青い空、青い海、俺たちは元の世界に戻ってきた。
しかしそこにヨハンの姿はなかった。
「何を落ち込んでいるんだ、十代。おまえのおかげで、みんな戻ってこれたんだぜ」
「みんなじゃない。ヨハンは置き去りになってしまった。俺のせいだ、俺の責任だ」
「ユベルとは話したのか?」
「――ッ!? おまえ、ユベルを知っているのか!?」
十代は鬼気迫る表情で俺の肩を掴んだ。
「ユベル。レベル10の悪魔族。戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも受けない。攻撃してきた相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。維持するためには、モンスター1体をリリースしなければならない」
「……詳しいんだな。確かに、そんな効果だったような気がする」
十代にとっては子供の頃の記憶だからな。効果もうろ覚えなのかもしれない。
「けど、そんなことはどうでもいいんだ。あいつを、あんな風にしてしまったのは、俺なんだ! 俺があいつを宇宙に……」
「だから諦めるのか? ユベルも、ヨハンも」
「そんなこと言っても! どうにもならないじゃないか!」
十代は悲痛の声を上げる。周りの生徒たちが何事かとこちらに視線を向けるが、十代は気にもしていない。
「そうでもない。今、次元は揺らいでいる。おそらく、もうすぐ次元の穴が開く」
「――ッ!? ホントか!?」
たぶん。確かそんな流れだったと思う。
「だから行くなら準備しておけ。行くか行かないか。どちらを選ぶにしても、後悔のないようにな。俺はおまえの決断を尊重する」
そんなわけで、結局みんなして再び異世界にやってきたのだったが、なんか違うような。
「空間の
三沢は地面に数式を書き始めた。こいつ、周りが見えてないな。
「う~ん、計算自体は合っているはずだが……。そうか、時空間、相対時間だ。タキオン粒子をボゾン弦理論に当てはめて再計算すれば……」
「おい、三沢。タキオンでもフォトンでもサイファーでもいいが、なにか気付かないか?」
「なにか? そういえば、十代たちはどこに行った?」
ようやく三沢は気づいたようだ。ここには俺たち2人しかいないことに。
「時空の中ではぐれたのかもしれない。あいつらを探しながら、この世界の情報を集めよう。移動するぞ」
「む、情報か。一理ある。了解だ。――なにっ!? 方位磁石がまるでデタラメだ!」
曇天だから太陽の位置も不明瞭だ。そもそも太陽があるという保証もない。
「あそこに街らしきものが見えるな。ひとまずそこに向かおう」
小高い丘を下り、街へと向かう。殺風景なむきだしの大地を歩いていくと、これまた殺風景な街に辿り着いた。
いや、これは殺風景というレベルではない。
「街というより廃墟だな」
「ゴーストタウンみたいだな。お~い、誰かいないかぁ~」
三沢が大声で呼びかけながら街を回るが、それはすぐに悲鳴に変わった。
「三沢! あれは……《タルワール・デーモン》だな」
レベル6の悪魔族。通常モンスターで攻撃力は2400となかなかに強力だ。決して《デーモンの召喚》の下位互換とは言ってはいけない。
一応、デーモンの召喚よりも守備力はかなり高い。
「まだ生き残りが2人もいたとはな。念のために確認に来た甲斐があった」
反射的にデュエルディスクを構える。するとタルワール・デーモンは獲物を見つけたように下卑た笑みを浮かべた。
「おまえ、戦士か。いいねぇ、なら
「お、おい。遊蓮?」
「下がってろ三沢。こいつの相手は俺がやる」
「いや、待て。いきなりのことでちょっとビックリしただけだ。俺がやる!」
「ヒャハッ、勇ましいことだ、上等上等!」
「笑っていられるのも今のうちだッ!」
『デュエルッ!』
「俺様のターン、ドロー。《トリック・デーモン》を召喚。続けて《デーモンの将星》を特殊召喚。このカードは自分フィールドに「デーモン」カードが存在する場合、手札から特殊召喚できる。ただしこの効果で特殊召喚した場合、自分フィールドの「デーモン」カード1枚を破壊しなければならない」
更に言うなら、このターン、このカードは攻撃できないというデメリットもあるが、先攻なので関係ないだろう。破壊されたトリック・デーモンの効果が発動する。
「俺様はデッキから《デーモンの騎兵》を手札に加える。さらにフィールド魔法《
《デーモンの将星》 攻撃力2500 → 3000
「カードを2枚伏せてターンエンドだ」
デーモン LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「いきなり攻撃力3000のモンスターとはな。俺のターン、ドロー。まずは永続魔法《魂吸収》を発動。そしてモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
三沢大地 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
デーモン LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「ハッ、勇んで挑んだ割にはおとなしいじゃないか。ドロー。《デーモンの騎兵》を召喚してバトルだ! デーモンの騎兵でセットモンスターを攻撃!」
紅い甲冑に身を包んだ悪魔が馬上槍を手に突撃してくる。その突進を喰らった守備モンスターは破壊されたが、ただでは終わらない。
「破壊された《D.D.アサイラント》の効果発動。このカードと相手モンスターを除外する。そして《魂吸収》の効果でライフを1000回復する」
三沢大地 LP4000 → 5000
「モンスター除去と同時にライフも回復か。中々やるじゃないか。デーモンの将星でダイレクトアタック!」
「させんッ! 《深淵のスタングレイ》を発動。このカードは発動後、モンスターカード(雷族・光・星5・攻1900/守0)となり、モンスターゾーンに特殊召喚される。そしてこのカードは戦闘では破壊されない」
「小賢しいッ! 《トラップ・ジャマー》を発動だ。そいつの発動を無効にして破壊する」
「なにッ!? クッ!」
三沢大地 LP5000 → 2000
デーモンの稲妻を喰らい、三沢のライフが大きく削られる。
「まだ終わりじゃねぇぜ。《強化蘇生》を発動。墓地の《トリック・デーモン》を特殊召喚。追撃だぁッ!」
三沢大地 LP2000 → 400
「もはや風前の灯火だなぁ、ターンエンドだ」
デーモン LP4000 手札2 モンスター2 伏せ0
三沢大地 LP 400 手札2 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《強欲で金満な壺》を発動。EXデッキのカードをランダムに6枚、裏側表示で除外し、カードを2枚ドロー。《魂吸収》の効果でライフが回復する」
三沢大地 LP 400 → 3400
後ひと押しまで削ったライフを大幅に回復され、タルワール・デーモンは忌々しそうに三沢を睨みつけた。
「《終末の騎士》を召喚し、効果発動。デッキから闇属性モンスター《ゼータ・レティキュラント》を墓地に送る。カードを2枚伏せてターンエンドだ」
ゼータ・レティキュラントは墓地にあってこそ真価を発揮するモンスター。随分とデッキをいじってきたな。
三沢大地 LP3400 手札1 モンスター1 伏せ3
デーモン LP4000 手札2 モンスター2 伏せ0
――――――――――――
「俺様のターン、ドロー。《融合呪印生物-闇》を召喚。このカードは融合素材モンスター1体の代わりとなれる。このカードとトリック・デーモンをリリースし、EXデッキから《デーモンの顕現》を特殊召喚」
《デーモンの顕現》
星6/闇属性/悪魔族/攻2500/守1200
悪魔の翼を羽ばたかせて顕現したその身体からは、帯電した微粒子が明滅していた。
「このカードはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「デーモンの召喚」として扱い、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「デーモンの召喚」の攻撃力は500アップする。フィールド魔法の効果も受け、さらにパワーアップ!」
《デーモンの顕現》 攻撃力2500 → 3500
「続けてトリック・デーモンの効果を発動だ。デッキから《デーモンの斧》を手札に加え、デーモンの将星に装備する。バトルだ! デーモンの将星で終末の騎士を攻撃、星光の魔降雷!」
「攻撃宣言時に《次元幽閉》を発動。《デーモンの将星》を除外する。そして墓地のゼータ・レティキュラントの効果発動。このカードが墓地に存在し、相手フィールドのモンスターが除外される度に、自分フィールドに「イーバトークン」(悪魔族・闇・星2・攻/守500)1体を特殊召喚する」
「チッ、だが俺様のフィールドにはもう1体の――」
未だ余裕の笑みを崩さないタルワール・デーモンの言葉を遮り、三沢は反撃の手を緩めない。
「永続罠《連撃の帝王》を発動。イーバトークンをリリースして、手札から《邪帝ガイウス》をアドバンス召喚する!」
「なにッ!? 相手ターンにアドバンス召喚だとぉッ!?」
「ガイウスはアドバンス召喚に成功した場合に効果が発動できる。《デーモンの顕現》を除外する。そして除外したカードが闇属性モンスターだった場合、相手に1000ダメージを与える」
三沢の手札から闇の帝王が出現する。その掌撃によってデーモンの顕現は次元の彼方へ消え去った。さらに魂吸収の効果で、三沢のライフが回復する。
デーモン LP4000 → 3000
三沢大地 LP3400 → 3900 → 4400
「墓地のゼータ・レティキュラントの効果が再度発動する」
たった一度の攻防で、三沢のフィールドには3体のモンスターが並び、相手のモンスターは全滅した。
タルワール・デーモンもさすがに焦りを感じているようだ。
「クッ、カードを1枚伏せてターンエンドだ」
デーモン LP3000 手札1 モンスター0 伏せ1
三沢大地 LP4400 手札0 モンスター3 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。バトルだ。終末の騎士でダイレクトアタック!」
「まだだぁッ! まだ終わらんッ! 《闇次元の解放》を発動。除外されている《デーモンの将星》を特殊召喚する!」
「カウンター罠《神の警告》を発動。ライフを2000払い、そのカードの発動を無効にして破壊する。バトルを続行。終末の騎士、続けてガイウスでダイレクトアタック!」
デーモン LP3000 → 1600 → 0
「バ、バカな!? こんなバカなことがあってたまるかぁ!?」
タルワール・デーモンは断末魔の苦悶にのたうち、やがて光の粒子となって消滅した。
とそこで、三沢の背後から声が聞こえてきた。
「まさか、君たちのような戦士が残っているとはな……」
現れたのは精悍な戦士然とした偉丈夫。敵意は感じない。
「む? 貴方、どこかで……見覚えはあるんだが……」
「グレファーさんですね」
戦士なのか騎士なのか、あるいはライトレイなのかカオスなのか。見た限り、ダークではなさそうだ。