亀のゲーム屋。童実野町にある武藤遊戯の実家であるカードショップだ。今では観光スポットのひとつと化している。だがその扉には「臨時休業」の札がかけられていた。
「ツイてないな。休みか」
たぶん十代たちを案内してるんだろうな。
「俺たちの方にふたり来たということは、十代たちの方にもふたり向かったと考えるのが妥当だな」
「炎丸に岩丸、だとすれば後のふたりは風と水か」
確かミジュマルだか氷輪丸だったか。
「おい三沢、あれを見ろ。あのビルの屋上だ」
「ん? あれはソリッドビジョンか。剣山の
遠目なのによく判別できるな。
「よし、行ってみよう」
三沢に促されビルに向かう。その途中で、ソリッドビジョンが消えた。
念のためにビルへと向かうが、到着したときには誰もいなかった。どうやら間に合わなかったようだ。
「仕方ない。俺はオシリスレッドの宿泊地に行く。おまえはどうする?」
「俺はホテルに帰るよ。何かあれば連絡してくれ」
アカデミアのランク格差は根強く残り、オシリスレッドは河川敷でテントを張り、ラーイエローは温泉旅館、オベリスクブルーはホテルに宿泊している。
光の結社は高級ホテルを貸し切っているらしい。
さすがに河川敷でキャンプは遠慮したい。久しぶりにブルーで良かったと思ったよ。
「十代とエドがタッグデュエル?」
翌日、三沢から連絡をもらい海馬ランドに足を運ぶと、三沢が「ヴァーチャルワールド」というアトラクションの前で寂しく佇んでいた。どうやら参加資格を与えられなかったらしい。
「お主もデュエルアカデミアの生徒かの」
「はい、そこにいる三沢や十代とは同級になります。音羽遊蓮です」
「ほっほっ、礼儀正しいの。さすがはオベリスクブルーじゃ。儂は遊戯の祖父、武藤双六じゃ」
この人が双六爺ちゃんか。なんていうか、そのまんまだな。
それから双六爺ちゃんの孫自慢を聞きながら数時間待ち、ようやく十代たちが戻ってきた。無事に剣山と翔を救出できたようだ。
四帝の四人もふらふらとついてきていた。だが、首魁の美寿知は自らの意思で仮想世界に残ったらしい。
どうにか美寿知を助け出したい十代は、双六爺ちゃんに頭を下げて、海馬瀬人に掛け合ってもらうように頼んだ。
そんな一抹の不安を残して、修学旅行は終わりを告げた。
そして俺たちがアカデミアに戻ってきた時期とほぼ同じくして、長期間留守にしていた鮫島校長がようやく帰還し、全生徒が大講堂に集められた。
「久しぶりだね、諸君。私が居ない間に、見慣れぬ制服の生徒が増えたようだが、それはまあいいだろう。それより今日は、皆に素晴らしいプレゼントを持ってきた」
鮫島校長の発言に大講堂がにわかに騒然としだした。
「私のプレゼントはこれだよ!」
正面の大型プロジェクターに映し出されたのは、地球をバックに大きく記された「Gx」の文字。いよいよジェネックスの開幕か。
「世界中の、ジェネレーションネクストNo.1を決めるためのデュエル。名付けて「ジェネックス第一回大会」の開催を、ここに宣言する」
この島全体を舞台にした、プロ・アマオープンの大会。
デュエルアカデミア高等部の生徒は全て参加資格があり、資格メダルが1枚与えられる。
参加者は1日1回デュエルする義務があり、最初に挑戦されたデュエルを拒むことはできない。
勝者は敗者のメダルを全て入手できる。
「私が世界を回り、選りすぐった強豪デュエリストたちが続々と上陸してくる。ぜひこの学園から、第一回優勝者が出るように頑張ってほしい。以上だ、健闘を祈る」
鮫島校長の激励の言葉で、朝礼は終了となった。
その後、全生徒に1枚ずつメダルが配布され、ジェネックス第一回大会の幕が上がった。
「一敗もできないってのは、やっぱり厳しいドン」
「獲得したメダルの数が成績に影響するって噂だけど……」
「僕には関係ないな。しばらくは様子見だ」
「エドのやつ、省エネモードかよ。あー、早く世界の強豪とデュエルしてえなぁ。ワクワクするぜ」
相変わらず十代は燃えているようだが、実際コンティニューなしってのは厳しいな。序盤は勝っても獲得メダルは少ないだろうし、エドじゃないが様子見が最善だろう。
と思っていたら、いきなりデュエルを申し込まれた。
「ようやく貴様に借りを返す時が来たぜ」
……誰だっけ、こいつ? 見覚えはあるんだよな。確か万丈目の……。
「取り巻き……」
「よく覚えていたな。この
取巻って名前だったのか。つかかっこいいな、太陽って。
「先攻はくれてやるぜ」
最近は先攻を譲られることが多いな。
「……じゃあ遠慮なく」
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー」
さて、こいつの性格からして善意で先攻を譲ったとは考え難いな。後攻1キルを狙っている可能性もある。
ちょっと強引に行くか。
「《フォーチュンレディ・ライティー》を召喚。装備魔法《ワンダー・ワンド》を装備して、効果発動。このカードと装備モンスターを墓地に送って、カードを2枚ドローする」
残念ながらライティーの効果はタイミングを逃すので発動できない。
「続けて《ルドラの魔導書》を発動。手札の《トーラの魔導書》を墓地に送り、カードを2枚ドロー。《グリモの魔導書》を発動。フィールド魔法《魔導書院ラメイソン》を手札に加え、そのまま発動。カードを2枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP4000 手札3 モンスター0 伏せ2
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《局所的ハリケーン》を発動。セットされた魔法・罠カードを手札に戻す」
「チェーンはしない。2枚のセットカードを手札に戻す」
「くくくっ、これで俺の勝ちだな。俺は《重装武者-ベン・ケイ》を召喚」
「……ベンケイ1キルか」
「今さら気付いてももう遅い。《デーモンの斧》、《狂暴化の仮面》、《魔導師の力》を装備」
《重装武者-ベン・ケイ》 攻撃力500 → 4000
「バトルだ。ベン・ケイでダイレクトアタック! 沈めぇッ!」
「この瞬間、手札の《バトルフェーダー》の効果発動。このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する」
「……は? バトルフェイズを、終了だと?」
取巻が呆けたようにこちらを見る。ベンケイ1キルではかかしと並んで最も警戒するカードだと思うがな。
「おまえのメインフェイズ2だ。早くしてくれ」
「くっ、ターンエンドだ」
取巻太陽 LP4000 手札1 モンスター1 伏せ0
音羽遊蓮 LP4000 手札4 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズにラメイソンの効果発動。墓地の《グリモの魔導書》をデッキの一番下に戻し、カードを1枚ドロー。《金華猫》を召喚し、効果発動。墓地の《フォーチュンレディ・ライティー》を特殊召喚。ターンエンドだ」
「タ、ターンエンド? 今ターンエンドと言ったか!?」
「言った。そしてエンドフェイズに金華猫は手札に戻る。そして金華猫がフィールドを離れたことで、ライティーは除外される。そしてカード効果でライティーがフィールドを離れたので、効果発動だ。デッキから《フォーチュンレディ・ファイリー》を攻撃表示で特殊召喚。最後にファイリーの効果を発動だ。《重装武者-ベン・ケイ》を破壊し、攻撃力分のダメージを相手に与える。つまり4000だ」
「よ、4000のダメージだとぉッ!?」
取巻太陽 LP4000 → 0
「惜しかったな。ま、メダルは貰っていくぜ」
当然だが、取巻の持っていたメダルは1枚だった。