ジェネックス開始から七日目。つまりは最終日。この日は朝から白と青の制服が盛大にぶつかり合っていた。
眼下では喊声が絶えず上がっている。
指揮官を失った白の軍団は、それでも1枚でも多くメダルを集めようと、世界を白く染め上げようと、大地を駆け回っている。
対する青の軍団は、文字通り神輿に担がれた万丈目を頂点に一意専心デュエルに取り組んでいた。
太陽が中天を過ぎ、趨勢はほぼ決まった。そろそろ頃合いだろう。
デュエルに敗れ、メダルを失った屍たちを踏み越えて、アカデミアへと向かう。その正面広場では、万丈目とバンダナを巻いた外部参加者がデュエルの真っ最中だった。
その結果は――。
ああっと! 万丈目くんふっとばされたぁぁぁーーー!
「む、遊蓮くんか。キミも勝ち残っていたようだね。ふむ、時間的にもこれが決勝戦だ。彼女と戦いたまえ」
鮫島校長がいつになく真面目な面持ちで、厳かに告げる。
彼女……やはり早乙女レイか。
「遊蓮、気をつけろ。ヤツは恐ろしいコンボを使う」
「万丈目……おまえ女子小学生に負けたのか?」
「ぐはっ!? き、貴様~、この俺様がアドバイスしてやっているというのに。もういいッ! 貴様もさっさと負けてしまえッ!」
冗談の通じないやつだなぁ。
「久しぶりだな、レイ。ここまで勝ち残るなんて、頑張ったんだな」
「はい、遊蓮さん。ボク頑張りました。そして、優勝するのはボクだ!」
「俺もそう簡単に負けるつもりはない。いくぞッ!」
『デュエルッ!』
「ボクのターン、ドロー。魔法カード《強欲で金満な壺》を発動。EXデッキのカードをランダムに6枚、裏側表示で除外し、カードを2枚ドロー。続けて《儀式の下準備》を発動。デッキから儀式魔法カード《聖占術の儀式》を手札に加え、さらにそのカードにカード名が記された儀式モンスター《聖占術姫タロットレイ》をデッキから手札に加えるよ」
やはり儀式デッキか。タロットレイは厄介だな。
「今手札に加えた《聖占術の儀式》を相手に見せて、《
《聖占術姫タロットレイ》
星9/光属性/天使族/攻2700/守1200
「《神殿を守る者》を守備表示で召喚。カードを2枚伏せてターンエンド。そしてエンドフェイズにタロットレイの効果発動。手札の《メタモルポット》を裏側守備表示で特殊召喚するよ」
早乙女レイ LP4000 手札1 モンスター5 伏せ2
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
「スタンバイフェイズにタロットレイの効果発動。メタモルポットを裏側守備表示から表側攻撃表示にするよ」
一つ眼の壺が姿を現し、その瞳から妖しい閃光を放つ。これが万丈目の言っていた恐ろしいコンボか。
「メタモルポットの効果にチェーンして、手札から速攻魔法《月の書》を発動。《神殿を守る者》を裏側守備表示にする。続けて速攻魔法《
「えぇッ!? 速攻魔法の融合!?」
逆順処理が行われ、最後のメタモルポットの効果でお互いに手札を全て捨て、新たに5枚のカードをドローする。
「改めてチェーンを組むぜ。効果で墓地に送られたシャドール・ヘッジホッグの効果でデッキから《シャドール・エリアル》を手札に加え、シャドール・リザードの効果でデッキから《
必殺のコンボがかわされたからだろうが、レイの表情は思わしくない。とはいえまだまだ盤面はレイが優勢だ。
「手札から《影依融合》を発動。手札の《シャドール・エリアル》と《シャドール・ハウンド》を融合。《エルシャドール・アノマリリス》を融合召喚」
《エルシャドール・アノマリリス》
星9/水属性/悪魔族/攻2700/守2000
「ハウンドの効果でタロットレイの表示形式を変更し、エリアルの効果で墓地の《聖占術姫タロットレイ》、《聖占術の儀式》、《機怪神エクスクローラー》を除外する」
メタモルポットの効果でレイの手札から墓地に送られたカード、機怪神エクスクローラーは十代を苦しめた強力な制圧効果を持っているが、レベル9と重い。タロットレイの効果で簡単に出せるとはいえ、ピン挿しか、入っていても後1枚だろう。
「《シャドール・ドラゴン》を召喚して、バトルだ。ドラゴンでタロットレイを、ミドラーシュで神殿を守る者を、アノマリリスでメタモルポットを攻撃!」
早乙女レイ LP4000 → 2000
「カードを2枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《リビングデッドの呼び声》を発動。墓地から《聖占術姫タロットレイ》を特殊召喚! ……ってあれ? 発動しない? なんでぇ!?」
「……レイ、アノマリリスの効果をよく読むんだ」
「へ? えっと、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、お互いに魔法・罠カードの効果で手札・墓地からモンスターを特殊召喚できない。ってことは、ミドラーシュの効果で特殊召喚は1回しかできないし、アノマリリスの効果で、手札と墓地からは特殊召喚できないってこと!?」
「
「ぐぬぬ……」
音羽遊蓮 LP4000 手札1 モンスター3 伏せ2
早乙女レイ LP2000 手札5 モンスター2 伏せ2
――――――――――――
「ボクのターン、ドロー。伏せてあった《迷える仔羊》を発動。仔羊トークン2体を特殊召喚する。そしてその2体をリリースしてモンスターをアドバンスセット。カードを1枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《砂塵の大嵐》を発動。2枚の伏せカードを破壊する」
前のターンに発動できなかったリビングデッドの呼び声と、新たに伏せたエア・フォースが破壊された。
早乙女レイ LP2000 手札4 モンスター3 伏せ0
音羽遊蓮 LP4000 手札1 モンスター3 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
さて、アドバンスセットとか久しぶりに見たが、わざわざ仔羊トークンを使ったということはリバースモンスターだろう。
可能性が高いのは、2枚目の《機怪神エクスクローラー》か、あるいは《禁忌の壺》。
どちらも守備力は3000。突破できなくはないが、次のターンに不安が残る。
「バトルフェイズに入る。シャドール・ドラゴンでキャンドールを、ミドラーシュでタリスマンドラを攻撃。俺はこれでターンエンドだ」
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター3 伏せ1
早乙女レイ LP2000 手札4 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「ボクのターン、ドロー。セットモンスター《禁忌の壺》を反転召喚。ボクは相手フィールドのモンスターを全て破壊する効果を選択するよ」
壺の中から妖しい光が降り注ぎ、俺のフィールドを包みこむ。
「だがミドラーシュは相手の効果では破壊されない。そしてアノマリリスの効果で墓地の《影依融合》を手札に加える」
「魔法カード《儀式の下準備》を発動。デッキから《聖占術の儀式》を手札に加え、さらに最後の《聖占術姫タロットレイ》を手札に加える。さあ、もう1度だ! 《聖占術の儀式》を発動。フィールドの《禁忌の壺》をリリースし、《聖占術姫タロットレイ》を特殊召喚!」
再び法衣を纏ったレイのエースが姿を現した。
「バトルだ! タロットレイでミドラーシュを攻撃、ジャッジメント・ライトニング!」
「戦闘ダメージを優先して、タロットレイの効果を使わなかったのは失敗だったな。ダメージ計算前に《
「そ、そんなっ!? くぅぅぅっ!」
早乙女レイ LP2000 → 1500
「墓地に送られたエリアルの効果で、墓地の《聖占術の儀式》と2枚の《聖占術姫タロットレイを除外する」
「タロットレイが3枚とも……。くっ、ボクはモンスターをセットして、カードを1枚伏せてターンエンド」
「エンドフェイズに《魂源への影劫回帰》の効果でミドラーシュは裏側守備表示になる」
早乙女レイ LP1500 手札2 モンスター1 伏せ1
音羽遊蓮 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《影依融合》を発動。手札の《
《エルシャドール・アプカローネ》
星6/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2000
「シャドール・ドラゴンの効果で伏せカードを破壊し、ウェンディの効果でデッキから《シャドール・リザード》を裏側守備表示で特殊召喚する。そして墓地の《
「そのカード……。最初のターンに墓地に送られたカードだね」
「セットモンスターは《ペンギン・ナイトメア》か。ミドラーシュは破壊耐性はあるが、バウンスには対応してないからな。良い狙いだ」
「えっと、ありがとう。でも、勝負は決まっちゃったね」
レイは潔く結果を受け入れたようだ。だが、意外と紙一重だったかもしれない。前のターンに、レイがペンギン・ナイトメアの効果を攻撃のために使っていたら、あるいはミドラーシュを裏守備にしていたら、結果は分からなかった。
「ミドラーシュを反転召喚してバトルフェイズに入る。アプカローネでダイレクトアタック! カラミティ・ヘル・バースト!」
早乙女レイ LP1500 → 0
「ううっ、負けちゃったぁ~。やっぱりボクはダメダメなんだ」
「そんなことないさ。万丈目はアカデミアでもトップクラスのデュエリストだ。そいつに勝ったんだから、たいしたもんだよ」
言ってから気付いたが、これ間接的に自画自賛になってるな。
「ジェネックス優勝者は、音羽遊蓮くんに決定した!」
鮫島校長の宣言が響き渡る。
周囲から拍手が巻き起こり、七日間に