔母夫婦、周りからの風評、慣れない土地での生活でレイの感情はすっかり擦り切れてしまったのだろう。原作のシンジくんもそうだが、よくあの環境から本編の状態を維持していたと思う。

 俺と両親がどうにかこうにか構いまくって、ようやく今のようなレイになってくれたが……最初の頃は本当に綾波レイを思い出させるくらいには感情の起伏が小さかった。

 

(ゲンドウのこと、とやかく言えねえな)

 

 あいつは妻を、俺は娘を綾波レイに被せている。

 ……似た者同士とか言いたくねえが、現状似てるとかすげー癪に障る。

 

「なぁ、綾波……エヴァに乗るのが怖くないのか?」

 

 気分がざわついて、つい原作のセリフを言ってしまった。

 

「どうして?」

「あの怪我、前の実験のなんだろ。赤木さんから聞いたよ」

 

 と、言うことにしておく。

 実際はなーんも聞いてないが、まぁこのくらいは大丈夫だろう。

 

「……あなたは、なんでエヴァに乗るの?」

 

 綾波が立ち止まり、俺の方を見つめてくる。

 赤い瞳が俺をじーっと見つめる……なんで乗るか、か。最近聞かれてばっかりだな。

 まぁ、ご主人やトウジの前で言ったことがすべてなんだが、レイもいるし言っとくか。

 

「レイを乗せたくないからだ。綾波も知ってるだろうけど、エヴァとシンクロするとダメージが俺たちにも反映される、頭ぶつけたとき、相当痛かったろ」

 

 原作の暴走零号機は凄かったなぁ。

 まるで何かを頭から追い出すように、頭を壁にぶつける姿は圧巻の一言だ。

 その後あそこまで重傷になったのはプラグを強制射出したせいだろうが……アレ、焦ってたとは言えやらかしたよなぁ。

 あれ? 頭ぶつけたのは新劇場版だったっけ??

 イカン、色々起きすぎて記憶が薄れてきてる。ただでさえこれからヤバい使徒との戦いが待ってるってのに。

 

「痛かった──でも、司令が助けてくれたわ」

「……あいつが?」

 

 レイが信じられないと言わんばかりに目を見開く。

 まぁ、原作初見でも自分の息子に無関心というか死んでもいいみたいな扱いしてるやつが、その息子と同じ年の少女を心配するとか事案待ったなしやなって。

 実際は愛する妻を重ねてるからこそなんだろうが……それでも使い潰す気でいるってのが狂気だよなぁ。さっきもいったが俺も親友を被せているから人のこと言えないけど。

 

「信じられない?」

「……信じる、信じない以前の問題だよ。あいつは僕を捨ててるんだ、何を信じろって言うんだ」

「私は信じてるわ」

 

 その言葉にレイの表情が変わり、手をあげる。

 そして振り抜こうとした瞬間、俺はレイの手をつかんだ。

 

「シンジッ!?」

「レイ、気持ちはわかるがやりすぎだ……綾波、複雑な関係だから配慮してくれ」

「……なんで庇ったの? 私を」

 

 叩かれるのが当たり前、なんで? と言う風に首を傾げる綾波に俺は頬をかきながら言葉を探す。

 庇う、というかここで叩いてしまったら後々遺恨が残ると思ってしまったから……いや違う、レイが暴力を振るう姿を、レイ(・・)が叩かれる姿を見たくないからだ。

 

「……同じパイロット、だからかな」

「……そう」

 

 どう言えばいいのか決めあぐねた俺は嘘をついた。

 ソレを聞いた綾波は興味を失ったかのように、前を向き歩いていく。

 俺はレイの手を離さずに綾波の姿が消えるまで待つ。

 これ以上話すとレイの感情がヤバいことになる、間違いなく……どうすっかなぁ。最近「どうすっかなぁ」が口癖になってる気がする。

 十分距離が離れたと思い、俺はレイの手を離す。

 レイは俯きながら震えていた。

「……ごめん、どうかしてた」

「父親のこと言われたんだ、そら感情が高ぶるさ」

 

 レイの頭を撫でて落ち着かせようとするが、いつもみたいに笑顔にはならずずっとうつむいていた。

 

「シンジ、シンジは僕を裏切らないよね?」

 

 ゾクリと俺の背筋が震える。

 こわいからじゃない、俺を頼ってくれてると歓喜の震えだ……よかった、失望されてなかった。

 

「んっ、約束しただろ? お前を守るって」

 

 そう、守る。

 どんなことがあっても、どんな目に遭っても、どんなになってもレイを守る……そう、決めたのだ。

 それで、俺がどうなろうと構わない。レイが生きていてくれさえすれば、俺は生きていられる。

 だから……だから、レイも―――――――俺を見捨てないで。

 

 

 

○○○

 

 

 

 綾波レイは歩く。

 今日は零号機の再起動の日だ。

 司令のために成功しなければならない……それだけのはずなのに、彼女は後ろを振り向く。

 そこには誰もいない。

 立ち止まり、シンジが握った手を見る。

 温かった、誰かに触れあうなど――――待て、なぜこんな思考をしている?

 

(……なぜ?)

 

 湧き上がる感情にレイは困惑する。

 初めてだった、誰かに手を取られ、人の温かさを知るのは。

 綾波が知っているのは、冷たいベッドとゴム越しの手、そして注射器、それが全てだった。

 だからこそ、シンジの手の感触は新鮮で……悪い気分ではなかった。

 

(温かい、手)

 

 知らない、綾波レイは何も知らなかった。

 だからこそ、あの暴走事故のときに自分のもとに駆けつけてくれたゲンドウという人間を信頼した。

 だが、彼も手を握ってはくれなかった。

 

(……なんで)

 

 綾波レイの中で何かが芽生える。

 いや、ずっと昔から、この体に入る前から(・・・・・・・・・)渇望していたものをシンジが手を握るという、本当に些細なことで表面化させたのだ。

 綾波レイは望んでいた、自分ではない、他者との触れ合いを。

 

(…………今は、起動実験に集中しないと)

 

 綾波はそう考えた。

 だが一度火の入った感情は、彼女の中で燻り続ける。

 今はまだ、この時点の綾波レイには理解出来なかった。

 

 

 




今回ばかりはかなり批判くるのお覚悟を……してる。
展開が考え付かなかったんや!! 指が勝手に……俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!(悪い)
真面目に言うと、綾波レイというキャラクターは実は寂しがりやだと思うんですよ。生まれたときから実験で、言われるがままにされて、唯一彼女が嬉しいという感情を得たのは手を火傷しながら助けてくれた碇ゲンドウの姿。そんな彼もレイに直接触れあうことはなかった。誰にも愛されなかった少女が唯一愛してくれた存在がゲンドウなら、手を初めて握ってくれたのはシンジ……これがどうなるか、作者にもわからん!

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)
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