この手を離さない 作:八銀はジャスティス
今作はpixiv様にも単体作品として投稿しております
合い言葉は、八銀はジャスティス
「えっと……」
戸惑うような俺の声が、つい漏れてしまう。どうして、こんなことになっているのかわからない。俺の目の前には異質な雰囲気を放つ何かが置かれている。本当に、どうしてこんなことになっているんだ?わからない。目の前のこの存在が、ここにある理由がわからない。俺は、この物体に関して何か忘れてしまっているのだろうか?もしかしたら、そうなのかもしれない。俺は、忘れている記憶を呼び起こそうと、記憶の海へとダイブしていった。
その日俺は、朝から桂香さんに呼ばれ、師匠の家に行っていた。急に呼び出すからどんな面倒事かと思えば、ただ重たい荷物を運ぶのを手伝って欲しいだけらしい。それならばお安いご用だと、パッパと片付けて、桂香さんと談笑に耽っていた。今日という日が重大な日だったため、俺は少しの期待を込めて、桂香さんとの時間を過ごしていた。今日この日、俺は年を一つ重ねた。つまり、今日は俺の誕生日だ。別に催促するつもりは無いけど、それでも何かを期待してしまう。だけど、桂香さんからは一切、それに関する話題は出てこなかった。
あまり自分から言いたくは無かったけど、忘れられてるなら忘れられてるで嫌だったので、「桂香さん、今日何の日か忘れてない?」と踏み込んで聞いてみた。すると、桂香さんはどうやら思い出してくれたらしい。何かを思い出したように、手を胸の前で叩き合わせる。そして、今日という日が何の日なのかを口にした。
「そうだわ!今日は洗濯機の日だったわ!」
そう。今日は洗濯機の日だ。今日はお洗濯するには最高の良いお天気……ってナニソレ!?初めて聞いたんですけど!?いやいや、俺が聞きたいのはそんなことじゃない。もっと大事なことを忘れてない?俺は更に踏み込んで、「そうじゃなくて、誰かの誕生日じゃなかったっけ?」と桂香さんに聞いてみた。すると桂香さんは、またも何かを思い出したかのように、胸の前で手を叩き合わせた。その様子を見て、なんだか○の錬金術師みたいだなと思ってしまう。きっと桂香さんは胸の錬金術師だ。それはともかく、ついに思い出したようで、桂香さんが、誰の誕生日なのかを口にした。
「そうだわ!今日はき○さん○んさんの誕生日だわ!」
そう。今日は○んさんぎ○さんの誕生日だ。昔CMを切っ掛けに一躍有名になったご長寿双子。残念だけど、俺が物心つく頃にはもう亡くなられてたんだよなー……ってちっがーう!え!?俺あの双子さんと同じ誕生日だったの!?初めて知ったんだけど!?……それにしても、桂香さん、俺の誕生日よりも先にその方達の誕生日が出てくるって、どうなってるの?割とショックなんですけど……
「あ!いっけない!私これからお出かけしないといけないんだったわ!」
「あ、じゃあ俺も帰るよ。……そうだな。今日は帰ってもやることないし、今から会館にでも顔出そうかな」
会館になら、俺の誕生日を憶えてくれてる人がいるかもしれない。今日は師匠も会館に用事があって行ってるらしいし、最悪師匠にでもいいから祝ってもらおう。……こんな日に限って、なんでか銀子ちゃんとは朝から連絡がつかないんだよなー。まさか、銀子ちゃんも俺の誕生日を忘れてるなんて言わないよね?まさか、彼氏の誕生日忘れてるなんて……考えてたら悲しくなってきた。銀子ちゃんに会いたいな。会館に来てるかな?
「ダメダメ!八一君は絶対に真っ直ぐ家に帰って!」
会館に寄り道しようかと思っていたのだけれど、そう口にすると桂香さんに凄い勢いで詰め寄られた。え?なんで?家に帰っても何もすることないのに。
「え?なんで?」
「えっと……そう!八一君宛に昨日宅配便を送ったの!それが今日届くはずだから、家に居て受け取って!」
え?桂香さんが俺に宅配便?……なんだちゃんとプレゼント用意してくれてたのかー。もしかしたらサプライズだったのかな?俺を驚かせるために、荷物が届くまで黙ってるつもりだったのかな?そうだったのかー。だとしたら、俺のミスだな。桂香さんに忘れられてるかもと思って躍起になっちゃってたよ。気が利かなくてごめんね。だとしたら、ここで俺が取る選択肢は一つだ。
「わかった!直ぐに帰るよ」
「えぇ!楽しんできてね!」
そう言って俺は、急ぎ足で清滝家を後にした。……でも桂香さん、楽しんできてって、どういう意味なの?
清滝家を出た俺は、一目散に家に帰ってきた。桂香さんが俺に何を贈ってくれたのかと、楽しく想像しながらアパートの階段を駆け上がり、2階にある我が部屋へと辿り着く。イソイソと部屋の鍵を取り出し、鍵を開ける。……開けようとした。しかし、俺は結局鍵を開けなかった。
「……開いてる?」
そう。何故か朝家を出たときにはちゃんと閉めたはずの鍵が開いていたのだ。実は閉め忘れていたのかと思い、朝家を出たときの記憶を辿る。けど確かに、俺には朝鍵を閉めた記憶があった。まさか、空き巣でも入った?その可能性もあるかもしれない。俺は警戒しながら、徐に扉を開いた。玄関から見る限りは、誰の姿も見えない。荒らされた形跡も見当たらない。空き巣では無かったのだろうか?
「よかった……空き巣ならどうしようかと思ったよ……」
俺は安心して、思わずそう口にする。すると、だ。奥の部屋から、ガタッと物音が聞こえてきたのだ。やっぱり、誰かいた!俺の声に反応したらしい。音の発信源は和室のようだ。ここは、警察を呼ぶべきだろうか?でも奥の和室には、俺の大事な大事な七寸盤が保管してある。あれに何かあってからじゃ遅い!警察が来るのなんて待ってられない。そう判断し、俺は恐る恐る和室へと向かう。和室の前まで着いた。今は全く物音はしていない。しかし、確実に誰かがいるのだろう。先ほどの物音は、決して幻聴などでは無いはずだ。正直、怖い。だけど、いつまでもジッとしているわけにはいかない。俺は、気を落ち着かせるために、三回ほど深呼吸を繰り返す。そして、意を決して一息に和室内へと飛び込んだ!
「……え?」
しかし、そこには誰の姿も無かった。少なくとも、人の姿は無かった。人の姿は。代わりにあったのは、巨大な箱だ。部屋の中央に、巨大な箱が置かれている。俺でも中にスッポリ入れそうなぐらい、巨大な箱だ。箱の姿形からして、おそらくプレゼント箱だろう。そんな、何故こんなところにあるのかもわからないような物体が、和室の中央に鎮座していた。
「えっと……」
思わず、戸惑うような声が漏れてしまう。それが、冒頭の、つまり今現在の状況だ。朝からの記憶を呼び戻して、もしかしてこれが桂香さんからの贈り物?と思ったが、流石にそれは無いだろう。こんなもの、桂香さんが贈ってくるとは思えないし、連絡も無く勝手に部屋の中に置かれてるのも不自然だ。じゃあ、一体誰が?あい……は関東に籍を移して帰ってきていない。今日も確か関東で対局が入っているはずだし、その線は無いだろう。この前関東に対局で行った際に、前もってプレゼントを貰っていた。ありがとうあい!じゃあ天衣……いや、天衣も今は会えないんだった。なんでも、夜叉神家総出で海外旅行に行ってるらしい。夏といえばマイナビ女子オープンの予選があるが、天衣はシードで本戦トーナメントからだし、対局予定はしばらく無いらしい。だからこそ長期の旅行に行くことにしたらしい。気楽な物だ。天衣も、旅行に行く前日に、態々家まで来てプレゼントをくれた。ありがとう天衣お嬢様!……じゃあ残るは銀子ちゃん?銀子ちゃんとは結局、朝から全く連絡を取れていない。電話には出ないし、送ったメッセージには既読も付かない。本当に何をしてるんだろう?この箱を持ち込んだ犯人が銀子ちゃんとは限らない。だけど、正直他に心当たりが無い。……供御飯さんとか、祭神とか、いるにはいるけど、この際割愛させていただく。特に祭神が持ち込んだとか、考えたくも無い。それはともかく、とりあえずもう一度銀子ちゃんに連絡を取ってみよう。そう思い立ち、俺は無料通話アプリで、銀子ちゃんに通話をかけた。
ブー、ブー、ブー、ブー
通話をかけると、なんとすぐ近くからマナーモードにしていたと思われる、スマホの振動音が聞こえてきたのだ。その音に驚いたのか、振動音に続いてガタッ、という物音までもが聞こえた。俺も驚きすぎて、ついポカンとなってしまった。この音が意味することは、だ。つまり、つまりだ。この部屋に銀子ちゃんがいる。そういうことだ。だけど、部屋中どこを見渡しても、銀子ちゃんは見当たらない。目に見える場所には。問題は、この音が聞こえる場所だ。中だ。この箱の中から音が聞こえているのだ。……つまりそういうことなのだろう。まさかとは思うし、嘘だろとも思う。だけどきっと、俺の推測は正しいのだろう。それを、今から証明しよう。俺は、箱を開けるために、行動を開始した。だけど開けようにも、どうやって開けるか悩む。普通は上から開けるだろうけど、箱が大きくて、上から開けるのは中々に難しい。箱の高さが、俺の身長ぐらいあるんだから。何か他に開ける方法は無いのだろうか?そう思い、箱の周りを歩きながら探ってみる。すると一面だけ、箱の横から開閉できる部分を見つけた。そこの面が、取り外せるようになっているのだ。俺は早速、その面を取り外しにかかる。俺が今しようとしていることに気づいたのだろう。箱の中から聞こえる物音は段々激しく、慌ただしくなってきた。だけど俺はそんなことに構わず、その面を一気に取り外す。取り外して、遂に中の様子が露わになった。そこには、俺の推測通りに、銀子ちゃんがいたのだ。銀子ちゃんは、箱の中で縮こまって、座り込んでいた。その手には、、未だに振動を続けるスマホと、もう片方の手には今話題のハンディファンが握られていて、銀子ちゃんに風を送り続けている。そして銀子ちゃんの服装は、いつもと変わらないセーラー服なのだけれど、明らかにおかしい部分がある。赤いリボンが巻かれているのだ。銀子ちゃんが動きにくくならない程度に、体に赤いリボンが巻かれているのだ。そして、若干涙目になりながら、俺のことを見つめていた。……いや、睨み付けていた。迫力は無いけど。
「えっと……銀子ちゃん、何してるの?」
「……ぶちこりょしゅじょ……われぇ……!」
理不尽だ。耳まで真っ赤にして涙目でそう言う銀子ちゃんは、それはもう広辞苑で調べても形容できる言葉が見つからないであろうほどに可愛いけど、理不尽だった。俺、何か悪いことしたかな?してないと思うんだけど、なんでぶちこりょしゃれないといけないんだ。理不尽でしょ。
「えっと、それで本当に何してるの?」
「……プレゼント」
「え?」
「八一、今日誕生日でしょ?だから、その、プレゼント……」
銀子ちゃんはそう言うと、耳まで真っ赤にして、目も合わせられないぐらい恥ずかしがりながらも、両手を広げて、まるで俺を迎え入れるかのようなポーズをしてくる。つまり、あれか?これが、俺に贈る誕生日プレゼントだということか?状況からして、銀子ちゃん自身が誕生日プレゼントだということか?いや、それはもうね、本当に本当に最高のプレゼントなんだけどさ、嬉しくてテンションが振り切れちゃいそうなほど最高のプレゼントなんだけどさ、なんで?
「……もちろん銀子ちゃんがプレゼントとしてもらえたら、本当に最高だと思うんだけどさ、急にどうしたの?」
「……八一に、今までずっと、毎年誕生日プレゼント贈ってきてたでしょ?」
「うんそうだね。毎年ありがとう」
「どういたしまして。……それで、毎年色々と考えて、選んで贈ってたけど、その、贈るもののネタが切れたというか、今年は何を贈るか全然決まらなくて……」
「そんなの、気にせずなんでも贈ってくれたらいいのに」
「だ、だけど!今年は、その、八一が、か、かかか、か、かれちになってからの初めての誕生日だし、い、今までよりも更に良い贈り物をしないとって思って……」
そういえばそうだった。俺と銀子ちゃんが付き合い始めたのは去年の九月。あれからもうすぐ一年になるのかと、少し感慨深くなってきた。付き合って一年記念に、何か特別な思い出に残るようなことしてみたいね。来月は銀子ちゃんの誕生日もあるし。
「それで、桂香さんに相談してみたら、自分を贈ってみたら?って。男は皆それで悦ぶ生き物だからって」
桂香さん何を言ってくれてやがりますのおおおおおおおおおおおおおおおおお!
確かに嬉しい!嬉しいよ!だけど、だからって銀子ちゃんになんてことやらせてるの!グッジョブだよ!
……何故だろうか。何故か、お前の惚気になんか付き合ってられるかよ!相談とか良いながら彼氏自慢を惚気全開で聞かされてるだけじゃねーか!適当にイチャコラやっとけや!とか言いながら缶チューハイを自棄飲みしてる桂香さんの姿が思い浮かんだ。何故だろうか。
「それはもちろん、嬉しいけどさ、でも無理をしてそんなことしなくていいんだよ?」
「……別に無理なんかしてない」
相変わらず耳まで真っ赤にした状態で何を言うか。そんな状態で言われても、全く説得力が無いよ。
「……じゃあこうしよっか?今から俺へのプレゼントを探しに行かない?商店街とか行けば、良い物に出会えるかもしれないし」
俺へのプレゼントを、俺が一緒に選ぶのはおかしいかもしれないけど、この際そんなことは気にしない。このままだと、銀子ちゃんがなんか変な方向に暴走しかねない気がしてきたし、どこかに連れ出す方が良いかもしれない。……暴走したならしてくれたで良いかもしれないけど。
「外は……」
しかし、俺の提案に銀子ちゃんが愚図る。外の気温が原因だろう。今日はとにかく暑い。猛暑日だ。清滝家からここまで帰ってくるのも大変だった。……それは走って帰ってきた俺も悪いけど。今はシャワーを浴びたい気分だ。俺、汗臭くないかな?大丈夫?銀子ちゃんの前なんだけど?……まぁそれは今は置いといて、とにかく暑い。さっきまでは箱に気を取られてて気づかなかったけど、エアコンが起動していた。おそらく、銀子ちゃんがあらかじめ付けていたのだろう。それに加えて、ハンディファンで相変わらず風を浴びている。よっぽど暑いらしい。銀子ちゃんは元々暑さに弱いから、仕方が無い。雪のように白い肌が溶けちゃったら大変だ。外に出るのは諦めよう。
「それじゃ、今日は家で過ごそうか。……そうだ銀子ちゃん、お昼はもう食べた?」
時間は既に二時に迫っている。昼食を食べるのにも、少し遅い時間だ。俺はまだ、昼食を食べれずにいた。朝から清滝家に呼び出されて、清滝家を出たときには既に昼を回っていた。途中で食べてきても良かったんだけど、桂香さんからの贈り物が気になって、一目散に家に帰ってきたんだから仕方ない。俺は悪くねぇ!
「まだだけど」
「そっか。俺もまだなんだよね」
「……じゃあ、私が何か作って」
「さぁて!それじゃあ出前でも頼もうかなぁ!何がいいかなぁ!」
危ない危ない。銀子ちゃんに料理を作らせるわけにはいかない。銀子ちゃんには不服そうな顔をされたけど、それは仕方ない。命には代えられないのだから。
その後俺は銀子ちゃんと相談して、冷やし中華を出前で頼むことにした。暑い夏には無性に食べたくなるよね。注文をすると、直ぐに配達員が家まで届けてくれる。暑い夏はやっぱり出前がありがたい。配達員の皆様、こんな暑い中ご苦労様です。
「それじゃ、食べようか」
そして俺たちは少し遅い昼飯を頂いた。ここのお店の冷やし中華は本当に美味しい。夏になると、毎年頼んでいる。酢もしっかり利いていて、夏ばて予防にも最適だ。俺と銀子ちゃんは、黙々と冷やし中華を食べ進める。……食べ進めているのだけれど、どうにも銀子ちゃんのことが気になってしまう。少しずつ麺を啜って食べてるんだけど、その、その麺を啜る唇が、なんというか、くるものがある。妙な色気を発してるというか、どうも気になって仕方ない。そして、封じ手のことを俺に思い出させて仕方ない。そして銀子ちゃんもおそらく俺の目線に気づいたのだろう。食べるのを一旦中断して、口元を手で隠してきた。そして、こう言ってきた。
「何見てるのよ……………………えっち」
うおおおおおおおおおおおおおい!
頬を赤らめて、口元を隠しながら恥ずかしそうにそう言う銀子ちゃん、そっちの方がえっちですけどおおおおおお!
思わず理性を投げ捨てそうになってしまった。銀子エッロぉぉぉぉぉ!!
「ううん!さて、さっさと食べちゃわないとな!」
俺は、あからさまに咳払いをして、食事に戻る。本当にこのままだと、俺が暴走してしまうところだった。危ない危ない。なんだか銀子ちゃんが不服そうな顔をしてる気もするけど、気にしない。今は銀子ちゃんを気に掛けている余裕が無い。今銀子ちゃんのことを意識してしまうと、本当に今度こそ理性がおさらばしてしまいそうだ。
そして俺たちは、その後静かに冷やし中華を食べ終える。さて、これからどうするか。相変わらず外は猛暑日だ。このままだと、今日は銀子ちゃんを連れて外に出ることはできないだろう。だったら、家の中でできることをやればいい。そして、俺たちがそのやることに困ることは絶対にない。
「じゃ、指そうか」
「……そうね」
そして俺たちは、和室から巨大な箱を放り出し、盤と駒を用意した。……でもこんなに大きな箱、銀子ちゃんどうやって運んできたんだろう?まぁ、それは今はいいや。とにかく将棋だ!俺たちは、準備を終えると、直ぐに将棋を指し始めた。もう、過去に何万局指したかも、正確な数字までは思い出せない。それほどまでに膨大な時間、俺は銀子ちゃんとこうやって、盤を挟んで向かい合ってきた。時には新幹線の中で、時にはバスの中で、盤を挟まず脳内の情報を共有して指してもきた。俺たちにとって、将棋は人生そのものだったから、そんな時間が当たり前の物になっていた。俺たちにとって、本当に大事な、最高の時間。
「……一日遅くなっちゃうけど、明日は絶対良い物見つけて、贈るから」
「え?何が?
「だから、その、プレゼント……」
あぁ、そうか。そういえばそんな話だったんだ。この時間が楽しすぎて忘れてたよ。だけど、プレゼントか。そうだな。
「……そんなのもういいよ。もう、貰っちゃったから」
「え?私が八一に?」
「そう。銀子ちゃんが俺に……とびきり最高のプレゼントをね」
本当に、最高のプレゼントだ。これ以上の贅沢は言えない最高のプレゼントだ。こうやって、銀子ちゃんと二人で過ごして、二人で将棋を指す時間、これこそが、俺にとっても、最高のプレゼントだった。俺にとっても。
「……八一、お誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう」
銀子ちゃんも、そのことを察してくれたのだろう。それだけ言うと、対局に集中しはじめた。ここからは気が抜けないな。俺も意識を盤へと落とし込んでいく。銀子ちゃんとこうやって将棋を指す時間が、本当に愛おしい。俺にとっても、本当に幸せな時間だ。いつまでも、幾つになっても、ずっとこうやって、二人で将棋を指して生きたい。そう心から思う、静かな誕生日だった。
静かな室内に、二人が奏でる駒音だけが鳴り響くのだった。強く、優しく、いつまでも末永く鳴り響くのだった。
あのご長寿双子様の誕生日が八一と同じって知ってた人いますかね?
因みに、お姉さんが亡くなられたのが八一の生年と同じ2000年
妹さんが亡くなられたのが、2001年2月で、年度換算だと八一の生年度と同じ2000年度になります
将棋を連想させるような二人の名前も合わさって、何か運命的な物を感じるのは俺だけでしょうか?
次回から本編に戻ります
銀子ちゃんの誕生日までに三段リーグ編終わらせるぞ!
……終わるのかな?(白目
八銀はジャスティス