「大変だぁーッ! 遊蓮ッ!」
ドアを壊しそうな勢いでノックもせずに十代が飛び込んできた。おまえ何時だと思ってんだ。近所迷惑だろう。
「翔が……ってあれ? おまえ一人か? 確か二人部屋だったよな」
「あいつなら星を見に行ってるよ。都会育ちのロマンチストだからな」
「ふーん。ってそんな場合じゃねぇんだ。翔が攫われちまった!」
攫われた? 翔なんか攫ってどうするんだ? 人質にしてカイザーにデュエルを申し込むとか……いや、カイザーは今島外のはずだ。なら……ああ、あのイベントか。
「今メッセージが届いてよ。翔を返してほしければ女子寮まで来いって」
「へー、女子風呂でも覗いて捕まったかな?」
「何言ってんだ! 翔にそんな度胸があるわけないだろ!」
そこは「そんなことするやつじゃない!」って言ってやれよ。
「わかったわかった。じゃあ迎えに行ってやるか」
「おう、じゃあ行こうぜ!」
俺の返事を聞くや否や、十代は俺の腕を掴んで走り出した。水辺のボートに乗り込みオールを漕ぐ。その先には三人の女子生徒が待ち構えていた。
真ん中で仁王立ちしているのは、凛とした美少女である。
涼やかな目元に、すっきりと通った鼻梁、背筋を伸ばして胸を張っているため、隣にいる翔と同級生とは思えない。
何度見てもハンサムだねぇ。女王と呼ばれるのも納得だ。
そこからは覗いた、覗いてないの押し問答。数の上では3vs3だったが、やってないことを証明するのは難しく、またこういった事件の場合女性側の意見が採用されやすいので、もし裁判にまで発展した場合はかなり分の悪い勝負になる。よしんば勝ったとしても学園には居辛くなってしまうだろう。
なのでデュエルで勝てば見逃してくれるというのはありがたい申し出ではあった。でもさ、水上でデュエルする必要ある?
『デュエルッ!』
「私のターン、ドロー。《サイバー・プチ・エンジェル》を召喚し、効果発動。デッキから《機械天使の儀式》を手札に加え、そのまま発動よ。フィールドのレベル2《サイバー・プチ・エンジェル》と手札のレベル3《儀式魔人デモリッシャー》をリリースして、《サイバー・エンジェル-那沙帝弥-》を儀式召喚!」
《サイバー・エンジェル-
星5/光属性/天使族/攻1000/守1000
「攻撃力1000って、あれだけカードを消費した割にはショボ、控え目なモンスターッスね」
「いや、これは意外と厄介だぞ。《儀式魔人デモリッシャー》を使用して儀式召喚したモンスターは相手の効果の対象にならない。それに加えて那沙帝弥は儀式モンスターが攻撃対象に選択された時にその攻撃を無効にする効果をもっている。しかも発動回数にターン制限がないから、戦闘破壊するのはかなり難しい」
「ゲッ、それってマジかよ」
なんでおまえが驚くんだよ。ちゃんとデュエルディスクを見ろ。
「よく知ってるわね。でも那沙帝弥の効果はそれだけじゃないわ。那沙帝弥自身を対象に効果発動。そのモンスターの攻撃力の半分の数値分ライフを回復するわ」
天上院明日香 LP4000 → 4500
「カードを1枚伏せてターンエンドよ」
天上院明日香 LP4500 手札2 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。攻撃対象には出来なくても、やりようはあるぜ。手札の《沼地の魔神王》の効果発動。このカードを墓地に捨てて、デッキから《融合》を手札に加える。そんでそのまま発動だ。手札の《E・HERO クレイマン》と《E・HERO バーストレディ》を融合。《E・HERO ランパートガンナー》を守備表示で融合召喚!」
《E・HERO ランパートガンナー》
星6/地属性/戦士族/攻2000/守2500
「ランパートガンナーは守備表示のまま相手にダイレクトアタックできる。ただし攻撃力は半分になるけどな。いけッ! ランパート・ショット!」
那沙帝弥の脇を抜けて、ランパートガンナーのガトリングが火を噴いた。
天上院明日香 LP4500 → 3500
「ふっ、さすがね。この状況に即座に対応してくるなんて」
「へへっ、バトルを終了して《カードガンナー》を守備表示で召喚。効果でデッキの上から3枚のカードを墓地に送るぜ。そしてカードを1枚伏せてターンエンドだ」
遊城十代 LP4000 手札1 モンスター1 伏せ1
天上院明日香 LP3500 手札2 モンスター1 伏せ1
――――――――――――
「私のターン、ドロー。魔法カード《儀式の準備》を発動。デッキから《サイバー・エンジェル-弁天-》を手札に加え、その後墓地の《機械天使の儀式》を手札に加える。そして《機械天使の儀式》を発動よ。手札の《サイバー・エンジェル-韋駄天-》をリリースして、《サイバー・エンジェル-弁天-》を儀式召喚!」
《サイバー・エンジェル-弁天-》
星6/光属性/天使族/攻1800/守1500
「このモンスターもレベル6にしては低めの攻撃力ッスね」
「いや、重要なのはリリースされた韋駄天の方だな。あれはリリースされた時に儀式モンスターの攻守を1000アップさせる効果があったはずだ」
「ゲッ、マジかよ」
だからおまえはちゃんと効果を確認しろ。
「本当によく知ってるのね。そういうことよ。弁天と那沙帝弥の攻守は1000アップするわ」
《サイバー・エンジェル-弁天-》 攻撃力2800/守備力2500
《サイバー・エンジェル-那沙帝弥-》攻撃力2000/守備力2000
「続けて弁天を対象に那沙帝弥の効果を発動」
天上院明日香 LP3500 → 4900
「バトルよ! 弁天でランパートガンナーを攻撃、エンジェリック・ターン!」
弁天の持つ扇が巻き起こした突風がランパートガンナーの盾を砕く。
「弁天の効果発動。戦闘で破壊したモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える!」
「くっ、フレイム・ウィングマンと似たような効果か。ぐあぁぁッ!!」
遊城十代 LP4000 → 1500
「那沙帝弥でカードガンナーを攻撃!」
「破壊されたカードガンナーの効果発動。デッキからカードを1枚ドローする」
「ふっ、ここからどう巻き返すのか、楽しみね。ターンエンドよ」
「エンドフェイズに《融合準備》を発動するぜ。EXデッキの《E・HERO ワイルドジャギーマン》を相手に見せて、その融合素材モンスターの《E・HERO ワイルドマン》を手札に加える。その後、墓地の《融合》も手札に加えるぜ」
天上院明日香 LP4900 手札1 モンスター2 伏せ1
遊城十代 LP1500 手札4 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の《E・HERO クレイマン》、《E・HERO バーストレディ》、《E・HERO フェザーマン》、《カードガンナー》、《E・HERO ランパートガンナー》をデッキに戻してシャッフル。その後2枚ドロー。続けて《E-エマージェンシーコール》を発動だ。デッキから《E・HERO エッジマン》を手札に加える。そして《融合》を発動。手札の《E・HERO エッジマン》と《E・HERO ワイルドマン》を融合。《E・HERO ワイルドジャギーマン》を融合召喚!」
《E・HERO ワイルドジャギーマン》
星8/地属性/戦士族/攻2600/守2300
「さらに装備魔法《レインボー・ヴェール》と《最強の盾》をワイルドジャギーマンに装備だ」
レインボー・ヴェールはバトルフェイズの間のみ相手モンスターの効果を無効化する効果。最強の盾は戦士族専用の守備力を攻撃力に加算する効果か。
《E・HERO ワイルドジャギーマン》攻撃力2600 → 4900
「さあいくぜ、バトルだ! ワイルドジャギーマンで那沙帝弥を攻撃、インフィニティ・エッジ・スライサー!」
「くっ、レインボー・ヴェールの効果で那沙帝弥の効果は無効になっている……」
天上院明日香 LP4900 → 2000
大剣一閃。那沙帝弥は袈裟斬りに切り裂かれ、返す刀が弁天に向かう。
「ワイルドジャギーマンは全てのモンスターに攻撃できる。続けて弁天を攻撃、インフィニティ・ダブル・スライサー!」
「まだよッ! トラップ発動《スキル・サクセサー》! 弁天の攻撃力をエンドフェイズ時まで400アップするわ!」
《サイバー・エンジェル-弁天-》攻撃力2800 → 3200
「それでもワイルドジャギーマンには届かないぜ。いけッ!」
天上院明日香 LP2000 → 300
「弁天が破壊される代わりに墓地の《機械天使の儀式》を除外するわ。そしてライフは残った。那沙帝弥には更なる効果が残されている。次のターンで私の勝ちよ」
「面白れぇな、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
遊城十代 LP1500 手札0 モンスター1 伏せ1
天上院明日香 LP 300 手札1 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「私のターン、ドロー。墓地の那沙帝弥の効果発動。《サイバー・エンジェル-韋駄天-》を除外して、このカードを特殊召喚する。そしてあなたのワイルドジャギーマンのコントロールを得る」
「そうはさせねぇ! リバースカード《墓穴の指名者》を発動。墓地の那沙帝弥を除外するぜ」
「なんですって!? ならば装備魔法《リチュアル・ウェポン》を発動。このカードはレベル6以下の儀式モンスターにのみ装備可能。弁天の攻守を1500アップする」
《サイバー・エンジェル-弁天-》攻撃力4300/守備力4000
「墓地の《スキル・サクセサー》を除外して、弁天の攻撃力をさらに800アップ!」
《サイバー・エンジェル-弁天-》攻撃力4300 → 5100
「うわっ、攻撃力が5000超えちゃったッスよ」
「そうだなー」
やっぱこの世界って攻撃力を上げて物理で殴るのがスタンダードなんだな。
「バトルよ! 弁天でワイルドジャギーマンを攻撃、エンジェリック・ターン!」
「その前に墓地の《ダメージ・ダイエット》を除外して効果を発動するぜ!」
「――ッ!? 弁天の効果は忘れていなかったようね」
遊城十代 LP1500 → 1300
「弁天の効果発動。戦闘で破壊したモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える!」
「だがダメージ・ダイエットの効果でこのターンに受ける効果ダメージは半分になる」
遊城十代 LP1300 → 150
「私はこれでターンエンドよ」
天上院明日香 LP 300 手札1 モンスター1 伏せ0
遊城十代 LP 150 手札0 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《E・HERO バブルマン》を特殊召喚。手札がこのカード1枚のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。そして自分の手札・フィールドに他のカードが無い場合に、デッキからカードを2枚ドローできる」
ここでバブルマンを引くのか。しかもおまけ扱いだったドロー効果がしっかり機能してる。
「きたぁーッ! 魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動。墓地の《沼地の魔神王》と《E・HERO スパークマン》を除外して融合を行う。来いッ! 《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》!!」
《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》
星8/光属性/戦士族/攻2500/守2100
「攻撃力2500……いえ、それだけではないわね」
「その通り! シャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃力は墓地に存在する「E・HERO」の数×300アップする! 俺の墓地にはエッジマン、ワイルドマン、ワイルドジャギーマンの3体。攻撃力は900アップ」
ということはカードガンナーの効果で墓地に落ちたのはフェザーマン、スパークマン、ダメージ・ダイエットの3枚か。
「それでも攻撃力は3400。弁天には遠く及ばないわ」
「へへっ、ほんとは攻撃力なんて関係ないけどな。装備魔法《月鏡の盾》をシャイニング・フレア・ウィングマンに装備」
「そ、そのカードは……」
月鏡の盾か。確かに戦闘を介して効果を発動するフレイム・ウィングマンやシャイニング・フレア・ウィングマンとは抜群の相性だな。
「バトルだ! シャイニング・フレア・ウィングマンで弁天を攻撃、シャイニング・シュート!」
天上院明日香 LP 300 → 200
「シャイニング・フレア・ウィングマンの効果発動。戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」
「くっ、きゃあぁぁっ!」
天上院明日香 LP 200 → 0
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
ひやりとする場面もあったが、なんとか勝てたか。翔もホッと胸をなでおろしている。
「約束通り、翔は連れて帰るぜ」
「どうぞ、約束は守るわ。今日のことは黙っててあげる」
やれやれ、何事もなく終わったか。やっぱり俺が来た意味はなかったな。
「ちょっといい? 音羽くん」
「ん?」
腰を下ろしてオールに手を掛けたところで声がかかった。この娘はどっちだったっけな。ジュンコ? ももえ?
「せっかく来たんだから、アンタもデュエルしなさい。この私とね」
GX時代のデュエルディスクがどこまで相手のカード情報を読み取れるのか不明ですが、漫画版ではちゃんと効果確認ができる描写があったので、そういうことにしています。
外野からはステータスは見えるけど、効果は見えないといった感じです。