アカデミアの教室内にいる生徒は様々だった。
一心不乱にテキストを確認する者。デッキを広げてウンウンと唸る者。腕を組んで悠然と佇む者。
試験が始まるまで後五分。
「だぁー! 間に合ったぁー!」
沈黙を破って飛び込んできたのは水色の髪。ん? ひとりか?
「ギリギリだな、翔。十代はどうした?」
「全然起きなかったッスよ。もう知らないッス。それに今日は皆がライバルッス。遊蓮くんだってライバルッスよ」
……翔ってこんな、ッスッスッスッス言ってたっけか? まあいいや。
時間になりチャイムが鳴ると、前方の扉から大徳寺先生が
配布されたテスト用紙に目を通す。ふむ、まずは攻撃力計算か。
この世界はドレッド・ルートが実質存在しないので、有名な邪神と黒庭のコンボも存在しない。チューナーが存在しないので、もちろんゲイルも存在しない。平和な世界である。
次はチェーンの組み方だな。これも強制効果と任意効果を把握していれば問題ない。
次はカードの
《神の写し身との接触》
《竜魂の石像》
《虚無空間》
《雷帝神》
《電磁蚊》
………
……
…
結局十代は30分ほど遅刻して、テスト用紙を眺めながら頭を抱えて、あげくの果てにいびきをかいて、そのまま終了時間となった。
そして筆記テスト終了と同時に、生徒たちが飛び出していく。
「おい、起きろ二人とも。試験はとっくに終わったぞ」
三沢が一緒になって爆睡していた翔を揺り起こす。十代は慌てた様子もなく、大きく伸びをしてから立ち上がった。やっぱ大物だよ、こいつは。
「あれぇ? 皆はどこに行ったッスか?」
「昼飯か?」
「購買部さ。なんせ昼休みに新しいカードが大量入荷することになってるからな」
でもどうせクロノス先生が買い占めてるんだろ。俺は詳しいんだ。
「よっしゃ! いくぜ翔、遊蓮もいこうぜ!」
「ん? ああ、そうだな」
果たして駆けつけた購買部には、人っ子ひとりいなかった。カウンターに突撃すると、残っていたのは最後の1パック。そこで誰が買うか話していたら、カウンターの奥から恰幅の良い女性がご機嫌な様子で姿を現した。
「あ、今朝のおばちゃん」
「おばちゃんじゃないわよ。トメって呼んで」
「トメさんって購買部のおばちゃんだったのか」
「知り合いかい? アニキ」
「ああ、ちょっとワケありでな」
「そんなことより、ちょっといらっしゃいよ。ふふっ、いいものあるよ、お客さん」
「さて、実技試験の相手がおまえだとはな」
「まあ、同じオシリスレッドだから可能性はあったけどね。ホントにライバルになるとは思わなかったなぁ」
「手加減はなしだ。いくぜ、翔」
「望むところッス」
『デュエルッ!』
「先攻は僕だ、ドロー。永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動。モンスターをセットし、カードを2枚伏せてターンエンド」
丸藤翔 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「俺のターン、ドロー」
んー、手札はいまいちだな。
「《レプティレス・ゴルゴーン》を召喚。バトルだ。セットモンスターに攻撃!」
「セットモンスターは《トラックロイド》、守備力は2000。反射ダメージを受けてもらうよ」
音羽遊蓮 LP4000 → 3400
「だがゴルゴーンの効果も受けてもらうぞ。トラックロイドの攻撃力は0になり、表示形式の変更ができなくなる」
「うっ、そんな効果が……」
「カードを2枚伏せてターンエンド」
音羽遊蓮 LP3400 手札3 モンスター1 伏せ2
丸藤翔 LP4000 手札2 モンスター1 伏せ2
――――――――――――
「僕のターン、ドロー」
「ドローフェイズに《毒蛇の供物》を発動。《レプティレス・ゴルゴーン》と《未来融合-フューチャー・フュージョン》とその隣の伏せカードを破壊する」
「くっ、ならチェーンして対象の伏せカード《チェーン・マテリアル》を発動」
チェーン・マテリアルは融合素材モンスターを手札・デッキ・フィールド・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる強力なカード。だが当然デメリットもある。このカードを発動するターンは攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
「ビークロイド専用の融合カード《ビークロイド・コネクション・ゾーン》を発動。チェーン・マテリアルの効果で、デッキから融合素材の《トラックロイド》、《エクスプレスロイド》、《ドリルロイド》、《ステルスロイド》を除外して、EXデッキから《スーパービークロイド-ステルス・ユニオン》を融合召喚!」
《スーパービークロイド-ステルス・ユニオン》
星9/地属性/機械族/攻3600/守3000
「僕はこれでターンエンド。エンドフェイズにチェーン・マテリアルの効果で融合召喚したモンスターは破壊されるけど、ビークロイド・コネクション・ゾーンで融合召喚したモンスターは効果では破壊されない」
丸藤翔 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP3400 手札3 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。モンスターをセットしてターンエンドだ」
音羽遊蓮 LP3400 手札3 モンスター1 伏せ1
丸藤翔 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1
――――――――――――
「僕のターン、ドロー。防戦一方ッスか。なら攻めるッスよ。《ドリルロイド》を召喚してバトルだ! ドリルロイドでセットモンスターを攻撃!」
ドリルロイドは守備モンスターを攻撃した時、ダメージ計算前にそのモンスターを破壊する効果を持っている。《レプティレス・ナージャ》は戦闘では破壊されないが、効果破壊には無力だ。
「続けてステルス・ユニオンで攻撃! ハイパー・ブロウクンマグナム!」
「甘いな、翔。《次元幽閉》を発動だ。ステルス・ユニオンを除外する」
「じょ、除外!? くぅ、なら僕はこれでターンエンドッス」
丸藤翔 LP4000 手札2 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP3400 手札3 モンスター0 伏せ0
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。《強欲で金満な壺》を発動。EXデッキのカードをランダムに6枚、裏側表示で除外し、デッキからカードを2枚ドロー。《レプティレス・ガードナー》を召喚」
「攻撃力0のモンスターを攻撃表示で?」
「壁にするつもりだったんだろうが、トラックロイドを残しておいたのは失敗だったな。攻撃力0の《レプティレス・ガードナー》と《トラックロイド》をリリースして《レプティレス・ヴァースキ》を特殊召喚」
「なっ!? 僕のモンスターをリリース!?」
「ヴァースキの効果発動。《ドリルロイド》を破壊する。バトルだ、ヴァースキでダイレクトアタック!」
丸藤翔 LP4000 → 1400
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
音羽遊蓮 LP3400 手札2 モンスター1 伏せ1
丸藤翔 LP1400 手札2 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「僕のターン、ドロー。《ネジマキシキガミ》を守備表示で特殊召喚。このカードは僕の墓地のモンスターが機械族モンスターのみの場合に特殊召喚できる。そして効果発動。《レプティレス・ヴァースキ》の攻撃力をターン終了時まで0にする。続けて《スチームロイド》を召喚。バトルだ! スチームロイドでヴァースキを攻撃!」
スチームロイドが頭上の煙突から白煙を上げながら距離を詰めてくる。振りかぶった車輪の一撃でヴァースキが粉砕された。
「スチームロイドが相手モンスターに攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。つまり攻撃力は2300!」
音羽遊蓮 LP3400 → 1100
「僕はこれでターンエンドッス」
丸藤翔 LP1400 手札1 モンスター2 伏せ1
音羽遊蓮 LP1100 手札2 モンスター0 伏せ1
――――――――――――
「俺のターン、ドロー。今、俺の墓地には《レプティレス・ゴルゴーン》、《レプティレス・ナージャ》、《レプティレス・ヴァースキ》の3体の闇属性モンスターがいる」
ちなみに《レプティレス・ガードナー》は水属性だ。
「闇属性が3体……まさか!?」
「滅びの呪文ボチヤミサンタイ、現れろ《ダーク・アームド・ドラゴン》!」
《ダーク・アームド・ドラゴン》
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
「ダーク・アームド・ドラゴンの恐るべき効果。墓地の《レプティレス・ゴルゴーン》を除外して伏せカードを破壊する」
黒竜のブレスで破壊されたのは《スーパーチャージ》。そういえば発動する機会はなかったな。2枚ドローは魅力的だが、発動条件がけっこう厳しいんだよなぁ。最初のターンに伏せた《トラックロイド》を表側で出してたら発動できた可能性はあるが。
「続けて《レプティレス・ナージャ》を除外して《ネジマキシキガミ》を破壊、《レプティレス・ヴァースキ》を除外して《スチームロイド》を破壊」
「僕のフィールドが……がら空きに……」
「バトルだ。ダーク・アームド・ドラゴンでダイレクトアタック! ダーク・アームド・バニッシャー!」
丸藤翔 LP1400 → 0
「うー、やっぱり勝てなかったかぁ」
「やっぱりってなんだよ。良い勝負だったじゃないか。お、あっちも決着したみたいだぞ」
「え? ホントだ。アニキが勝ったんだ、やったぁー!」
翔の斜め後ろでデュエルしていた十代と万丈目も終わったようだ。十代はいつものガッチャのポーズ。万丈目は膝をついて項垂れている。
勝敗は一目瞭然だった。