ソードアート・オンライン〜灰の冷剣〜   作:イナミル

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すいません。ブラウザバックのせいで500文字以上吹っ飛んでやる気失せて仕上げが遅くなりました。自動保存が遅いんじゃぁ!
とりあえず、書き終えました。
今回はシリカ編です。それでは!どうぞ!


11話:竜使いとn回目のオレンジギルド

 2024年2月21日。俺は、50層の迷宮区でレベリングをしていた。

 全身灰色のコートに、盾なしの片手直剣。そして、目に見えるほど大きい筒状のカーペット。これが、今の俺の見た目といったところだろうか。

 

 カーペットを持っているのは、そこに鍛冶道具を全て中に入れているからだ。このカーペットは露店用のものなのだが、中にものを入れて包むと、運搬重量(キャリーウエイト)を無視して持ち運びが可能になる。種類と個数ではなく、重さで持ち運べる量が決まるこのSAOで、このアイテムは神が寄越した人間への餞別と言えるだろう。まぁ、この世界の神は、茅場晶彦なのだが。

 

「そろそろスキルマが8個目くらいか。また別のスキル上げるかな」

 

 今の俺のレベルは77。ラッキーセブンボーナスってことで、得られるコルとスキル経験値が3倍になっている。こんな時は、経験値とコルの美味しい50層で狩りをするっきゃない。

 

あの( ・・ )スキルも、もう少しで150かな」

 

 50層攻略時に、恐らくユニークスキルであるこのスキルも入手できた。このことを知ってるのはキリトのみだ。

 

 なぜキリトなのだって? 簡単な話だ。同じタイミングでキリトも『二刀流』を手にしていたからだ。俺たちは、隠れてスキル熟練度をあげるようにして、たまにキリトの相手をして、実戦経験を積んでいる。

 

「……そろそろ戻ろうかな。夜も遅い」

 

 時間は、午前の1時を回っていた。今は、52層に拠点を置いている。さっさと帰ってベッドにダイブしたい。

 

 

 

 

 ……転移門前で、誰かが泣いて叫んでいる。いや、何かを懇願していると言った方が正しいだろうか。とりあえず、そのような感じだ。そのまわりには、可哀想な人を見る目で見つめる者、同情の眼差しを向けるもの、その場を無視して通り過ぎる者など、様々だ。見慣れた黒コートの人物もいる。

 

「やぁ、キリト。どうしたんだ?」

「あっ、レイジか。いや、この人の依頼を受けるべきかなって思ってな」

「いい感じの雰囲気じゃないが、何があったんだ?」

「……ギルメンを、殺されたんだと。彼以外全員だそうだ」

「嘘だろ!? ……オレンジの奴らか?」

「あぁ、ギルドマークもあったそうだ。巨人の手に目のマーク」

「……〔タイタンズハンド〕だな。アルゴから情報は貰ってる」

「お前、オレンジの捕縛ばっかやってるのか? 攻略に参加出来てないみたいだけど……」

「別にどうってとこないさ。助かる人数は、少ないよりは多い方がいい。オレンジやレッドのせいで、死んでしまった人間も多い。おそらくだが、600人ほどはPKだ。救える人は、救いたい」

「……そうか。なら、この人の以来も受けようか」

 

 そうして、キリトは依頼を受けに行った。標的の〔タイタンズハンド〕の奴らは中層のプレイヤーを相手に恐喝や強盗、殺人を行っているそうだ。依頼主は、「殺さないで、黒鉄宮に送ってくれ」と言っていた。優しい人だ。殺処分でもいいだろうに。

 

 それから、ヒースクリフとアスナに、「しばらくオレンジ捕縛の依頼を受けて前線を離れる。1週間くらいかかるはず」と話し、35層に向かった。1番中層でレベリングなどで人気のある場所といえば、35層だと2人で合致したからだ。

 

 〜3日後〜

「……なかなか居ないな。ほんとにここでいいのか?」

「俺に聞くなよ……。おっかしいなぁ。ここにいるって目撃情報聞いたのにな……」

「……っ! ……キリト、索敵かけろ」

「え? 分かった……んなっ! これは、ドランクエイプ!? そして、プレイヤーと……テイムモンスターか? って! 急ぐぞ!」

「言われなくてもっ!」

 

 そして、俺たちは敏捷力の限りの速度で反応方向に急いだ。

 

 〜シリカside〜

 ヘマしちゃった。ロザリアさんと、あんなことで喧嘩別れしなければ、こんなことにはならなかったのに。前の方に五体のモンスターもいる。HPはピナが回復してくれるし、頑張れば街まで帰れる……! 

 

「ここっ!」短剣で、モンスターの棍棒をパリィする。貫通で受けてしまったダメージも、回復アイテムを使えば……

 

「回復アイテムが、ないっ!?」

 

 完全に油断した。アイテム分配の時に揉めたのも、回復アイテムが無くなってきたからだ。忘れていた。ストレージにあるかもしれないけど、今取り出してる余裕はない。

 

「グヴォォォ!!」

「えっ、きゃぁぁぁ!」

 

 棍棒の横払いをまともに受けてしまった。HPも危険域(レッドゾーン)に来ていて、あと1発まともに受ければ死んでしまうだろう。

 

 死ぬ。その恐怖が、私の体を硬直させる。R指定を無視してでも、やりたかったゲームが、まさかデスゲームなんて呼ばれるものになっちゃうなんて、思いもしなかった。

 

 ジリジリとモンスターは近づいてくる。もうダメだと思ったその時、左から水色の生き物が自分とモンスターに割って入る。

 

 ドスッ

 

「嘘っ、でしょ? ピナっ!」

 

 ピナが私を庇った。みるみるHPは減っていって、ついにはゼロになってHPバーも無くなってしまう。弱弱しくこちらを見るフェザーリドラのその顔は、まるで「バイバイ」と言ってるような気がした。

 

「ピナっ! ピナぁッ!」

 

 抱き上げ、その名を連呼する。それでも、ピナが透明になってくのは止まらない。そして、

 

 ピナは、パリンっとアイテムのように砕けてしまった。

 

 1つの羽が、その中に生まれる。私は、それを取って、その場にうずくまった。どうせ死ぬなら、この子と一緒に死んでしまおう。そうして、目を閉じた。

 

 でも、それが叶うことは無かった。気付いたのは、音がしてから。

 後ろで、5回立て続けにガラスの割れる音がした。そして、振り向いたところにいたのは、灰色とコートを着た人と、黒色のコートを着た人だった。

 

 〜sideout〜

 

 間に合った。どうにか間に合った。人は助けることが出来た。でも、人だけだった。彼女がテイムしていたであろうモンスターは、死んでしまった。

 

「大丈夫かい?」

「……はっ、はい。大丈夫です」

「HP多分危ないでしょ? これ飲んで。回復ポーション」

「あっ、ありがとうございます」

 

 とりあえず、安全確保はできた。ポーションの効果発動もあってか、張られていた警戒心は解かせたようだ。

 

「すまない。君の友達を、助けれなかった」

「……いいんです。私が馬鹿だったから。1人でこの森を抜けれるなんて自信過剰になって、ソロで抜けようとしたからいけないんです」

「……確かに、そうだね。調子に乗って1人で森を出ようとしたのは間違ってるね」

「おい、レイジ!」

「でもさ、この子はその事で反省してるだろ? なら、別に咎めるつもりは無いさ」

 

 少女……シリカでいいか。シリカは目をぱちくりさせて、こちらを見ている。そこで、俺はシリカが持っている羽を指さして、言った。

 

「口調はもう元に戻すか。なぁ、その羽、名前ついてないか?」

「名前……ですか?」

 

 シリカがステータスウィンドウを操作すると、そこには、『ピナの心』と名前がつけられたアイテムの説明が出てくる。

 

「うぅっ、ピナぁ」

「あぁ、泣かないでくれ。大丈夫だ。『心』があるなら、ちゃんと生き返らせることができるから」

「本当ですか! 一体、どこなんですか?」

「どこだっけ? キリト」

「47層だな。てか、あんな印象的なところ、忘れるわけないだろ」

「まぁまぁ、いいから。んで、そこの『思い出の丘』ってダンジョンの、祭壇のところに、『プネウマの花』ってのが咲く場所があるんだ。実費さえ貰えれば、俺達が行ってきてもいいんだけど、テイムした主がいないと咲かないらしいんだ」

「47層……。……私のレベルじゃまだ足りないけど、いつか必ず……」

「やる気になってるところ悪いんだけど、3日経つと『形見』ってアイテムになってしまうんだ。だから、行くなら今すぐ行かないといけない」

「そっ、そんなぁ……っ」

 

 ついに、泣き出しそうになってしまった。しかし、キリトの方を見ると、なにやらトレードウィンドウをいじっている。

 

「なぁ、レイジ。良さげな武器と防具持ってないか? 後、『装備の心』の余りも。ここで色々して欲しいんだけど」

「ハイハイ。『装備の心』も後120はあるからいいんだけどさ」

「多くない!? まぁ、いいや。急いでくれるか?」

「ハイハイ。それじゃ、インゴットよこせ。防具は、今キリトが持ってるやつにしてくれ。俺、女用装備とか持ってないんだよ」

「分かったよ。それじゃ、ほれ、『スカイライトインゴット』」

「あいよ」

「そういや、君は筋力型? 敏捷型?」

「あっ、敏捷寄りです」

「OK。そこのキリトから防具貰って、しばらく待っといてくれるか? なんなら、先に街に戻ってくれて構わないよ。あーでも、武器ちょっと貸して。代わりに、これあげるから」

 

 そういって取り出したのは、『ジャルディーノ』という短剣。

 水生モンスターのドロップ品で、鱗を利用しているようで意外と鋭い。トレードウィンドウを操作して、ウィンドウをシリカに移す。

 

「えっ、いいんですか? こんな、会って間もないのに」

「別にいいさ。これも人助けの一環だ」

「あぁ、そうだな。あと……」

「あと? なんでしょう?」

「君が、妹に似ていて……。助けたくなったんだ」

「……ふふっ。あははっ!」

「笑うなんて酷いよ……」

 

 キリトが少々心にダメージを負ってるところで、思い返す。

 そう、俺にも妹がいた。常磐芽依。11月5日、覚えてもいないその日に亡くなった妹は、俺より1つ下だったので、シリカとは2つは離れているだろう。

 

 ……感傷に浸ってる場合じゃないか。剣を打たねば。

 そうして、俺はカーペットを広げる。中のハンマーを取り出し、鋳造台に乗せ、インゴットを叩く。使ったのは、キリトが寄越した『スカイライトインゴット』に、『ファントムイーグルの羽』の2つだ。恐らく、AGRに高い補正のかかる剣になるだろう。

 

 ある程度叩いたところで、俺はストレージから4つアイテムを取り出す。全て、『装備の心』だ。内容こそ全て違うが。

『装備の心:経験値1.5倍』『装備の心:DEX+20』

『装備の心:AGI+15』『装備の心:VIT+15』

 

 これらを、全てインゴットに溶かす。これで、武器にはそれぞれの能力が追加されたはずだ。

 

 え? そこそこぶっ壊れてないかって? 何を言ってるんだい。最前線のドロップ品を1からインゴット、『心』に複製してたら、こんなの当たり前じゃないか。

 

 さて、出来上がった。『ファントム・ライト』か。最前線で活躍できる武器になったぞ。これ。マスタースミスだけど、この出来は初めてだ。

 

「ん〜出来た〜。さてさて、メッセージメッセージっと」

 

 

 先程ストレージをいじっていた時に、キリトからメッセージが届いているのは知っていた。だが、読むのは今が初めてである。

 

『同じ層の宿にいる。シリカと話して明日出発することにした。話したいこともあるから、部屋に来てくれ』

 

 ほほう。50層には戻らないのか。まぁ、都合がいいからいいのか。にしても、話したいこととはなんだろうか。まさかとは思うが、〔タイタンズハンド〕が見つかったのだろうか。

 

 俺は、転移結晶で主街区に飛んだ。そして、キリトが部屋をとったという宿に向かって、扉を開けると、そこには驚くべき光景が待ち受けていた。

 

「おお、レイジ。遅かったじゃないか。一体、何し……って! 写真撮るなよ! 待て! それを寄越せっ! こらっ!」

 

 キリトが、こちらの記録結晶を取ろうと手を伸ばす。しかし、7cmも身長の高い俺から取れるはずがない。

 

「まぁまぁ。アスナにしかあげないから」

「何でアスナが出てくるんだよ! ってか、アスナに渡すのはやめてくれ。怖いから」

「有給でもないのに、女の子と一部屋取ってるのは、さすがに問題だよなぁ」

「わざとらしく復唱するんじゃない!」

 

 こんなふざけた会話ができるのも、久しぶりだ。最近はオレンジ捕獲ばっかり動いて、夜中にレベリングと、忙しい毎日だったから、息抜きとしてはちょうどいい。

 

「分かったから。要件を話せよ」

「あぁ。呼んだのは、タイタンズハンドのことでだ」

「……目撃したのか?」

「いや、接触までした。リーダーの女とな」

「は? なんで接触なんてできたんだよ」

「いや、シリカがその、ロザリアって言うんだけど、そいつとパーティー組んでたらしくて、ターゲットになってるみたいでさ」

「もしかして、『プネウマの花』が目的か?」

「十中八九そうだろうな。アイテム分配で回復アイテムについて揉めたらしいけど、そこも布石だったかもしれない」

「……よし、腕くらい落としても文句ないだろ」

「ダメだ。無傷で捕縛。依頼人の意向に背くようなマネはやめろって、お前、そっち系専門だろ」

「まぁな」

 

 そうして、俺は部屋のドアに手をかける。そして、出るついでに捨て台詞を吐いた。

 

「アルゴには売らないでおくよ。この結晶。まぁ、気が変われば売るかもしれないけど」

「寄越せ!」

 

 急いで逃げ出して、自分の部屋に逃げる。キリトはドアから少し出たところで止まったようだ。赤い顔をしてこちらを睨んでいる。こりゃしばらく怒らせちゃいけないな

 

 〜翌朝〜

 

 1階に降りると、顔が真っ赤のシリカと、申し訳なさそうな顔をしているキリトがいた。

 

「ほら、行くぞ」

「あぁ」「はっ、はい!」

 

 俺の言葉に、キリトとシリカが答え、俺たちは47層に向かった。

 

 47層の街、フローリア。綺麗な花が一面に咲いており、デートスポットとして有名である。実際、「フラワーガーデン」と呼ばれ、中央の鐘を二人で一緒に鳴らした者達は、結ばれるというジンクスも存在している。

 

 辺りを見れば、カップルばかりだ。ざっと10組くらいいるだろう。俺が軽く口笛を吹いて、シリカの方を見やると、顔を赤らめて茹でダコになっていた。

 

「シリカ? どうしたんだ?」

「いっ、いえ、なんでもありません。それじゃ、行きましょうか! こっちでしたよね?」

「違う。ダンジョンはこっち。あと、昨日シリカから預かった武器をインゴットに戻して作った短剣。はい」

「あっ、ありがとうごさまいます! では、改めて行きましょう! ピナが待ってます!」

 

 そうして、3人は歩みを進めた。

 

 

 〜10分後〜

 しばらく歩いていると、足元からスルスルと音がして、シリカの足を何かの蔓が掴んだ。

「きゃっ、うわぁぁぁ!」

「シリカ!?」

「キリトさぁん! レイジさぁん! 見ないで助けてください!」

「いや、そう言われても……」

「……」ジーッ

 

 キリトは、手で目を隠しているが、人差し指と中指の間からチラッと見ている。全く、何をしてるんだか。

 

「このぉっ、いい加減にっ、しろぉ!」

 足をつかんでいる蔓を、スパッと切り落として、落下しながらソードスキルを当てる。その一撃で、モンスターはポリゴン化して砕け散る。リザルト画面を見ることなく、シリカはこちらを見て、スカートの後ろを手で抑え、言った。

 

「見ました……?」

「いや、……ミテナイ」

「おいこら」ムギュッ キリトの足を思いっきり踏みつける

「痛っ! ……ごめん。少し……」

「もぉぉ!」

 

 

 

 

「キリトさん、妹さんのこと聞いてもいいですか?」

「えっ?」

「現実のことを聞くのはマナー違反ですけど、ダメですか?」

「別にいいさ。実は、妹って言ったけど、本当は従妹なんだ。向こうは知らないかもしれないけど」

「そうなんですか……」

「んで、その妹ちゃんはなんかしてるのか?」

「あぁ、小さい頃から剣道をな。俺もやってたんだけど、小さい頃でやめてさ。その時はじいちゃんにとても叩かれたよ」

「ひどいっ!」

「でも、その時妹が「お兄ちゃんの分もあたしが頑張るから叩かないで」って言ったんだよ。そこからアイツ、全中ベストエイトまで言ってさ。凄いんだよ」

「なら、いいじゃないか。なにか良くないことでもあるのか?」

「いや、俺のせいで、すごい辛い思いをさせてるんじゃないかって思ってな。本当はしたいこと、行きたい場所がいっぱいあるはずなのに……」

「……きっと、妹さんはそんなこと思ってませんよ」

「……え?」

「きっと、好きだから剣道を続けているんだと思いますよ。好きでもないことを続けるのって、できないですよ!」

「……そう、かな。ありがとう、シリカ。レストランの時と言い、励まされてばっかりだな」

 

 その一言で、シリカの顔が赤くなっていく

 

「つっ、次いましょう! もう少しで着きまおわぁっ!」

 

 シリカが言い終わる前に、下からモンスターが這い上がってくる。それをキリトが一閃して、

 

「気合い入れるのはいいけど、程々にね」

「はっ、はい……。ハッ!?」

 

 先程の経験からか、スカートを直ぐに抑え込む。

 

 

 〜5分後〜

 

「ここが、祭壇ですか……。綺麗な場所ですね!」

「あぁ、そうだな。あそこに行くと、花が咲くはずだ。キリト。少し周りを見とくから、二人で行ってきてくれ」

「分かった。行こう、シリカ」

「えっ、えぇ」

 

 シリカをキリトに任せ、自分はここに残る。そして、振り向いて索敵をかける。反応はない。そして、索敵を外して、ダンジョン入口にフォーカスをかける。1人。赤髪の女がこちらを見ている。彼女がロザリアで間違いない。全然見た目変わってないし。

 そうこうしてるうちに、キリトたちが戻ってきた。

 

「よし、宿に戻ってそこで復活させようか」

「そうですね! ピナもきっとその方が喜びます!」

 

 こうして俺達3人は、ダンジョンの出口に向かっていった。

 

 

 〜ダンジョン出口近く〜

 

「やっと、ピナと再会できるんですね〜。楽しみです!」

「あぁ、そうだな。でもその前に……」

「「……そこにいるやつ、出てこいよ」」

 

 シリカは俺たち2人の言ったことにきょとんとした顔をしているが、俺たちは警戒を緩めない。そうすると、木の影から赤髪の女が姿を現す。

 

「あら、私の隠蔽(ハイティング)を見破るなんて、なかなか索敵スキルが高いのね。剣士サン達」

 

 こちらの方を一瞥するように見回し、シリカの方で視線を止め、口を開き始めた。

 

「ロザリアさん……」

「あらぁ、シリカちゃんじゃないの。その様子じゃ首尾よく『プネウマの花』を入手できたようね。それじゃ、こっちに寄越しな」

「えっ、何を言ってるんですか!」

 

 シリカは、まだ事が理解出来ていない様子だ。しかし、ロザリアは続ける。

 

「いや、夜中にシリカちゃんと会ったら、あのトカゲが居ないじゃない? それに話を聞いたらここに取りに来るって話が舞い込んできたのよ。この時期あの花は旬だからね。売ったら高く売れるのよねぇ」

 

 シリカの顔からだんだん血の気が引けていく。そこで、キリトが割って入った。

 

「やぁ、ロザリアさん。どうせなら、〔タイタンズハンド〕のリーダーと呼んだ方がいいか?」

「キリトさん! ロザリアさんはグリーンですよ!?」

「別に、オレンジギルドの全員がオレンジってことは無いさ。圏内との通信用、鍛冶を利用するのにも、グリーンを半分くらいは残すんだよ」

 

 俺がそこまでシリカに説明したところで、ロザリアがキリトに面と向かって話し出す。

 

「あら、私のことを知ってるのね。でも、あんたには用がないわ。そこをどいてちょうだい」

「無理だな。こっちも、アンタに用があったからな」

 

 ロザリアは意外そうな顔をする。まるで、自分のやったことを悪びれることがないような態度だ。いちいち気にしてられないので、こっちからも話す。

 

「あんたのギルド、先週〔シルバーフラグス〕ってギルドのこと襲ったろ?」

「1人残して全員皆殺しだとな。むごい話だ」

「あぁ、あの貧乏連中ね。それがどうかしたの?」

「1人残されたメンバーは悔やんでいたよ。どうすることも出来なかったってな。目の前でどんどん仲間が殺される彼の気持ち、あんたに分かるか?」

 

 そう言ったところで、ロザリアは笑い出す。その笑いは、心底聞いてて気持ち悪いものだった。知っている話通りとはいえ、少々嫌になる。

 

「分かるわけないでしょ! どうせここで人を殺したって、罪としてさばける訳でもない! それに、ほんとに死ぬかなんて、確証がないじゃない?」

「なら……」

 

 ちょっとイラッときた。でも、同時に気付く。こういっているのは、自分が死ぬのが怖いからだと。なら、1度脅して、ヤケになってかかってきたのを叩き潰すほうが、捕らえやすい。

 

「1回HP全損してみるか」

「「「!?」」」

「死ぬ確証がないなら、あんたのその身に焼き付けてやるよ。これまで殺してきた人達が感じたものってやつを」

 

 その場の3人が驚愕の顔に包まれる。俺がこんなことを言うと思っていなかったんだろう。でもまぁ、勘違いされるのも嫌なので、フレンドメッセージでキリトに送り飛ばす。

 

『ハッタリだ。お前はシリカを頼む。他に8人くらいいるから、零れたやつは頼んだぞ』

『分かった。お前なら大丈夫だな?』

『任せろ』

 

「ちょっと! あたしの事忘れないで頂戴。まぁいいわ。アンタ達! 出てきな!」

 

 そこで、木の影などからぞろぞろと人影が現れる。1、2、……10人か。本来より少し多いが問題ない。これくらいなら。俺がどれほど死線を潜り抜けてきたか見せしめるにはちょうどいい。モンスターハウスに比べりゃ、可愛いもんだ。じりじりと2陣営の距離が縮まる。

 

「さぁ、オレンジ共。制裁の時間だ」




ふひぃ。久々に8000字くらい描きましたよ。
明日、シリカ編が完結します。
今回の初めで何やらレイジ君がスキル云々の話をしてましたけど、それについては、グリームアイズ討伐話の後に主人公設定として描きたいと思います。
まぁ、既にオリジナルスキルは1個出てますけどね。
それれでは次回も。よろしやす。ありがとうございました!
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