もしかしたら勝つかなーと淡い期待も抱いていたが、原作通り十代はエドに敗北した。あれから三日ほど経つが、十代は未だに立ち直れず、魂が抜け落ちたように消沈していた。
エドに、憧れは理解から最も遠い感情だよ(意訳)と言われたのがよほど堪えたらしい。自分にとってヒーローとは何なのか、何故ヒーローデッキを使うのかという難題にぶち当たったようだ。
カードが白紙に見えるというのは、かなり重症だな。
そして十代はいなくなった。
そして万丈目サンダーは万丈目ホワイトサンダーになっていた。
早いなぁ。こんな早かったっけ?
被害拡大を防ぐためにも
負けたら俺も洗脳されるのかな。あんまりイメージできないけど。
「というわけで万丈目。デュエルしろよ」
「なんだいきなり」
「おまえが斎王の走狗になっているのが悲しくてな。その白い服よりも、この黒い服の方がおまえには似合ってると思うぞ」
「なんだとッ!? 貴様、斎王様を侮辱する気か! いいだろう、貴様にも白の素晴らしさを教えてやろう。この白きデッキでな!」
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー。いくぞ、万丈目。俺は《おジャマ・ブルー》を守備表示で召喚」
「お……ジャマだと……ぐっ、頭が……」
効いてるみたいだな。よし、狙い通りだ。
「思い出したか? 万丈目、おまえが捨てたカードの1枚だぜ」
「ぐぅ、そんなカードは俺のデッキに必要ない! だから捨てたんだ! 青も赤も緑も黒も黄色も、すべてだ!」
「……そうか。カードを3枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。ふっ、すかさず手札から速攻魔法《
「うぉッ!? まぶしッ!?」
「デッキから《アームド・ドラゴン LV3》を守備表示で特殊召喚する。そしてスタンバイフェイズに《アームド・ドラゴン LV3》は進化する! このカードを墓地に送り、デッキから《アームド・ドラゴン LV5》を特殊召喚!」
アームド・ドラゴンを見るのも久しぶりだ。最近は万丈目とデュエルすることもなくなったからな。
「魔法カード《ドラゴン・目覚めの旋律》を発動。手札を1枚捨て、デッキから攻撃力3000以上で守備力2500以下のドラゴン族モンスターを2体までデッキから手札に加える。俺が加えるのはこの2体。《アームド・ドラゴン LVレベル10》と《アームド・ドラゴン LVレベル10-ホワイト》だ」
「ホワイトだと?」
「ふはははっ! これが斎王様から頂いた力だ! そんなザコに効果を使うのは業腹だが、見せつけてやろう! ホワイトサンダーの力を! 《アームド・ドラゴン LV5》の効果発動。手札の《アームド・ドラゴン LVレベル10》を墓地に送り、その青いザコを破壊する。消え去れ! デストロイド・パイル!」
飛来する無数の刃に切り裂かれ、おジャマ・ブルーは消え去った。
「さらに! 今墓地に送った《アームド・ドラゴン LVレベル10》を除外し、手札から《アームド・ドラゴン LVレベル10-ホワイト》を特殊召喚。その効果により、デッキから《白のヴェール》を手札に加える。そして《アームド・ドラゴン LVレベル10-ホワイト》に《白のヴェール》を装備!」
白いアームド・ドラゴンがさらに白くなり、眩い白光が生まれた。
「これが真なる白。まさしく純白。世界を白で染め上げるのだ。白き清浄なる世界のためにッ! ふふっ、ふはははっ! 覚悟はいいな、遊蓮! バトルだ!」
「くっ、バトルフェイズ開始時《戦線復帰》を発動。墓地の《おジャマ・ブルー》を守備表示で特殊召喚する」
「小賢しい! ホワイトの効果を使うまでもない。そのまま攻撃だ! アームド・ビッグ・ホワイト・バニッシャー!」
「おジャマ・ブルーが戦闘で破壊され墓地に送られた時、デッキから「おジャマ」カードを2枚手札に加えることができる。俺は《おジャマ・レッド》と《おジャマ・デルタハリケーン!!》を手札に加える」
「おジャマ・デルタハリケーン……だと? 俺はそのカードを……ぐっ、頭が……ええぃっ、関係あるか! 白のヴェールを装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する! 続けて《アームド・ドラゴン LV5》でダイレクトアタックだ!」
音羽遊蓮 LP4000 → 1600
「俺はカードを1枚伏せて……ターンエンドだ」
万丈目準 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP1600 手札4 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《強欲で金満な壺》を発動。EXデッキのカードを裏側表示でランダムに6枚除外し、カードを2枚ドロー。続けて《テラ・フォーミング》を発動。デッキから《おジャマ・カントリー》を手札に加え、そのまま発動する」
白い景色の中に、のどかなおジャマの故郷が再び周囲を包み込む。
「おジャマ・カントリーの効果発動。手札の《おジャマジック》を墓地に送り、墓地の《おジャマ・ブルー》を特殊召喚。そしておジャマジックの効果でデッキから《おジャマ・イエロー》、《おジャマ・グリーン》、《おジャマ・ブラック》を手札に加える」
「またおジャマ……くっ、なんだ、この頭痛は……」
「《おジャマ・レッド》を召喚し、効果発動。手札の《おジャマ・イエロー》、《おジャマ・グリーン》、《おジャマ・ブラック》を特殊召喚」
青に続いて赤、それに続いて黄、緑、黒のおジャマが出現しフィールドを埋め尽くす。
「ぐっ、うるさいッ!
やはり精霊の声は聞こえているようだな。俺にはまったく聞こえないが。
「《おジャマ・デルタハリケーン!!》を発動。おまえのフィールドのカードを全て破壊する」
「甘いんだよッ! カウンター罠《大革命返し》を発動。そいつの発動と効果を無効にして除外する」
「マジかよ。となりゃ、すまんおまえたち。《ブラック・ホール》を発動。フィールド上のモンスターを全て破壊する」
「ふっ、ザコどももまとめてか。それでいい。役にも立たんザコカードなど邪魔なだけだ」
万丈目のエース、白いアームド・ドラゴンが破壊されたことで、装備されていた《白のヴェール》も破壊される。白のヴェールは強力な効果をいくつも持っているが、それに相応しい強烈なデメリットも抱えている。
「白のヴェールがフィールドを離れたことで、おまえは3000のダメージを受ける」
万丈目準 LP4000 → 1000
「その程度、覚悟の上だ。貴様の手札は1枚。召喚権も消費した。もはやどうすることもできまい!」
「それはどうかな? これが逆転の切り札だ! 魔法カード《トライワイトゾーン》を発動。墓地より甦れ! おジャマたち」
墓地より3体のおジャマが復活する。なんか文句を言っているような気もするが、気のせいだろう。
「万丈目、思い出せ! こいつらはおまえの仲間だろ!」
「仲間……だと?」
「そうだ。どん底のおまえと一緒に這い上がった仲間だ。一緒におまえの兄貴と戦った仲間だ!」
「……なにを……ぐっ、そうだ……俺は一度どん底まで落ちて、ぐぁっ、這い上がってきた。そうだ! そいつらが俺に教えてくれた。――――下には下がいることをッ! 俺は……なんだこのダサい服は? むっ、遊蓮! なんで貴様の場に俺のモンスターが!?」
明らかに目の色が変わったな。やっと正気に戻ったか。
「まさか貴様ッ! 俺のデッキを盗んだなッ!?」
「……もういいや。バトルだ。おジャマ・イエローで攻撃。えーっと、城之内ファイヤー!」
万丈目準 LP1000 → 0
やれやれ、人騒がせなやつだ。
これで三沢や明日香さんが白化する事態は防げただろう。