「ここが童実野町か」
入学試験の時に訪れたが、あの時はこっちに来たばかりで結構余裕がなかったからな。
さてどうするかと考えていたら、いつの間にか十代たちが消えていた。声くらいかけてくれても良かったのにな。
「相変わらず落ち着いてるな」
「三沢か。あいつらと一緒に行かなかったのか?」
「船酔いが酷くてな。少し休んでから行くよ」
「そうか、ならしばらく付き合ってやるよ」
ブルーには仲のいいやつらがいないんだよな。やっぱりエリート意識が強いのか、成り上がりの俺は低く見られている、気がする。
「そういえば、一時期万丈目がおかしくなっていたが、おまえが元に戻したのか?」
「まあな。どうも斎王が絡んでいるらしい」
「斎王か。運命の導きだの光の結社だのと
「優秀なデュエリストを勧誘しているらしいな」
「その割には俺のところには来てないが」
俺のところにも来てないな。そういえば、三沢の白化ってどんな流れだったっけ? あんまり覚えてないや。
「おまえたち、音羽遊蓮と三沢大地だな」
「……どちら様で?」
「俺は美寿知……、斎王様の使者、四帝のひとり、岩丸」
「炎丸だ」
ひとりはオレンジ色の髪に、同じくオレンジ色のサングラスをかけた青年。もうひとりは、まさしく岩って感じの頑強な男だった。
「良かったな、三沢。勧誘が来たみたいだぞ」
「あまり穏やかではないようだがな」
「おまえらもデュエリストなら分かるだろう」
そう言って炎丸はデュエルディスクを構える。俺の相手はこっちか。
「先攻はくれてやる。始めるぞ」
「そりゃどうも。んじゃま」
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー」
ふっ、完璧な手札だ。
「カードを5枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP4000 手札1 モンスター0 伏せ5
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。いきなりガン伏せとはな。だが無駄だ。《局所的ハリケーン》を発動。セットされている魔法・罠カードを全て手札に戻す。チェーンがあるなら発動しな」
「では遠慮なく。チェーン2で《仕込みマシンガン》、チェーン3で《おジャマトリオ》、チェーン4で《威嚇する咆哮》、チェーン5で《積み上げる幸福》、チェーン6で《連鎖爆撃》だ」
「なっ!? チェーン6……全て発動だとぉ!?」
「逆順処理を始めるぜ。
炎丸 LP4000 → 1600
「積み上げる幸福の効果で2枚ドロー。威嚇する咆哮の効果で、このターンおまえは攻撃できない。おジャマトリオの効果でおまえのフィールドにおジャマトークン3体を特殊召喚。仕込みマシンガンの効果で、おまえは手札・フィールドのカードの数×200のダメージを受ける」
「俺の手札は5枚、フィールドには局所的ハリケーンと変なトークンが3枚……」
「合わせて9枚だな。1800のダメージを受けてもらう」
炎丸 LP1600 → 0
「バ、バカな……。この俺が何もできずに……」
「炎丸ゥーー! くそッ、ならば俺だけでも勝つッ! 俺はモンスターをセット、カードを3枚伏せてターンエンドだ!」
向こうは相手が先攻だったか。
岩丸 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《海皇子 ネプトアビス》を守備表示で召喚。そして効果発動だ。手札の《海皇の狙撃兵》を墓地に送り、デッキから《海皇龍 ポセイドラ》を手札に加える。そして海皇の狙撃兵の効果発動。このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた時、相手フィールド上にセットされたカード1枚を選択して破壊する。俺は真ん中の伏せカードを選択する」
チェーン発動はなし。岩丸の伏せカードの1枚が破壊された。
「破壊されたのは《D2シールド》か。……読めたぞ。貴様のデッキはカウンターデッキ。伏せモンスターは……《アステカの石像》だ!」
なるほどな。名前も岩丸だし、地属性のデッキと読んだか。
「だとすればどうする? 攻撃せずに勝つつもりか? あいつのように」
「それが出来れば最上だろうが、あいにくと俺のデッキはそういうデッキじゃない。カードを3枚伏せてターンエンドだ」
三沢大地 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3
岩丸 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。モンスターをセットしてターンエンド」
岩丸 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ2
三沢大地 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ3
――――――――――――
「あくまで待ちの姿勢か。俺のターン、ドロー。《素早いマンタ》を召喚。そしてこの瞬間《激流葬》を発動。フィールドのモンスターを全て破壊する!」
「な、なんだと!? 自分のモンスターまで巻き込むのか!?」
フィールドに大津波が発生し、全てのモンスターを飲み込んでいった。
「ふっ、やはり貴様のモンスターは《アステカの石像》、そして《機動砦のギア・ゴーレム》か」
「くっ、だがおまえのモンスターも……」
「甘いな。俺が考えなしで自分のモンスターまで破壊したと思うか。《素早いマンタ》の効果発動。デッキから同名カードを2体特殊召喚する。さらに《激流蘇生》を発動。このカードは自分フィールド上の水属性モンスターが戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時に発動できる。その時に破壊され、フィールド上から自分の墓地へ送られたモンスターを全て特殊召喚し、特殊召喚したモンスターの数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。《海皇子 ネプトアビス》と《素早いマンタ》を特殊召喚し、1000のダメージを受けてもらう」
岩丸 LP4000 → 3000
「続けていくぞ! フィールドにいる《素早いマンタ》3体をリリースし、手札から《海皇龍 ポセイドラ》を特殊召喚! そしてこの効果で特殊召喚に成功した時、フィールド上の魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す」
ポセイドラの引き起こした大津波によって、今度は伏せカードまでもがフィールドから姿を消した。
「チェーン発動はなしか。やはりカウンタータイプのトラップだったようだな。バトルだ。ネプトアビスで攻撃!」
岩丸 LP3000 → 2200
「ラストアタックだ! ポセイドラで攻撃、ウォーター・パニッシャー!」
岩丸 LP2200 → 0
「くっ、俺のデッキが完璧に読み切られるとは……。お許しください! 美寿知様ぁぁッ!!」
空中に鏡のようなものが現れた瞬間、そこから発せられた閃光によってふたりの姿はかき消えた。
「な、何が起きた? やつらはどこに……それに、みずち……とは一体……?」
困惑する三沢の呟きだけが空気に溶けた。