第三盧生が幻想入り   作:ヘル・レーベンシュタイン

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ようやく色々とゴタゴタが落ち着いたので無事書き上げることが出来ました....この調子で執筆できるようにしたいものです。
後、次回で佐々木小次郎編は終わりを予定しています。


◆追記◆
12/20
文章が抜けていた部分があったので修正しました。

1/1
一部内容に不備があったため修正しました。


第九話 過去

一陣の風が両者の間を吹き抜ける。剣を鞘に収め、佇むのはクリームヒルト。対して意識を失い、地に伏せるは佐々木小次郎。両者の雌雄は決したと言えるだろう。

 

「ヘルさん!」

 

朱音は声を荒げ、クリームヒルトの方へと駆ける。その後に続く形で霊夢と妖夢も続けて走る。朱音の声に反応し、クリームヒルトは視線だけを向ける。それを不思議に思った朱音は思わず脚を止めた。

 

「....ヘルさん、どうしたの?」

「....」

 

すると、声を出すことなくクリームヒルトも地面へとそのまま倒れた。あまりに不意な出来事に朱音は言葉を失った。

 

「ちょっ、ヘルどうしたのよ!?」

 

霊夢はクリームヒルトの元へと駆け寄り、体を仰向けにして起こす。すると、ボソリとクリームヒルトは呟いた。

 

「....腹が、減った。」

「.....」

「.....」

「.....」

 

そのクリームヒルトのあまりに緊張感のない返答に、3人は言葉を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして.....

 

「家があったのは幸いね、食べ物もあるしこれで大丈夫でしょ。」

「ええ、おそらく佐々木小次郎の自宅でしょうね。一応必要最低限に使わしてもらいましょうか。」

 

霊夢達は森の中にあった家へと入り、まずは小次郎を寝かしつけることにした。容態は至って健康、取り返しのつかない重傷は特に見当たらず、ひとまず応急処置を施した。

そして一方でクリームヒルトは、家の中にある食べ物を集め、別室でそれを彼女へと食べさせることにした。そして現在へと至る。

 

「しかし街に着いた時もそうだけど、よく食べるわよねぇ、アイツ。」

「そうですね、確かによく食べてる印象が付いてしまいました。趣味が食事だったりするのでしょうか?」

「だとしたらアイツ、食費とかヤバそうよね.....一月でどのくらいのお金が吹き飛ぶやら。」

「さて、それは本人のみぞ知るとしか....」

「はい、お茶だよ。」

 

などと霊夢と妖夢はボヤいていた。そして朱音は入れてきたお茶を2人の元へと運んできた。すると、霊夢がボソリと一言呟く。

 

「それにしても、ヘルヘイムにデスサイズねぇ....」

「....霊夢?」

「妖夢、北欧神話って知ってるかしら?」

「いえ、あまり....多少耳に挟んだ程度ですが。」

「そう、じゃあ少し教えてあげる。北欧神話の大神をオーディン、つまりあっちで1番偉い神様のことね。だけど、そんな権力の強い大神ですら一度冥界に堕ちたら、冥界を支配している冥界の主である女神ヘルの許可無しで蘇らせるはできないのよ。」

「なっ!?」

「実際、あっちの神同士での喧嘩の脅し文句で『お前をヘルの冥界にぶち込むぞ』なんてやり取りもあったらしいからね。神にとってもそれほど驚異なところだったということがわかるわ。」

「....つ、つまり?」

「つまり....あいつは人間や妖怪どころか、神だって殺せれる危険な奴ってこと。」

「.....ならば、あのデスサイズも?」

「ええ、あの剣技も神をも殺す死の斬撃現象と言ったところね.....アレを使って全人類を簡単に滅亡させる事だって不可能じゃないでしょうよ。」

 

霊夢の話を聞いて、妖夢と朱音の顔が一気に青ざめていった。改めて振り返ると、自分がとんでもない相手との対戦を挑んだのだと実感したのだろう。

などと妖夢が震えていると、ふと朱音が呟いた。

 

「だけど、ヘルさんは誰も殺していない....それはどうして何だろう?」

「....まあ、見た感じ弾幕ごっこに合わせるために本来の力を抑えている節はあるわね。それでも最善の戦闘はしてるんでしょうけど.....あくまで専守防衛って感じで。」

「そうですね....ですがそれも、本人の意思一つであっさりと破れるものです。なぜなら彼女は外の世界からの来訪者、最後までこちらの世界のルールを守る義理も義務もないでしょうから。」

 

妖夢のその一言によって、部屋の空気が重くなる。だがその時、閉じていた襖が開いた。そこにはクリームヒルトが佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘルさん....」

「あらアンタ、もう食いしん坊は患ってないの?」

「ああ、おかげさまでな。消費した分のエネルギーを蓄えることができた。」

 

私が閉じていた襖を開けると、レイム達の視線が私の顔へと集まる。無論、先程話していた内容もある程度は聞いている。故にそれに対する答えを、私の口から出す必要があるだろう。

 

「それで、さっきお前達が話していたことだが....」

「わ、私はヘルさんは悪い人じゃないと思うよ!」

「あ、朱音?」

 

だが私の言葉を遮るように、アカネが主張をしてきた。私は敢えて口を閉じで聞き耳を立てる。

 

「確かにヘルさんはとても強いと思うし、佐々木さんとの戦闘に勝てたのもすごいと思うよ。だけど反面、そんな力がもし自分達に向けられたらって思うと....すごく怖いし、間違いなく殺されてしまう。それは確かに私の本音だよ。」

「.....」

「だけど、それでもヘルさんはここまでちゃんと協力してくれた。ここまで裏切りったり見捨る事とかをしなかったことは嬉しかった。これも私の本音....だから私はヘルさんの事は好きし、信頼できる人だと思えた。」

「ほう、では私が真実は邪悪な人間だとして、今この土壇場で裏切るとは考えないのか?」

「それなら何で、佐々木さんと戦う前に私達を始末しなかったの?」

 

やや食い気味にアカネはそう答える。少し引っ込み思案なところのある彼女にしては珍しく、私は無意識に眉をひそめた。

 

「ヘルさんが1人だけで効率よく帰りたいなら、早い段階で私たちと縁を切って、最後に佐々木さんをどうにかして元の世界に帰れば良い。いくら貴女が強いと言っても、私達と佐々木さんを纏めて相手するのは面倒だと思うよ?」

「ほう....アカネは存外物申すではないか。だが、実際のところ私はそこまで考えてないが.....まあそういうことにしておくか。ただ私の信念に従って事を進めてただけだ。」

「つ、つまり何も考えてなかったということ?まあでも。それならそれで良いかな。」

 

アカネは微笑みつつ、そう言葉を紡いだ。それを見て私も意図的に笑顔を作って返した。それを見ていたレイムとヨウムはどこか呆れた顔をしていた。

はて、私の対応に何か問題があったのだろうか?そう思っていたら、私の背後から誰かが現れた。

 

「全く....私の家がいつの間にか賑やかになってるねぇ。」

「小次郎さん....」

「おはようお婆さん、お目覚めはどうかしら?」

「ま、ぼちぼちってところかねぇ....介抱してくれたことには感謝するよ。」

 

私の背後にはコジロウが佇んでいた。レイムの問いかけに朗らかに笑いながら返す。そこには敵意も殺意もないが、不意に鋭い視線が私の顔を射抜く。

 

「さて.....早速だが、アンタに一つ聞きたい。」

「....なんだ?」

「私はアンタの一閃で確かに殺されたと思ったが、結果はご覧の通りだ。これはいったいどういうことだい?」

「....私が死を与えたのは、お前の不死の呪いだけ、といえば理解できるか?」

「えっ?」

「ほう、それは何でだい?剣士....いや、あんたはその枠ではないか。だが、武器を手に取ってる以上戦士ではあるだろう?私が敵であるのならば、デスサイズとやらの力を使って、確実に殺すべきだったんじゃないのかい?」

 

私出した答えにアカネが驚きの声を上げ、コジロウは疑問をぶつけてきた。ああ、やはり私の過去はしっかり話しておかないとな。そうでなければ納得できないだろう。

 

「お前達にも話しておこう....コジロウの言う通り私は戦士、即ち軍人であった。そうして生きていた以上、戦いで多くの者を殺めてきた。」

「.....ヘルさん、そんな過去があったんだ。」

「なるほどね、戦いの中で人を殺してきたってわけね?」

 

私の発言聞いて、アカネの顔に影がかかる。そしてレイムが引き締まった表情で私へと問いかける。

 

「そうだな、軍の本質は死の肯定だ。そして何より、私は作りの乱れているものを見過ごすことができない人間だった。他者の幸福を飽食する者、絶望に陥り死を待つしか無かった者、そうしたもの達を私は手掛けてきたのだ。」

「作りが乱れてる、か.....なるほど。そうした極端に出張った連中を殺すことで、人類全体の幸福満足度を上げようとした....ってところかしら?まあ確かに、そういう人間社会も一種の理想とも言えるかもしれないわね。」

「....だけど、私は嫌かな。あまりにも死と隣り合わせすぎて、すごく怖いよ。」

「そうですね、それは私も同感です。」

 

私の過去を聞き、3人の少女はそのような反応を示した。まあ、妥当な答えと言えるだろう。

 

「ああ、そして他ならぬ私自身も否と思った。何より私自身が造りが乱れているのだから、いっその事私が居なくなればいいのに....とな。」

「そ、そんな極端な....」

「だからだよ、私は足掻いた。死にたくない、生き続けてみたいと。そうした想いを抱き、多くの人々との協力を得て、私はついに私の夢を掴むことができた....それが」

「あの力?」

「その通り、邯鄲の夢をこの手で掴みとった。そしてその過程で、私は私自身の答えを得たのだ。」

「....それが、人を殺さないこと?」

「ああ、一人一人の人生を尊重し、その為に殺人という罪を犯さぬこと。それが私の見出した答えだ。故に私はもう誰も殺さない、デスサイズを作り上げたのも、その悟りを貫くためにだ。」

「......」

 

こうして、私の抱いていた真実を彼女達へと話した。表情を見てみると、アカネを筆頭に皆唖然とした表情を浮かべていた。そして沈黙を破ったのもアカネだった。

 

「な、何というか....とにかくヘルさんは凄い過去があったんだね。そういう感想しか思い浮かばなかった.....」

「まあ、夢の世界に飛び込むなんて普通の人生を送っていればまずない事だからな。」

「まあそうよね、大抵の奴なら眉唾物な話だと思って警戒するでしょうし。」

「だけど、ヘルさんはそう断じる事なく邯鄲へと挑んだ。それも、自分自身が変われるきっかけだと信じて....という事だよね?」

「そういう事だ。殺すことでしか他者と触れ合えない自分を変えたかった。愛のなんたるか、この身で体験し、理解したかったのだ。」

「....やっぱり、私はヘルさんのこと信じて良かったと思えたよ。昔殺人をしてたって聞いた時は驚いたけど、それでもヘルさんなりに頑張ってどうにかしたんだから、すごく尊敬できる人だなって。きっとヘルさんならその悟りを貫けると、私は信じている。それに、最後の切り札だって、結局コジロウさんのことを殺してなかったしね。」

「.....そうか、そう思えるのならば私も光栄だ。」

 

アカネは微笑みながらそう言った。この様子ならば、少なくとも彼女からの信頼は得ることができたのだろう。それならば幸いだ、過去を明かした甲斐があるというものだ。

 

「なるほどね、あんたがその答えに至った経緯がよく分かったよ。」

 

するとコジロウが、うんうんと頷きながらそう呟いていた。そしてもう一度私と視線を交わして言い放つ。

 

「クリームヒルト、この場でもう一度問わせてもらおう。」

「ああ、言ってみるがいい。」

「私にとって剣の本質とは殺人だ、それは剣士....そして戦地に赴く者達全ての抱く真実だと思ってる。」

「そうか、それは確かにそうなのだろう。だが私の見出した真実は、剣の本質は誰かを守護するものだ。それもまた真実だと私は信じている。」

「ならば、お前はその真実を貫いて何を成す?」

「遍く人々に確かな生を与える為に。理不尽に、そして無念のままにその一生を散らすことの無いように、私は数多の障害と戦い続ける。それが私の見出した悟りである。」

「....そうか、生半可な覚悟でその想いを背負っていないことを理解した。ならば改めて認めよう、私の負けだ。ふふ、あははははははは!」

 

その瞬間、コジロウは爆発したかのように笑い声をあげた。それは赤子の産声のようであり、少年少女の泣き声のようだった。だがそこには、一種の喜びも孕んでいるように見える。

 

「感謝する、異界の死神殿よ。私はようやく、己の後悔を晴らすことができた....ああ、アンタほどの者に負けたのならば言い訳も何もない。これで私は思い残すことは何も無い。貴女達も、迷惑をかけてすまなかったね。」

「....まあ、私達は巻き込まれただけだし、別に良いわよ。」

「ふふ、ようやくひと段落ついたようね。」

「あっ、紫!」

 

すると、不意に何もない空間からユカリが現れた。おそらくどこかから私達の様子を見ていたのだろう。となると、彼女が現れたということは......

 

「これにて、この幻想郷にの巌流島の異変、解決といったところね。それじゃあ、帰還するとしましょうか。」

「....ええ、そうね。帰りましょうか、私達の幻想郷に。」

「.....そして、私は私の世界へ。」

 

そう、異変を解決したのだからいつまでもこの世界にいる必要はない。終わりの時はいついかなる時だってあるのだから。

さて、元の世界に戻ったらこの出来事をどう話すべきか.....

 

 

 

 

 

 

◆オマケ◆

 

◯ラストワード

「デスサイズ」

クリームヒルトが邯鄲法と剣術を組み合わせて生み出した剣術奥義、あらゆる存在を死滅させる居合斬りである。

発動の際には邯鄲法の基礎である戟・楯・咒・解・創の5つの資質を全力解放、その結果、居合斬りを放った瞬間に本人及び彼女の阿頼耶が認識できる範囲、かつ対象に選んだもの全てを斬滅させることが可能である。加えて、標的にしたくない相手は、クリームヒルトの任意で対象から外すことも可能である。

故に放たれる斬撃は距離、範囲を無視して対象に命中し即死させる。如何なる巨大な生物であろうと、彼女と阿頼耶が認識できるのならば死の斬撃は届く。

 




今回オマケとしてデスサイズの概要を書かせていただきましたが、恐らく概要だけ見てもピンとこない方も多いと思います。なのでしっかり本編でも納得のできる描写を書けるよう頑張っていきたいと思います。
ちなみにまだ公表してない設定も少しあるので、機会があればそれらも公表していこうかと考えています。
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