「アニキ、アニキ、アニキぃぃーーー!」
教室で授業の準備をしていると、翔が血相を変えて飛び込んできた。
「大変だよアニキ、万丈目くんが行方不明になっちゃったんだって」
「なんだってぇ!?」
翔の報告を聞いて、教室内がにわかにざわめきだした。ブルーの口さがないやつらは、ここぞとばかりに万丈目をけなし始める。
翔が不穏な未来を口にするが、十代は否定しつつも不安を隠せていないようだ。
「なぁ遊蓮、やっぱ探しに行ったほうがいいかな?」
「おまえら心配しすぎだ。あいつはそんなにやわじゃない。武者修行にでもいったんだろうよ」
「そんなこと言ったって……。聞いたッスよ。遊蓮くんとのデュエルで、万丈目くんは1ポイントもライフを削れなかったって」
さすがにそれは知らなかったやつらが多かったようで、落ち着き始めた教室内がまたしてもざわつき始めた。
「それは結果論にすぎん。万丈目のデッキはパワーデッキだ。一度流れを持っていかれれば、4000のライフなんてあっという間に尽きる。だから俺は一撃も通さないという鉄の意志と鋼の強さを持ってデュエルに臨んだ。デッキ調整だってかなり悩んだ。万丈目を倒すには、それほどの覚悟が必要だったということだ」
「おまえ……あいつのことメチャクチャ評価してるんだな」
「だからあいつのことを信じてやれ。いずれ帰ってくるさ。もっと大きな
「うーん、ああでも、やっぱり心配だなー」
「心配ッス」
けっきょく十代たちは授業を放り出して万丈目を探しに行った。
やはり万丈目は武者修行のため島を出て行ったようだ。十代は
猿……モンキーボー……うっ、頭が……。
俺はブルー寮に移ったせいか、十代たちとの絡みは減り、事後報告を受けることが多くなった。
サイコショッカーと闇のデュエルをしたとか。
テニス部の部長と明日香さんを賭けてデュエルしたとか。
アンティルールを仕掛けてくる闇夜の巨人デュエリストの捕縛に失敗したとか。
ドローパンをめぐってなんやかんやあったとか。
三沢は俺に負けたせいか、デッキ構築の迷宮に迷い込んだみたいだ。あーでもない、こーでもないと唸っている。十代との対決はかなり先になりそうだ。
あとレッド寮に転入生が来たらしい、あっという間に帰ったけど。ジェネックスあたりでまた来るんじゃないかな。
つうか、年齢を詐称して普通に編入できるとか、学園の審査はどうなってるんだ。神楽坂にデッキ盗まれたことといい、ちょっとガバガバすぎない?
デュエルアカデミアノース校との友好デュエルについてもひと悶着あった。向こうの代表が1年生ということで、こちらも1年生を出すことになり、そこでカイザーが十代を推薦したのだが、クロノス先生は俺を推薦した。
原作だと三沢のはずだったが、俺が三沢に勝ったせいで流れが変わったようだ。当然だが辞退したよ。受けてもメリットがあまりない。
というわけで、学園代表は遊城十代に決定した。クロノス先生は最後まで渋ってたみたいだけどな。最後の足掻きとばかりに茂木もけ夫ってブルー生徒をぶつけたみたいだが、やはり失敗したようだ。
そんな感じで時は流れ、ついにあいつが帰ってきた。
「デュエルアカデミアよ! 俺は帰ってきたッ!」
海風に黒いコートをたなびかせ、万丈目が悠々と闊歩してくる。どうやら自信を取り戻したようだ。
呼んでもいない万丈目兄たちのテレビクルーが我が物顔でデュエルアリーナに入り込み、慣れた手つきで準備を進めていく。
時間が来た。満員の観客の中、サンダーコールが響き渡り、デュエルが始まる。
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー。《E・HERO クレイマン》を守備表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」
遊城十代 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「ふっ、そして恐怖の俺のターンが始まる、ドロー。見せてやろう。俺の新たなるデッキ。万丈目"サンダー"のデッキを。手札の《サンダー・ドラゴン》を捨て、デッキから2枚の《サンダー・ドラゴン》を手札に加える。《竜魔導の守護者》を召喚し、効果発動。手札の《サンダー・ドラゴン》を捨て、デッキから《
「なにッ!? 融合なしで融合モンスターを呼び出すだって!?」
「クックックッ、怯えろ! 竦め! 貴様のヒーローなど蹴散らしてやるッ! 《雷龍融合》を発動。フィールドの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》と墓地の《サンダー・ドラゴン》2枚をデッキに戻し、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を融合召喚!」
《雷神龍-サンダー・ドラゴン》
星10/光属性/雷族/攻3200/守3200
「サンダー・ドラゴンがデッキに戻ったことで、手札のサンダー・ドラゴンの効果を再度発動。このカードを捨て、デッキから2枚のサンダー・ドラゴンを手札に加える。そして雷族モンスターの効果が手札で発動したことで《雷神龍-サンダー・ドラゴン》の効果が発動できる。貴様の伏せカードを破壊だ」
「チェーンして《ヒーローバリア》を発動。相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする」
雷神龍の放った雷撃が伏せカードを破壊するが、それは実質無意味なものとなった。
「万丈目は1つミスを犯したな」
「え? どこッスか? 変なとこはなかったけど……」
「サンダー・ドラゴンはデッキから2枚
ついでに言えば十代も、だな。サンダー・ドラゴンの効果にチェーンしてヒーローバリアを発動していれば、雷神龍の効果は発動できなかった。まあ、結果としては同じだが。
「はぇー、遊蓮くん詳しいッスね」
「ま、それなりにはな。どうやらこのターンは凌いだみたいだな」
発動したヒーローバリアは一度目の攻撃を強制的に無効にする。竜魔導の守護者の攻撃が無効になり、雷神龍の攻撃でクレイマンが破壊された。
しかしサンダー・ドラゴンデッキの割には動きが鈍いな。手札が悪いのか、色々と足りていないのか。あるいはデッキの特性を把握しきれていないのか。
「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ」
万丈目準 LP4000 手札4 モンスター2 伏せ2
遊城十代 LP4000 手札4 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
「十代、教えておいてやろう。雷神龍は効果で破壊される場合、代わりに自分の墓地のカード2枚を除外できる。この効果に回数制限はない!」
「へぇー、なら破壊以外の方法で破壊するまでさ」
「破壊以外の方法で破壊って、なんかおかしくないッスか?」
「十代だからな。まあ言いたいことは伝わっただろ」
諦めた様子はないな。突破できるか?
「まずは邪魔な伏せカードから破壊するぜ。《ツインツイスター》を発動。手札を1枚捨て、2枚の伏せカードを破壊だ」
「チェーンして《突進》を発動。雷神龍の攻撃力を700アップする」
「続けて《融合》発動。手札の《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO スパークマン》を融合する」
「フェザーマンとスパークマンだと? 何を出すつもりだ」
「よく見な、これが俺の新しいヒーローだ。《E・HERO グランドマン》を融合召喚!」
《E・HERO グランドマン》
星6/光属性/戦士族/攻 0/守 0
「攻撃力0だと? 何を考えている!?」
「焦るなよ。グランドマンの攻撃力・守備力は、このカードの融合素材としたモンスターの元々のレベルの合計×300アップする。つまり攻撃力は2100! バトルだ。グランドマンで竜魔導の守護者を攻撃、」
万丈目準 LP4000 → 3700
「グランドマンのさらなる効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードをリリースして、EXデッキから「E・HERO」融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚できる。ただしこの効果で特殊召喚したモンスターは自身のレベル以下のモンスターを攻撃できない。俺は《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》を特殊召喚!」
「たしかそいつは、墓地の「E・HERO」の数だけ攻撃力を上げるんだったな。ならば攻撃力は3700か」
「いいや、俺の墓地には5体のヒーローがいる。だから攻撃力は4000だぜ」
「なんだとッ!? そうか、ツインツイスターのコストで捨てていたか」
「そのとーり、バトルを続けるぜ。シャイニング・フレア・ウィングマンで雷神龍に攻撃、シャイニング・シュート!」
万丈目準 LP3700 → 3600
「シャイニング・フレア・ウィングマンの効果発動。このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
万丈目準 LP3600 → 400
「ぐうぅッ! 調子に乗るなよ、十代!」
「へへっ、俺はこれでターンエンドだ」
遊城十代 LP4000 手札0 モンスター1 伏せ0
万丈目準 LP 400 手札4 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。いくぞ、十代ッ! 魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。デッキから《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を除外する。そして除外された雷獣龍の効果発動。デッキから《雷電龍-サンダー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚。続けて墓地の《雷龍融合》の効果発動。このカードを除外して、デッキから《雷鳥龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加えて、効果発動だ。このカードを手札から捨てて、除外されている《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》を特殊召喚。そして手札で雷族モンスターの効果が発動したことで条件はクリア。雷電龍をリリースして、再度降臨せよ、《超雷龍-サンダー・ドラゴン》!」
《雷獣龍-サンダー・ドラゴン》
星6/闇属性/雷族/攻2400/守 0
《超雷龍-サンダー・ドラゴン》
星8/闇属性/雷族/攻2600/守2400
「まだだッ! フィールドから墓地へ送られた雷電龍の効果で、デッキから《雷源龍-サンダー・ドラゴン》を手札に加える。そして手札の《サンダー・ドラゴン》とフィールドの《超雷龍-サンダー・ドラゴン》を除外して、《雷神龍-サンダー・ドラゴン》を再び特殊召喚! そして手札の雷源龍の効果発動。雷神龍の攻撃力を500アップする。雷族モンスターの効果が手札で発動したことで《雷神龍-サンダー・ドラゴン》の効果が発動。貴様のシャイニング・フレア・ウィングマンを破壊だ!」
アリーナを揺るがすような轟雷に撃たれ、光輝なる英雄が膝を折る。
「バトルだ! 雷獣龍と雷神龍でダイレクトアタック! 沈めぇぇッ!」
「ぐぅ、うおぉぉッ!」
遊城十代 LP4000 → 1600 → 0
ノース校の生徒、黒服の集団から割れんばかりの歓声が巻き起こった。万丈目は天を指さし、自分こそがNO.1だと誇示している。
いや、まさか、勝つとはな。さすがに予想GUYだった。
「負けたぜ、万丈目、っとサンダー。けど、楽しいデュエルだったぜ」
「楽しいだと? 負けたくせに何を腑抜けた……いや、それでいいのかもしれんな」
「へへっ、そういうこと。デュエルは勝ち負けだけじゃない。おまえもわかってきたじゃねぇか。ところでよ、デュエル中は言えなかったけど、おまえにまとわりついてるのって、精霊だよな?」
「んなっ!? こんなザコが精霊なわけあるか! 悪霊だ悪霊! くっ、ええぃ鬱陶しい! 引っ込んでろ!」
どうやら、おジャマ・イエローには無事取り憑かれたみたいだな。
校長同士の賭け、というかご褒美についてはどうでもいいだろう。あえて語るまい。
万丈目はこっちに残ることになった。出席日数が足りない為、レッド寮に入ることになったようだ。