そして、これにて佐々木小次郎編完結です!
そして全員がユカリの元へと呼ばれ、彼女の近くへと集まる。どうやら彼女の能力を使って元の世界へと戻るようだ。
「さて、それじゃあみんな元の世界に戻る準備はできたかしら?忘れ物はないわよね?」
「まったく、子供の遠足じゃないんだから....そういえばヘル、あんたはどうやって元の世界に戻るのよ?」
「私か?私は自力で帰ることが出来る。コジロウと決着をつけたことでこの閉じた世界から抜け出せれるようになったからな。盧生にとって世界の境界なんてあって無いようなものだ。」
「何よそれ、何でもありじゃないそんなの...盧生ってのも大概チートね。必要となればどんな世界も自由に行くことが出来るじゃない。」
「あくまで必要な場合に限るだがな。基本的に、任意で好き勝手に移動できるわけではない。」
元々私がこの世界へ飛ばされたのも、赤い奇妙な石に吸い込まれた故にだ。そしてコジロウの強い祈りが世界を閉ざし、私も自力で脱出できなかったのが原因だ。しかし、ようやく閉ざされていた世界が修正され、自力でもどっれるようになったからだ。さて、元の世界に戻ったらまずは改めて父に挨拶をしなければな。ああ、ヨシヤ達にもこの幻想郷とやらの話もしておくべきか。それとも...などと考えているとアカネの視線を感じた。
「....そうか、ヘルさんは一人で帰れるんだね。」
「なんだアカネ、私と別れるのがそんなに寂しいのか?」
「....うん、もっと色々と話したかったなぁって」
アカネは曇った表情でそう呟いていた。なるほど、どうやら私の別れに名残を惜しんでるらしい。ならば私の事情も話しておくべきか。
「なるほど....まあ、私の力が必要となれば、また会える機会もそう遠くはあるまい。」
「本当?」
「だが、それは同時に危機も近づくということでもある。」
「....どういうこと?」
私個人に会いたいという気持ち自体には問題ない。だが、盧生という人類の代表者が来訪してくるということは、何もメリットばかりではないということだ。
「盧生とは夢を現実に紡ぐ人の代表者だ。そしてその夢とは中には世界そのものへ干渉できる大きなものまで存在する。つまり、盧生が全力の状態で現れる必要があるということは、世界そのものの危機もまた孕んでると言っても過言ではないということだ。」
「ッ!?」
「今回はコジロウという個人の妄執に引っ張られるという不測の事態故に、それほどの力を振り絞ることもなかったから幸いと言えるだろう。だが今後もその程度で済むとは限らない。」
「....そうなんだ、ヘルさんも大変なんだね。」
私の説明を聞き、アカネはさらに表情を曇らせた。おかしいな、私は事実を伝えたから納得すると思ったのだが。するとレイムが横から会話に割って入ってきた。
「あのねぇアンタ、最後のお別れの時にそれ言うのは無くない?せめてそう言う時には元気でねとか、また会おうねーくらいの事は言いなさいよ。」
「根拠のないことを言って信じ込ませて、結果として嘘つき呼ばわりされるのも困るのだが。」
「いやそういうことじゃなくて....いや、まあ良いわ。あんたはそういう人間なんでしょうね。言うだけ無駄そうだわ。」
レイムは困った表情を浮かべると、私の手を掴んで握手をしてきた。
「とりあえず、貴女と協力したことでこの異変も解決できて感謝するわ。もしもまた異変が起きて一緒になる機会があったら、その時は改めてよろしく頼むわね。」
「....ああ、お前達となら構わんよ。無論、そのようなことは起きないことが最善だろうがな。」
「ふふ、まあ違いないわね。」
すると今度はヨウムが私の前に現れ、同様に私と握手を交える。
「貴女のような戦士と出会えて、私はとても光栄でした。もしもまた出会える機会があれば、また手合わせをお願いしてもいいでしょうか?」
「構わんよ、受けて立とう。」
「はい、感謝します!いつか貴女を越えるために....」
そして最後に、アカネがレイムに施されて私の前へと現れる。そして戸惑いの表情を浮かべながらも私と握手を交えた。
「....ヘルさん、今回は本当にありがとうございました。さっきも言ったけど、もしも機会があるなら、こういった異変とかじゃなくて、普通にヘルさんとお話ししてみたいな。」
「そうだな、ならば一つ願望を言っておくか。確か未来でいう女子会だったかな?その場を設けてほしい。そして美味い料理も用意して欲しいな。」
「....ふふ、わかった。その代わり、ヘルさんのお話も聞かせてね。」
「....ああ。」
「さあ、そろそろスキマを開くわよ。」
ユカリがそう言うと空間に割れ目が生じ、そこには異空間が広がっていた。そこにレイム達が吸い込まれていく。そして割れ目が閉じるとそこには何も残っていなかった。
「....行ったか。」
「その様だねぇ、アンタも自分の世界とやらに戻るのだろう?」
「当然だ。」
背後からコジロウの声が聞こえ、私はそこへと振り返った。そして私はコジロウへと言い放つ。
「知ってると思うが、私の一撃を受けたことでお前ももう長くは無い。」
「....だろうね、私は本来人間だ。普通であれば肉体も散って魂は閻魔様のところに行ってるはずだ。それが私自身の強い後悔によって半ば地縛霊みたくなっていたというわけだ。」
「そして私の一撃によってその結びが絶たれ、正しい形に戻ったと言うわけだ。あとは語るまでも無いな。」
「ああ、引き伸ばされていた終わりがこうして迫ってると言うわけだ。だから、せめて『言い残した事』はちゃんと言っておくとするかね。」
そう言いながらコジロウは踵を返し、何処かへと向かおうとした。ここでお別れという事だ。故に私も向かうべき場所へと歩を進める。その際に.....
「さらばだコジロウ、今度こそ『後悔の無い』様にな。」
「さらばだ死神、その『誓い』が揺らがない事をあの世で祈っておくよ。」
その言葉をしっかりと聞き届け、私は元の時代へと戻って行ったのであった。
そして場所は変わり、幻想郷にて。
「っ!?いたた、尻餅ついた..そうだ、私達、急に赤い封晶石を見つけて....」
「あぅ、土が入った.....紅い封結晶は無くなってますね。本当にアレは何なのでしょうか...」
(....やっぱり2人とも、あの世界での出来事を覚えてないんだ。)
妖夢と霊夢、そして朱音は無事に元の幻想郷へと戻ることに成功した。しかしやはり、朱音以外は異世界での記憶は覚えていない様子だ。そして紅い封晶石も無くなっていた。
「まあ今考えても仕方ないわ。とりあえず戻りましょう、朱音。」
「うん、そうだね....」
「すみません、予定を変えて私は白玉楼に戻ります。幽々子様にこの事を報告しなければならないので。」
「はーい、それじゃあね。」
「じゃあね、妖夢さん。」
こうして妖夢と別れ、霊夢達は博麗神社へと戻った。その後はこれといった大きな変化もなく、普段通りの日々を過ごしていた。
あれから一週間が経った。
「ん?どうしたの朱音....」
「えっと、クリームヒルトって人の名前聞いたことない?」
「....ん?待って、なんかその名前に引っかかりが....」
(えっ、もしかして霊夢は覚えているの?)
ある日、普段通り霊夢が掃除をしている時に、朱音はクリームヒルトの名前を出して見た。しかし予想と反して霊夢は何か思い出しそうな反応を示した。
「あ、思い出した!確かパチュリーの図書館で見つけたんだけど、ニーベルンゲンの歌で出てきたヒロインの名前だわ!」
「.....」
「それで、そのクリームヒルトがどうかしたの?もしかして読みたい?」
「え?い、いや....やっぱ何でもないよ、あはは....」
霊夢のその問いかけに、朱音は苦笑しながら遮った。やはり彼女の記憶には明らかに残ってる様子がない以上、これ以上掘り下げても無意味だと確信したのだ。
そう思った時だった。
「全く、ようやく見つけだぞ。数ある並行世界の中から、探し出すのは実に苦労した。」
「....え?」
階段から軍靴の音が近付いてくる。そして登ってくる人物の声は朱音にとって聞き覚えのある声だった。大人の女性の声だ。そしてその姿は.....
「久しいなアカネ、ここがお前たちの幻想郷で間違いないな?」
「.....うん、お久しぶり。ヘルさん。」
「....え、誰?朱音の知り合い?」
漆黒の軍服に豪奢な金髪を持った女性だ。間違いなく、かつて共に異世界を駆け回った、クリームヒルト・レーベンシュタインとの再会を果たしたのだった。驚きの表情を浮かべる霊夢を見て、彼女は笑みを浮かべて答えた。
「....なるほど、そういうことか。では自己紹介としておこう。私の名はクリームヒルト・ヘルヘイム・レーベンシュタイン。本来貴様達の世界には存在しない人間だが、奇縁があった故に来訪させて貰った。何、そう警戒するなよ。これでも力には自信があってな、お前達の異変解決の役に立ってみせよう。」
とある島に一人の老婆がいた。彼女はその生涯において剣を心から愛していたにも関わらず、剣士になれなかったことに悔いを残していた。そしてその最期は、かの有名な剣豪『宮本武蔵』に討たれ、その生涯に幕を閉じた。
「ああ、ようやく終わったよ。異世界から妙な連中が来てね、結構良い勝負をしたんだ。結果は惨敗だけどね、不思議と悔しくなかったんだよ。」
しかし人としても死んでもその後悔を忘れることができず、いつしか妄執に変わり小さいながらも世界に影響へと及ぼした。その結果、異世界から奇妙な少女達を呼び寄せた。
「それにしても人殺しの剣ではなく、誰かを護る剣、か....そんなあり方をもっと早く知っていれば、私も誇りを持って剣を教えることが出来たのかなぁ。なんて、今更言っても遅いよねぇ、ははは....」
そしてその奇妙な出会いが老婆の妄執に終焉を齎した。死神の一閃が老婆に再び決定的な敗北を与えたのだ。だがそこに不運や不幸は一切なく、少なくとも老婆にとって納得のいく終わりへと辿り着いたのだ。故に後悔など一切ない。
「....なあ武蔵、アンタの言った言葉は今ならわかるよ。確かに私は負けて当然だったね。誰かを護る信念なき者に、己の理想を守れる道理があるはずもなかったか。」
そう呟いた時、ふとその剣豪の本当の名を思い出した。思い出したと同時に、思わず老婆は苦笑を浮かべてしまう。
「そうだ.....そうだよ。アンタの名は『魂魄妖忌』だったね。まったく、なんで、忘れていたのやら.....ああ、だとしたらあの小娘はアンタの子孫だったのかね?あまりにアンタにそっくりで驚いたよ。まだまだ未熟だが、もっと鍛錬を積み重ねれば.....アンタに追いつくことができるかもねぇ....ただの勘だが。」
そう呟き続けていく老婆。次第に生気がその体から消失していく。消失した暁には、もはや地上に留まることは出来ないだろう。老婆そのことを確信しつつも、最期の言葉を紡ぐ。
「可愛い子供達、もうすぐ私もそこにいくよ.....迷惑ばかりかけて、私はダメな母親だったね。そっちに行ったら、今までできなかった.....ぶん....はなしを.....しようか.....」
「....さようなら、佐々木小次郎。せめてあの世では家族と幸せにね。」
こうして歴史の闇に潜んだ大剣豪、佐々木小次郎の人生は真の意味で幕を閉じた。その最後を見届けた妖怪は敬意を込めて、彼女の墓を家族と一緒の場所にたてた。そしてその墓の下には、佐々木小次郎の愛刀『物干し竿』を添えて。
END 異変解決
これにて小次郎編完結!いつもこの小説を読んでくださった方、ありがとうございました!
元より自己満足のために書いていた小説でしたが、反省点が山の様に出てきたなと思いました。まずはストーリーの構成やオリキャラの設定など、今後のためにもその辺りをもう一度しっかりと学習しないといけませんね。
その点をもう一度鍛え直して、また新しいストーリーを展開していこうと思います。
次回からは新章のスタートとなります。次のストーリーは今回よりもボリュームの増した内容になる予定となっております。またお付き合いいただけると幸いです。