最近人界に召喚された整合騎士だけどアドミニストレータ様が添い寝を所望してくる 作:マリョリョリョリョwwww
匿名で出したのは、匿名ってかっこいいなって思ったからです。
その男は、何処にでもいるような、探せば五万といるような、普通の農家だった。
外れの村に居を構え、採った野菜を売り捌いて生計を立てる。裕福とは言えないが、安定した生活を送っていた。
──彼女に目をつけられるまでは。
人界の神、アドミニストレータ。
正義と平和の象徴、整合騎士を束ねる最高司祭は、とてつもなく退屈していた。
それはそうだろう。一日寝て過ごす生活を何百年と続けているのだ。流石に飽きが回って来るというもの。
下々の生活風景を眺める程度ならば、記憶データにも大した負担はかからないだろう。
神聖術で下界の風景を映像化し、適当に流し見ていく。
ルールに従い生きていく人々に満足の目を向けていると、一つの村に行き着いた。
央都セントリアから少し外れたそこそこの村。
不思議と目が止まった。心が惹かれたのかもしれない。
畑を耕す青年。
何処にでもいるような男の背中を、じっと見つめる。
目が離せない。
そして青年が、凝った身体を伸ばすように顔を上げた。
────ッッッッ!!!!!!!!???
アドミニストレータの脳天から電流が突き抜けた。
動悸が乱れに乱れる。熱い。苦しい。何だこれは。
新手の攻撃かと勘ぐる程に脳を揺らしてくる。
青年は特別背が高い訳では無い。特段顔がいい訳では無い。そも、イケメンなど部下の整合騎士に履いて捨てるほど溢れている。
なのに、それなのに、焼けるほどに顔が赤い。
ああ、あああああ、こんな気持ち初めてだ。
熱気を孕んだ荒い呼吸を繰り返す。
──欲しい。
彼の全てが欲しい。
その思考が頭の奥に滲んだ瞬間、ナニカが、ドロりと溶け落ちた。
あああっっ!!何っ、この感情は!!
未知の感情が脳を焼く。視界と、思考が、やけに火照って瞬く間にあやふやになっていく。しかし、その中でも、彼女の瞳は、青年の姿だけは鮮明に写していた。焼き付けていたと言ってもいい。
まるで、その青年に理性も本能も思考の自由も身体の自由も一緒くたに鷲掴まれてしまったようで、その感覚もまた、アドミニストレータの全身に電流のような未知の感情を流し込む。
「──はぁっ♡あふっ♡♡くぅぅ♡♡♡♡」
手足が満足に動かせない。
ベッドに寝転がったまま、釘付けにされた瞳を逸らすこともできずに、異常分泌される快楽物質に身を震わす。
ああ♡♡ああ♡♡触れたいわ、嗅ぎたいわ、見たいわ、話したいわ、聞きたいわ、味わいたいわっっ♡♡♡♡
お腹の下がきゅぅ、と疼く。
この子は私のモノ。
そうだ、この子は私のモノだ。今決めた。誰にも文句は言わせない。そんなことを言う奴がいたらこの世の全ての苦痛を与えた後に最も残酷な方法で縊り殺してやる。
数百年生きてきて、初めての感覚をくれた子。この感覚だけで、私が今に至るまで作り上げた常識全てが塗り替えられてしまった。
ふふふ、ふふふふふ♡♡私だけのモノよこの子は。誰にも渡さないわ。
ああそうよ、外には危険が多いもの、ちゃんと私が守ってあげなきゃ♡うふふ、うふふふふふふふ♡♡♡
有り体に言ってしまえば、一目惚れと言うやつだった。そして、初恋というやつだった。
ただ、常人のそれらよりかは少し苛烈ではあるが。なんせ数百年も誰にも向けられず、ひたすらに煮込み続けたものなのだ。この有様も仕方ないといえば、仕方ないだろう。
次の日、ある村でベクタの迷子が出たらしい。
■■■
整合騎士──それは、人界の神アドミニストレータ様に召喚され天界より参上した、一騎当千の正義の守護者たち。
・・・・・・一騎当千?
整合騎士は人界を守るため、日夜己の剣技を磨き上げ、己の精神を研ぎ澄ませと、並々ならぬ努力を続けるものだ。
・・・・・・努力?
人界の平和が保たれているのはひとえに、整合騎士が頻繁にダークテリトリーから人界を守る任務を下されているからだ。
・・・・・・任務・・・・・・。
以上が、僕がこの目で見てきて思った一般的な整合騎士の姿である。
・・・・・・しかしだ。しかしなのだよ。
そんな素晴らしい存在ならね、
なんで僕みたいなどれにも当てはまらないような平凡男が、
ゴブリン一体にも負ける自信あるが。
鍛錬とか全くもってしてないが。
任務に関しては一回も受けたことないんだが!?
おかしい。こんな僕が整合騎士な訳が無い。
「どうしたの?ルイ」
空からの光が遮られる。
降ってきた紫の髪が、僕の頬をくすぐった。
「・・・・・・アドミニストレータ様」
最高司祭アドミニストレータ様。
きっと僕のようなイレギュラーが生まれたのは、この人が原因なのだろう。
被さるように跨ってきた彼女が、鼻先が触れるぐらい瞳を覗き込んでくる。
その双眸に、光はない。
「フフ、私のことは、〝クィネラ〟と呼ぶようにいつも言ってるでしょう?」
「でも他の人に言われたら怒るじゃないですか」
「ええ、貴方だけに言われたいの」
相変わらずよく分からん人だ。
「ああ、綺麗、綺麗な目だわルイ♡大丈夫、その輝きは私が永遠に守ってあげるからね」
頬に手を添えられる。
細くひんやりとした指の感覚はとても華奢で、神聖術のスペシャリストだとは到底思えない。
まあ、それも指だけ見ればの話だが。
少し視線を上げてしまえば、飢えた獣の顔が息を荒らげている。
クィネラ様のせいで早速僕の目の輝きは失われそうですが・・・・・・。
「──っ!?だ、だめよルイ!そんな儚げな顔をしては・・・・・・お、襲いたくなってしまうわ」
私は貴方を守る立場なのに、とクィネラ様は唸った。
己の中で想いと欲望がせめぎ合っているのだろう。
こうなってしまえば僕はもう祈ることしかできない。クィネラ様が欲望を組み伏せ、僕の貞操が奪われぬように祈ることしか。
だって抵抗しても一瞬で負けるもの。必死に頑張る僕でクィネラ様のエンジンがかかってしまう可能性も無きにしも非ずだし、寧ろ悪手である。
「くっ、だめよ私!ルイは神聖かつ完璧な存在っ!!汚していいわけがないわ!・・・・・・・・・・・・で、でも、かわいぃ♡♡・・・・・・ハッ!?私は今何を!?気をしっかり保たなくては・・・・・・はぁ♡ルイ♡ルイ♡・・・・・・だ、だめだめだめ!我慢よ我慢!!・・・・・・・・・・・・はぁ♡」
これ一体なにを見せられてんだ僕?
この後めちゃくちゃ添い寝した。
やってることただの拉致。