「ああ……うあぁぁぁッ!!」
うなされていた十代が、悲鳴を上げて飛び起きる。そしてその場にいた俺と翔を一瞥すると、悔恨の言葉を吐き出した。
「……俺は……そうだ、俺はみんなを……この手で……」
「気に病むな。皆ちゃんと生きてるよ」
「気休めを言うなッ! 俺は見たんだ、この眼で……みんなが……みんなが……」
俺の言葉を一蹴し、十代は絶叫した。叫び声は次第になりを潜め、最後はうめき声になる。
「ユベルのことは思い出したのか?」
「なんでユベルが出てくるんだよ」
「おまえ、ここに何しに来たか忘れたのか。ヨハンとユベルを助けるためだろ」
「ヨハン……と、ユベルを?」
「ユベルは救いを求めている。おまえに捨てられたと思っているんだよ。だから話し合わないといけない。それがこの世界を、皆を救うことになる」
「おまえは……何を知って……」
「戻ってきたな」
偵察に行っていたオブライエンと三沢が帰ってきた。
「どうだった?」
「所詮は覇王という『力』に群がっていただけの連中だ。首魁がいなくなっては、ただの烏合の衆にすぎんよ。もはや軍としては機能していないな」
「よかった、気が付いたんだな、十代」
「……三沢」
「こっちも大変だったが、おまえたちはもっと大変だったようだな。まだ顔色が悪い。今日は休んで、話は明日にしよう」
「……ああ」
無意識に零した涙を拭い、十代は再び眠りについた。
翌朝、多少は体力を取り戻した十代だったが、やはり万全ではなく、オブライエンに背負われての移動となった。
覇王戦の後、いつの間にか合流していた翔は変わらず厳しい視線で十代を観察するように後ろから付いてきている。
「ユベルのことは思い出したか?」
「少しは……な。けど思い出そうとすると、記憶にもやがかかったように曖昧になるんだ。でも、あいつが呼んでいるのは分かる。あっちだ」
十代は白い砂漠を指さした。
歩みを止めることなく、一昼夜を歩き続け、砂漠に踏み入ってから数時間が経った頃、巨大な扉が突如として出現した。
「行くのか? 十代」
オブライエンが神妙な顔で十代に尋ねる。
「ユベルが待っている」
「十代、覇王の力を拒絶するな。人はみな、善と悪の心を持っている。覇王の力を受け入れ、自分のものとするんだ」
「……三沢。ああ、分かったぜ」
十代は少しだけ笑顔を見せた。
「十代、ユベルと和解することが、結果としてこの世界を、ヨハンを、みんなを救うことになる。強い願いが奇跡を起こす。おまえならできるよ」
「遊蓮、おまえって、時々不思議なこと言うよな。妙に落ち着いてるっていうか、でもありがとな。ちょっと心が軽くなったぜ。――よしッ!」
十代は両手で自分のほほを叩くと、意を決して扉を押し開いた。
「……僕は、十代を見届けなきゃならない」
翔は十代に続いて扉の向こうへ駆けて行く。
ふたりが通過した後、扉が閉まる。俺たちはそれを見送った。