流魂街の外れの林。
鳥や小動物たちが穏やかに暮らしている樹林は、遠く瀞霊廷で生活を営んでいるはずの死神たちで騒がしかった。
「八班、終わりました! 篠木事務部長どの、次のご指示を」
「…了解。じゃあ十五班と合流して資材搬入に回ってもらおう」
「はっ!」
十三番隊の隊士の報告を聞きながら手元の機材とコードを繋ぎながら次の仕事を差配する清一郎の顔には疲労の色が見える。
「……どうにか終わりそうだな」
席次が上の死神たちの代わりとはいえここまで大勢にあれこれ指示を飛ばすことに慣れていない清一郎は、差し込んでくる夕日を背に一言そうこぼした。
ふだん関わることのない他の隊の隊士どうしで進めている作業も、特に大きな混乱もなく終えることが出来そうだった。
「おう篠木ィ、こいつはどこに置いとけばいいんだ?」
「ここでいいですよ、副隊長」
後ろから、大きな影が清一郎を覆う。
二番隊副隊長、上司の大前田だった。隊士たちに混ざって本部で使う物品を運んでいる。
「そうか、よっと……あークソ重たかったぜ」
「お疲れ様です」
ずしん、と土埃を舞いあげ置かれた木箱に大前田が腰掛けた。
「これで全部ですか?」
「いいや、まだあるぜ。でもこんな重いモン一人で三往復もしたんだし、ちょいと休んでもバチは当たらねえって」
お気に入りの油煎餅を懐から取り出して頬張りながら、大前田が尋ねてくる。
「つーかよ、篠木。なんでお前がここの設営責任者で、俺様が荷物運んでんだ?」
そう、いまこの野営地の全体の指揮を任されているのは、副隊長の大前田ではなく清一郎なのだ。
「…さあ? 自分も砕蜂隊長から副隊長にお願いしておくよう伝言もらっただけですから」
「……本当かそれ?」
もちろん、本当である。
ただし、
実は砕蜂に「あいつに任せたら終わるものも終わらん」と耳打ちされ、大前田には適当に仕事を割り振って代わりに清一郎が指示を出すよう厳命を下されたのだ。
副隊長ではあるがお世辞にも指揮が上手いとは言えない大前田。彼に野営地のことを任せた日にはとんでもないことになる――。
せめて陣地構築くらいは円滑に終わらせたいという砕蜂の思いから、清一郎にその役が回ってきたのだった。
「でもよォ、ふつう隊長が不在のこういう時は副隊長の俺が音頭取ってやるもんじゃねぇのか?」
「…ほらたぶんアレですよ、本部で使う機材がデリケートだから、分かる人に動かしてほしかったんですよ、きっと」
「なるほどなぁ、そういうことなら隊長も直接俺に言えばいいのによ」
たしかに機材の中には借り物があるので慎重に扱いはするのだが、実験データを取るような精密機器の類は持ち込んでないし、そもそもそんなものを大前田が腰掛けているようなふつうの箱に梱包して運んだりしない。
大前田にしては珍しく鋭い指摘に窮しかけたが、どうにか切り返せた。
「そろそろ隊長たちも帰ってこられる頃ですし休憩終わったほうがいいですよ?」
「まだ帰ってくる時間じゃねえだろ? 十三番隊のあの三席たちもここにいねぇんだしもう少しゆっくりさせろや」
そもそも、大前田以外の指揮権を持っているはずの隊長格たちは何をしているのか。
まず十三番隊の三席の清音は、糧食班と炊き出しの準備に取り掛かっている。
腹が減っては何とやら、明日の演習に向けて英気を養うため重要な役割だ。
そして彼女と同じく三席の小椿仙太郎は、到着して早々に浮竹に命じられ辺りの哨戒に出掛けている。
先だっての調査で人や虚がいないことは確認済みだが、何事もダブルチェックというのは大事。これも大切な任務だ。
そして肝心の砕蜂・浮竹の両隊長は「演習ポイントの視察に向かう」と言い残し、数名の伴を連れて瞬歩でこの場から消えた。
トップが現地の地形を把握し綿密な打ち合わせをしておくのも、肝要だ。
「だいたい視察つってもこんな木だらけの場所で見るポイントなんて大してねえだろ。どうせ物見遊山気分でその辺り適当にウロついてるとかじゃねえのか?」
「……隊長に限ってそんなことないですよ」
「いいや
「…一応忠告しときましたからね?」
「…え?」
直後、背後から恐ろしい
「――仕事をサボって上官批判とはいいご身分だな」
「げえっ、た、隊長ぉ!?」
視察から戻ってきた砕蜂が、眉間に皺を寄せ腕を組んで仁王立ちしている。
居直った大前田が、顔色を恐る恐る伺い尋ねる。
「い、いつの間に帰ってきてたんスか…?」
「貴様が呑気に油煎餅を頬張ってる頃にはすでに戻っていたな」
「そそ、そうなんスね…!」
「それで篠木に進捗の確認をしようと近寄ってみれば……大前田ァ!!」
「ひぃいいい!! スンマセンしたおぶえぇ!!?」
巨体に似合わない素早さで土下座をした大前田。
その頭を砕蜂が引っ掴んで、メリメリと音を立たせながら地面に埋めた。
「罰として貴様は今晩の飯抜きだ。朝までそこで反省をしろ」
鉄拳制裁を喰らい何とも言えない姿のまま放置される大前田。
自業自得とはいえ、少しやり過ぎな気も否めない砕蜂の所業に清一郎は心の中で副隊長に少しだけ合掌し、途端に切り替えて何事もなかったように問いかけてくる隊長に対して少しだけ戦慄した。
話は頭の中で出来上がってるのに自分の文章力が残念すぎて一向に筆が進まない件
次回は演習の話に入れる……はず
まだまだ登場させたい人たちいるのにそこまでたどり着ける気がしない