街の近くにある山の中腹に、その入り口はあった。洞窟の奥へ進んでいくと、小さな集落が見えてきた。
「昔にあった遺跡を利用している。覇王軍の勢いも増してきているからな。表は危険だ」
「ぶふぉッ!?」
「ど、どうしたんだ? 遊蓮!」
「今なんて言いました? 覇王軍?」
それっておかしくないかな!? 俺たちがこの世界に来たのはついさっきだぞ。
「ああ、この世界は複数の次元が混ざり合い、混沌とした世界となっている。それを力でまとめ上げようとしているのが、覇王を中心とした軍隊、覇王軍だ」
「この世界にはそんな軍隊があるのか」
「マズいな三沢。俺たちと十代たちにはタイムラグがあったのかもしれない。俺たちの方があいつらより遅れてこっちに来た可能性がある」
「何故そう思う? だが、時空間を越えて来たのだから、可能性はあるな。グレファーさん、他の次元から来た、俺たちと同じくらいの年で、同じような服装の人間を知りませんか?」
「……いや、心当たりはないな。一応みんなにも訊いてみるが、あまり期待はしないでくれ」
「待て三沢。グレファーさん、その覇王がどこにいるか分かりますか?」
「ん? 覇王はここから北に行ったところにある覇王城を拠点にしている。だがそんなことを訊いてどうする? まさか……」
「三沢、おそらくそこに、十代たちはいる」
「ここが覇王城か。随分と前衛的なデザインだな」
確かに、ズムシティの公王庁並みに独特の様相だ。
「正面からは無理か。裏に回って……まて、誰かいる」
三沢は息を殺して身を隠した。それに俺も続く。
「気配を消しきれていない。所詮は素人だな。三沢、遊蓮。無事で何よりだ」
「オブラ――」
「静かにしろ。ここは奴らのフィールドだ。今からジムが覇王に挑む」
オブライエンが隣にいたジムに視線を送り、ジムは神妙に頷く。
いきなりの急展開に三沢が目を剥いた。一応、訊いておくか。
「オブライエン、覇王とは何者なんだ?」
「……信じられないかもしれないが、覇王の正体は十代だ」
「なっ!? じゅうだ――」
「静かにしろと言った」
再び口を押えられた三沢は静かに首肯し、さらに尋ねた。
「ジムが覇王に、十代に挑むのか?」
「ああ、俺はそれを見届ける」
「ふっ、心配するな。俺は十代を、マイフレンドを絶対に救って見せる!」
ジムは決意を口にすると、岩影から身を乗り出し、悠々たる闊歩で正面扉の前に立った。
「覇王ッ! 俺とデュエルしろ!」
そこで正面の重苦しい扉が開き、黒い甲冑に身を包んだ覇王十代が姿を現した。
「懲りずに戻ってきたか。いいだろう、引導を渡してやる」
『デュエルッ!』
「俺のターン、ドロー。魔法カード《ジェムナイト・フュージョン》を発動。手札の《ジェムナイト・ラピス》と《ジェムナイト・ラズリー》を融合し、《ジェムナイトレディ・ラピスラズリ》を融合召喚!」
《ジェムナイトレディ・ラピスラズリ》
星5/地属性/岩石族/攻2400/守1000
「効果で墓地に送られたラズリーの効果で、墓地の《ジェムナイト・ラピス》を手札に戻す。さらに墓地のラズリーを除外して《ジェムナイト・フュージョン》も手札に戻す。再度《ジェムナイト・フュージョン》を発動。手札の《ジェムナイト・ラピス》と《ジェムナイト・オブシディア》を融合し、《ジェムナイト・ジルコニア》を融合召喚!」
《ジェムナイト・ジルコニア》
星8/地属性/岩石族/攻2900/守2500
「手札から墓地に送られたことでオブシディアの効果発動。《ジェムナイト・ラピス》を守備表示で特殊召喚。続けて墓地のオブシディアを除外して《ジェムナイト・フュージョン》を手札に戻す。そしてラピスラズリの効果発動。デッキから《ジェムナイト・ガネット》を墓地に送り、フィールドの特殊召喚されたモンスターの数×500ダメージを相手に与える」
覇王 LP4000 → 2500
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
「よし、攻守を兼ね備えた、最善の1ターン目だ」
オブライエンが快哉を叫ぶが、少し急ぎすぎのような気もする。
ジム LP4000 手札2 モンスター3 伏せ1
――――――――――――
「ドロー。《E・HERO エアーマン》を召喚し効果発動。デッキから《E・HERO スパークマン》を手札に加える。魔法カード《ダーク・フュージョン》を発動。これは悪魔族専用の融合カード。手札の《E・HERO スパークマン》と《E・HERO クレイマン》をダーク・フュージョン。出でよ、《E-HERO ライトニング・ゴーレム》!」
「エレメンタルヒーローが融合して、邪悪なイービルヒーローになっただと!?」
「――ッ!? ダメだ!」
ジムは伏せカードを発動しかけたが、すぐに思い直した。あれは、対象を取るトラップカードか。
「ライトニング・ゴーレムの効果発動。《ジェムナイト・ジルコニア》を破壊する。さらに《融合派兵》を発動。EXデッキの《E-HERO マリシャス・デビル》を公開し、デッキから《E-HERO マリシャス・エッジ》を特殊召喚する。フィールド魔法《覇王城》を発動し、バトルだ。まずはマリシャス・エッジでジェムナイト・ラピスを攻撃、ニードル・バースト!」
「リバースカード《強制脱出装置》を発動。マリシャス・エッジを手札に戻す」
「ならばライトニング・ゴーレムでラピスラズリに攻撃。そしてダメージ計算時に覇王城の効果発動。デッキから《E-HERO シニスター・ネクロム》を墓地に送り、そのレベル×200ポイント攻撃力がアップする。喰らえッ! ヘル・ライトニング!」
ジム LP4000 → 3000
「最後にエアーマンでラピスを撃破。ターンエンド」
覇王 LP2500 手札2 モンスター2 伏せ0
ジム LP3000 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「ぐっ、覇王。いや、おまえは十代だ」
攻撃を受けた衝撃で、ジムの眼に巻かれていた包帯が解けて落ちる。
「十代は深い心の闇に落ちてしまっただけ。心が消えてしまったわけじゃない。十代、俺が救い出してやるぞ。おまえの、心を!」
ジムの瞳として納まっていた赤い宝玉、オリハルコンの眼が妖しく光る。
「なんだ? この光は……」
十代がその光に目を覆う。その紅き閃光は一瞬だった。一瞬で光は弾けて、ジムが後方に弾き飛ばされる。
「ぐぅ、十代。おまえの闇は……そこまで深く。だが俺は諦めない! おまえの心の闇を晴らす! 覇王を打ち倒し、おまえの心を引きずり出してやる! 俺のターン、ドロー!」
「なんだ? 一体なにが起こったんだ?」
事態を把握できていない三沢が困惑するが、おそらくオリハルコンの眼がジムを十代の精神世界へ導いたのだろう。そして拒絶された。
「《サイクロン》を発動。《覇王城》を破壊する。続けて《化石融合-フォッシル・フュージョン》を発動。俺の墓地の《ジェムナイトレディ・ラピスラズリ》と《ジェムナイト・ジルコニア》除外して、《古生代化石騎士 スカルキング》を融合召喚!」
《古生代化石騎士 スカルキング》
星8/地属性/岩石族/攻2800/守1300
「いくぞ、十代! スカルキングでライトニング・ゴーレムを攻撃、キングスソード・プレイ!」
覇王 LP2500 → 2100
「まだだ! スカルキングは1度のバトルフェイズに2回の攻撃が可能。続けてエアーマンを攻撃、キングスソード・プレイ・セカンド!」
覇王 LP2100 → 1100
「俺はこれでターンエンドだ」
ジム LP3000 手札1 モンスター1 伏せ0
覇王 LP1100 手札2 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「――ドロー」
「シニスター・ネクロムの効果は使わせない。スカルキングの効果発動。手札を1枚捨て、おまえの墓地のシニスター・ネクロムを、俺のフィールドに守備表示で特殊召喚する」
「ふっ、無駄な足掻きだな。フィールド魔法《覇王城》を発動」
再び覇王の城がソリッドビジョンとなって現れる。
「見せてやろう、これが覇王の力の象徴だ! 手札を1枚捨て、《超融合》を発動!」
遂に出たか――超融合!
「超……融合だと? だがおまえの手札は0。フィールドにもモンスターは……まさかッ!?」
「おまえのフィールドにいる悪魔族《E-HERO シニスター・ネクロム》と岩石族《古生代化石騎士 スカルキング》を融合。出でよ、《E-HERO ダーク・ガイア》!」
《E-HERO ダーク・ガイア》
星8/闇属性/悪魔族/攻 ?/守 0
「ダーク・ガイアの攻撃力は、素材となったモンスターの元々の攻撃力の合計となる」
「つまり攻撃力は……4400!?」
「沈めッ! ダーク・ガイアでダイレクトアタック! ダーク・カタストロフ!」
「うぉおおおッ! 十代ッ! 十代ーーーッ!!」
ジム LP3000 → 0