連日投稿となりましたが、これ以降は不定期投稿になります。
申し訳ありません。
……視界が開けた。正面には、石碑のようなもの。その右手には、何やらモニュメントのような形をしている物がある。おそらく、ここが転移門広場なのだろう。あたりを見回したら、次々と人が入ってくる。
「わぁ!」「すげぇな!」「これ、VRなのか……?」
数々の男女が口を揃えて同じような反応をしていた。ここにいるプレイヤーの男女比は1:1だが、中の人間の男女比は、4:1、悪ければ9:1くらいだろう。一応、RPGだからな。
「……ネカマ共は放っておいて、武器屋行くか」
俺は、商業区の方に走り出していた。意外と体が軽い。俺のVR適性は高かったのだろうか?
武器屋についた。片手直剣に細剣、両手剣に斧、槍に棍棒といった、6種の武器が置いてある。しかし、上の層に行けばさらに武器の種類は増えるだろう。
だが、俺はひとつしか武器を使うつもりはなかった。キリトも使っていた、片手直剣。これだけで、斬・刺・打の、3種の攻撃タイプを使えるのは、様々な
俺は、基本装備の[スモールソード ]を購入し、残ったコルで回復ポーションをありったけ買った。これで、第1目標は達成した。あとは、あの2人に会いに行くだけだ。原初の草原、だったか? 初めのフィールドに行こう。
初めのフィールドに着く前に、門の近くにいた女性から、クエストを受け取っておいた。フレンジー・ボアを10体狩ってきてくれとの依頼だった。このクエストをクリアしつつ、ボアを倒して、戦闘経験を積んでおこう。
この世界では、あらゆる経験の量が生死を左右する。この世界に入り込んでしまった俺でも、HPが0になったら、何が起こるか分からない。
「フッ、ハァッ!」ザシュッ。
ボアの突進を避けて、横から斬る。これでさっきからダメージを与えていた。未だにソードスキルの出し方が分からない。でも、それも、あとしばらくの辛抱だ。あの二人が来るまでは……。
〜20分後〜
これで、10体は狩り終えただろうか。クエストの進行マークも付いた。にしても、そろそろ頃合じゃないのか? いい加減見つけてもいいかもしれないんだけど……。
「おーい、兄ちゃん。いいスジしてるなぁ! アンタ、ベータテスターか?」
「おい、クライン、そこら辺を詮索するのはマナー違反だぞ」
この声、やっと来たか。ちょっと遅いなぁ。
ーsideキリトー
さっきから突進を避けては斬る。避けては斬るを繰り返しているプレイヤーがいた。ソードスキルを使っていないということは、ニュービーなのだろう。にしては、体の運び方が慣れているように感じる。なんでだ?
「なぁ、アンタ、ニュービーで間違いないんだな?」
「ん、あぁ、間違いないよ」
やっぱりニュービーなのか。だとしたら凄いな。この人と組めば、剣だけでどこまで行けるだろうか……。
「おっと、名乗るのが遅れたな、俺はキリト。んで、隣のバンダナの男が……」
「俺ァ、クラインって言うんだ。よろしくな」
「キリトにクライン……。あぁ、よろしくな。俺は、レイジだ」
レイジ、か。俺のように安直なプレイヤーネームの付け方をしたのだろうか? ……いや、そこを詮索するのはマナー違反か。
「なぁ、レイジよぉ。お前さんさえ良ければ、このキリト先生にソードスキルを教わらないか?」
「おい、クライン。狩りの途中だったかもしれないだろ」
「いや、俺は構わないよ。ぜひレクチャーして欲しい。狩りも一段落着いたしな」
そういうことで、俺はクラインとレイジの2人にソードスキルを教えることになった。
〜side out〜
ようやく、この2人に会うことが出来た。デスゲーム宣告が始まってからだと、キリトに会うことは困難を極める。ここで出会えてラッキーだ。
キリトの教え方は、それなりに上手だった。感覚論が混じっていると言え、伝わりやすい。早速、目の前のボアに向かって、剣を構える。
片手直剣単発ソードスキル『ホリゾンタル 』
水色のライトエフェクトに包まれた剣が、ボアの体を一閃する。
一撃だった。これほどまでに強力なのか、ソードスキルは。
「どうだ? ハマるだろ?」
「そうだな、自分の体を動かすっていうのは、クセになるな」
「そうだ。この世界は、この剣1本でどこまでも行けるんだ」
キリトのそういう目は、活き活きしてるように見えた。
「よし、もう少し狩りをしていくか」
「そうだな。今のうちに、レベルは5までは持っていきたい」
キリトの提案に、俺は答え、三人でまだ狩りを続けることにした。
〜50分後〜
「ふぃ〜狩った狩った」
「そうだなぁ。かれこれ40体くらい狩ったんだよなぁ。キリト、今レベル幾つくらいだ?」
「3くらいだな。レイジは?」
「俺も3だな。これで、5時半くらいか、結構経ったな」
「どうする? このまま狩るか?」
「いや、俺ぁそろそろ落ちるぜ」
「んぉ、なんか用事か?」
「いやよ、このゲーム以前から付き合いのあるヤツらと会うことになっててな。俺の家でピザをつつこうって話になってんだよ」
「ギルドオフってところか?」
「まぁ、そんなとこだ。てことで、お先になるぜ」
そう言ってクラインはシステムウィンドウを操作する。普通のゲームやベータテストならこのまま退室と進めるだろうが、ここはSAO。普通のゲームではない。
しばらくすると、クラインが声を上げる。
「あれ? おっかしいなぁ」
「どうしたんだ?」
……始まってしまった。この牢獄での生活が。
「ログアウトボタンがねーんだよ」
「GMコールはしたのか?」
「してるけど、さっきから応答がねーんだよ」
「おかしいな……。こんなことって起きるか?」
「これにゃ今頃運営も対応に涙目だろうな」
「お前もな、クライン。時間見ろよ、ピザ、そろそろだろ?」
「……ぉ、お、俺様のピザとジンジャーエールがぁ……」
キリトたちがそう話しているが、俺は、何も言うことが出来ない。この先の展開を知っているからこそ、周囲を見渡している。狩りに出ていたプレイヤーが次々と光に包まれていった。俺の視界も、白く覆われる。
次に視界がはっきりした時は、はじまりの街の転移門広場だった。ここに、全プレイヤーが集められている。
「……はぁ」
ため息をつくことしか出来ない。俺はこの先を全て知っている。
「な、なんだよ……こりゃぁ……」
「どうやらここに……」
「あぁ、全プレイヤーが強制テレポートされたみたいだな……」
周りはザワついている。一体何が始まるんだと、不気味がるものもいれば、一種の祭りだろうと楽観的に見る者もいる。
瞬間、中央の石碑上空に、赤い障壁のようなものが浮かぶ。
《WARNING》《System Announcement》
そして、それが空を埋めつくした。そして、その隙間からこぼれ落ちていく奇妙な赤い液体。それが石碑の上に集まっていく。
「なんだぁ、ありゃ……」
クラインが声をあげるのも無理はない。液体は次第に形を整えていき、最終的にはローブ姿の人型となった。顔はなく、アニメで見ていたものとは比にならないくらいに気味が悪く、おぞましかった。
そして、赤のローブは話し出した。
「プレイヤー諸君、私の世界へようこそ。私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ」
GMである茅場の登場に、周りからは本物かとの疑念の声と、これから執り行われるであろうイベント(死刑宣告に近いが)に期待を高ぶらせる声の、二種類が上がる。
「プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消失していることに気づいていると思う。が、これはアーガス側による不具合などではない。繰り返す。これは不具合やバグなどではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」
突然言い渡されたことがあまりにも突然だったこともあって、誰彼も言葉が出ないようである。気にせず、萱場は続ける。
「君たちによる、自発的ログアウトは行えない。また、外部の人間によって諸君らのナーヴギアの停止、あるいは解除も有り得ない。もしそれが試みられた場合は、ナーヴギアがそれを感知し、高出力マイクロウェーブによって諸君らの脳を破壊し……生命活動を停止させる」
茅場は、そう宣告した。プレイヤー共々は頑なに信じる気配を見せず、演出だろう、早く出せと喚いている。
「何言ってんだぁアイツ……。頭イカれてるんじゃないか? なぁ、キリト、レイジ」
「……クライン、電子レンジは、分かるよな?」
「んあぁ。もちろん知ってるが……それがなんだよ、レイジ」
「今あいつが言ったことは、もし外れそうになったら頭をレンチンして殺しますよ、ってことだ」
「はぁ!? んなことできるわけねぇだろ!!?」
「キリト、わかるか?」
「レイジの言ってた通りで概ねあってる。ナーヴギアはVRゲーム用に出力しているから、全出力を使うなら、いとも容易いことだろうな……」
キリトの言葉に被さるようにして、萱場は続けた。
「現時点で、家族や友人たちが警告を無視してナーヴギアを解除しようとした例がいくつもあり、結果、213名のプレイヤーがゲーム及び現実世界からも退場している」
茅場は、見せつけるようにウィンドウを操作し、
「ご覧のように、各種メディアによる報道によって、ナーヴギアが解除される危険性は低くなったと言っていいだろう。君たちは、安心してゲーム攻略に励んでくれたまえ」
と、狂気じみた励ましをされる。
「留意して欲しいが、今後ゲーム内における様々な蘇生手段は、機能しない。HPが0になった瞬間に、諸君らのアバターは完全に消滅し、そして、ナーヴギアによって諸君らの脳は破壊される」
脱出不可能とも言える牢獄に閉じ込めらる感覚だ。周囲で狩りをしていたプレイヤー達は、今頃倒してきた相手にHPをゼロにされ、自分がポリゴン片になるところを想像したとこだろう。
そして茅場は、この牢獄を脱出する術を教えてくれた。至って簡単である。「ゲームをクリアすること」であった。しかし、その階層は100層。ベータテストでは、死に戻りアリで二ヶ月で8層だったと言うことを考えても、全く現実的ではない。
「では最後に、諸君らのアイテムストレージにプレゼントを渡した。受け取ってくれたまえ」
システムウィンドウを開き、アイテム『手鏡』をオブジェクト化する。すると手元には手のひらサイズの手鏡。鏡に映る自分は、かつて現実で過ごしていた時と何ら変わらない、いつもの顔だった。周囲のプレイヤーも、自分も、光に飲まれていく。次に視界に映ったのは、アバターと違う顔をしたプレイヤー達だった。
「なんだったんんだ今の……って、お前さん、誰だ……?」
「いえ、こちらが聞きたいくらいです……って、その声、もしかして……」
「キリト……なのか?」「クラインか?」
「その声、二人だな。良かった良かった」
「あぁ、その声はレイジか……って」
「……お前さん、変わらねぇんだな」
「まぁ、設定でそのままにしたから……」
三人でそんな話をしていると、茅場が続けた。
「さて、諸君らは今何故、と思っているだろう。何故、茅場晶彦はこんなことをしたのか、と。……私の目的は既に達せられている。この世界を創造し、鑑賞するためにのみ、私はソードアート・オンラインをつくった」
淡々と話す茅場は、自身の目標達成を告げ、チュートリアル終了という形でデスゲーム開始宣言をした。
次の瞬間、赤ローブは消え失せ、転移される前の無駄に綺麗な夕焼け空と、プレイヤー達を残して、姿を消した。
ほんの少しの沈黙の後、広場を包んだのは、プレイヤー達の叫び声だった。
「いや……嫌よ……」「ふ、ふざけんじゃねぇぞ!」「ここからだせよぉ!!」
悲痛な叫びだ。この場を作った当事者にも、身内にも届きやしない叫び。聞いてると、こっちの胸まで傷みそうになる。
「……レイジ、クライン、ちょっと来い」
「……あぁ」「お、おい! キリト! レイジ!」
キリトに連れられ、広場から少し離れた路地裏に入る。キリトが言わんとしていることは、聞かずともわかっていた。
「レイジ、クライン、よく聞け。俺は今から次の街に向かう。お前らも着いてこい」
「……」「お、おい……」
「VRMMOが生成するリソースには限りがある。始まりの街付近は、直ぐに狩り尽くされるだろう。今のうちに、次の街を拠点にした方がいい」
やはりこの提案。今の俺は、死ぬと何が起こるかわからない。キリトに着いて行く以上に、生存率が高いことは無いだろう。断る選択肢は、無いに等しい。
「……俺は行く」
「分かった。……クラインはどうする?」
「……俺にゃ、前のゲームからも一緒にやってきたギルドのやつが居る。そいつらを置いては、行けん」
仲間思いのクラインだからだろう。原作と変わらず、断ってきた。
「……なぁに、暗い顔すんな。キリトから教わったテクで、生き延びてみせるさ」
俺たちを不安にさせないために言ったんだろう。しかし、その目に弱さは感じられない。クラインなりの覚悟なんだろう。
「分かった、じゃあ、俺たち2人はもう行くよ」
「分からんことがあったら、いつでもメッセージ飛ばしてくれよな」
「あぁ、そうさせてもらうぜ」
そう話し、俺とキリトは駆け出そうとする。でもやはり、踏ん切りがつかない。そう思っていると、クラインが言った。
「キリト! お前さん、案外可愛い顔してんな。結構好みだぜ。レイジも、整った顔立ちしやがって。俺ァ羨ましいよ」
そう、俺たちに告げた。全く、こういう時はかっこいい。クラインらしいのだが。だから、こう返す。
「お前も、その野武士面の方が似合ってるよ!」
「元気にしてろよ! またどっかで会ったら、うまいもんでも奢ってやるからな!」
そう言って、二人で駆けだす。今度はもう止まらない。振り返らない。ここで振り返ると、せっかくのクラインの優しさが無下になってしまうから。
こうして、次なる街、ホルンカ目指して俺たち2人は走った。
原作通りに行きました。
次は、コペルが出てくるかも?