機動戦士ガンダムSEED Destiny/Re:Genesis   作:砂上八湖

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「いいかシン、お前と惣流は1人1人では単なるアスカだが、2人合わさればアスカフローネとなる。
 アスカフローネとなったバスターガンダムは、無敵だ!」
「恋の黄金率作戦とか真面目に実行しちゃう敵が出てくる作品みたいになってるじゃない!?」
「確かにバスターガンダムはライフル同士を合体せられるけど……というか誰だアンタ」
 


Paradigm-shift④

 

 タリアは手元のパネルを操作して、壁に設置されたモニターを起動させる。

 太平洋を中心とした作戦海域地図が表示され、白く太い矢印と赤い×印が同じ地点に現れた。

 連合軍の勢力圏内である。

 

「もう聞いているかもしれないけれど──

 7時間ほど前に、正体不明の存在が連合軍のヘールマイヤー基地を殲滅させました。

 正体不明の存在……アンノウンは連合とザフトの両軍に損害を与えつつ、真っ直ぐこちらに向けて進行しています」

 

「つまり、それを迎撃するんですね?」

 

 ミネルヴァを表すマークに向かって伸びる矢印を眺めながら、ルナマリアはタリアに問いかけた。

 しかしタリアは即座に首を横に振る。

 

「なんでっ!?

 ザフトも攻撃を受け、こっちに向かってきてるんだろッ!?」

 

「エヴァンゲリオン関連の事で、議長から指示が出ているの。

 ミネルヴァには近くの基地で戦闘配置のまま待機し、けれど出撃は控えるように──と」

 

 このアンノウンの襲撃に関する具体的な指示は未だ出ていない、とタリアは付け加える。

 つまり次の指示があるまで(臨戦態勢は維持したままとはいえ)待機命令は続行しなければならないのだ。

 もちろん次の指示がアンノウン関係だとは限らないのだが。

 

「ただし、情報は集まってる。

 アンノウンに関する情報収集のために、海空(かいくう)の両軍からMS部隊等が威力偵察を敢行したの」

 

 モニターの中央を進む矢印に対して、いくつかの△マークが向かっていく。

 第28海上機動偵察部隊。

 輸送艦付きの独立航空MS部隊であるラッセ隊、アミドナ隊、クラッヘル隊。

 第7方面軍所属のブローニン海上重騎兵艦隊。

 そして現在ミネルヴァが駐留している、ここサウスルチア基地に配備されている長距離MS強行偵察部隊。

 △マークには、それぞれ上記の名前が付随されていた。

 しかしジリジリと進む矢印へ近付くたびに、それらは次々と赤い×印へと姿を変えてしまう。

 やがて△マークは地図上から全て消えてしまった。

 

「これは……」

 

 シンが呻く。

 アスカも眉をしかめている。

 単純なCGの表示だが、それが何を意味しているのかを理解できたからだ。

 もちろんルナマリアやレイにも、それは理解できている。

 理解できているからこそ、消えていった戦力に対して強い疑念にも似た驚きを覚えたのだ。

 

 ブローニン海上重騎兵艦隊といえば、重巡洋艦やMS空母・イージス艦を主力とする本格的な機動打撃艦隊だったはずだ。

 その艦隊を指揮するブローニン提督は、コロニー生まれながらも海洋上の艦隊運営に定評のある軍人だ。それをこの数時間ほどで、1個艦隊を含めた幾つものMS部隊を撃滅せしめた……というのだろうか。

 

「これらの交戦データと超高高度偵察機からの光学観測データを元に、アンノウンの情報をまとめたのが──これ。

 貴方達に来てもらったのも、これを見てもらうためよ」

 

 モニターが切り替わる。

 望遠レンズでデジタル撮影したと思われる航空写真だった。

 海の上に雲がまばらに漂っている。

 しかし、写真の中央に違和感が形を成して写り込んでいた。

 円盤。

 銀色の円盤。

 それが海と雲の間に浮かんでいるのだ。

 

「直径は約25キロメートルあるわ」

 

 タリアの説明に、アスカは息を呑む。

 デジタル写真に添付されたデータを信じるならば、その物体は直径約25キロメートル。

 中央部の穴の直径は2キロメートル。

 穴部分を除いた円盤本体の半径は、実質10キロメートルほどもある。

 穴の中心部(というよりも全体の中心部)に浮かぶ赤い球体の直径は約300メートルほどと、他に比べて

極端に規模が小さい。

 いや、それでも航空機用の空母と同等の大きさなのだが……

 ただ、全体のスケールがあまりにも巨大すぎるのだ。

 

「これが機動兵器だとしたら……これがコクピットと機関部かしらね?」

 

 写真をさらに引き伸ばし、赤い球体の部分が拡大表示される。

 連続でシャッターを切るかのように画面が切り替わり、その度に次々と補正がかけられていく。

 解像度が上がり、最初に写し出された豆粒のような状態に比べて、はっきりとした球体が表示される。

 だが補正にも限界があり、どうしても全体像がぼやけたように写ってしまう。

 それでも鮮血のように赤い姿は不気味であった。

 

 再び写真が切り替わる。

 交戦データと併用して作モデリングされたアンノウンの全体予想図を立体モデル化したものだ。

 

「なにこれ……これ本当に兵器なの……?」

 

 ルナマリアが絞り出すような声で驚くのも無理はない。

 その約300平方キロメートルはある面積に対して、驚くべきはその『薄さ』である。

 中心の球体を除いた『本体』の薄さは、約5マイクロメートル(0.000005メートル)しかないのだ。

 しかも鏡は一枚鏡ではなく、何十億という小さな鏡の集合体であるらしい。

 恐ろしく強力な電磁障壁(新型の陽電子リフレクターではないか、という推測が付随されている)を展開しており、攻撃が通用しなかったというデータもある。

 円盤本体からは電磁スペクトル分析でも独特の波形を検出しており、どうやら『未知の物質』で構成されているらしかった。

 そのどれもが驚くべき情報ばかりである。

 

「嘘だろ、なんだよ『未知の物質』って……

 まさか、宇宙人の襲来とか言うんじゃないですよねタリア艦長……?」

 

「宇宙人じゃないわ」

 

 シンの動揺で枯れた声に、アスカが張りのある声が応える。

 断言する少女に、シンとルナマリアが顔を向ける。

 そこには威風堂々と腕を組み、モニターを凝視しているアスカがいたが──その表情から驚愕の色は隠しきれていなかった。

 

「じゃあ、なんだよ。

 お前、あれが何か知ってんのか?」

 

 驚くときも偉そうな奴だと思いつつ、シンは生意気な少女に問い質した。

 しばらく「どう答えたものか」と思案する様子を見せていたアスカだったが、組んでいた腕を解き、再び腰に手をやりながらシンを睨み返す。

 

「──『使徒』と呼ばれるものよ」

 

シト(angel)?」

 

 アスカが予想したとおリ、完全には理解しかねた反応をパイロット達は示した。

 遠い過去に置いてきた宗教的概念存在の総称だったから、というのもあるだろう。

 

「あたしも詳しい事は知らないけど……人類の存在を脅かす、あたし達の『敵』とされる存在。

 エヴァンゲリオンは使徒と戦い、倒すために作られたものなの」

 

 アスカがいた世界、とやらの説明はパイロットや一部のクルーにのみ(ごく簡単にではあるが)伝えられていた。

 艦長からの話とはいえ、やはりにわかには信じられない。

 というより『受け入れがたい』と言い換えるべきか。

 しかしモニター上に表示され、現実に迫りつつある「それ」や、艦内にあるエヴァンゲリオン弐号機を見た後では信じざるを得ない。

 信じるしかないようだった。

 

「──まさか、このタイミングで現れるなんてね」

 

 中央部分に鎮座する赤い球体……コアと呼ばれる部分の存在が使徒である証拠といえるだろう。

 あの輝きは何度も目にしている。

 エヴァンゲリオンで使徒と戦ってきたアスカが見間違えるはずがなかった。

 それでもレイは別の可能性を示唆してきた。

 

「君と……エヴァンゲリオンと一緒にこちらの世界に来たという可能性は?」

 

「それは否定しきれないけど、可能性は低いでしょうね」

 

 転移する前、ジオフロント内に使徒は1体しかいなかった。

 さらに使徒は複数同時に出現した例がなく、あの場でも他の使徒が潜んでいる反応は無かった。

 アンビリカルケーブルによる電力供給の必要がなくなった原因……S2機関が弐号機内部に出現したのも、倒した使徒から得たのではないかと推測できる。

 したがって、あのジオフロントに侵攻してきた使徒は『完全に倒した』のであり、こちらの世界に存在しているとは考えられなかった。

 

 つまりあの転移の際に、他の使徒を連れてきた可能性は限りなく低いという事になる。

 

「ということは」

 

 レイの言葉にアスカは頷く。

 

「こちらの世界にも元々『使徒』が存在していたって事になるわね」

 

 何という運命だろうか。

 おおよそ生物と呼べるような形状ではない化物と戦う世界から隔絶されたと思ったら、どうやら切っても切れない関係にあるらしい。

 だがアスカの瞳は燃えていた。

 

 望むところだ。

 

 自分という存在は、エヴァンゲリオンに乗ってこそなのだから。

 使徒と戦って勝つ事こそが自分自身の証明なのだから。

 

「待機命令は出ているけれど、戦闘態勢は維持せよという指示も出ているわ。

 つまり、この使徒と呼ばれる物体に対する何らかのアクションを取る算段が進められている……ということでしょうね」

 

 タリアは、アスカの静かに燃える闘志にテコを入れるようなタイミングで部下達を見つめ直す。

 シンの背筋が伸び、ルナマリアは瞳に緊張を宿らせる。

 レイは静かに姿勢を正し、アスカは腰に手を当て不敵に笑う。

 

「使徒迎撃の任務が課せられた場合は、ミネルヴァとアスカさんを加えたこのチームで当たります」

 

 タリアの言葉には、戦う者が秘める確固たる意思があり──それだけに重大な事態であることを強く感じさせた。

 同時に頷く4人の傍で。

 

 モニターの中の矢印は、不気味に、静かに進行を続けていた。

 

 

 




書き留めに入るので、しばらくお待ちください。

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