ソードアート・オンライン〜灰の冷剣〜   作:イナミル

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週一投稿守れなくてすいません!2日遅れました!
なるべくこれから4000字〜5000字の間を書けるようになると思いますので、これからも、優しい目で見ていただけると幸いです。
それでは、14話。どうぞ!


14話:S級食材と十八番飯

 SAOがスタートして、2年近くが経過した。現在レイジのいる場所は74層迷宮区。レベリングも兼ねたマッピングをしていた。まだ元の世界(レイジのいた世界)に戻る方法も見つからず、刻々と時が過ぎていくばかりだった。

 

「リザードマン多いなぁ。そういや、グリームアイズもこんなバケモンみたいなやつだったっけな。でもまぁ、あと少しで八割くらいはマッピング終わるし、今週でこの層もおさらばするかな」

 

 一人でどんどん進んでゆく。じわじわと回復するHPが、彼を戦わせることを促すように、終わることの無い攻略ばかりが進んでいった。時刻は9時を回っており、いい子ならもう寝ている頃合いだ。

 

「……帰るか」

 

 そんなどこぞの黒の剣士様と同じことを言いながら、帰路に着くのだった。

 

 

 

 

 〜50層主街区アルゲード〜

 

「なぁエギル。いい飯の材料ないか?」

「最近はA級どころか、B級の食材の流通も少なくなってるのは、この前も話しただろ。無理言わないでくれ……」

「そういやそうだったなぁ……」

 

 忘れてた。生憎迷宮区で大したものも落とせてない。

 

「……なぁ、大斧欲しいか?」

「いきなりだな。でもどうしたんだ? モンスタードロップでいいのが手に入ったのか?」

「まぁな、これだよ」

 

 そう言って、トレードウィンドウを操作する。武器欄から出てきたアイテムを、差出人をエギルに指定して見せる。

 

「どれどれ……はぁ!? なんだよ、これ。ぶっ壊れてんじゃねぇか。お前、こんなのどこから……」

「いやー、なーんか斧持ってるデモニッシュサーバントいたから、とりあえずドロップ確認と思ってドロップ強化の装備で倒したら、出てきてな」

 

 まぁ、驚くのも無理ない。今見せた『ボーンカルトアックス』の効果で、クリティカル率1.5倍、吸血、筋力値+20のバクモンだからだ。ほぼほぼSTRーDEFにしか振らないエギルのようなプレイヤーからしたら、喉から手が出るほど欲しいだろう。

 

「いくらぶんどるつもりだ? まさか、80kくらい取るんじゃ……」

「んなわけねーだろ。無料(タダ)でやるよ。お前には、相当世話になってるからな」

「まじかよ……お前さん、今日は5杯までなら自由に何でも飲んでいいぞ。あと少しで閉めるつもりだから、今日は上に泊まっていってくれ」

「いいのか? 有難く使わせてもらうよ。でも、あと少しでキリトも来るはずなんだ。少し待っとこうぜ」

「そうか。なら、あいつが来るのを待つとするか」

 

 

 〜30分後〜

 

 ㌧㌧とドアをノックする音がなり、ドアを開けてキリトが入ってきた。何やら顔は自慢したそうだ(ラグーラビットなんだけど)。

 

「なぁエギル。ちょっと見て欲しいものが……って、レイジもいるじゃないか。丁度いい。こいつを見てくれよ」

 

 そう言って、システムウィンドウを操作し、こちらに向ける。ご丁寧に『ラグーラビットの肉』と示されており、それを見たエギルの目が丸くなった。

 

「ラグー、ラビットだとっ……! お前、これ、S級食材じゃねぇかよ……。自分で食べようとは思わないのか?」

「思ったさ。でも、調理しようにもどうしたらいいか……。って、レイジがいるじゃないか。お前、料理スキル取ってたよな。いくつだ?」

「この前726になったばかりだけど、俺に頼むなよ。俺は食ったことあるんだからさ。それに、添える野菜も生憎手元に無いんだよ。キリトも知ってるだろ? 食材不足で出回ってないの」

「あぁ、そうだよなぁ……って!」「確かになぁ……てか!」

 

「「お前食ったことあんの!?」」

 

 キリトもエギルもどっちも食いかかってくる。別に隠すことじゃないからいいんだけどさぁ。

 

「あるよ。結構美味かった。で、何?」

「あるならあるで言えよなぁ。なぁエギル?」

「そうだ。美味いもんは皆で分け合って食べないと」

「お前ら、仮に手にしたとして、誰かに売ったり分けたりするか? 俺みたいに料理スキル取ってるやつがゲットしたら、迷わず自分で全部食べるぞ」

「「うむむ……」」

 

 そうして、そんな話をしている最中、空いてるドアから中に入ってきてコソコソこちらに近づいている人が1人。いや、厳密には2人か。そして、だんだんこちら側に近づいてきて……

 

 ㌧㌧「キリトくん」

「……ハッ! シェフ捕獲!」ガシッ

 

 アスナの登場である。もちろん、後ろにはクラディールが居る。アニメまんまのセリフ回しに少し吹き出しそうになったが、気合いで耐える。そして、クラディールのギロッとした睨みに気づいたキリトが慌てて手を離して

 

「珍しいな、アスナ。こんなゴミだめに」

 

 その一言に、エギルがムッとするが、そんなエギルをなだめながら、この2人のやり取りを見守ることにした。

 

「言い方がいちいち酷いわよ。近々攻略会議があるから、生存確認しに来たの。それで、何? シェフってなんのことよ」

「アスナ、確かお前、料理スキル取ってたよな。今いくつだ?」

「ふふん、聞いて驚かないでくれる?」

 

 そう言って、胸を張ってエッヘンといった様子から、俺達にドヤ顔で言ってきた。

 

「先週、スキルマックス(コンプリート)したわ!」

「「おおっ!」」「はへぇ」

 

 キリトとエギルは驚き、俺は……なんとも言えない声を出した。

 しょうがないじゃないか。こんなことなるの知ってたんだし。

 

「そんな君の腕を見込んで、頼みがある。こいつだ」

 

 そうして、俺達に向けられていたウィンドウをアスナの方に向ける。そしたら、まんまエギルと同じような反応を見せてくれた。

 

「ちょっと! これ、S級食材じゃない! これを……」

「やってくれたら、1口食わせてやる。それでいいか?」

 

 その言葉に、勢いよくキリトのコートに掴みかかり、手元に引き寄せ、顔を近づけて言った。

 

「は・ん・ぶ・ん!」

 

 なんて食い意地張ってるんだ……。1層でパンにクリームつけて食べた時も同じだが、どうして彼女はこうなのだろう。

 

「わかったわかったって! ってことで、エギル。こいつを売るかどうか迷っていたが、取引自体なかったから、別にいいよな」

「なっ、キリト、俺たちフレンドだよな! 俺にも1口くらい……」

「感想文を800字以内で書いてやるよ。それじゃあな」

「そっ、そりゃねぇぜ……」

 

 エギルはしょぼんと肩を落としてうなだれてしまった。

 

「まぁまぁ、そんなしょぼくれるなって、んじゃあな。キリト、アスナ。そこの護衛さんも。ここまでお疲れ様だな」

「いえいえ、任務なので。労い感謝させていただきます。それでは、失礼させていただきますよ。灰の冷剣様」

 

 ……なんでよりによって血盟騎士団には好かれてるんだろうな、俺は。まぁ、ギルドの色んなところ支援してるのは間違いじゃないんだけどさぁ? でもまぁ、少しは泳がせとくとするかな。

 

「……エギル。キッチン借りていいか?」

「おっ、おう。でもどうしたんだよ。突然」

「いや、キリトがラグーラビット持ってたろ? 同じ感じで、俺も持ってるんだわ。S級食材」

「んなぁ!? お前、なんでそれを隠して……」

「いや、キリトが言ったあとじゃないと、俺まであの食事に誘われてたかもしれないからな。あの二人には、仲良くさせとこうぜ? いいだろ?」

「あぁ、そうだな。……それで、何作るんだ?」

「俺の十八番。牛丼だ」

 

 そうして、俺はキッチンの方に入る。家で一人暮らしの時も即座に作れて美味しいのはこれだった。

 牛のバラ肉に、玉ねぎを鍋で軽く炒める。そして、それに出汁、醤油、みりんをかけて、少し煮込む。ご飯は別途で炊いて、出来上がったアタマを丼に盛ったご飯の上に載せておしまい。

 

 〜作業中〜

 

「いやー、都合よく『ヒドゥンバイソンのバラ肉』が手に入ってなぁ。こりゃ使うしかねぇって思ってたんだよ」

「なら、なんで食材の有無を聞いたんだよ。別にこんなもの作れるなら、聞く必要ないだろ?」

「1番いいのはカレーだったんだよ。『フレッシュオニオン』しか無かったんだから、こうするしかなくてな。他の材料があれば、別のにしたかったんだよ」

「それもそうか……。んで、さっきから鍋に何入れてるんだ?」

「醤油、みりん、出汁。出汁は出汁でも白出汁な」

「なっ、なんでお前醤油持ってんだよ!」

「作った」「はぁ!?」「だから、作ったって言ってんだろ?」

「どうやって……」

「この世界には、味覚パラメータってのがある。それのダイヤモンドを少しずついじって、なるべく本物に近付けた」

「おいおい……そんなの攻略の合間にいつやってたんだよ……」

「知らねぇの? いつも夕飯は手作りなんだぜ?」

「……お前をうちで雇いてぇよ」

「無理だな。やめてくれよ」

 

 〜食事後〜

 

「はぁ、美味かったなぁ。にしても、お前がこんなに料理出来たとはなぁ……」

「リアルでは一人暮らしなんだよ。それもあって、一人で作るのには慣れてるんだよ」

「……聞いちゃいけない事だったか?」

「いや、別にいいさ。でも、詳しい話は、またいつかな」

「……あぁ」

 

 ここで話す訳には行かない。その日が来るまでは、話さないでいたい。ラフコフの件があって、俺が過去に人を殺めたことは思い出した。その事で、今の仲間に拒絶されるとは、到底思ってはいない。だが、事にはタイミングってものがある。だから、今は話さない。

 

「そんじゃ、飲み明かすか。今日は5本までならOKだろ?」

「5本までならって……。お前未成年だろ?」

「るせぇ。あの二人のイチャイチャっぷりを我慢した分だ。護衛が云々言ってるだろうが、あいつらはくっ付くだろうよ。さぁ、酒出してくれ。バーボン、ロックで頼む」

「全く。部屋まで運ぶのは俺なんだからな……」

 

 夜中、俺達2人は酒を飲み交わした。夜がより1層静かになっていく中、50層の街の角には、明るい日が灯ったままなのだった……。

 

 

 

 

 

 

 〜一方その頃〜

 

「今日はありがとな。おかげで美味い飯が食べれたよ」

「ううん、いいの。私こそ、あんなご飯食べられて嬉しい」

「そうか……。なぁ、アスナ」

「何? キリト君」

「明日、レイジも誘っちゃダメか?」

「別にいいけど……どうしたの?」

「いや、何やら嫌な予感がしなくもないって感じでさ……まぁ、明日はよろしく頼む。74層主街区、転移門前に集合な」

「わかった。それじゃあね」

「あぁ、また明日」

 

 そうして、キリトはホームに戻った。

 

「にしても、4Mコルかぁ。レイジはどんくらい稼いでんだろなぁ……。あいつ、武器売りまくって稼いでるみたいだし」

「しかも、なんか面白い武器能力手に入れたって言ってたな……。明日にでも聞こうかな……」

 

 レイジの本当の力がどれくらいの物なのか、キリトは知らない。一対一で戦えば、間違いなくキリトは負けるだろう。何より、このゲームが全損決着できるようなものなら、確実に負ける。

 

「詳しくは明日、だな……」




はい、ご飯回ですね。
ちなみに、私の十八番も牛丼です(聞いてない)。
今回もありがとうございました!

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