フォースの名前が決定し、俺達はフォースを結成するための申請をしにGBNのロビーにいた。
「普通、フォースって何人ぐらい集まるんですか?」
シノが先輩に聞く。
「多くて十数人って所かしら。まぁ、トップフォースだと三桁を超えることもあるでしょうし、逆に一人でやってるフォースもあるわよ」
「十数人!?だったら、うちもメンバーもっと増やしてから結成した方がいいんじゃないの!?」
「いや、いいんじゃないか?これぐらいで」
カズはシノの言葉を否定する。
「えぇ、増やしすぎると、それぞれの目標にズレが生じやすいの。それがきっかけでフォースが崩壊するなんてこともよくある事例ね。特に新造のフォースが初対面のダイバーを何人も入れるのはいい手とはいえないわね」
「そうなんですか……」
「とはいっても、一人ぐらい後衛のダイバーがいると心強いけれどね」
「後衛ですか……」
「昨日のバトルロイヤルミッションのログを見させて貰ったんだけど、あの陣形は良かったと思うわ。ただ、実際にこのフォースであの陣形を再現すると、あのブレードブラスターでは限界があると思うの」
それについては先輩の言う通りだ。俺の腕の問題でもあるが、あの武器はそれほどの精密射撃が出来る物ではなかった。
「カズ君のジェイラインは元ネタから考えると、中遠距離用武器を装備したバックパックに換装できるのでしょうけど、それだけでは後方支援が足りないと思うの」
「それは確かに……」
カズのジェイラインにはモデルがある。ガンダム戦記というゲーム……実際はゲームが初出ではないのだが、ややこしくなるので今はその話はおいておこう。とりあえずそのゲームに登場する、ジーラインという機体だ。その機体は、アーマーやバックパックの武装を出撃時に換装することであらゆる作戦や状況に対応できるようになっている。そのコンセプトを採用しているジェイラインも、武装の換装を可能としているが、遠距離に対応しているものは存在しないのだ。
そんな時、シノが何かに気がつき、人混みから1人のダイバーを連れてくる。
「どうしたんだい?出会った途端に引っ張ったりしてさ」
そのダイバーはベルさんだった。後ろから白いハロもついてきている。
「おや?昨日いなかった人もいるんだね。初めまして、ソロで上位を目指してるベルって言います」
「こちらこそ。レイアと申します。初めまして」
「ベルさんって、フォースに入ったりはしないんですか?」
「そうだね、傭兵として短期間所属することはあるけど、今はどこにも所属していないよ」
『ヒトリミ!ヒトリミ!!』
「それだったら、今から作る私たちのフォースに入りませんか!?」
「おい、シノ!!勝手に話を進めようとするな!?」
「いいんじゃないかしら、あの方は話の流れでは遠距離に対応できるダイバーなのでしょう?」
「えぇ……!?だからって……」
「そうだね……確かにフォースに入った方が楽しいかもしれないね……うん、是非入らせてくれ」
「はいっ!!よろしくお願いします!!」
シノは嬉しそうに頭を下げる。
「また、私のガンプラも見せておいたほうがいいね」
「あれ?デュナメスじゃないんですか?」
「うん、あれはあくまで腕試しのつもりで使っていたんだよ。普段は別のガンプラを使ってるんだ。とはいっても、狙撃機だけどね」
「そうだったんですか。それじゃあ、申請にいきましょうか」
フォース結成の受付に行くと、少し面倒な手続きをして、晴れてビギニングダイバーズが結成することになった。
その時に、各メンバーの個人ランクを見ることが出来た。
タクミ、ランクD
レイア、ランクS
カズ、ランクD
シノ、ランクD
ベル、ランクA
まだ、先輩には届きそうにないな……
その事実を可視化することで、少しへこんでしまう。
それこそ、俺はまだスタートラインに立ったに過ぎないということだ。
「それで、次は何をしたらいいんですか?」
ベルさんにシノが聞く。
「今ちょうど、フォースデビューキャンペーンがあるから、フォースバトルを早速やろうか」
「それってどんなキャンペーンなんですか?」
「新造のフォースどうしがバトルして、両陣営共にかなりの量の経験値がもらえるっていう、一種のボーナスキャンペーンだよ。ここ最近はもらえる経験値が結構減らされたんだけどね」
「結局、経験値だけ集めてプレイヤースキルがまだまだじゃ、上に行ってもすぐに落とされるだけ。コツコツ経験値を稼ぎながら、実力をつけるのが長い期間で上位ランクに留まる最善の方法よ」
先輩がベルさんの説明に補足をつける。
「でも、ベルさんもレイアさんもいるから楽勝なんじゃない?」
「油断はいけないよ、シノ君。どんな相手でも全力で応えるのが礼儀というものだ」
『ユダンスナ!ユダンスナ!!』
「うっ……こんな小さいのに怒られた……」
シノがわかりやすく凹む。
「まっまぁ、どんな相手か分からないしさ、万全の準備をしてフォースバトルに臨もう」
カズがシノを慰めている。
「それじゃあ、フォースバトルの申請に行くんで、先輩についてきてほしいんですけど……」
「えぇ、勿論いいわよ」
「どんな感じです?ベルさんは」
申請が完了するまで、先輩と何気なくベルさんの印象を聞いてみた。初対面の相手が急に仲間になるということは、結構な戸惑いになると思う。
「そうね……まだ出会ったばかりだし分からないけれど、いい人だと思うわよ」
「そうですか……それならいいんですが……」
「気を遣ってくれてるのね……ありがとうね、でも大丈夫よ」
先輩は微笑んで俺の頭をなでる。
「からかわないでくださいよ……」
俺は手を払うが、先輩はまた楽しそうに微笑む。
「さて、申請も終わったようだし、みんなの所へ帰りましょうか」
帰って行く先輩の後を追い掛けた。
みんなの元に帰ってくると、カズが待っていた。
「お帰り、で?いつに決まったんだ?」
「デビュー戦は三日後の夜に決まった。学校が終わってすぐログインすれば、なんとか間に合うと思う」
「じゃあ、この三日間はガンプラの改造と作戦や戦術のミーティングに費やすことになるな」
「そうなるな。なら、この三日以内にエクシアも完成させないとな……」
「私もインパルスをもっと改造したい!!」
シノが割り込んで会話に入ってくる。
「どう改造したいの?」
「そうですね……もっと速く動けるようなガンプラにしたいですね」
「それなら、ミッションのクリア報酬の、ブースターユニットをプリンターで生成したらいいんじゃないかしら。ほら、このミッションとか簡単そうよ?何なら、私も一緒に挑戦しようかな」
「いいんですか!?是非行きましょう!!今行きましょう!!」
シノが興奮気味に答えて、先輩を引っ張っていく。
「私たちはどうしようか、二対一で一戦やるかい?」
「そうですね、やりましょう」
「その意気だ。今度は負けないからね」
こうして、俺とカズでベルさんに挑むことになったが、まさか全敗するとは思っていなかった。
そして三日後……
「やっとだな……何か緊張してきた……」
フォースバトルの会場に向かう中、シャトルの一室で最後のミーティングをしていた。
「ふふっ……最初は何でも緊張するものだよ。とりあえず落ち着くといい」
「大丈夫よ。これまで何回もミーティングを重ねてきたんだから。ガンプラのテストも完璧でしょう?」
先輩とベルさんが励ましてくれる。
「そうですね……なんとか落ち着きました……ありがとうございます」
「もももううう!!なな情けないなあああ……こここんなことで……きき緊張なんかしちゃってさささ」
「お前も落ち着け……」
シノも声も体も震えて手に持ってるマグカップから紅茶がこぼれ落ちている。
「みんな、そろそろリボーコロニーに着くってさ」
どこかに行っていたカズが部屋に帰ってきた。今回のフォースバトルは基地の攻略戦だ。リボーコロニー内の秘密基地に格納されているガンダムNTー1を破壊すれば勝利になる。ポケットの中の戦争の4話を再現したバトルだ。
「よし、それじゃあ行こうか」
伸びをしながら、ベルさんが立ち上がる。
「さっきもいったけど、初めてのことに緊張するなんてことは当たり前のことだよ。結局の所、戦いっていうものはどれだけ準備をしてきたかで決まる。大丈夫。私たちは強い」
ベルさんが最後にみんなを鼓舞する。
「そういう旨のことを今からリーダーが言うので心して聞くように」
「いや、全部言っちゃったじゃないですか!?」
そんなベルさんの冗談でみんなが笑う。シノも緊張がほぐれたようだ。
「まぁ、ベルさんみたいなかっこいいことは言えないけど、できる限りのことをやればきっと勝てるよ」
「なんか、ベルさんの方がいいこと言ってたな」
「そりゃあ言いたいことのほとんどを言われたからな!!」
リボーコロニーの宇宙港に着くと、相手のフォースが待っていた。俺達と同じ五人組のようだ。
「おまたせしてすいません。俺、フォースバトルの相手をするビギニングダイバーズのリーダーのタクミです。よろしくお願いします」
俺は右手を出して握手を求める。だが、相手はそれをどうでも良さそうに無視する。
「あぁ、そういうのいいから。早くやって負けてくれればいいから」
「え?」
「どうせ、俺達が勝つんだから、早くやろうぜ」
相手のフォースのリーダーみたいな人が気怠そうにつぶやく。
「俺達は負けるつもりはないんですけどね……」
「はぁ?何言ってんだ?俺達は全員ランクBのフォースだぜ?お前らみたいな雑魚フォースなんか勝てるに決まってんだろ?」
リーダーみたいな人の隣にいる取り巻きみたいな人が威張り散らす。
何かすごい舐められてる……
「おい見ろよ!!今時、レイアフォロワーだぜ!!」
「一年も前にGBNをやめたダイバーのフォロワーなんて気が知れないな!!」
後ろの方にいる相手のダイバーの二人が先輩を指さしながら笑う。先輩は何も言わない。
「まぁ、始めようぜ。早く準備しろよ?」
そう言い残して相手のフォースは去って行った。
結局、最後まで名乗らなかったな……
「何あいつらの態度!!失礼にもほどがあるよ!!」
「多分、経験値欲しさに何回もフォースを作っては潰してを繰り返してる連中だね。やけに威張っている様子だったけど、気にする必要はないよ」
「はい、別に気にしてません」
それよりも、馬鹿にされてた先輩の方が心配だ。気にしてないといいけど……
「タクミ君……」
「はっはい!!」
先輩が話し掛けてくるが、その声にとんでもない圧を感じる。
「あのダイバーたち全員、私が潰してもいいのかしら?二度と笑えなくなるようなトラウマを与えたもいいのかしら?」
「先輩、気持ちは分かりますが抑えましょう……すっごい気持ちは分かりますが抑えましょう!!」
「分かっているわよ。せっかくみんなで決めた作戦を無駄にする気はないわ。ただ、彼らが許せないだけ……」
滅茶苦茶怒っていた。出会ってこれまで見たことないぐらい怒ってる。
「とっとりあえず、準備をしましょう。一応待たせるわけにもいきませんし」
「そうだな、確かスタート位置は工場地帯って話だったな。ここからすぐ近くじゃないか」
「なるほど、それならここの高台も早めに占領できそうだ」
「それじゃあ行きましょうか」
スタート地点には5軒の建物があった。中に入るとそれぞれのガンプラが仰向けに倒れている。
「それに乗って、天井を破って出撃するの。ケンプファーの出撃シーンの再現ね」
それぞれ散らばって、ガンプラに搭乗する。
すると、モニターに『BEGINNING DIVERS VS CRIMSON SCHWARTZ』の文字が表示される。
「クリムゾンシュバルツって、英語なのかドイツ語なのか……」
「赤いのか黒いのかどっちなんだろうな……」
カズとシノが相手のネーミングセンスに文句を言う。
「勝った後で聞けばいいだろ。そろそろ行くぞ」
建物の中に隠されていた五機のガンプラが立ち上がる。
そして、モニターに次は『ARE YOU READY?』と表示される。
「タクミ、ガンダムアサルトエクシア……」
「レイア、ガンダムF91キリア……」
「カズ、ジェイライン・スタンダードアーマー」
「シノ!!ラピッドインパルスフルバーニアン!!」
「ベル、ガンダムケルディムタイガ……」
一回深呼吸をして、高らかに声を上げる。
「フォース【ビギニングダイバーズ】!!行きます!!」
そして、『FORCE BATTLE START』の文字が表示され、戦いの幕が上がった。