ソードアート・オンライン〜灰の冷剣〜   作:イナミル

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週一投稿、守りました!あと、6000UAありがとうございます!
今後とも当作品をよろしくお願いします!
さて、今回ですが、圏内事件、心の温度を飛ばして一気にラフコフ討伐回になります!
グリゼルダさん。許してくれぇ!キリアスを完成させるにはあの話が必要だったんだぁ!
っとまぁ、ここまでにしておいて。
13話です!どうぞ!


13話:殲滅とフラッシュバック

 2024年8月、アインクラッドの攻略も6割弱が完了しているこの時期、1本の通達がアルゴから届いた。

 

『ラフィンコフィンのアジトが見つかっタ。各ギルドのメンバーを集めて血盟騎士団の会議室に来てクレ』

 

 アルゴから情報が来たのだ。間違いないだろう。そう思ったレイジは、64層の迷宮区の攻略を一旦中断し、55層のグランザムに向かうのだった……。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

「よぉ、レイジ。多分だが、お前さんが最後だぜ?」

「クラインか、久しぶりだな。ここに呼ばれたってことは……」

「あぁ、鼠から呼ばれてよ。ギルメンは半分は置いてきた」

「そうか……。……俺が最後じゃなかったみたいだけどな」

 

 そう言って、会議室の扉を見やると、そこには、黒一色のプレイヤーが、こっちに向かって歩いていた。

 

「よっ、レイジ。クライン。お前たちも来てたのか」

「当たり前だろ。もしかしたら、SAOの生還者を決める大事な会議なんだ。来ないなんてこと、できねぇよ」

「俺もだ。これで全員揃ったんじゃねぇか?」

「だな。そろそろ、始まるぞ」

 

 そうして、会議室の中央(と言っても、大学の講義室みたいなもんだが)に立つアスナから、号令がかかった。

 

「静かにお願いします」

 

 一声で、その場の空気が一気に変わる。さすがアスナだ。こんな場所でものすごい統率力を発揮する。攻略の指揮官としても有能なこの力は、おそらく親譲りのものだろう。

 

「それでは、これより、レッドギルド〔笑う棺桶(ラフィンコフィン)〕の対策会議を始めます。それでは、進行を代わりたいと思います。アルゴさん、お願いします」

 

 そう言って、その場をアルゴに任せ、アスナ自身も席に着く。そして、前に出たアルゴからの説明が、淡々と続く。

 

「それじゃ、こっちを見てもらおうかナ」

 

 そう言うと、ホワイトボードがくるりと反転する。現実にも似たようなのがあったっけ。

 

「ここに載ってる3人は、幹部メンバーで、最も古くから活動していル。戦闘になった際は、一人で行かないで、十分に注意してくれよナ。それじゃ、右側から解説するゾ」

 

 そう言って、アルゴが指した際には、深くローブを被って、頬に稲妻のような刺青がされているプレイヤーの写真があった。

 

「このプレイヤーは、ラフコフの創設者兼ギルドマスターのプレイヤー、Pohダ。使用武器は短剣カテゴリーの中華包丁。自身が前に出て手を汚すことがないため、実力は予測不能ダ」

 

 予測不能、という言葉に、場が騒然とする。無理もない。相手は殺人のスペシャリストで、相当な手練だ。怖くなるのも無理はない。そんな場を沈めるのに、

 

「静かに!」

 

 と、アスナの一括が入る。場が納まったところで、アルゴが情報開示を再開する。

 

「続いて、真ん中の写真を見てクレ。この覆面で顔全体を覆ったヤツが、プレイヤー名ジョニーブラック。ラフコフの中では毒のスペシャリストといえるほど毒を多用してくル。投剣ピックで毒付与をしてくることもあるそうダ。使用武器は短剣。次」

 

「こいつか……。覚えておかないと……」

 

「ドクロのマスクに赤い目のコイツが、プレイヤー名ザザ。おそらくだけど、幹部の中では1番殺した数が多イ。使う武器は刺剣(エストック)ダ。これで、一応幹部プレイヤーの説明を終えるゾ。質問はアルカ?」

 

 1人のプレイヤーが手を上げる。青龍連合のプレイヤーの1人だ。

 

「情報屋さんよ。この情報を、どこから手に入れたんだ? いくらあんたとはいえ、こんな情報量は少しおかしいぞ。アジトの場所と言い、どうしてここまで出揃ってるんだ。教えて貰いたいんだが……」

 

 そう言うと、アルゴは、少し俯いて、何かを考え込んでいるようだ。しかし、何かを決めたように小さく頷くと、そのプレイヤーに向かって説明した。

 

「実は、この情報の出処が、匿名で送られてきたインスタントメッセージなんだヨ。流石に間違ってたらマズいと思って、1週間くらいはその場所の入口近くで張り込みしたしナ。間違ってはないゾ」

 

「匿名ってのが怪しいが、まぁ、いいだろう。説明感謝する」

 

 そう言うと、自分の席に着いた。そのほかに手を挙げる者も居ないので、ギルドからの派遣人数の確認と、当日の持ち物の確認。そして、実行日が明日というところまで決まった。そこまで決まったところで解散し、各自覚悟を固めることになった。

 

 

「……にしても、ヒースクリフがあそこまで討伐戦に関心がないとはな。攻略好きの団長様とはいえ、あれは驚いたよ」

「だな。攻略最優先とはいえ、人員派遣だけして、自分は関わりませんよ〜って感じだったし」

「もぉ〜、2人とも悪く言わないでよ。団長の方は団長の方で、色々忙しいんだから」

「「ハイハイ」」

「……2人は覚悟ができてるの? ゲームとはいえ、人を殺した人と相対するのが、怖くないの?」

「俺は、別に怖くない。生き残れる自信があるからな。キリトはどうなんだ?」

「……怖いさ。でも、1人でも多くの人を助けるのに、こんなところで怖がってもいられない」

 

 そんな会話を俺、キリト、アスナの3人でやったあと、それぞれのホームに帰って、休むことにした。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 〜討伐戦当日〜

 

 アジトのあるとされる57層に、討伐隊30人ほどが集まっていた。それぞれの顔は固く締まっており、これから起こりうるであろう死闘に、何がなんでも生き残るという顔をしている。

 

「それじゃ、出発していく訳だが……今からでもいい。自分には無理だと思ったやつは、ここから抜けてくれ。今から相対するのは、殺人鬼だ。捕縛が1番いいが……最悪の場合、殺すことになるかもしれない。その覚悟がないやつは、抜けてくれ」

 

 討伐隊のリーダーを務めるシュミットが、この場のプレイヤーに問いかける。しかし、誰も抜ける者はいない。全員の覚悟が固まっているようだ。

 

「それじゃあ、行くぞ。コリドーオープン」

 

 アジト前に繋いでおいた回廊結晶で早速向かう。全員が行ったところで、最後に俺が入る。殿を務めることになってしまった。だが、これはこれでいい。後ろから状況を確認できるのに加え、この中の裏切り者を監視することだってできる。

 

 

 

 

 しばらく歩いたが、出てくる様子が感じられない。索敵スキルを全員が発動しているが、反応がない。いくら隠蔽スキルが高いと言っても、スキルマの索敵を掻い潜ることは出来ないのだ。という事は、この場にいないことを表している。

 

「全く出てこないな……もしかして、尻尾巻いて逃げちゃったとかか? (笑)」

「アハハハハハハ!」

「……」

 

 シュミットの冗談にみんなが笑っているが、警戒を怠ってはいけない。索敵をかけ続けるが代わりがない……って、1人消えてる! 俺しか分からないあの裏切り者が、消えている! 

 

「一体どこに……」

「ヒャッハァ────!」

「「「「「「!?」」」」」」

 

 いきなり、前と横方向から、ラフコフのメンバーが襲いかかってきた。唐突すぎた襲撃に、1度は驚かされた討伐隊だったが、すぐに体勢を立て直し、迎撃体制に入る。

 

「捕縛優先! 全員散れ! 固まってるとやられるぞ!」

「全員ぶっ殺せ! 1人残らず殺っちまえ!」

 

 2方向から指示が飛び、戦闘が始まった。

 

「クソッ! アイツは後回しだ! こっちから片付けるか!」

 

 この日のために用意しておいた武器、『スタレシア』を片手に、ラフコフに向かっていく。わざわざこの日のために用意したんだ。誰も殺させないし、殺さない。それがベストだ。

 

「ヒャッハー」

「お前ら全員牢獄送りだ!」

「冷剣だ! 殺っちまえ!」

「おらぁ!」ザシュッ

 

 相手の体に深くならない程度の抜き打ち。傷口から赤のポリゴンがチロチロと漏れてくる。そのまま通り過ぎざまに8人ほど切りつけて、剣を鞘にしまう。その瞬間

 

 バリバリッ! ピシャッ

 

「がっ!?」「ウッ」「何だ? 体がっ、痺れてッ!」「麻痺か!?」

 

 そう、鍛冶屋界隈では絶対に作ってはいけない。作ってもすぐに素材に戻さなきゃいけない。そんな暗黙のルールが存在するのが、この武器だ。切りつけた相手にシステム上最高値のレベルの麻痺毒を与えるというもの。俺は、これを鞘にしまった時の音で発動するようにしている。モンスターに効かない、対人戦用の武器であり、プログラムした茅場をこの剣で殺したくなるようなものだが、こればっかりはしょうがない。

 

「次!」

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 何度も、何度も、切りつけては麻痺したところを後方のヤツらにロープ巻にする。ジョニーブラック顔負けの麻痺ピックも使い、両陣営に犠牲者が出ないように動き続ける。

 

(ハハハ。疲れてきた。でも、あと1桁。あと1桁捕縛したらッ!)

 

 そして、また1人切りつけて麻痺状態にする。そうして、包まっているラフコフの所を見ると、着々と回廊結晶で牢獄に送られている。まだ幹部メンバーは抵抗している。

 

「あっち向かおうかなぁ!? ……その前にこっちからか」

 

 キリトの方向に助太刀しようとしたが、その前にジョニーブラックに捕まってしまった。

 

「ザザの方には行かせないよォ?」

「うるさいな。ここでお前は牢獄送りにさせてもらうぞ」

「させないよォ!」シュッ

「毒は効かねぇよ!」パリィン

「んなァっ!?」

 

 出てきた短剣を刃の半ばで割る。キリトの十八番の〈武器破壊(アームブラスト)〉を少し武器補正でやりやすくしたのだが、ここまで成功率が高いと参ったもんだ。

 

「くっ、でも、これだけじゃないよォ!」

 

 丸腰で飛び込んできたかと思えば、体術スキル『閃打』だった、のだが……

 

「んなっ、ナイフっ!?」

「喰らえッ!」ズサッ

 

 俺の脇腹にナイフが突き刺さる。HPはあんま減らないし、麻痺毒もダメージ毒も効果時間が大したことない。デバフカット付けててよかったと思った瞬間だった。

 

「まさか、裾にナイフを隠し持ってたなんてな。敵ながら賞賛するよ。綺麗なだまし技だ」

「へへっ、そりゃどーも。でも、この毒、最近開発したばかりのレベル5なんだよぉ。ベラベラ喋ってる余裕もないんじゃないかい?」

「残念だったな。お前が俺の相手をした時点で、俺の勝ちは決まったようなもんなんだよっ!」ドガッ

「グッ、何でっ!?」

 

 会話で時間を稼いで、麻痺が解除されたところで思いっきり蹴っ飛ばす。ふとキリトの方を見たが、どうにか決着が着いたようだ。なら、こっちも早く終わらせないといけない。今立っているのも、俺とジョニーブラックの2人だけだ。

 

「そんじゃ、HPが全損しないところに当ててやるよ。ほら」

「くっ、ううっ!」

 

 麻痺になったところを縄でぐるぐる巻きにして後方部隊に受け渡す。念の為に、腰のピックとかは全部取ったが。

 

「覚えてろよォ! いつか、殺してやるからなぁ!」

「楽しみに待ってるよ。多分無理だろうけどな」

 

 そうして、ジョニーブラックが回廊結晶で牢獄に送られたところで、戦いは終わった。討伐隊の犠牲者0人。ラフコフ側は構成員35名中2名行方不明の28人捕縛。5人死亡という結果となった。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

「結局、Pohは捕まらずか……。キリト、探すか?」

「流石にもう崩壊ってとこまで来てんだ。これ以上大きな動きはしないだろうな。……レイジは何人やったんだ?」

「3人。キリトは?」

「……2人だ。ホントは、やりたくはなかった。でも、自分を守るためだけに、どうしてもっ!」

「……別にいいんだよ。そう思える内は。忘れちゃいけない。忘れなければ、それでいいんだ。罪を背負って生きていくってのは、そんなもんなんだよ」

「……レイジ、お前……過去に何かあったのか?」

「……まぁな。今回の1件で思い出したよ。忘れていたこと。忘れちゃいけなかったこと。でも、俺はもう大丈夫だ」

「……そうか。それじゃ、また次の攻略で」

 

 そう言って、俺達は、別れた。50層、アルゲードでの話である。

 

(全部、思い出せた。この1件で。父さん、母さん。芽依。俺は、また同じことをしてしまったよ)

 

(また人を、殺してしまった……)

 

 たとえ原作通りの進み方にするためだとしても、こうはなりたくなかった。シノンとキリトが出会うためとはいえ、こうなりたくはなかった。こういう形で、思い出すようなことはしたくなかった。

 

「また、か……」

 

 俺はまたしても、殺人鬼を殺してしまった。




結局ラフコフ側にも犠牲者が出てしまいましたね。まぁ、キリトのGGOでの話に関わるので必要なんですけど。
今回もありがとうございました。
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