十月、デュエルアカデミアに新学期が訪れた。見るからに下ろし立てであろう青い制服に身を包んだ新入生がブルー寮の門を潜る。
その全てが中等部の成績上位者だ。そのせいかどことなくエリート意識が見え隠れしている。
話は変わるが、十代が早速新入生とデュエルをしたらしい。なんでも後攻1ターンキルを決めたのだとか。
その新入生は先攻でおジャマ・イエローを召喚して、そのままカードも伏せずにターンを回した。
そりゃあ、1ターンキルも止む無しだ。十代は以前に俺が言った、バトルフェーダーや速攻のかかしが飛んでくると思っていたようだが、何もなくて逆に吃驚したらしい。
よくよく話を聞いてみると、その新入生は、当日に購買で買った8パックでデッキを組んで十代に挑んだらしい。むしろ8パックでデッキを組めたことが僥倖だ。融合モンスターが1体でもあればアウトだからな。
いくら何でもそんな条件はさすがに舐めすぎだ。力を見るにしたって、もうちょっとマシなデッキを用意して来いと言いたい。
そして新学期が始まって数日たった頃、ブルー寮ではある新入生が注目を浴びていた。なんでも万丈目とデュエルするらしい。
「それでは対戦相手の紹介でアール。中等部をトップで卒業した超エリートォーーー、五階堂宝山でアール!」
ナポレオン教頭の紹介に応えて、ブルーの新入生が観客に手を振る。
「では新入生、ムッシュ五階堂の先攻でデュエル開始なのでアール」
開始の合図は出されたが、万丈目と五階堂が問答を始めた。まあどうでもいい内容なので割愛しよう。
『デュエルッ!』
「僕ターン、ドロー。《エヴォルテクター シュバリエ》を召喚。カードを2枚伏せてターンエンド。さあ、貴方のターンだ。万丈目さん!」
五階堂が目を輝かせてターンを回す。デュエル前の会話から察するに、万丈目が憧れの人なんだろう。
五階堂宝山 LP4000 手札3 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「手加減はしないぞ。俺のターン、ドロー。魔法カード《予想GUY》を発動。デッキから通常モンスター《おジャマ・イエロー》を特殊召喚」
「お、おジャマ!? あ、貴方がそんなザコカードを使うのか!?」
まさしく予想GUYの出来事だったのか、五階堂の目は信じられないようなものを見たとばかりに見開かれている。
友好デュエルのドサクサで入手し、返しそびれてそのままになっていたサンダー・ドラゴンデッキは、やはりイースト校にとっては重要なデッキだったらしく、一ノ瀬校長に泣きつかれて返却することになった。
「続けて《馬の骨の対価》を発動。おジャマ・イエローを墓地に送り、2枚ドロー」
呼び出されたおジャマ・イエローはさしたる活躍もせずに、コストとなって姿を消した。
「フィールド魔法《おジャマ・カントリー》を発動。手札の《おジャマジック》を墓地に送り、墓地のおジャマ・イエローを特殊召喚」
「させませんッ! 《エヴォルテクター シュバリエ》をリリースし、リバースカード《デュアルスパーク》を発動。そのフィールドカードを破壊し、僕はカードを1枚ドローする。手札コストが無駄になりましたね」
「それはどうかな? 墓地に送られた《おジャマジック》の効果発動。デッキから《おジャマ・イエロー》、《おジャマ・グリーン》、《おジャマ・ブラック》を手札に加える。カードを2枚伏せ、手札の《未界域のツチノコ》の効果発動。俺の手札の中からおまえは1枚を選ぶ。それがツチノコか否かで効果は変わる。さあ、選べ!」
「ツ、ツチノコ……。なら僕は、僕から見て一番右のカードを選ぶ!」
「ふっ、おまえが選んだのは《おジャマ・グリーン》。このカードを捨て、《未界域のツチノコ》を特殊召喚し、カードを1枚ドロー。もう一度だ! 手札の《未界域のワーウルフ》の効果発動。さあ、選べ!」
「くっ、なら今度は一番左のカードを選ぶ!」
「ふっ、またまたハズレだ。おまえが選んだのは《おジャマ・ブラック》。このカードを捨て、《未界域のワーウルフ》を特殊召喚し、カードを1枚ドロー。バトルフェイズに入る!」
「待ってください、メインフェイズ終了時に永続罠《デュアル・アブレーション》を発動。手札を1枚捨て、デッキから《フェニックス・ギア・フリード》を特殊召喚します。そしてこの効果で特殊召喚したモンスターはもう1度召喚された状態として扱う」
《フェニックス・ギア・フリード》
星8/炎属性/戦士族/攻2800/守2200
「ほぅ、それが貴様のエースか。俺はこれでターンエンドだ」
「エンドフェイズに手札コストで捨てた《焔聖騎士-ローラン》の効果を発動します。デッキから装備魔法カード《スーペルヴィス》を手札に加える」
さすがに中等部主席だな。無駄がない。
万丈目準 LP4000 手札3 モンスター2 伏せ2
五階堂宝山 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「僕のターン、ドロー! 魔法カード《戦士の生還》を発動。墓地の《焔聖騎士-ローラン》を手札に戻す。手札を1枚捨て、永続罠《デュアル・アブレーション》の効果を発動します」
「今度はこちらが返す番だ。リバースカード《砂塵の大嵐》を発動。《デュアル・アブレーション》を破壊する。手札コストが無駄に……はなってはいないようだな」
おそらく捨てたのは回収したローランだろう。エンドフェイズに1枚サーチできるので、ディスアドバンテージにはなっていない。
「くっ、ならば《炎妖蝶ウィルプス》を召喚して《スーペルヴィス》を装備。これでウィルプスは再度召喚状態になった。このカードをリリースし、墓地の《エヴォルテクター シュバリエ》を再度召喚状態で特殊召喚。そしてスーペルヴィスがフィールドから墓地へ送られたので、墓地の《炎妖蝶ウィルプス》を特殊召喚する」
「おっと、その効果にチェーンして罠カード《おジャマトリオ》を発動だ。受け取れ、俺からのプレゼントだ」
五階堂のフィールドに三色のおジャマトークンが特殊召喚される。これでスーペルヴィスの蘇生効果は不発になった。
「くっ、ホントにジャマだ、こいつら。なら装備魔法《ラプテノスの超魔剣》をシュバリエに装備して、シュバリエの効果発動。この装備カードを墓地へ送り、《未界域のワーウルフ》を破壊する。バトルだ! フェニックス・ギア・フリードでツチノコを攻撃! 続けてシュバリエでダイレクトアタック!」
万丈目準 LP4000 → 2500 → 600
「僕はこれでターンエンド。エンドフェイズに《焔聖騎士-ローラン》の効果でデッキから《最強の盾》を手札に加える。やはり貴方にはこんなザコカードやツチノコなんて相応しくない。本当の自分を取り戻してください!」
五階堂宝山 LP4000 手札2 モンスター5 伏せ0
万丈目準 LP 600 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「ふっ、本当の自分か……。俺のターン、ドロー。ならば見せてやろう、ザコどもの力を! 《トライワイトゾーン》を発動。蘇れッ! ザコどもッ!」
墓地より三色のおジャマが蘇る。手札、墓地、フィールドを行ったり来たりと、あいつらも忙しいな。
「そんなザコ3体で何を……。しかも守備表示じゃないか!」
「これはまだ始まりにすぎん。魔法カード《馬の骨の対価》を発動。おジャマ・イエローを墓地に送り、2枚ドロー。《おジャマ・イエロー》を通常召喚。そしてこいつらが3匹集まった時、このカードは発動できる。《おジャマ・デルタハリケーン!!》を発動。貴様のフィールドのカードを全て破壊する」
フィールドのおジャマ・イエローがコストとなって姿を消し、手札から新たにおジャマ・イエローが召喚される。
3体のおジャマが巻き起こした局所的なハリケーンが五階堂のフィールドを一掃した。
「さらにおジャマトークンが破壊された時、1体につき300ポイントのダメージを受ける」
五階堂宝山 LP4000 → 3100
「装備魔法《団結の力》をおジャマ・イエローに装備。バトルだ。おジャマ・イエローでダイレクトアタック!」
五階堂宝山 LP3100 → 700
「ぐっ、こんなザコに僕がダメージを受けるなんて……屈辱だ!」
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
万丈目準 LP 600 手札0 モンスター3 伏せ1
五階堂宝山 LP 700 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「僕のターン、ドロー! よし、いけるッ! 《死者蘇生》を発動。墓地の《フェニックス・ギア・フリード》を特殊召喚する。そして再度召喚し、《最強の盾》を装備」
《フェニックス・ギア・フリード》 攻撃力2800 → 5000
「続けて魔法カード《龍の鏡》を発動。墓地の《エヴォルテクター シュバリエ》と《炎妖蝶ウィルプス》除外して、《始祖竜ワイアーム》を融合召喚!」
《始祖竜ワイアーム》
星9/闇属性/ドラゴン族/攻2700/守2000
「除外してよかったのか? せっかく再召喚したギア・フリードの効果が発動できないぞ?」
「このターンで決めれば問題ない! バトルだ! フェニックス・ギア・フリードで黄色いザコに攻撃、フェニックス・ギア・ブレード!」
このターンで決めるつもりなら、ワイアームを呼ぶ必要はなかった。伏せカードとおジャマ・イエロー、というか団結の力を警戒した結果の判断だろうな。
「ダメージ計算時に《ガード・ブロック》を発動。戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドローする!」
「しぶといですね! ならばワイアームで緑のザコに攻撃、ウィルム・ブレス! これで僕はターンエンドです」
五階堂宝山 LP 700 手札0 モンスター2 伏せ0
万丈目準 LP 600 手札1 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー!」
五階堂のフィールドには攻撃力5000のフェニックス・ギア・フリード。
そして通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、自身以外のモンスターの効果を受けない始祖竜ワイアーム。
万丈目はこの盤面を覆せるか。
「……貴様は昔の俺によく似ている。高い攻撃力で圧倒し、相手を攻め立てる。だからこそ、教えてやろう。ザコにはザコの使い方があるということを。装備魔法《下克上の首飾り》をおジャマ・ブラックに装備」
おジャマ・ブラックの首元に、単眼を
「おジャマ・ブラックを攻撃表示に変更。バトルだ! 始祖竜ワイアームを攻撃!」
おジャマ・ブラックが『ぎょえぇぇ!? マジっすか!?』と悲鳴を上げたような気もするが、
「こ、攻撃!? 攻撃力は0のままだ! なにを――ッ!? これは!!」
五階堂は慌てて装備カードの効果を確認するが、もはや手遅れだった。
「下克上の首飾りを装備したモンスターが、自分よりレベルの高いモンスターと戦闘を行う場合、装備モンスターの攻撃力はダメージ計算時のみレベルの差×500ポイントアップする」
おジャマ・ブラックのレベルは2。始祖竜ワイアームのレベルは9。その差は7。
「一度地獄に落ちて、そこから這い上がってきてみろ。貴様にそれができるか。――いけッ! おジャマ・ブラック!」
「そ、そんな……うわぁぁぁ!?」
五階堂宝山 LP 700→ 0
「どうだッ! 俺の一年間は無駄ではなかった。貴様が俺の境地に辿り着くのは、百万年かけても不可能だ。貴様は所詮、中坊のトップで、レッドのデュエリストにすら遥かに及ばんのだ。貴様に、レッドやクズカードを見下す資格などない。いいか、よく覚えておけ! 俺様は、一、十、百、千、万丈目サンダー!!」
いつもの名乗りを上げた後、万丈目は感極まったレッド生徒に胴上げされ、ブルー昇格を言い出せる雰囲気ではなくなっていた。
そしてクロノス臨時校長は万丈目の意を汲み取り、万丈目のレッド残留が発表された。