#10's Episode   作:しゃくなげ

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『Mr. Lonely Heart』

 明かりを落としたコックピットは、本物の闇に包まれる。

 強化された視力を持ってしても、目の前にかざした自分の手すら見えない。

 周囲の音も聞こえずに、あるものといえば呼吸音が精々。

 そんな静寂の中が、ジンロウには心地良い空間だった。

 人間の域から外れてしまった五感を気にする事もなく、リニアシートに身体を預ける。

 ただそれだけで、精神が鎮まっていくのを感じる。

 手探りでコントロールロッドに触れ、指を絡ませる程度に握る。

 添えるだけの両手を脱力させて、肺の中身をゆっくりと吐き出していく。

 起動していないフットペダルは硬く重たく、踏み込むのは難しいものの足置きにはちょうど良かった。

 まぶたを閉じても開いても、何かを見る事はない。

 見ているのかいないのか、それが曖昧になっていく。

 境界がわからなくなるに連れて、自分の存在そのものが暗闇に溶け出してしまうようで、ジンロウは理由もわからずくすくすと笑い声を漏らした。

 ムラサメ研究所の日々は、退屈だった。

 身体の中身を人工物に入れ替えて、やたらと薬を飲まされたはずだ。

 オーガスタ研究所の日々は、退屈だった。

 ニュータイプの存在を検知するための装置を、頭の中に埋め込んだはずだ。

 ティターンズの日々は、どうだったか。

 戦っている間は楽しくても、モビルスーツから降りると記憶があやふやになる。

 何をしていたのか、誰がいたのか、そういう事は思い出せない。

 そうやって考えてみれば、今のネオ・ジオンが一番楽しい。

 たとえ翔ばなくても、こうして色々な事を考えて、そして覚えているのだから。

 

「やっぱり、昔の事はつまらないな。君はどうして、そういう事を聞くんだい」

 

 この場にいない少女に、ジンロウは呟くような声で問うた。

 それと同時にコックピットの闇が引き裂かれ、目が眩むような明るさに包まれる。

 勝手に瞳孔が収縮する中で、ジンロウはコンソールに貼り付けたままの静画写真を見つめた。

 笑顔のプルテンを写した一枚は、先日の外出の帰り際に、観光客相手の商売をしている写真屋から買い取ったものだ。

 ジンロウからしてみれば、プルシリーズはグレミーの私兵であり、ネオ・ジオンの強化人間でもある。故に、機密情報の漏洩を防ぐための目的があっての購入だった。

 それをどう捉えたのかはジンロウにはわからなかったが、その一件から、プルテンはいたく上機嫌でいる。

 勝手に写真を撮られた事など忘れて、もっと撮れば良かっただのと口にして他の姉妹に自慢しているらしかった。

 

「不思議なやつだよ、君は」

 

 言いながら、ジンロウは付箋を手に取った。写真の傍に貼られた何枚かを、ぼんやりとした表情で眺めていく。

 

『プルテン』

 

『プルシリーズ』

 

『十番目』

 

 乱暴に塗り潰した『出来損ない』の一枚を剥がして、丸める。

 代わりとばかりに『約束』と書き込んだ一枚を、空いた隙間へと貼り付けた。

 上着のポケットには、同じように丸められた数枚の付箋が押し込められている。

 

「同じなのは番号だけさ、プルテン。君と僕は、似ていない」

 

 ジンロウの独り言を聞くものは、いない。

 理解のできない相手、何かと自分に近づく少女の分別をしきれないまま、ため息と共にジンロウはハッチ開放のコマンドを入力した。

 

 

 

 グレミーから与えられた隠れ家のリビングでは、プルテンとプルファイブがテーブルを挟んで向かい合いながら、卓上のゲーム版を真剣な眼差しで見つめている最中だった。

 グレミーと引き離されたプルたちは、シミュレータでの訓練をするか、こうして無為な時間を過ごすしか許されない。

 最初こそ物珍しいボードゲームを楽しんでいた娘もいたものの、飽きてしまうのもあっという間だ。

 マスターの不在は、確実に少女たちへ悪影響をもたらしている。

 そして、それを正しく指摘できる人間がいないのが、最大の問題だったろう。

 扉を開けたジンロウは、遊んでいるらしいプルファイブとプルテンを一瞥してから、日課のように隠れ家の中を確認する。

 コロニーに残されたプルシリーズが、ひとりも欠けていないか。それを確認するのは、彼に与えられた役割だ。

 

「ジンロウ、おかえり!」

 

 ジンロウが戻るのを見るなり、プルテンが満面の笑みで手を振り回す。

 ジンロウはそれに手を振り返す事もなく、定時連絡のためにさっさと奥の書斎へと篭ってしまった。

 その冷たい反応に、形の良いプルテンの眉が不機嫌そうに歪む。

 なにさとぼやきながら、彼の足取りを追いかけるように、プルテンは書斎の扉へと視線を注いだ。

 プルファイブはその隙に、こっそりと自分の駒をひとつ前へ進める。

 いかさまを見落としたまま、プルテンは不利になった盤上へと視線を戻した。

 

「あれ、あたし、こんなに負けそうだったっけ?」

 

「そうだよ、私の勝ちまで、もう少しなんだから」

 

 ドアの開閉音を気にかけるのは、姉妹の中でもプルテンだけだ。

 腕組みしてうんうんと唸る彼女に、プルファイブが頬杖をついたままで問いかける。

 

「プルテン、あの人と一緒にいて飽きない?」

 

「飽きないよ、全然。ジンロウ、いつも変だし、ちっとも優しくないけどさ。約束したら、ちゃんと守ってくれるんだ」

 

「ふうん、変なの。あーあ、早くマスターと遊びたいなー。私、もうずっと遊んでもらってないよ」

 

 プルファイブがそう呟き、プルテンは駒を動かす。

 かつと、駒が盤面に擦れる硬質な音が立った。

 ほんの少しだけ考え込んで、プルテンは言葉を探した。

 グレミーへの思慕は、心の中に確かにある。胸の奥に、存在している。

 だというのに、その顔を思い出そうとすると、ぼんやりとぼやけてしまう。

 プルファイブは、モビルスーツの操縦を教えてもらった日の事を自慢していた。

 プルシックスはプレゼントされた人形を大事にしていたし、プルセブンは一緒に紅茶を飲んだ事を楽しげに語り、プルイレブンだってマスターが選んだ服をずっと自慢している。

 姉妹たちは皆、マスターとの思い出を楽しそうに語って、また会いたいと口々に漏らす。

 そんな中で自分はどうだったろうと考えたところで、かの人との思い出が見当たらない事を思い知らされるだけでしかない。

 プルテンは、正体のわからない苛立ちをごまかすようにつま先で床を掻いた。

 

「あたしも、マスターに会えなくて寂しいや。プルツーは良いなあ、一番うまいからって、いっつも可愛がられてるもん」

 

「プルツーはすごいよね、なんでもできてさ。私もプルテンも、姉妹の中じゃ下の方だし。あーあ、プルツーみたいなら、私たちも違ったのかなあ。私、もっともっとマスターと遊びたいのに」

 

 そのひと言で、プルテンの中の何かが音を立てて切れた。

 駒と駒がぶつかって、黒いそれが音を立てて倒れる。

 プルファイブが驚いたように視線を向けると、むすくれたプルテンが手にした駒を投げつけた。

 

「なにさ、プルファイブはマスターと一緒に遊んでるじゃないか。なのに、あたしとアンタが一緒みたいに言わないでよ! あたし、ちっともマスターと遊んでない! あの嫌な機械をさ、頭に被らされてばっかりだよ!」

 

「ちょっとプルテン、やめてよ! やめてってば、痛いじゃない!」

 

 癇癪を起こしたプルテンを止めようとして、なだめようとするまでは良かった。

 プルファイブの顔に投げつけられた駒が当たったのをきっかけに、ふたりは取っ組み合いの喧嘩へと発展する。

 乱闘の音を聞きつけたプルシックスが寝室から顔を覗かせたものの、すぐに書斎へと駆けていった。

 

「アンタが悪いんだよ、プルテン! アンタがヘタクソだから、マスターが優しくしてくれないだけじゃない!」

 

「言ったな、このぉ!」

 

 互いに拳を振り下ろす寸前で手首を掴まれ、プルファイブもプルテンも喧嘩を中断せざるを得なかった。

 肩で息をしながら、同じ顔が睨み合う。

 ふたりとも、掴まれている手を離されれば、今すぐにでも喧嘩を再開しそうな剣呑さがあった。

 

「元気だよね、君たちは。騒ぎは起こさないで欲しいんだけど、喧嘩の原因は何なのさ?」

 

 その言いぶりが、またプルテンの心をざわめかせた。

 対するプルファイブはそれでクールダウンしたのか、ため息のように肩を竦めてみせる。

 

「わかんない、話してたらプルテンが怒ったの。ねー、それよりマスターは何か言ってなかった? 私たち、いつマスターに会えるの?」

 

「もうすぐ、コロニー落としが始まるそうだよ。それが終われば、グレミーもこっちへ帰ってくるさ」

 

 ジンロウの言葉に納得した様子を見せ、プルファイブは掴まれた手を解くと散らばった駒を片付け始める。

 それから自分へと向けられる視線に、プルテンは憮然とした面持ちで俯いていた。

 

「プルテン、君も──」

 

 声がかけられたところで、プルテン自身も理解のできない感情が胸の奥から湧き上がり、掴まれたままの腕を力任せに暴れさせる。

 少女の見た目に反して、強化された肉体の膂力は生半のそれではない。

 感情が暴れ回るまま、プルテンは手首を無理やりに抜いて、力任せに振り回した。細くしなやかな少女の手が壁にぶつかり、建材に亀裂を走らせる。

 

「うるさい、うるさいうるさい! あたしの事は、もうほっといてよ!」

 

 プルテンも、自分が何を言っているのか、どうして欲しいのか、何故こんなにも苛立つのかがわからない。

 理解できないからコントロールもできず、膨れ上がる感情の処理に思考が追いつかない。

 そうなると、プルテンはその場から逃げ出すしかできなかった。

 皆が持っている思い出が羨ましくて、妬ましい。そして、そんな自分が他の姉妹よりも醜く見えて気持ちが悪い。

 隠れ家を飛び出して、プルテンはただただ走った。

 道を行き交う人々にぶつかりながら、目的地も決めないままに走った。

 名前も知らない人間も嫌だし、姉妹の匂いがするあの家も嫌だった。

 だから、プルテンは走るしかない。

 ふと、頭の片隅でパズルのピースがはまったような感覚に、プルテンの足が緩やかに止まっていく。

 あの日、ジンロウがどうして静かな場所へ行きたがったのか。

 それがわかった気がすると、プルテン自身もまた静かな場所を求めている事を理解する。

 

「マスターは、あたしの事、好きだよね? あたしはいらないなんて、言わないよね?」

 

 地球に降りたグレミーを想い、プルテンは独りごちる。

 返事はない、それもわかっている。

 ただ、ずっと抱え込んでいた孤独感が膨れ上がって、胸の中を埋め尽くしていくだけ。

 薄暗い路地裏で座り込み、プルテンは膝を抱える。膝頭に額を預けてまぶたを落とすと、残光のようなもやが暗闇で踊っていた。

 グレミーを想えば想うほどに、彼との間に何もない事を思い知る。

 自分と他の姉妹との差を考えると、腹の奥が締め付けられたような、重たく苦しい気持ちになった。

 それがいつも、ずっと背後から追いかけてくるようで恐ろしい。

 怖いものに、背中を撫でられているような心地になる。

 このコロニーに残された姉妹は、自分も含めて、落ちこぼれなのだ。

 幼いながらも、プルテンはそれを理解している。

 理解してしまっているから、落ちこぼれの中でもグレミーとの思い出を持たない自分が、一番劣っているのだと突きつけられているような気になってしまう。

 

「あたしだけ、一緒に遊んでないよ。ねえ、マスター、あたしだけなんだよ」

 

 か細い声で呟き、プルテンは藁にも縋る思いで、グレミーの返事を待った。

 聞こえるはずのない声を聞こうとして、息をするのも忘れて音を拾う事に意識を傾ける。

 遠くの方から喧騒が聞こえる。

 男女の笑い声、優しげに何かを言い聞かせる母親の声、子供たちの楽しげな声、聞こえてくるのはそんな音ばかりだ。

 知らない誰かの会話さえ聞き取ってしまいそうで、プルテンは声の洪水から逃げ出すのに躍起になり、近付く足音を拾い落としてしまった。

 

「やっと見つけた」

 

 頭上から降ってくる静かな声に、小さな肩が跳ねる。

 こみ上げてくる感情に困惑しながらも、プルテンはおずおずと顔を持ち上げた。

 いつも通りの、無表情。整っていながら、取り立てて特徴のない顔立ち。

 グレミーとは似ても似つかないその顔に、安堵するのは何故なのか。

 深く考えるには至らなくとも、プルテンは確かに満足していた。

 

「探しに来たの」

 

「それ以外に見えるのかい、君」

 

「ふうん、探してたんだ」

 

 淡々としたやり取りではあるものの、少女の口元はほんのわずかに緩んでいる。

 息こそ乱れていないものの、能面のような顔を注視すると、額にはほんのりと汗が浮いている。そう思えば首筋も濡れていて、たぶん、体温も高まっているのだろうと推察できる。

 それが、ささくれ立ったプルテンの心をくすぐる。

 抑揚の感じられないこの男が、自分を探して走ったのだ。

 その事実が、えも言われぬ何かを感じさせる。

 

「走ったの?」

 

「走らないと、追いつけないからね」

 

 わかっていながら、事実確認をしてしまう。その口から、走って探したと言わせたかった。

 だからプルテンは、問いかける。

 焦ったのか、心配したのか、思い付く限りに確認の言葉を投げかける。

 そのひとつひとつをジンロウは肯定して、頷いた。

 返事を聞くたびに、プルテンは感情のやり場を見つけられずに両足をばたつかせた。

 

「それより、君はどうしてこんなところに?」

 

 プルテンの気持ちが落ち着いてきた頃合いで、ジンロウが問いを投げかける。

 プルテンもまた、彼の前から逃げ出すような気はなくなっていた。

 

「たぶん、こないだのジンロウと同じでさ、誰かがきてくれるって思いたかったの。ジンロウも、そうだったんでしょ?」

 

 プルテンに見つめられて、ジンロウの動きが止まる。

 気付けばプルテンもまた、ジンロウと見つめ合ったままで動けずに、ただ目の前にいる相手の事を考えていた。

 集中しすぎているのか、人々の声どころか、環境音さえ聞こえない。

 代わりに耳鳴りのような、それとも違う何かが頭の奥に聞こえている。

 

「なに、これ、なんなの」

 

 この場所とは明確に違う、見知らぬ風景がプルテンの脳裏に浮かぶ。

 温かくて冷たい、硬くて柔らかい、形がなくて触れられないものに指先が触れた。

 女が言う。この子は基準に満たない出来損ないだと。

 男が答える。それでも構わないから売って欲しいと。

 瞬きひとつを挟んだかもわからないうちに、白い天井を見上げている。

 男が手術は成功したと言って、兵隊が書類を手渡した。転属は即日中に行われ、また白い天井が広がっていく。渡された書類に、言われるままにサインする。頭の中は、空っぽのまま。

 手術は成功した。手術は順調だった。手術は問題なく終わった。

 男か女かもわからない声を聞くたびに、身体の何処かが崩れていく。

 痛みも苦しみもなくなって、楽しみも喜びも何処かへいってしまった。

 残っているのは何だろうと、自分の身体を覗き込む。

 

「見ない方がいい、何もないから」

 

 その寸前で、身体を強く抱き締められた。

 忘れていた呼吸を再開すると、肺の奥がじわりと痛む。

 かひゅと苦しげな声が、プルテンの喉奥から溢れた。

 

「今の、何だったの、ジンロウ」

 

 息継ぎを繰り返しながら、プルテンが苦しげに問いかける。

 未知の感覚が、今でも指先に残っている気がした。

 プルテンはそれを忘れようとして、ジンロウの広い背中を掴まえるように、シャツに指を絡めて握り締める。

 そこに存在しているものが、身体で感じられる。

 それが驚くほど心地良くて、安心した。

 

「わからないけれど、少なくとも、僕の事だ」

 

 まぶたを閉じても、頭の中に声が、景色が残っている。

 それなのに、それらをひとつも思い出す事ができない。

 心臓は今でも跳ね回っていて、うなじの毛が逆立つようだ。

 

「誰なの、あれ」

 

 聞こえた声だけなら、たくさんの人がいたけれど、その声に氷のような透明の色がついていたのは、最初のひとりだけだった。

 問いかける声が震えるのは、何故なのか。

 プルテン自身が、わかっているのにわからない。

 白昼夢にも似た今の出来事は、理解の範疇をとっくに超えてしまっている。

 

「母だよ」

 

 淡々とした静かな声に、プルテンはジンロウの身体を抱き締めた。

 何処から出てきたのかと思うほどに、たくさんの涙が溢れて頬を流れ落ちていく。

 君と僕は、似ていない。

 言われたのか、聞こえたのか、見えたのか、感じたのか。

 そのどれでもないかもしれない、ジンロウの言葉がプルテンの中に溶け込んでいく。

 

「そんな事ない、あたしとジンロウは似てるよ」

 

 十番目で、出来損ないで、ひとりぼっちだ。

 プルテンの言葉に、ジンロウはかすかな笑みを浮かべていた。

 そういうところが似ていないのさ。そう告げるように、首をゆるりと揺らしながら。

 

「僕は君ほど、優しくないよ。それより、おいで。こんなところに、いつまでも座っていられないだろ?」

 

 先に立ち上がったのは、ジンロウだ。

 差し出された手に触れて、プルテンは身体を引き起こしてもらう。

 そんなささやかな触れ合いが、特別扱いのようで嬉しかった。

 

「前よりは、優しくなったよ。ジンロウは、あたしを探しに来てくれたもん」

 

 プルテンの笑顔に、ジンロウが何かを答えようと口を開きかけて止まった。

 プルテンもまた表情を凍りつかせ、つぶらな目を大きく見開いて息を呑む。

 何かの声に呼ばれた気がして、ふたりは揃って一点を見つめた。

 虚空ではなく、そのずっと先。

 肉眼では見えない彼方には、青く輝く星がひとつ。

 プルテンもジンロウも、それを知る由はない。

 だが、確かにふたりは感じ取った。

 上辺や輪郭すらも見えぬまま、何かがあったという事実だけを。

 べとつく汗のように不愉快な、身体中にまとわりついて離れない感覚が、うなじから全身へと広がっていく。

 その不快感の正体が、数多の人々の死によってもたらされたものなのか。

 あるいはそれこそ、姉妹たちのオリジナル──エルピー・プルが、プルツーによって命を散らしたが故のものなのか。

 そのどちらであったとしても、プルテンに理解できるはずもない。

 無垢な少女はただただ己の身体を抱いて、得体の知れない悍ましさに震えるしかなかった。

 時は宇宙世紀0088年、十月三十一日。

 ネオ・ジオンの手によって、アイルランド首都ダブリンへコロニーが落ちた日の事であった。

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