この手を離さない   作:八銀はジャスティス

48 / 54
名人を名人戦挑戦者とすると、名人と名人が対局することになってややこしいですね
わかりにくかったり、違和感あったら申し訳無い
……そもそも名人が名人保持してない時、原作キャラは棋界の名前を言ってはいけないあの人のこと、なんて呼んでるんですかね?
本作では、その偉業を称えて名人保持してなくても、皆名人と呼んでいる、といった設定でやっていきます
合い言葉は、八銀はジャスティス


第41局 清滝一門の熱い夏3

「「師匠!」」

 

俺と銀子ちゃん、そして桂香さんの三人は、千日手による指し直しが決まった瞬間、待機室を飛び出し、師匠の元へと向かった。指し直し局は、今から30分後に行われる。二日間の超激闘を繰り広げた後の再戦。師匠もきっと、疲労で今はグッタリしているのでは無いだろうか?そう思いつつ、師匠の部屋に飛び込む。そして俺たちが最初に見た師匠の姿は、悔しそうに拳を握りしめ、歯を噛みしめている姿だった。

 

「……銀子、八一、桂香、皆来とったんか」

 

「師匠が心配で、つい……」

 

「そうか。折角来てもうたのに、みっともない将棋見せてもうたな」

 

「そんな!みっともなくなんて……」

 

「みっともないやろ!」

 

その師匠の叫びに、俺たち3人は、思わず一歩後ずさってしまう。それは、師匠の怒りがもたらした叫びだった。そしてその怒りの対象は、おそらく俺たちでも名人でもない。師匠自身なのだろう。

 

「ワシは、ワシは今の対局勝っとったんや……そのつもりやったのに……結果はこの様や!引き分け、しかもワシが不利な状況での指し直し!ワシが下手な手指したばかりに、こんな結果に……」

 

決して、師匠は下手な手を指したわけではない。むしろ、考えられる最善の手をずっと指していたのだ。しかしそれこそが、名人の仕込んだ罠だった。身震いするほどの、高度な罠だった。仕掛ける名人も凄いが、しかしこの罠は、かかった師匠も凄いのだ。

 

「師匠は、ずっと最善手を指していましたよ」

 

「最善手を指そうが、罠にかかってもうたのは変わらんやろ!最善手どころか、大悪手やないかい!」

 

「そんなことはないです。そもそも、この罠を名人が仕掛けたのは、名人が師匠の実力を高く評価しているからです」

 

「……名人が、ワシを?」

 

「この罠は、名人の手に対して、常に最善手で応えることによって、やっと相手がかかる罠なんです。逆に言うと、最善手以外を相手が指してしまうと、効果は無くなり、名人の敗勢になっていたでしょう。名人は、師匠なら絶対に最善手で応えてくれると考えたから、この罠を仕掛けたんです。仕掛ける名人もですが、これは罠にかかった師匠も凄いんですよ」

 

「そう。師匠は凄い。もっと自信を持っていい」

 

「私もそう思うわ。お父さんは私達にとって、自慢の師匠よ」

 

「師匠、俺たちは信じてます。師匠なら絶対に、名人位を防衛できるって。……俺たちまだ、名人の弟子でいたいですよ」

 

「銀子、八一、桂香……」

 

俺たちの声を受けて、荒れていた師匠は少し落ち着きを取り戻したようだ。そう、師匠は凄いのだ。あの名人の期待に見事に応えて、この指し直し局まで辿り着いて見せた。そして何より、名人が千日手に師匠を誘導したという事実が、師匠の凄さを物語っている。名人は、より確実な勝利を手にするために千日手という選択を取ったと考えている人達が大半だろうが、それは大きな誤りだ。名人は、この選択肢に喜んで進んだわけではない。この選択肢に、逃げたのだ。このまま正面から指しても勝てないと見て、逃げたのだ。神の手は、逃げの一手だったのだ。

 

俺たちの言葉を受けた師匠の眼には、熱い炎が戻っていた。先ほどまでの師匠は、その炎が消えかけていたのだ。まさに風前の灯火という様相だった。しかし今は、その炎が、思わず側にいる俺たちを焦がしてしまいそうな程に燃えさかっている。熱い、闘志の炎が。

 

「皆、おおきにな。お陰で眼が覚めたわ。この対局、まだ終わったわけやあらへん。むしろこっからが本番なんや。ワシは絶対に……勝つで!」

 

その師匠の決意が聞けて、俺たちは安心した。この様子なら、師匠は大丈夫だ。問題無い。師匠ならきっと、また名人の座を防衛してくれる。そう信じて、俺たちは部屋を後にした。もう時間だ。指し直し局が始まる。俺たちは待機室で見届けよう。師匠の勇姿を。

 

俺たちは待機室に戻り、モニターに目を向ける。対局室には、既に名人が座して待っていた。まだ駒も並んでいない盤面をジッと見つめている。今の名人が、何を考えているのかは誰にもわからない。もしかしたら、既に脳内で終局までの対局図を描いているのかもしれない。そんな芸当誰にもできるわけがないと思っていても、あの人ならできるのかもしれない、そう思わせてしまうのが、名人の凄さだ。

 

そして、名人に遅れて師匠も対局室に姿を現した。威風堂々とした佇まいは、正しく名人位保持者として相応しい物。静かに座して待っていた挑戦者の前に、同じように静かに腰を下ろした。そして、これまた静かに、二人とも対局の準備を進めていく。二人の放つ気に圧されてか、対局室に集っている報道陣までもが静かに二人の姿を見守っていた。対局室からは、駒を並べていく、駒音だけが聞こえてくる。そして、二人とも駒を並べ終えると、対局室には静寂が訪れた。静かに、立会人の言葉を待つ。

 

「それでは、挑戦者の先手番で始めてください」

 

そして、遂に開局を告げる言葉が放たれる。この対局を見守っている全ての眼が、名人の手に注がれる。盤上に奇跡を描くその右手は、一体この局でどのような将棋を見せてくれるのか?注目を一身に受けながら、名人は静かに初手を指した。その初手は、7六歩。角道を開ける手だ。その手に向けて、カメラの放つ閃光が注がれる。その閃光を気にもとめず、師匠は名人が駒から手を離したのを確認すると、直ぐさま自分の手を進めた。師匠の持ち時間は1時間しかないのだ。少しの時間も無駄にはしたくない。そんな師匠が指した手は、3四歩。名人と同じく、角道を開ける手だった。

 

「それでは、報道陣の皆さんは退室してください」

 

立会人の声に従い、報道陣が名残惜しそうに部屋を出ていく。全員退室するのを待っているのか、名人は中々次の手を指そうとしない。

 

「さて、戦型はどうなるかな?」

 

「お互いに角道を開ける初手。居飛車同士の対局なら、角換わりか、横歩か」

 

「たぶん、そのどちらかでしょうね。これまでの番勝負を振り返ると、名人は初手の場合、横歩を二回、角換わりを一回採用しています。全て、初手に角道を開けて、師匠が飛車先の歩を突くことで応じています。師匠が角道を開けて応えたのはこの番勝負で初めて。可能性が高いのは角換わりでしょうか?」

 

その場にいる誰もが、戦型はその二択で間違いないだろうと結論を出していた。これまでの番勝負を振り返ってみても、その二択以外はありえない。誰しもがそう考えていた。だからこそ、誰もが次に名人が指す一手を予想できなかった。名人が選んだ、戦型を。

 

「え!?」

 

迷い無く指された名人の次なる一手を見て、誰かが思わず声を上げる。それは、当然の行為だ。俺に至っては、驚きのあまり声も出なかった。名人が指した手が、予想外すぎて差し間違えたかと疑ってしまったほどだ。名人が指した手。それは……

 

「ろ、6六歩……?」

 

6六歩。つまり、角道を再度塞ぐ手だ。この手から考えられる、名人が指したい戦型は、横歩でも角換わりでもない。この番勝負中、ずっと師匠が封印してきた自身の得意戦法……矢倉だ。名人は、師匠相手に矢倉で挑むと言っているのだ。この戦型を選んだ名人の意図が理解できない。まさか、これは師匠に対する……

 

「挑発?」

 

銀子ちゃんが言う。それは、俺が考えていた名人の意図と合致していた。師匠は、名人のこの手を受けて、大きく分けて二つの選択肢を選べる。相矢倉に持ち込むか。自分は矢倉を組まず進めるか。前者の場合、ほぼ間違いなくその後相矢倉殺しへと移行することだろう。そうなれば、あの名人相手に真っ向から力勝負を挑まなければいけなくなる。しかも、時間的にも手番的にも師匠が不利な展開でだ。その展開は避けたい。だけど、間違いなく師匠はその選択を取るだろう。何故なら、後者は逃げの選択なのだから。師匠の性格から見て、相手から逃げるような、そんな選択はしないだろう。師匠のプライドが、その選択を許さない。

 

「挑発、か。名人は、そんなこと全く考えてないだろうね」

 

山刀伐さんが言う。名人の研究パートナーである彼には、名人の選択に何か思うところがあったのだろう。

 

「名人は、相手の得意戦法から逃げない。なるほど。この番勝負中、名人が初手7六歩に拘っていたのは、この展開を待っていたからか。相矢倉に持っていける、この展開を」

 

モニターの向こうの師匠は、俯いていてその表情を見ることはできない。師匠は名人の手を受けて、どう感じているのだろうか?それは、今は師匠にしかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

鋼介は、静かに怒っていた。名人の指し手に、挑発する意図が無いことは鋼介とてわかっている。しかしそれでも、怒らずにはいられなかった。目の前で、どこか楽しそうに鋼介が指すのを待っている目の前の男を見ていると、怒らずにはいられなかった。周りの人間は、この男のことを名人と呼ぶ。名人を保持していない今でもだ。周りの連中はわかっているのだろうか?今は誰が名人なのかを。それをこの対局で、教えてやろうではないか。

 

「ワシは、ワシがなぁ、名人なんやぁ!」

 

鋼介は力強く次の手を指した。実のところ、鋼介は名人が手を進めた時点で、次に自分が指す手は決めていた。ただ、自分の心を落ち着かせるのに時間を少しばかりかけてしまった。この、堰き止めることも不可能な激流の如く溢れてくる怒りを落ち着かせるのに。とは言え、決して怒りが落ち着いたわけではない。鋼介は、怒りと共にこの対局に勝つと決めたのだ。最強の座を欲しいがままにしているこの男に、相矢倉殺しで。

 

「ええわ。そっちがその気なら、付きおうたるわ。ワシも、この戦型を指したいとずっと思っとったんや。指したくても指せへんかった鬱憤、この対局で晴らしたるわ!」

 

名人が指した次の一手に、迷い無く鋼介が早指しで応じる。この対局は、それからお互いに止まることなく突き進んでいった。そして、そう時間を要することも無く、とある戦型へと辿り着く。相矢倉へと。辿り着くと、名人は一つ小考を挟んだ。ここは、ゴールでは無い。スタートラインなのだ。ここからが、本番。この日まで重ねてきた研究を、盤上に描いていく。相手は、この研究成果を披露するのに最高の指し手。この将棋の第一人者だ。名人は今この時、ただの挑戦者でしかなかった。肩書き的にも、将棋的にも。有利な状況を手放してまで、盤上で研究成果を語り合いたい。この将棋を更に飛躍させたい。タイトル戦に出ている以上、勿論タイトルは欲しい。しかしそれ以上に彼は、棋士としての更なる高みを欲していた。だからこそ彼は、迷うこと無く茨の道へとその足を踏み入れる。

 

名人が手を進めていた。その手は、この対局を見守る全ての棋士が予想した通りの手だった。矢倉殺し。名人がその手を指すのは、この対局が初めてのことだった。相手は、この戦法をプロ棋界で最初に指し、今となっては、この戦法の第一人者とも呼ばれるまでに至ったスペシャリスト。そして、この戦法で現名人にまで上り詰めた、不屈の男。清滝鋼介名人。その現名人が、名人の指した手に即座に応える。その手も、この対局を見守る全ての棋士が予想した通りの手だった。相矢倉殺し。ここに、この対局の戦型が姿を現した。それから名人は、慎重に一手一手を進めていく。早指しが得意な彼だが、実戦でこの戦型を指すのは初めてなのだ。一手一手間違いが無いように、慎重に進めていく。対して、現名人は、徹底して早指しを心掛けていた。持ち時間に余裕が一切無いのだ。少しも、時間を無駄にしている余裕は無い。この戦型に対する経験というアドバンテージを遺憾なく発揮し、早指しに徹していた。公式戦は勿論のこと、八一への指導対局も含めると、鋼介の相矢倉殺しに対する経験値は、既に数千局。初めて公式戦で矢倉殺しを指した、相矢倉殺しを指したあの日から三年。たった三年でそれだけの数を熟してきたのだ。経験は時に才能をも凌駕する。才能(ちから)に恵まれた神に、泥まみれになって手に入れた経験(ぶき)を手にして、凡人が対峙する。

 

対局はその後も、互いに攻め合う展開が続く。相矢倉殺しは、守勢に回った方が負ける。攻めて攻めて、相手よりも最短手数で王に剣を突きつけた方が勝つ将棋だ。受けは最低限且つ、相手の攻めを遅らせるように指し、攻めに比重を置く。少しのミスが致命傷に繋がりかねない極限のチキンレース、それが相矢倉殺しだ。鋼介は、極度の緊張感から湧き出てくる冷や汗を拭いつつ、全神経を盤上へと向ける。当然のことながら、相矢倉殺しは先に仕掛ける先手の方が有利。後手番な上に、時間に余裕も無い鋼介は、名人が犯すほんの些細なミスも瞬時に見つけなければいけない。ほんの些細な気の緩みも許されない対局の中で、鋼介は静かにその時を待ち続けた。来るのかもわからない、その時を。静かに進行していく対局。一向にその時は訪れない。このままだといずれ、名人の剣が先に鋼介の王を捉えてしまう。対局は既に終盤。既にお互いの矢倉は見るも無惨な惨状になっている。ほんの僅かな残兵と、駒台から飛び出す援軍で時間を稼ぎつつ、お互いの王に向けて突き進んでいる。このまま決着の時を迎えるのか?誰もがそう思い始めていた。このまま、名人が鋼介の王に剣を突き立てるのかと。しかし鋼介は、最後まで決して諦めていなかった。最善に最善を尽くして、名人に必死に食らいついていく。最後のその時まで、決して諦めない。自分が負けを認めるのは、詰みがかかった瞬間なのだと、最後まで諦めない。そして、その想いが届いたのか、遂にその瞬間はやってきた。

 

名人が指した次なる一手。決して、何もおかしい手では無い。それどころか、思わず唸りたくなるほどの妙手だった。的確に、鋼介の急所を抉るかのような一手。対局者には知る由も無いが、この手を見て待機室に集った棋士の多くは、口々に賞賛の言葉を述べていた。これで、この対局は決したと豪語する棋士もいたほどだ。それほどまでに、名人の指した手は素晴らしい一手だった。だがこの手を見て、鋼介だけは異なる見解を示していた。それは正しく、この戦型に対して豊富な経験を積んできた鋼介だからこそ気づけた名人の隙だった。確かに一見すると素晴らしい一手だ。しかし、鋼介はこの手を見てこう感じていた。名人が、攻め急いだと。ここで鋼介は、この対局において初めての長考に入った。次の手がこの対局の勝敗を左右する。重要な一手だ。残りの持ち時間全てを使い切ってもいい。次の一手を考える。いや、正確には次の一手自体は既に決まっている。今鋼介が思考しているのは、そこから先、勝利までの道筋だ。勝てる。この時鋼介は、自身の勝利を確信していた。

 

「清滝名人。時間切れとなりましたので、これより一分将棋でお願いします」

 

記録係のその指示に、頷くことで了解の意を示す。その意識は、盤上から離れることは無い。記録係の秒読みが始まる。鋼介は、一分をたっぷり使い、残り50秒を切ったところで次手を放った。それは、受けの一手だった。しかし、ただ受けているだけでは無い。これは、謂わば助走だ。勝利というゴールへ向けた助走。相手の攻めを受けつつ、ゴールへ向けての勢いを付ける手。名人も直ぐさま、その手が持つ真意に気付く。待機室に集った棋士も、名人に遅れてその手の真意に気付き、思わず身震いする棋士まで現れるほどだった。棋士達の多くは、その手に恐怖したのだ。この極限の状態で、名人の放った妙手に対して、このような返し手を放てる清滝鋼介という棋士に恐怖したのだ。

 

名人は小考の後、受けの選択を取った。鋼介のように攻めに転じるための受けでは無い。純粋なる受け。それは、名人が自身の劣勢を認めたに他ならない。その手を受けて、鋼介は一気に攻めかかる。自身が描いた勝利への道筋そのままに手を進めていく。攻める鋼介。受ける名人。誰の目から見ても、どちらが優勢かは一目瞭然だった。これで勝敗は決した。この対局を見守る全ての人々はそう思っていた。鋼介でさえも。鋼介は手を緩めること無く、名人玉に攻めかかっていく。そして、遂に名人を追い詰める、渾身の一手を放った。まだ詰めろもかかっていない。しかし、それでも十分な一手だった。ここで、名人が長考に入る。ここで投了してもおかしくないような状況。しかし、名人は投了せずに長考に入った。長く、深く考える。やがて、記録係が時間切れを伝え、一分将棋に入ってからも考える。長く、長く考えて、そして遂に、名人が手を動かした。静かに駒を掴み、移動させる。駒を掴むその右手は……震えていた。

 

「……な!?」

 

鋼介が思わず声を出す。名人が放った手に、驚愕する。名人が放った手、それは受けの一手だった。しかし、先ほどまでのように純粋に受けるためだけに指された手ではない。これは、助走だ。鋼介と同じように、名人も攻めに向けた助走を行ったのだ。それはまるで、リレーのような対局だった。対局相手であるはずの鋼介からバトンを受け取り、今度は名人がゴールへと向けて直走(ひたはし)る。攻守交代だ。お見事としか言いようのない、これ以上の無い逆転手だった。だが、まだ対局が終わったわけではない。鋼介は、必死になって名人に食らいついていった。しかし、時間が無い。一分将棋では、流石に食らいつくにも限界があった。

 

「攻め急いでもうたんは、ワシも同じやったか」

 

後悔の言葉を口にする鋼介。対局は既に、勝敗を決し、形作りへと入っていた。一手一手を指し進めながら、鋼介は今局の反省を脳内で行っていた。あそこをあぁしておけば、ここはこう指しておけば。あぁ、あの手を指す前に戻して欲しい。しかし、棋士に待ったは許されない。無情にも、対局は着実に一手一手進んでいく。

 

「参りました」

 

そして、鋼介が投了を告げたことにより、対局は幕を閉じた。こうして、夜明け近くにまで続いた激闘の末に、新たな名人が決まった。その後感想戦を終えると鋼介は、名残惜しそうに上座から立ち上がったのだった。またいつか必ず、この座を取り戻すと誓って。

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠!」

 

感想戦を終えて、対局室から出てきた師匠を、俺たち弟子三人は出迎えた。本当に、名人戦の名にふさわしい、レベルの高い名局だった。だけど、師匠は負けてしまった。あと一歩の所で、勝利の女神は師匠から離れていってしまった。

 

「おぉ、銀子、八一、桂香。こんな時間まで起きとってくれたんか。すまんな。ワシ、負けてもうたわ。今日からは名人やなくて、ただの九段や。お前らも、名人の弟子やなくて、九段の弟子になってもうたわ。本当にすまん」

 

「そんなことどうでもいいわよ」

 

「うん。どうでもいい」

 

「だって俺たち名人とか九段とか関係無く、清滝鋼介の弟子なんですから!」

 

「お前達……おおきにな。ほんま、おおきに。せやけど、ワシもこのまま退くつもりはないで。後、三回名人にならんなあかんからな」

 

後三回名人になる。その意味がわからない俺たちじゃ無い。師匠はつまり、棋界の高みに名を刻むと言っているのだ。

 

「銀子、八一、桂香、ワシはな」

 

そして師匠は俺たちに、こう言ったのだった。夢見る少年のような無邪気な笑顔で、こう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「永世名人になりたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿が遅くなってしまい本当に申し訳ございません
三月が年度末ということもあり、単純に仕事が忙しかったというのもありますが、一番の理由は別にあったりします
某競走馬擬人化ゲームにドハマリしてしまいました(白眼
もう、執筆時間や諸々犠牲にして育成に力入れてましたよ
お陰様で、因子厳選にある程度区切りをつけれたので、執筆再開です
次は、もっと早く投稿できるようにがんばります!
とはいえ、最近某狩猟ゲームもやってるわけですが(白眼
ま、まぁ完結まで頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。