この手を離さない   作:八銀はジャスティス

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銀子ちゃんお誕生日おめでとう!

0時投稿したかったけど、ギリギリ間に合いませんでした

今話はpixiv様にも単体作品として同時投稿しております

合い言葉は、八銀はジャスティス


八銀異譜 定められた運命

「八一~飲んどるか~?もっとお前も飲まんか~い!」

 

「師匠、俺は十分飲んでますって」

 

「よう八一。今日は特別に、お前に飛鳥の秘蔵写真を見せてやるよ。お前の勝利を祝して特別にだからな」

 

「いや、生石さん、別に見せなくてもいいですよ」

 

「お前飛鳥の秘蔵写真が見れねーってのか!?」

 

「あんたもめんどくさい酔っ払いだな!?」

 

その会場は、盛大な盛り上がりを見せていた。名だたる棋士や、記者達が集まり、飲めや食えやの大騒ぎだ。そして、この大騒ぎ、その主役は俺、九頭竜八一だ。

今日この会場では、帝位戦、その開幕局二日目が行われていた。十八歳で帝位を獲得した俺は、二十二歳になった今年まで、連続で帝位を防衛し続けている。今年防衛に成功すれば、5期連続帝位となる。

5期連続。それには大きな意味合いが含まれている。その意味合いとは、永世位だ。タイトルには、棋界に永久に名前を残す証、永世位というものが定められている。棋士にとって最上級の誉れであり、そこに至れる棋士は、タイトルを獲得できる棋士の中でも、ほんの一握りだ。長い将棋の歴史の中で、ほんの数人しかその栄光に至っていないことが、その凄みを如実に語っている。

タイトル戦により、獲得条件の異なるこの称号。永世帝位の獲得条件は、通算10期獲得か、連続5期獲得の(いず)れかだ。つまり、今年帝位を防衛できれば、俺は連続5期獲得の条件を達成し、永世位に至るのだ。

 

その開幕局は、文句なしの俺の快勝譜で終局を迎えた。振り駒の結果、後手番を引き当てた俺は、この対局のために用意してきたであろう相手の研究を、更に上の研究でねじ伏せた。序盤から終始圧倒し、二日目の、3時のおやつを注文する前に、相手の投了宣言を聞くことになった。おやつを食べたかっただけに、少し残念だ。感想戦をするような局面も少なく、手短に終わらせ、そして夕方からはもう、この大騒ぎが始まっていた。地元大阪での開幕局、しかも永世位の懸かった重大な開幕局での完勝ということもあり、まるでもう既に防衛を果たしたかのような盛り上がり方だった。既に何時間も騒いでいるというのに、全く勢いが衰えるところを知らない。

 

「それにしても、珍しいですね。生石さん、あまり人の対局に顔出さないでしょ?」

 

「そうだな。だが、お前は一応だが、ほんの少しの間でも俺の弟子だったんだ。弟子の晴れ舞台を拝みにくる甲斐性ぐらいあってもいいだろう?」

 

「なんやてぇ?生石くんに八一はやらへんからな!?」

 

「清滝さん、あんた飲み過ぎじゃないか?」

 

「なんのこれしき!まだまだ若いもんには負けへんで!」

 

「はいはい。お父さんはあっちでお酒飲んでましょうね」

 

そう言って、桂香さんは師匠を引きずっていった。師匠にお酒と言ってコップを渡しているが、その中身が只の水であることを俺は知っている。それを、師匠は気にせずに飲む。その姿は、どこからどう見ても、只の酔っ払いだった。

 

「フハハハハハハ!流石は我が永遠のライバル、ドラゲキンだ!その首、我が獲りにいくからな!今のうちに、洗っておくがよい!」

 

そして、次に俺の所にやってきたのは歩夢だ。俺の永遠のライバル。歩夢は、今期の竜王戦挑戦者に既に決まっている。竜王戦も、俺はずっと防衛し続けている。16歳で初獲得してから、今期で7期連続が懸かってる。竜王戦の永世位獲得条件は、通算7期か、連続5期。連続5期を達成している俺は、既に永世竜王であるわけだ。つまり、この帝位戦で防衛を成功すれば、永世二冠となるわけだ。

 

「歩夢、お前とのタイトル戦も近いって言うのに、お前は相変わらずなんだな」

 

普通、棋士というのは、対局が近づけば、親しい間柄の人間であっても、話そうともしないものなのだ。しかし、歩夢はこうやって俺のタイトル戦にまで駆けつけ、祝勝会にまで参加してくれている。

……尤も、昔から歩夢はこういう奴だっていうのは知っているのだが。急に話さなくなる歩夢とか、想像ができない。こいつは、対局中だって賑やかな奴なんだから。

 

「気にするな。我達の仲だろう?尤も、お前がこの程度のことで対局に支障が出るというのであれば、距離を置くが?」

 

「それはやめてくれ。逆に調子が狂う」

 

「フッ、ではいつも通り行かせてもらおう。我らしくな」

 

「あぁ。俺も、俺らしく受けるよ」

 

歩夢が言ういつも通り。それは間違いなく、俺に接する態度だけを指した言葉では無い。対局のことも指しているはずだ。歩夢は、変わらずに自分の棋風を貫き、俺の首を取ると告げているのだ。だから、俺も俺らしい将棋で受けて立つ。最後に笑っているのは、俺であると信じて。

 

「八一君、そろそろ行った方がいいんじゃない?」

 

歩夢とそうやって互いの戦意を高め合っている時だった。桂香さんが、そう俺に告げてきた。桂香さんにそう言われ、時計を見る。

……確かに、そろそろ出ないとマズイ時間だ。桂香さんに言われるまで、時間を全く気にしていなかった。俺も、酔いが回ってしまってるのかもしれない。

 

「そうだね。俺そろそろ行くよ。ありがとう桂香さん」

 

「なんや、八一。どこにいくねん?夜はまだまだこれからやろがい!まだまだ飲むで!」

 

「すいません師匠。家で銀子が待ってるんで」

 

「銀子ぉ?そんなん待たしといたらええやろ!今日は目出度い日なんや!もっと飲むで!」

 

「……師匠、今日は何月何日でしたっけ?」

 

「なんや?まさかワシが酔うてるとでも思うてるんか?今日は九月八日やろ!どや?まだワシは酔うとらんで!」

 

「じゃあ、明日は何月何日ですか?」

 

「なんやねんさっきから。そんなん、九月八日の翌日なんやから、九月九……日……」

 

その日付を口にして、師匠は固まってしまった。どうやら、俺が伝えたいことが伝わったらしい。もしかしたら、本当にそこまで酔っていないのかもしれない。

……酒と思い込んで水をガブガブ飲んでる時点で泥酔してるのは間違いないだろうが。

ともかく、九月九日だ。その九月九日というのが重要なのだ。何故ならその日は……

 

「確か、銀子ちゃんの誕生日だったな」

 

そう、生石さんの言うとおり、俺の妻銀子の誕生日だ。銀子も会場まで来ていたのだけれど、先に帰ってお祝いの準備をしてもらっている。主役に準備をさせるのもどうかと思うけど、流石にこの場を俺が離れるのはマズイ。事情を言って早めに切り上げるつもりだけれど、それでもギリギリまでは付き合っておかないといけない。大人って辛い。銀子ちゃんも事情はちゃんと理解してくれているため、酔っ払いに絡まれる前に早めに切り上げてもらっている。

 

「フッ、女を待たせるのは騎士道に反するぞ?早く行ってやれ」

 

「そうだな。流石に銀子ちゃんを一人にはできないからな」

 

「わかったわ。それならしゃーない。はよ行ったり」

 

「フフッ、八一君、楽しんできてね」

 

「はい、また明日の夜、銀子と師匠の家に顔出しますね」

 

そして俺は、会場を後にした。銀子ちゃんをあまり待たせるわけにはいかない。俺は急ぎ、タクシーを捕まえ飛び乗る。そして目的地を告げると、タクシーは直ぐに動き出した。俺はそのタクシーが目的地である自宅に着くまで、まだかまだかと、ソワソワしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にギリギリだった。現在時刻は23時55分。日付が変わるまで、後五分しかない。だけど、間に合った。俺は急ぎ運転手に運賃を支払うと、これまた急ぎ家へ飛び込んだ。結婚を機に購入した一軒家。鍵はやはり開いていた。先に帰っている住人がいるのだから当然だ。その住人を求めて、急ぎリビングへと向かう。そこに、目的の人物はちゃんと居た。明かりの付いていない部屋。机に置かれたケーキに刺さったロウソクの仄かな灯りが、椅子に腰掛けた銀子の存在を俺に報せてくれていた。

 

「遅い」

 

「ごめんごめん。中々解放してもらえなくて」

 

本当は嘘だ。実際には、桂香さんに言われるまで時間のことを忘れていたなんて言えない。もし口にしたらぶちころされてしまう。

 

「ふ-ん、てっきり、時間のことなんて忘れてるのかと思ってたんだけど」

 

「……」

 

鋭い。図星だった。おそらく、表情にも出てしまっていただろう。銀子が、準備万端に電気を消してくれててよかった。御陰で、銀子に俺の顔はハッキリと見えていないだろう。きっと、表情の変化まではわからなかったはずだ。

……わからなかったよね?流石にロウソクの灯りだと、そこまではわからないと思うんだけど、大丈夫だよね?場合によっては俺の命に関わるからね?

 

「ま、まぁ遅くなったのは悪かったよ。準備もしてもらってありがとう。本当なら、俺がするべきなのにね」

 

「そんなのいいわよ。事情が事情だし。私は、こうやって二人きりでお祝いしてもらえるだけでいいから」

 

銀子の様子を見るに、どうやら本当に見えていなかったようだ。良かった良かった。俺は安堵した内心を悟られないように努め、そして丁度良い時間であることを銀子に伝えた。

 

「さぁ、後十数秒だよ」

 

「……うん」

 

「後10秒、9,8,7,6,5,4,3,2,1……ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディアギンコ-、ハッピバースデートゥーユー!」

 

俺がお決まりの誕生日ソングを歌い終わると、銀子が息を吹きかけ、ロウソクを吹き消す……しかし、勢いが足らずに、数本が火の灯ったまま残ってしまった。銀子は、残りのロウソクを消そうと息を吹きかけようとして、しかし途中で止めた。

 

「どうしたの?」

 

「やっぱり、残りは八一が消して」

 

「え?俺が?」

 

「うん、幸せのお裾分け」

 

つまり銀子は、自分に向けられた祝福を、俺と共有したいらしい。なんとも可愛らしい提案だった。俺としては、主役である銀子に全てを吹き消してもらうのが一番良いとは思う。でも、他でも無い銀子(しゅやく)自身がそう提案しているのだ。ならば、俺に断る理由は無い。

 

「わかったよ。それじゃ、消すよ」

 

そう言って、俺は残りのロウソクを、一息で消しきった。

 

「……お誕生日おめでとう、銀子」

 

ロウソクの火を消しきってから、消した者がそのまま祝辞を告げる。なんとも、滑稽に映る一幕になってしまった。銀子からもそう見えたのだろう。

 

「ぷっ、フフフ、あ、ありがとう……」

 

笑うのを堪えながら、俺にお礼を言ってきた。自分でやらせておきながら、酷い話だ。

 

「やらせておきながら、笑うのってひどくない?」

 

「ふ、フフフ……ご、ごめん、でも八一が、気恥ずかしそうに言うから、つい……」

 

確かに、気恥ずかしく感じてしまったことは否定しない。

想像してみてほしい。誕生日会で、祝われる人ではなく、祝う人がロウソクを消し、そして顔を上げて祝辞を述べる姿を。明らかにおかしくないだろうか?そんな姿を想像して、実際に行動に移して、気恥ずかしくなってしまっても、仕方がないと思う。そして、そんな姿が端から見て、面白いであろうことも認めざるを得ない。俺はそんな気恥ずかしさを誤魔化すかのように、急ぎ部屋の電気を付けに向かい、この際気にせず、次の段階へと話を持っていくことにした。

 

「銀子、はいこれ、プレゼント」

 

それは、小さな箱だった。包装こそ綺麗にラッピングされているが、本当に小さな箱だった。このプレゼントを俺は、帝位戦のずっと前から用意していた。会場にも持ち込んでいた。流石に、ずっと割り振られた自室に保管してあったが。

 

「ありがとう。空けていい?」

 

「うん、どうぞ」

 

銀子が、箱の中身を確認する。それは、髪飾りだった。雪の結晶を象った髪飾りだった。

 

「八一……ありがとう」

 

「うん、どういたしまして」

 

三度目だ。俺がその形状の髪飾りを彼女に贈ったのは、これで三度目だ。一度目は、彼女が初めて女流タイトルを取った時。ただあれは、俺達にとって苦い記憶でもあった。二人の手が、一度離れた時のことだ。そして二度目は、銀子の15歳の誕生日の時。しかしこれも、まぁ、苦い思い出になっていたりする。あの時の俺よ。どうしてあんな失敗をしてしまったんだ。因みにあの時、銀子にはあの後ちゃんと髪飾りを渡し、パンツはちゃんとシャルちゃんにあげた。その時の、皆の冷ややかな視線は忘れない。だけど同時に、シャルちゃんの嬉しそうな笑顔も忘れない。いくら冷ややかな視線を重ねたって、シャルちゃんの笑顔一つに勝てないのだ。シャルちゃんマジ天使。……それはさておき。

 

「あの、銀子。なんで俺の足を踏んでグリグリしてるの?」

 

「今、他の女、もといJSのこと考えてた」

 

鋭い。なんだか、銀子の鋭さが日に日に増していく気がする。だけど成長しているのは銀子だけではない。俺だって成長しているのだ。

 

「うん。確かに他の女の子のことを考えてたのは事実だけど……」

 

「事実だけど?」

 

「他のどんな女の子も、やっぱり誰も銀子の魅力には勝てないな、って考えてた」

 

「ふにゃっ!?そ、そんなこと言っても、わ、私は誤魔化せないわよ」

 

そう言う銀子の耳元に、俺は口を近づけ、止めの一撃を囁いた。

 

「本当だよ。誰も銀子には勝てない。俺が世界で唯一愛してるのは……銀子だけだよ」

 

「ひゃっ!?え?えぇ!?ふ、ふみゃ、ふ、ふ、ふみゅぅ……」

 

俺の囁きを聞いて、銀子は煙が出そうな程に顔を真っ赤にして、目を回していた。ちょろい。

銀子は、結婚してからも初心(ウブ)なのは変わっていない。対して俺は、流石に色々と慣れて、耐性も付いた。この程度のことを耳元で囁くぐらいで恥ずかしがったりなんかしない。さっきのおめでとうの時とは話が違うのだ。まぁ、この手段を使った場合、銀子は最低でも再起動に10分程かかる。その間に、ケーキを切り分けてしまおう。俺は、キッチンから包丁を取ってきて、ケーキを綺麗に六等分に切り分けた。切り分けて数分が経つと、銀子は無事再起動が終わったらしい。目覚めた銀子の前に、切り分けたケーキを一欠片、皿に取り分けてフォークと一緒に差し出した。

 

「あ、ありがとう。あれ?私、何してたんだっけ?」

 

「疲れてたんじゃない?十分ほどだけど寝ちゃってたよ」

 

どうやら、銀子はさっきまでの記憶があまり無いらしい。これをチャンスと、俺は嘘の記憶を銀子に植え付けておいた。

 

「え?私寝ちゃってた?ごめん」

 

「いいよ。気にしないで」

 

「……あ、髪飾り」

 

そして銀子は、軽く気を失ってる間もずっと握りしめていた髪飾りに気付いた。それに気がつくと、銀子は今付けている髪飾りを外し、新しい髪飾りを手に取った。そして、暫しの間その髪飾りを見つめた後、新たに自身の髪にその飾りを装着した。

 

「どう?」

 

「凄く似合ってるよ」

 

実際には、同じデザインのものを選んで買っているため、以前との違いが俺にはあまりわからない。まぁ、以前の物も、言わずもがな、とても似合っていたので、今の物が似合ってるというのも、間違ってはいないだろう。結論、古いのも新しいのもどちらも似合っているのだ。

これで三度目の贈り物になる髪飾り。だけど、これほど甘い記憶に残りそうなのは、初めてだった。過去の二度がある意味失敗だったこともあり、今回の髪飾りは、俺たちの思い出の1ページに深く刻まれそうだった。

その後も俺たちは、二人の時間を甘受し、享受した。幸せな時間に酔いしれていた。これは、そんな幸せの中の一幕だった。その話になった切欠はなんだっただろうか?本当に大したことのない、些細な切欠だったと思う。

 

「……ねぇ八一。私、凄いことに気付いたかもしれない」

 

「どうしたの急に?」

 

「私の誕生日って九月九日でしょ?」

 

「そうだね。今日は九月九日だね」

 

「九月九日。つまり9と9」

 

「うん。9と9だね。それがどうかした?」

 

「八一、9×9っていくつだっけ?」

 

「9×9?そんなの決まってるじゃん。答えは……あ」

 

そこで俺は、銀子の言おうとしていることに気付いた。9×9、その答えは、81。つまり八一になるのだ。単なる偶然にすぎないだろう。それでも、俺たちにはその偶然が、必然に思えて仕方がなかった。

 

「あはは!凄いねこれ!これってもしかして、俺たちって最初から結ばれる運命だったってことじゃないかな?」

 

「もしかしたらそうだったのかも!何で今まで気付かなかったんだろう?本当に凄い発見よ!」

 

その後も俺たちは、この偶然を発見したことを喜び、運命だと決めつけて笑いあった。あぁそうだ。きっと俺たちは、最初から運命づけられていたのだ。この世に生を受けたその時から、俺たちが出会い、そして結ばれるということは、きっと定められた運命だったのだ。

 

「いやー、笑った笑った」

 

「本当よ。私も笑いすぎて喉が渇いたわ」

 

「あ、だったら何か飲み物取ってくるよ。……そうだ!銀子も今日から二十歳になったんだし、お酒に挑戦してみない?」

 

「……そうね。折角だし、挑戦してみようかな」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

俺は急ぎ冷蔵庫に向かった。俺は、師匠の影響か、血筋なのかはわからないが、酒好きに育った。冷蔵庫には、いつもストックを切らさずに酒が入っている。その中から俺は、自分の分のビールと、銀子用に酎ハイを取り出し、急ぎリビングへと戻った。

 

「おまたせ!」

 

「……うん」

 

「さ、銀子、飲んでみて。飲みやすいように、果実系の酎ハイにしたから。度数も低いし、飲みやすいよ」

 

「……わかったわ。それじゃ、いただきます」

 

そして銀子は、お酒デビューを果たした。まず一口飲み、口の中で転がしてジックリ味わっている。そして、一気に飲み込んだ。

 

「あ、意外と美味しい……か……も……」

 

「銀子?」

 

銀子はお酒を一口飲むと、椅子に座ったまま俯いてしまった。心配になり、立ち上がり銀子に近づく。すると、静かに寝息が聞こえてくる。どうやら、一口飲んだだけで酔いが回り、寝てしまったようだ。ただ寝ているだけだとわかり、俺はホッと息を吐く。そして、いつまでもそのまま寝かせておくわけにもいかないので、抱き上げて、近くのソファに寝かせてあげる。そして、丁度ソファに掛けてあった毛布を、そのまま銀子に掛けてあげた。銀子の寝顔は穏やかで、幸せそうだった。何か、良い夢でも見ているのだろうか?その夢の中に、俺もいたらいいのにな、なんて考えてしまう。俺は、椅子に腰掛け、一人晩酌を始める。つまみはとくに無い。だけど代わりに、最高の肴が目の前にあった。俺は、銀子の寝顔(しあわせ)を肴に、ビールを味わっていた。

 

「美味い」

 

夕方からあれほど飲んでいたというのに、そのビールの味はとにかく美味かった。単に俺が酒好きなだけなのか。それとも、極上の肴を目の前にしているからなのかはわからない。しかし本当に、そのビールの味は、普段飲んでいるものと同じはずなのに、格段に美味く感じた。そんなビールを味わいながら、俺は銀子に告げるのだった。極上の肴の提供者に告げるのだった。俺の、運命の人に、心からの愛を乗せて告げたのだった。

 

「銀子……お誕生日おめでとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




銀子ちゃんお誕生日おめでとう!
実は、過去に本編内でこんなこともあったって触れてるお話です
ぶっちゃけ、9日に間に合わないと思ってた(白眼
えぇ、頑張りましたよ
次回は本編に戻ります
たぶん、しばらく特別編は無いです

八銀はジャスティス
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