ガンダムビギニングダイバーズ   作:カシュー

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もう一つのスタート

「ねぇ、アオヤマ君、聞きたいことがあるんだけど」

 

昼休み、弁当を食べようとしていた時、短い茶髪の少女に話しかけられる。クラス委員のシノミヤ・カナだ。

 

「どうした、シノミヤ?なんか用か?」

「いや、そのね?GBNって知ってるかなって思ってさ」

 

意外な人物から意外な言葉が出てきたため、少し固まってしまう。

 

「知ってるけど、なんでそんなことを?」

「GBNって確かガンプラを使って戦うことができるんだよね。それで、私にガンプラバトルを教えて欲しいの」

 

また、意外なことを言ってきた……

 

「別にいいんだけど、なんでまた…」

「うちの生徒会にホウジョウ先輩って人がいるのは知ってる?私、その先輩に憧れてるんだけど…その人がGBNをやってるみたいで、できれば私も戦ってみたいの」

「は?」

 

俺は再び固まってしまう。

なんで先輩のことを知ってるんだ?多分俺しか知らないことなのに……

 

「昨日、近くのデパートでそのゲームをやってる所を見かけて…」

 

シノミヤはスマホでその様子の写真を見せる。それは先輩が周りを警戒しながらGBNの筐体に座ろうとしている所だった。

 

「ガッツリ撮られてんじゃんか……」

 

俺は先輩に少々呆れながら呟く。

 

「それで、アオヤマ君がガンプラに詳しいって聞いてさ」

「あぁ、それでか……」

 

今日は別に予定はないしな……

 

「なんなら、今日の放課後にでも、ガンプラを買いに行くか?」

「いいの?予定とかない?」

「まぁ、どうせGBNにログインすることぐらいの予定だったし」

「それじゃあ、お言葉に甘えようかな」

「あと、先輩のことは他言しないでほしい」

「うん、わかった」

 

シノミヤは笑顔で答えた。

 

 

 

今日は先輩に呼び出されることはなかったので、カズミと一緒に昼食を食いながら、昨日の対戦ミッションの映像を見ていた。

 

「昨日、あの後マサトってダイバーについて調べてたんだけどさ」

「タクミもか、俺も調べてたんだ」

「あのダイバー……フォース【烈火組】の全盛期の一軍の一人だったんだな」

 

烈火組は一年前にトップクラスのフォースに仲間入りしたのだが、メンバーが次々独立や脱退していき、現在はたった二人だけでトップ層に残留しているフォースだ。しかし、未だ元メンバーに信頼が寄せられ、烈火組とその傘下ははGBN内の一大勢力となっている。

メンバーたちの独立のきっかけとなったのが、レイアこと、先輩が突然脱退したことなのだ。

 

「一軍ともなれば、当時から相当の腕だったんだろう。先ぱ……じゃない、レイアさんを圧倒していたのも一応納得できる」

「あの【トールギス・アイアンヴレイヴ】も、過去のログで見たことがあったが、昨日のは更にクオリティを上げていたな」

「なんていくか、全く敵わない相手なんだけどさ、いつかは勝ってみたいって……分不相応な対抗心を燃やしてんだよな」

 

自重するように俺は笑う。カズミもそれを聞いて笑うが、その笑いは決して俺を馬鹿にする笑いではなかった。

 

「いいじゃないか、分不相応で。今は分不相応でも、いつかは肩を並べることが出来ると、俺は信じてる」

「あぁ、そうだな。そうだよな」

 

そのカズミの言葉を聞いて、なんとなくすっきりした感覚を覚える。

 

「ありがとうな、なんか気が晴れたよ」

 

それを見て、カズミは軽く笑った。

 

 

 

放課後、俺はシノミヤと街を歩いていた。目的地は当然、いつもの模型店だ。

 

「GBNって意外とガンプラを持っていなくても、オープンワールドゲームとして楽しむ人もいたりするんだけど、やっぱりバトルが目的始めるなら、自分用のガンプラは作っておいたほうがいいと思うよ」

「それで今から私のためのガンプラを買いに行くってこと?」

「そういうこと。一応行きつけの模型店だから、店長もガンプラ選びに協力してくれるはずだしな」

 

そんなことを話していると、店についた。ほかの客はいないようだ。

 

「おっタクミ君、いらっしゃい。おや、その子はお客さんかい?」

「いや、俺も客ですよ?」

「はじめまして、シノミヤって言います……」

 

シノミヤは丁寧に店長にお辞儀をする。

 

「もしかして、タクミ君のこれかい?」

 

店長が小指を立ててこちらに見せる。

 

「「違います!!」」

 

偶然にも同じタイミングで否定する。

 

「あはは、ごめんごめん。それで?シノミヤさんはガンプラを買いに来たのかい?めぼしはついてるの?」

「いえ、まだそこまでは決まっていなくて、店長さんのおすすめを聞きたいなって思ってまして」

 

すると店長はわかりやすくうれしそうな表情を浮かべる。

 

「そっかぁ、何がいいかな。最近の作品だとバルバトスやGセルフかな、いっそ初心に帰ってファーストとか?」

「アオヤマ君は何がおすすめなの?」

「初心者なら下手に癖のある機体よりもストライクみたいなシンプルなほうがいいと思うけどな」

「ストライクってこれのこと?」

 

シノミヤがエールストライクの箱を持ってくる。

 

「うん、癖がある機体だと改造するときにその癖に引っ張られることが多いんだよ。逆に、シンプルな機体だと改造の幅も簡単に広がると思うんだ」

「なるほど、たしかにシンプルながいいかも」

 

そう言ってシノミヤはシンプルそうなガンプラを探して回る。とはいえ、ガンダムのことをほとんど知らないシノミヤがそれぞれの機体の性能などわかっていないのだが、真剣に探しているところが正直ほほえましい。

 

「あっ、これなんかどうかな?かっこいいし!」

 

シノミヤが見せてきたのは、フォースインパルスのガンプラだった。確かに、多少の可変機構はあれど、それほど癖が強いわけではなく、それでいて機動性も高い、いい機体だ。

 

「いいんじゃないか?扱いやすいガンプラだと思うし」

「僕もそれがいいと思うよ!後は、ガンプラを作るための工具だけど、レンタル代はサービスしてあげるよ」

「いやいやいや、さすがに申し訳ないですって!!」

「いいんだよ、僕はガンダムのファンが一人でも増えてくれればそれぐらいのサービスは惜しまないよ」

「せっかくだし、いいんじゃないか?」

「えぇ……それじゃあ、お言葉に甘えて……」

 

そうシノミヤは笑顔で答えた。

 

 

 

この模型店の奥にはプラモデル作成用のスペースがある。俺はそこで、シノミヤの初めてのガンプラ制作のサポートをすることにした。

 

「基本的には、ニッパーでパーツを切り離してから、ヤスリとかで切った跡を削って消していけばいいんだけど、今回はニ度切りでいいと思うよ」

「まって、何言ってるのか全然わからない!!」

 

シノミヤが今、プラモデルのことを全然知らないということを忘れて、専門用語ばかり使って話をしていたことに気がついた。

 

「あっ悪い、わかりづらかったな。要は、ニッパーでパーツを切り離すときは、二回に分けて切った方が切った跡が比較的きれいになるって話だ」

「ほんとだ、きれいに切れた」

 

シノミヤがうれしそうにパーツの切った跡を見せてくる。インパルスが出来上がっていく度にシノミヤはより楽しそうな顔になっていく。

 

「プラモデルって楽しいね。自分の手の中で何かが出来上がっていくのって、なんかわくわくする」

 

インパルス本体が完成し、最後にフォースシルエットが完成する直前、シノミヤはそう言った。

 

「ガンプラ、少しは楽しめそうか?」

「少しなんて物じゃないよ、これまでやってきたことで一番楽しいかもしれない。しかも、GBNではこのガンプラに乗ることができるんでしょう?楽しみになるに決まってる」

 

シノミヤは満面の笑みを浮かべる。俺は、自分の好きな物を同じように好きな人には何度か会ったことがあるが、これから好きになっていく人に会うことは初めてであり、これまで感じたことのない高揚感を覚えた。

 

「できた、できたよ!!アオヤマ君!!」」

「うん、見てる。見てるから、あまり叩かないで」

 

シノミヤが何度も肩をたたいてインパルスを見せてくる。初めて作ったと考えれば、十分きれいに作られているように思う。

 

「じゃあ次はGBNにログインだな」

「確か、向こうの部屋に筐体があるんだよね。早く行こうよ」

「あっ、まずダイバーギアを貰ってこないと。多分店長に言ったらもらえると思うし、行ってきなよ」

「わかった、先に向こうの部屋で待ってて」

 

筐体に座って、鞄からエクシアとダイバーギアを取り出してセットしておく。

 

「お待たせ、これとガンプラを筐体にセットするんだよね」

 

部屋に入ってきたシノミヤは始める準備をする。

 

「アバターの作成で時間はかかると思うから、先にログインしておくな。あと、ログインしたら、近くに喫茶店みたいな雰囲気の部屋があると思うからそこで待ち合わせることにしよう」

「そっか、初めての場所だと迷子になるかもしれないしね」

「あぁ、アバター次第では、誰が誰だかわからなくなるだろ?でも、待ち合わせ場所さえ決めておけばなんとかなると思ってな」

「どんな見た目にもなれるんだ……」

「それじゃあ、またGBNで」

 

俺は軽くシノミヤに手を振ってGBNにログインする。

 

 

 

 

いつものロビーにつくと、いつも通り平日にも関わらず大勢のダイバーが集まっている。

アバター作成は10分もかからない。待ち合わせ場所においてある椅子に腰をかけて待つことにした。

 

「たぶん、待ち合わせ場所はここじゃないかしら?」

「あっ、ここだと思います。ありがとうございました」

 

部屋の入り口に二人のダイバーが立っている。一人は茶髪のロングヘアーをポニーテールでまとめた少女。ブレザーをモチーフにしたアイドルの衣装のような服装をしている。もう一人は、紫色の髪に赤い服の男性?どことなく女性っぽさも兼ね備えていて、変わった雰囲気の人だ。というか、フォース【アダムの林檎】のマギーさんじゃないか?世界トップクラスのダイバーで初心者用のアドバイザーとしても活動していると噂では聞いたことはあったが、実際に見たのは初めてだった。

 

「もしかしたら、彼がそうなんじゃない?」

「かもしれません、ちょっと話しかけてみます」

 

二人は、俺を見ながら何やら話をしている。すると、女の子の方が俺に近づいてきて話しかけてくる。

 

「もしかして、アオヤマ君ですか?」

 

聞き覚えのある声、俺の名字を知っていると言うことで、俺は彼女がシノミヤのアバターであることに気がついた。

 

「やっぱりそうだった。なんて言うかあれだね、リアルの方がかっこいいって言うか、何というか……」

「それは褒めてるの?それとも貶してるの?」

「ごめんごめん!!そんな、貶すつもりはなかったんだけど……」

「それならいいんだけど……ええっと?」

 

さすがにオンラインゲームの中で、本名で呼び合うわけには行かないだろう。すると、それを悟ったようにシノミヤが口を開く。

 

「こっちでは【シノ】って名前にしたの、できればそっちで呼んでくれる?」

「あぁ、俺もタクミって呼んでくれ」

 

そして、シノはマギーさんの方へ行き、俺を紹介している。

 

「彼が、私にガンプラバトルを教えてくれるタクミ君です、それで、このお姉さんが私に待ち合わせ場所を教えてくれたマギーさん」

「もうっ!!お姉さんだなんて、シノちゃんったらうまいこと言って!!はじめまして、私がマギーよ♪よろしくね?」

 

マギーさんが握手を求めてくる。

 

「はっはじめまして、タクミって言います。会えて光栄です」

 

俺も握手で答えた。ただ、相手が有名なダイバーであるためか、少々緊張している。

 

「さて、タクミ君。先ずは何をしたらいいの?」

「まぁ、チュートリアルミッションからだな。最初にそれをクリアして、ほかのミッションにも参加できるようになるんだ」

「初めてなのに詳しいのね、調べてきたのかしら?」

「あっ、俺はシノの付き添いなんですよ」

「あら、そうだったの。ごめんなさい、勘違いしてたわ」

「いやいや、気にしないでください。自分もまだまだなんで」

「そんなことないわよ、練習すれば簡単に強くなれるわ。それじゃあ、格納庫で機体を確認して、チュートリアルミッションに行きましょうか!!」

 

 

 

 

格納庫に行くと、俺のエクシアとシノのインパルスが立っている。その姿にシノは見とれているようだった。

 

「すごいね、タクミ君。自分が作ったガンプラに今から乗れるのよね?作るだけでもあんなに楽しかったのに、それに乗るなんて、一体どんな感覚なんだろう」

 

シノがわくわくしているのは顔を見れば十分わかる。

 

「チュートリアルミッションのエリアは少し離れていて、乗り物に乗って向かうダイバーもいるんだけど、シノちゃんはこのインパルスで行きたがってるみたいね♪」

「はい!早くこの子に乗ってみたいです!!」

 

シノは興奮気味にそう言った。

 

 

 

 

「そういえば、操作方法とか全然知らないけど大丈夫かな?」

 

デッキで出撃する直前のコアスプレンダーに乗りながら、シノは俺に聞いてくる。

 

「ある程度感覚で行けばできるとは思うし、一応俺もいるから操作の練習をしながらエリアまで向かおう」

「うん、わかった」

「それじゃあお先に、タクミ…ガンダムエクシアカスタム(ツヴァイ)、いきます!!」

 

レバーを思いっきり前に押しだし、エクシアがカタパルトから射出される。

 

「レバーを前に押し出すと、カタパルトが動くようになっているんだけど、インパルスはちょっと特殊でカタパルトとか関係なく、レバーを押し出すとコアスプレンダーが射出されて、ほかのパーツと自動でドッキングされるから、あまり難しい操作はないよ」

「わかった、やってみる。シノ、インパルスガンダム……行っきまーす!!」

 

出撃したコアスプレンダーは、同じく射出された他のユニットと何も問題なく、合体する。

 

「すごいよ、合体した!!」

「今回はオートでの合体だったけど、慣れてきたらマニュアルでの合体も覚えた方が、戦うときにいろいろ使えるかもしれないぞ」

「わかった。今度練習してみる!!」

 

シノミヤは決して完璧ではないものの、この短時間でインパルスを飛行させることが出来ていた。

 

「なんて言うか、末恐ろしいな……」

「タクミ君のガンプラはなんていうガンプラなの?」

「俺のは、ガンダムエクシアを改造した物だよ。名前はまだちゃんとは決まってない」

 

昨日の対戦ミッションの問題点を解消するために、俺はガンダムエクシアカスタムにさらなる改造を施した。リアアーマーにミキシングで作ったオリジナルのブースターユニットを二つ取り付け、各部にディテールを施した。そうやって、機体そのものの出来を上げることで、昨日のように武器の反動で機体が壊れないように防御力を上げている。

 

「とはいえ、今回はバトルはないんだけどな……」

「タクミ君のオリジナルってことか……いいなぁ。私もこの子を改造したいなぁ」

 

そんなことを言っていると、チュートリアルミッションのエリアに到着した。場所はファーストガンダムのニューヤークのようだ。

 

『はーい、ここからはシノちゃんひとりでミッションをやって貰うわ♪』

「えっ?タクミ君はミッション、やらないの?」

「チュートリアルミッションだからな、始めたばかりのダイバーしか参加できないんだ」

『とはいっても、相手は最弱に設定してあるNPCだから、あまり気張る必要はないわ♪』

「はい、がんばります!!」

 

インパルスがミッションのエリアに入ると、三機のザクが出現する。

 

「よーし、出てきた出てきた」

 

インパルスがビームライフルで射撃をするが、ザクはビルを盾にして避ける。

 

「あれっ?!当たらない!!」

 

避けたザクとは違う別のザクが、マシンガンでインパルスを攻撃する。

 

「うわああ!!ってあれ、全然ダメージが、入ってない……」

「インパルスはVPS装甲を持ってるからな。実弾の射撃によるダメージはある程度軽減される。射撃はよく狙って慎重に撃つんだ!!」

「よくわからないけど、相手からの攻撃はあまり気にしなくていいってことね」

 

とはいえ、一機を相手にしている隙に他の二機に攻撃されるという、数の力に追い詰められていく。

 

『頑張ってー!!自分の得意なところを活用して戦うことが、うまく勝つコツよ♪』

「自分の得意なところ……もしかして、相手がいつまでも飛んでこないのって……」

 

インパルスは一気にニューヤーク上空に飛翔する。

 

「これなら、死角はとられないはず!!」

 

ザクは空を飛び回るインパルスを迎撃しようとするが、シールドで完璧に防御される。

 

「挟み撃ちにならないように、先ずは端から!!よく狙って…慎重に……」

 

シノはその言葉通り、精密な動きで、右端のザクの胸部をビームライフルで撃ち抜く。一機目は崩れ落ちるように倒れ、インパルスは即座に二機目を捕捉する。

 

「当たった!!よし、次!!」

 

インパルスは二機目を左手に持ったビームサーベルで腹部を両断する。二機目は爆発し、その煙の中、三機目も撃ち抜く。大きな爆発音とともに、『MISSION CLEAR』の文字が表示される。

 

『お疲れ様~!!三機相手によく頑張ったわね♪』

「はい、ありがとうございます」

 

シノは嬉しそうに答える。

 

「あっ、クリア報酬でこんなの貰った」

 

シノは、俺のモニターにクリア報酬を見せる。指輪のようだ。

 

「これって、チュートリアルキャンペーンのレアアイテムじゃないか?確か千分の一ぐらいであたるっていう……」

「えっそうなの!?」

『あら、おめでとう!!あなた、強運の持ち主ね♪』

「へぇ~そうなんだ……」

 

シノは嬉しそうに指輪を見つめる」

 

「タクミ君も、ありがとうね」

「え?俺は別に何もしてないけど……」

「いやいや、タクミ君のアドバイスがあったから射撃がうまくいったんだから、感謝して当然だよ」

「あれぐらいのことなら、わざわざ感謝しなくたって……」

『もう、ありがとうって言われたなら、素直にどういたしましてぐらい言いなさい?」

「えぇ……じゃあ、どういたしまして……」

 

マギーさんの軽い注意を受け、素直に答えることにした。シノはそれを聞いて笑っている。

 

「それじゃあ明日もいろいろ教えてね、師匠?」

「誰か師匠だよ……」

 

それを聞いて更にシノは笑った。

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