ガンダムビギニングダイバーズ   作:カシュー

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押しかけ師匠

ハードコアディメンション【ヴァルガ】、そこはお互いの同意なくバトルを行える戦闘狂の巣窟。そこでは多くのトップランカーが自己鍛錬のために訪れては天災のように暴れて回ることがある。

【冷血の伯爵】と呼ばれるマサトもそのトップランカーの一人だ。愛機の【トールギス・アイアンヴレイヴ】を駆り、次々と目の前を敵を葬っているのだ。特にここ数日は荒々しい戦い方をしている。理由は至極単純。かつての目標であったレイアが初心者ダイバーとつるんでいる内に腕を落としていたからだ。

 

「リーダー、ここにいましたか」

 

背後に青いレギンレイズが現れる。

 

「フウか……どうかしたか?」

「いや、そろそろ轟炎フォース祭に向けてミーティングなどをしておいたほうが良いのではないかと思いまして」

 

レギンレイズのダイバーである【フウ】は堅苦しい口調でそう言うが、マサトは否定する。

 

「そんなことをしなくとも、相手のフォースに合わせて臨機応変に作戦展開をすることは出来るだろう。お前達は個人の力をつけていれば十分だ」

 

フウとその双子の弟のライは、個人の実力はそれほど高くないが、連携しているときは上位ダイバーに食ってかかれるほどの力を持っている。マサトはそれを見込んで彼らをフォースのメンバーに入れているのだ。

 

「とはいえ、ここで戦うのもそろそろ飽きてきた頃合いだ。フォースネストに帰ろうと思うが、その前にしておきたいことがある」

「しておきたいこと……ですか?」

 

 

 

 

 

「これでいいのかな……」

 

烈火組とアライアンスを組んだ翌日、俺たちは轟炎フォース祭の申し込み登録をしていた。

 

「わざわざ、みんなで集まる必要はなかったんじゃないですか?」

 

申し込みはリーダー1人で行うことが出来るため、俺一人が来るだけで十分なのだ。

 

「別に良いんじゃないかしら。ついでよ、ついで」

 

先輩は伸びをしながらそう言う。

 

「さて、これで申し込みは終わったみたいだけど、どうする?これで解散でもいいと思うんだけど」

「そうですね、俺もアサルトアーマーの完成を急ぎたいし……」

 

ベルさんとカズはそう言うし、今日はこれで解散することになった。

 

「たっくん、ちょっとこれから付き合ってくれる?」

 

そんな中、シノが俺に話し掛けてきた。

 

「どうした?何に付き合えば良いんだ?」

「ビルドコイン……だったっけ。あれが結構貯まってきたから、服でも買おうかなって思ってさ」

「あぁ、なるほど。それでも、俺はそういうのは詳しくないから、調べながら行くことになるぞ?」

 

正直、俺はGBN内でのファッションには興味がない。だから、俺の服装はデフォルトのパーカーを羽織っているだけだ。

 

「でも、たっくんと二人で行きたいんだよ。男の子の意見も聴きたいしね」

「そっか……それなら、行くか」

 

 

 

 

 

調べてみると、ジャパンディメンションの市街地にはブティックが多く営業しているということが分かった。

 

「こんなにあるとどこから行くか迷っちゃうな……」

「時間はあるんだ。片っ端から見て回ろう」

 

こうして俺達はブティックで服を見て回った。時に試着をしてみたりもしたが、シノの容姿が良いからか、何を着てもよく似合っていた。ただ、さすがにミーア・キャンベルの服は着させないことにした。

 

「でも良かったよ。たっくん、リーダーになってから結構気張ってる感じだったから……」

 

店を回っているとき、シノがそう言って俺に微笑みかけた。

 

「そうかな……別にそんなことなかったと思うけど……」

「それは自覚がないだけだよ。初めてのフォースバトルの時も、ホムラさん達とアライアンスを組んだときだって、顔もこわばってたし、緊張してるみたいだったよ?」

「マジか……」

「でも、ホムラさんと話をした後は緊張もほぐれたみたいだったけどね」

 

それは確かにそうだ。昨日、ホムラさんと話をしたことで、俺はリーダーとしてのあり方を知った。緊張がほぐれたように見えるのはつまりはそういうことなのだろう。

 

「それじゃあ、次はたっくんの服も買いに行こうか」

「え?俺の分もか?」

 

予想していないことを言われて素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「当たり前だよ。今日の目的の七割はたっくんのその地味な服装をなんとかするためなんだもん」

「地味で悪かったな……」

「とりあえずこの服着てみてよ。きっと似合うから」

 

シノが渡してきたのは特定のキャラのコスチュームというわけではなく、このゲームオリジナルの服だ。俺は素直にシノの言うことを聴く。

 

「うん、やっぱり似合ってる!!これを買おう」

 

鏡で服を着た自分を見てみるが、確かに似合ってる。

 

「正直、最初は俺には合わないと思ってたけど、着てみると凄く合ってたよ

……!!よくこれを持ってきたな……」

 

俺はつい感心してしまう。

 

「服とか見てると、これならあの子に似合いそうとか、いつも考えてしまうんだよ」

「なるほど……経験がなせる技ってことか」

 

そう言うと、シノは微笑んでドヤ顔を見せる。

 

「本番にはこれを着て来てよ!!」

「わかってる、わかってるよ」

 

俺は笑ってシノの言うことを聞く。そんな中、俺の前に一人の男が立っていた。

 

「実際に面と向かって会うのは初めてだったが、こんな不抜けた顔だったんだな」

「は?」

 

その男はかつて俺が敗北したマサトだった。

 

「えっと……この人はどちら様?」

 

シノは少し戸惑い気味に聴いてくる。

 

「烈火組の元メンバーだよ。それにしても、なんでここに……?!」

「一昨日のフォースバトル……まだまだだが、少しは良くなったらしいな」

 

こいつもあの動画を見たのか……あのジーチューバーの影響力がそれほど強いということなのか?

 

「それはどうも……わざわざ皮肉を言いに来たのか?」

「いや、俺がするのは警告だ。貴様達も轟炎フォース祭に出るんだろう?ならば、レイアの顔に泥を塗るような真似はするなよ?」

 

マサトは俺の胸ぐらを掴んで睨みつける。

 

「ちょっと!!何するんですか!!」

 

シノがマサトの腕を掴んで止めようとする。

 

「私たちは全力で頑張ってるんです!!先輩に恥をかかせるとか、そんなことは絶対に有り得ません!!」

 

それを聞いて、マサトは俺の胸ぐらから手を離す。

 

「シノの言う通りだ。俺たちは全身全霊で戦う。お前たちを倒すのは俺達だ!!」

 

俺はさっきのマサトのように睨みつける。

 

「だったら、轟炎フォース祭で証明して見せろ。お前達が俺達と戦うにふさわしいということを」

「言われなくたって!!」

 

そう言い返すと、マサトは踵を返し、立ち去っていく。

 

「たっくん、大丈夫?」

「あぁ、まさかこんなことになるとは思っていなかったけど……」

 

シノに気を使わせないように俺は笑って答える。

 

「でも、こうやって啖呵をきったんだ。これで負ける訳には行かなくなったな」

「いいんじゃない?元々負けるつもりはなかったでしょ?」

 

シノはそれが当然であると笑って答えた。

 

 

 

 

シノと別れ、1人になった俺はログアウトしようとしていた。だが、その直前に男に話しかけられる。またマサトだと思っていたが、別の人物だった。だが、俺はその男を知っていた。

 

「君、タクミ君だよね」

「あなたは……確かシリウスさん」

 

今度は俺達のフォースバトルを解説する動画を配信したジーチューバーのシリウスだった。

 

「あの動画、見てくれてたんだ!!結構反響が良かったんだよ!!ありがとうね!!」

 

シリウスさんは大きな声を出しながら、俺の背中を何度も叩く。

 

「それで?俺に何の用ですか?もうログアウトする予定だったんですが」

「いやいや、ちょっと待ってよ!!君にも損は無い話だからさ!!」

 

シリウスさんは必死に俺を止める。その必死さに負けて、俺は少し話を聞くことにした。

 

「話っていうのは、俺の弟子になってみないかってことなんだけどさ」

「は?」

 

さっきのマサトに言われたことよりもピンと来なかった。というか、こういうものはこっちから頼むものじゃないのか?

 

「君の戦いを見て、もっと君の実力を伸ばしたいと思ったんだよ」

「……それは、嬉しい話なんですが…」

 

それを聞いても、やはり、分からない。昨日のホムラさんのこともそうだったが、俺はイマイチ人の親切を信用しきれない。何か必ず裏があると疑ってしまうのだ。

 

「どうする?君が嫌って言うなら俺も諦めるつもりだけど」

 

だが、これを断れば、こんな機会は二度と訪れない。

 

「いえ、是非お願いします!!」

 

俺はシリウスさんに弟子入りすることになった。

 

 

 

 

「さて、弟子になったって事で、君の実力を知っておきたい。フリーバトルで一戦しようか」

 

シリウスさんは自身のガンプラを出現させる。それはベースとなっているガンプラが一切分からない、まるで中世の騎士のような鎧を纏っている。鎧にヴェイガン系統のガンプラのパーツが使われていることはかろうじて分かったが、鎧の中のガンプラについては見たことがない。

俺もそれを見てが生まれるを出現させる。

 

「それじゃあ始めようか。【キャバルリ・シリウス】!!行くよ!!」

 

シリウスさんのガンプラ、キャバルリ・シリウスはレイピアを構え、アサルトエクシアに襲いかかる。

 

「はっ速い!!」

 

俺はあっけにとられながらも、キャバルリの攻撃を避ける。反撃に移ろうとしてもその余裕はなく、すぐに追撃が迫る。

先輩やマサトと戦ったときとは違うプレッシャーを感じる。

 

「まるで、俺の次の動きを知っているみたいだ……!!」

 

口ではそう言っているが、頭の中ではそのプレッシャーの正体は知っていた。

シリウスさんは俺達のフォースバトルを見て、それを実況解説していた。それならば、通常以上に観察しているはず。自分で意識していない癖、とっさの回避方法、反撃のための動き、そのすべてが一昨日のフォースバトルの出ているわけではなかったが、そこはこれまでの実況解説でパターンのプロファイリングをしていると言うことだろう。

 

「どうした?動きが鈍いんじゃないか?」

 

そんな口を叩きながらシリウスさんはアサルトエクシアをレイピアで斬りつける。

 

「クソッ!!このままじゃ!!」

 

俺は後退して状況を建て直そうとする。しかし、レイピアの刃が射出され、アサルトエクシアの右股を貫く。

刃を失ったレイピアはキャバルリの腰に取り付けられたホルスターで刃を補充する。

 

「これはまずいな……」

「まだ本気じゃないだろ?早く本気を見せてくれよ」

 

キャバルリの動きは先輩やマサトのそれとは違う。先輩達の動きが精密な機械だとするならば、シリウスさんの不規則な動きは野生の動物に近い。それでいて正確に弱点を突いてくるのだから余計に質が悪い。

 

「それじゃあ、行きますよ。TRANS-AM!!」

 

アサルトエクシアが赤く光り、キャバルリの背後に回る。

 

「なかなかの速さだ!!でも、その動きは知っている!!」

 

キャバルリは即座に振り向き、レイピアで斬ろうとするが、その距離にアサルトエクシアはいなかった。そのレイピアの先にギリギリ当たらない距離に立ち、それよりもリーチのあるGNエクスカリバーで反撃する。

 

「見事だよ。攻撃を受けながらレイピアのリーチを探っていたという訳か!!」

 

反撃はキャバルリの左小手に大きな傷を作っただけではあったが、その傷によって左腕は死んだ。

 

「想像以上だ……!!ここからはこっちも全力で行くよ!!」

 

そう宣言し、キャバルリは一気に距離を縮めようとする。対する俺は距離をとるように後退する。

 

「反撃の機会をうかがっていても、攻めの姿勢じゃないと勝てないよ!!」

「誰が受けの姿勢なんですか!!」

 

俺はGNブレードブラスターを構え、キャンベルの頭部を狙う。引き金を引き、ビームが発射されるが、キャバルリはレイピアをそのビームに突きを繰り出す。すると、ビームはまるで傘のように八方に分散され、無効化される。

 

「はぁ!?」

「動揺で隙だらけだよ!!」

 

予想だにしていなかった、回避方法にあっけにとられ、そのままコクピットをレイピアの貫かれる。

 

 

 

 

「お疲れ様!!思ってたよりも動けるようで安心したよ」

「とは言っても、負けましたけどね……」

 

バトルが終わり、俺はシリウスさんと休憩をしていた。

 

「それでも、課題が見つかっただけでも万々歳じゃない?まず最初に教えることは、動きのレパートリーを増やすことだ」

「動きの……レパートリー……?」

 

シリウスさんの顔が真剣になり唐突にレッスンが始まった。

 

「例えば、回避方法、動きがフォースバトルの時と全く同じだった。これから戦うことになる相手は君達のことを必ず研究する。そんな中でパターン化された動きを知られたら、必ずそこを突かれる。動きが読まれるわけだ」

「そのために、回避方法を増やして動きを読まれづらくさせる……ということですか」

「その通り、僕が最後に見せたビームの無力化は、轟炎フォース祭が始まるまでに習得させるからね?」

「えっ、マジですか!?」

「マジだよ。それじゃあ、まずはNPD相手にやってみよう。後、これからは僕のことを師匠と呼ぶように!!」

「はっはい!!師匠!!」

 

こうして、俺と師匠に数日にわたる修行が始まった。

最初はNPD、ある程度慣れてきたら実戦でヴァルガの乱戦に参加するなど俺がより実践に強くなれるように修行メニューを考えてくれたのだ。

 

 

 

 

 

そして修行の日々が終わり、轟炎フォース祭の幕が上がる。

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