ガンダムビギニングダイバーズ   作:カシュー

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今回は青いカンテラさんの「GBN総合掲示板」のキャラクターをお借りしています。


烈火の王

見渡す限りの焼け野原。数時間前までただの市街地だったフィールドの空には四つの羽を広げた竜が舞っている。【ジャバウォック】、様々な武器を搭載したそのガンプラは複数のサブユニットと共に、己を討伐せんとする挑戦者に牙を向く。一方、無数のビームの雨を避け、ジャバウォックに接近する挑戦者、【ゴッドガンダム修羅】はたった一本の刀でフェザーファンネルを切り伏せていく。

 

「おいおい、もっと手加減してくれたって良いんじゃないのか?」

 

ゴッドガンダム修羅のダイバーが軽い調子で冗談をつぶやく。なんとか攻撃を避け、ガンプラへのダメージを抑えても、神経は消耗する。冗談は言っているが、実際の所、そんなことを言っていられるほどの余裕はない。

 

『あら、【烈火の王】もそろそろ限界かしら?』

「ぬかせよ、小娘!!」

 

スラスターを拭かし、高く飛び上がったゴッドガンダム修羅が居合い斬りの要領でジャバウォックの右腕と右の羽一枚を切断する。その速さにはジャバウォックを操作するダイバー、クオンも目で追うことが出来なかった。その勢いを殺さずに方向転換し、刀を構える。背部のエネルギー発生装置が展開し、火炎の輪が発生すると共に、刀が火炎状のエネルギーを纏う。

 

「行くぞ、【火剣:狂神(たぶれがみ)】!!」

 

火炎を纏った刀を振り下ろし、ジャバウォックの背中を叩き斬ろうとするが、フェザーファンネルとサイコプレートが盾になることによって威力が分散され、致命傷になることはなかった。だが、相殺しきれなかったダメージによって、ジャバウォックの動きが少し鈍くなる。

 

『なるほど、まだ力を抑えていたということか……』

 

ジャバウォックも180度旋回し、両肩のサブアームに搭載されたビームガンと、腕部五連メガ粒子砲を発射する。ゴッドガンダム修羅は手の甲に取り付けられたビームシールドで防御するが、ジャバウォックの尾に取り付けられていたワイヤーブレードに刀を弾かれる。

なんとかゴッドガンダム修羅が着地し、そのダイバーはカメラ越しにジャバウォックを睨む。

 

「そろそろ、締めに入ろうか」

 

ゴッドガンダム修羅は両手を広げて、構えをとる。

ジャバウォックはその大きな(アギト)を開き、二装ビーム砲をゴッドガンダム修羅に向ける。

 

「これで決める!!【炎掌:聖鬼(ひじりおに)】!!」

 

前腕の小手が展開し、先ほどの攻撃のように、今度は掌にエネルギーが集中する。

ジャバウォックがビームを吐き出し、ゴッドガンダム修羅は掌からエネルギーをパルマフィオキーナと共に一気に放出する。

二人が放ったビームがぶつかり合い、その衝撃に互いのガンプラも崩壊を始める。拮抗する二人の攻撃は徐々にゴッドガンダム修羅が優勢となり、その勢いのままジャバウォックの頭部を破壊する。

 

『そんな……ジャバウォックが押し負けるなんて……でも、我の勝ちだ』

 

最後の一撃の放ったゴッドガンダム修羅は膝から崩れ落ち、ジャバウォックの有線式ビームサーベルによる反撃に対応出来ずに胸部を破壊される。

『WINNER KUONN』の文字が表示され、フォースバトルが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。良いバトルで我もつい熱くなったわ」

「あぁ、結構良い線行ってたと思うんだけどな」

 

GBN内のバーでドリンクのグラスをぶつけ合い、二人のダイバーが談笑していた。羊の角に蝙蝠の羽、竜の尻尾を生やした少女、【クオン】と、黒いスーツと白いワイシャツを着こなし、首元には桜の入れ墨が除いている、端から見ても闇社会のトップにしか見えない男、【烈火組】のリーダーである【ホムラ】だ。ホムラはハイボールを飲み、クオンはまだ未成年であるため、ノンアルコールカクテルを飲んでいる。

 

「それでも、たった二人でトップフォースに名を連ねている時点であなた達も相当化け物だと思うけれど……」

「とはいえ、フォースバトルでもフリーバトルでもお前に敵わないんじゃ、どうしようもないけどな」

 

ホムラはグラスを傾け、ハイボールを喉に流し込む。

 

「そういえば、【テンペスター】ってダイバーの話、知っているかしら?」

 

クオンがミルクを飲みながら聴いてくる。

 

「聴いたことがないが、最近力をつけてるダイバーとかか?」

「いいえ、まだ噂程度にしか広まってないんだけど、フォースバトルの乱入しては両フォースのガンプラを破壊して去って行く……まぁ、一種の荒し行為を働くダイバーよ」

「……ちょっと待て、そのダイバーはどうやってフォースバトル中のガンプラを攻撃できる?本来なら不可能な行動だ」

 

フリーバトルであっても、フォースバトルであっても、バトル中はフィールド全体を強固なバリアーのようなもので守られている。バトル中のガンプラに攻撃することは本来、誰であってもシステム上不可能なのだ。

 

「そうなの、そこが噂になってる理由。それに加えて、そのログを視聴できなくされていると来た。二年前のこと、覚えてるでしょう?」

「またマスダイバーが出てきたと?」

 

二年前、GBNではブレイクデカールによるチート行為が多数確認され、トップダイバーによる有志連合によって、鎮圧された。それ以降、ブレイクデカールは使用不可能になったのだ。

 

「さすがにそうだとは思っていなけれど、マスダイバーの模倣犯がいてもおかしくないと思ってね」

「とはいっても、あくまで噂なんだろ?なぜそんな話を?」

「あなたが主催する大会、轟炎フォース祭だったかしら?それも狙われるんじゃないかと思ってね。噂って言っても、火のない所に煙は立たないでしょう?」

「ふむ、確かにお前の言う通りだな。後で、ゲームマスターに進言しておくよ」

「でも、まさかあなたが大会の主催をし出すなんて思ってもみなかったわよ。どういう風の吹き回し?」

 

クオンはノンアルカクテルを一口のみ。目を細めてホムラを見る。

 

「いや何、いつものトップ連中のバトルを見るのも良いが、普段見ない奴らのバトルを見るのもまた一興だろ?」

「結局の所、いつものみんなも集まってしまっているけれどね」

 

クオンの皮肉にホムラは苦笑いで返すしかない。

 

「それに、バトルが何より好きなあなたが運営側に回っているのが一番解せないのよ」

「人を戦闘狂みたいに言うな」

 

ホムラは少し呆れる。

 

「別に深い意味なんてないさ。ただ、バトル以外の何かに挑戦してみようと思ってな」

「挑戦?」

 

クオンは聞き直す。

 

「このGBNには、無限の可能性ってのがあると思うんだ。土地を買い占めて資産家になりきる奴、情報屋としてこの世界を知り尽くそうとしている奴、お前みたいにバトルをエンターテイメントに昇華させる奴。バトルは当然面白いけど、それだけやるだけじゃGBNを完全に楽しんでいるとは思えないんだ」

「無限の可能性……」

「だから、バトルに参加する意外のことをしてみようと思ったんだ。バトルに関してはこの状況に満足してるしな」

「今の状況で満足って事は、フォースバトルはずっと二人でやっていくつもりってこと……?」

 

烈火組の全盛期から今に至るまでを知っているクオンは何度も聴いた疑問を投げかける。だが、それに対する返答はいつになっても変わらない。

 

「まぁ、そうだな。あいつらが帰って来ることがあれば、少しは考えるかもしれないが、今のところはメンバーを増やす予定はない」

 

そう言ってホムラは笑う。ただ、その表情に悲しみが帯びている事を、クオンは知っている。

 

「あいつらは俺達の元から離れてそれぞれの道を進もうとしている。それを引き留めて、戻ってこいなんて言えねぇだろ?」

 

ホムラは笑ってハイボールを飲み干す。

 

「まぁ、レイアの奴はGBNそのものを辞めてしまったらしいけどな……」

「あら?あなた、知らないの?あの子、どうやら話題になってるみたいなのよ」

 

クオンはきょとんとした顔を見せた後、一つの動画を見せた。

 

 

 

 

 

 

フォースバトルの翌日、俺達はジャパンディメイション、烈火組のフォースネストに向かっていた。なんでも、烈火組のリーダーが俺達と話したいというメッセージが先輩に送られてきたというのだ。

 

「何なんですかね?話って……」

「それが、私にもわからないの。ただ話があるとしか書かれていなくて……」

 

烈火組のフォースネストは純和風のお屋敷といった雰囲気だ。俺達五人がフォースネストの前に立つと、門が開き、その先には一人の男の人が立っていた。

 

「ようこそ、ビギニングダイバーズ御一行」

「初めまして!!ビギニングダイバーズのリーダー、タクミです!!」

「あぁ、烈火組のリーダー、ホムラだ。はじめまして」

 

ホムラさんは俺の後ろに立っている先輩を少し見ると何事もないように俺達を中に案内する。

 

「実はお前達の初陣を見させて貰ってな、都合良く古い知り合いがそちらにいるし、是非話してみたいと思ったんだ」

「そうだったんですか……」

 

案内しながらホムラさんは明るく話している。

大広間は縦に広い、畳の部屋だった。ホムラさんはそこにおいてある座布団に俺達を座らせる。

 

「さて、早速本題に入りたいんだが、お前達とアライアンスを組みたいと思っている。」

 

ホムラさんはさっきと打って変わって真剣な顔でそう言った。

 

「アライアンス……って、同盟みたいなものですよね……」

「あぁ、こっちが言うのも何だが、悪い提案じゃないはずだ」

 

俺はその誘いに少しためらってしまう。

トップフォースがそんな誘いをしてくれる機会などそうそうある物ではないだろう。だが正直な話、なんでホムラさんがそんなことをしてくれるのかが分からない。

 

「頭、なぜ私たちにそんなことを提案するのですか?それも教えずにアライアンスを組めと言うのは不躾だと思うのですが」

 

隣から先輩がホムラさんに抗議する。

 

「ふむ、それは確かに……基本的に俺達のフォースに所属していた連中がまたフォースを作ったらアライアンスを組むようにしてるんだよ。理由としては……そうだな……GBNの改革……かな」

「改革……?」

 

ホムラさんは多分言葉を選んで言っている様だったが、俺にはいまいちピンとこなかった。

 

「GBNのサービスが始まってずいぶん経ったが、トップの連中は代わり映えしないんだよ。それこそ二年前に出てきたビルドダイバーズは良い線行ってたんだが、たった一組でそうそう変わるものじゃねぇ」

 

ホムラさんはため息をつく。

 

「だから、若い連中が切磋琢磨してトップを目指せるように、アライアンスを組んだフォースを集めて試合をさせたりしてるんだよ。そうしたら、自分の課題点も相手の課題点も見つかりやすくなるだろ?」

「それは確かに……」

 

もしかしなくても、このアライアンスは承認すべきじゃないか?だが、このアライアンスに俺が気づいていないデメリットがあるのかも……

 

そんな考えが頭の中を満たす。

 

「先輩はどう思います?」

 

いくら考えても答えが出なかった俺は先輩の助け船を求める。

 

「私は組んだ方が良いと思うわよ?私たちがトップフォースの仲間入りを果たす上で最短ルートではないかしら」

 

先輩はそう言うってことはそういうことなのだろうか……

 

「それなら……よろしくお願いします……」

 

俺は自信なさげに承認した。

 

「……それじゃあ、よろしく頼むぜ?リーダーさん?」

 

ホムラさんは少し黙った後、笑顔で俺に握手を求める。俺は慌ててそれに応えた。

そんな中、大広間に一人の女性が入ってくる。

 

「ただいまーーー!!って、お客さんが来てるのかい!?」

「おう、お帰り」

「お帰りじゃないよ!!お客さんがいらっしゃるって知ってたらお茶ぐらい出すってのに……」

「良いよ、そこまでしなくたって……あぁ、紹介するよ。ウチの副リーダーのカリンだ」

 

ホムラさんはそう言って紹介すると、カリンさんも俺達の方を向いて礼儀正しくお辞儀する。

 

「はっ初めまして……」

「姐さん、お久しぶりです……」

 

俺達もそれに応えるように頭を下げる。先輩はホムラさんの時と同じように俺達よりもかしこまって頭を下げている。

 

「久しぶりね。何にも変わってなくて安心したわ」

「少しこのタクミとマンツーマンで話がしたいから、お前は他の四人に稽古をつけてやってくれるか?」

 

ホムラさんは立ち上がり俺の頭に手を置くとカリンさんにそう言う。

 

「えぇ、勿論良いわよ。みんなはガンプラの準備をしてきな。10分後にジャパンディメンションのロビーに集合ね」

「分かりました。タクミ君、あなたも気をつけてね」

 

そう言い残すと、先輩達はフォースネストを出る。

 

「気をつけるようなことはないですよね……?」

「まぁ、そこはお前次第かな」

 

ホムラさんの笑っている様子から冗談で言っているのは分かるが、緊張している俺は身構える。

 

「レイアをGBNに復帰させたのはお前か?」

 

ホムラさんは俺に聴く。

 

「はっはい、そうですけど……」

「そうか……ありがとうな。これでもレイアのこと、心配してたからさ。でも、楽しそうにして安心したよ」

 

ホムラさんは照れくさそうに笑う。だが、すぐに真剣の顔になる。

 

「それで、ここからはフォースのリーダーとしての話だが……お前、なぜ俺達とアライアンスを組んだ?」

「それは……組んだときのメリットが魅力的だった……」

「いや、違うだろ。お前はさっきレイアの意見を鵜呑みにしただけだっただろ」

 

食い気味に指摘された俺はついひるんでしまう。

 

「これは俺の持論だが、リーダーって奴はメンバーに意見を聞くことが重要だと思う。皆を引っ張っていくリーダーも、皆を支えるリーダーも、メンバーに意見を聞いて判断する物だ。だが、さっきのお前はただその意見をそのまま採用しただけだった」

 

ホムラさんは正論で俺を叱責する。俺はもう何も言えなかった。

 

「本当は悩んでいたんだろ?悩むことは悪いことじゃない。ちゃんと話し合って改めてアライアンスの組むか、考えてくれ」

「はい、ありがとうございます」

 

お言葉に甘え、俺はこのアライアンスのデメリットについて聴くことにした。

 

「さっきも言ったとおり、メリットは様々なフォースの特徴と自分達の弱点を知れるという点だ。その逆で、デメリットは自分達の弱点を大勢に晒すことになる。それが気になるってんなら、この話はなしにした方が良いな」

「……いや、やっぱり俺はホムラさん達とアライアンスを組みたいと思います。誰かの意見に流されていない、ビギニングダイバーズのリーダーとしての意思です」

「そうか。それじゃあよろしく頼むぜ、ビギニングダイバーズ」

 

ホムラさんは右手を差し出し、握手を求める。俺はそれに応えるが、ホムラさんの手を握る力が強すぎて、笑顔が若干引きつってしまったのは多分気のせいだろう。

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