第三盧生が幻想入り   作:ヘル・レーベンシュタイン

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久々の更新です。
ここから東方よりも戦神館の世界観寄りなストーリーが展開されますが、お楽しみいただけたら幸いです。


第十二話 回帰

ドイツの普通の家族に生まれた、ごく普通の女の話をしよう。彼女の生まれた家庭は、まさに平凡そのものだった。両親ともに健康で、生まれたその女もまた健康の、普通の赤子だった。次第に成長し、子供らしくいろいろなものに興味を持ち、街に出ては友達を作り共に遊びまわっていた。

一つ例外的な特徴を挙げるなら、その少女の好奇心、および探究心は他の子達よりも遥かに強かった。学校では常に首席、加えて運動神経も並の男子ですら敵わないほどだ。それもまた彼女の魅力を引き立てるものといえるのだろう。

 

「ウチの子は天才だ、いずれ世界の頂点に立てるぞ!」

「もう、貴方ったら...けど、あの子が本当にそうなったら、私も鼻が高いわ。」

 

両親のこの発言も、半分本気といったところだろう。だがしかし、この発言は後に真実となる。もっとも、両親が想像してるような穏やかで鼻の高くなるような未来ではなかったが……

 

 

 

 

 

ある日、女と父親が教会の前に通ったときだった。

 

「お父さん、教会って何をする場所なの?」

「神様にお祈りをするためだよ。」

「神様ってなぁに?」

「私たち人間を作り上げてくれた、偉大なお方だよ。」

「どうやって人間を作ったの?」

「それは....色々な考えが広まっているが、神様の力で作り上げたって説がありがちかな?」

「.....神様の力?」

 

まだ10歳の女は首を傾げる。その様子を見て父は苦笑しながら言う。

 

「あはは、要は神様は何でも知ることができて、何でもできるとんでもない方のことだよ。といっても今のお前にはよくわからないと思うが、まあそういうものがあるって覚えておけばいい。」

「....うん。」

「さあお祈りも済んだし帰ろう、お母さんがうちで待っている。」

 

などと、何気ない会話をしながら親子は帰っていった。一見何気ない日常の風景だが、少女の中では爆発するように思考が巡り回っていた。

 

(神様は何で知ることができて、何でもできる力....それを手に入れたら、私はどうなるんだろう?そもそもなんで、その力で神様は人間を作ったんだろう?わからない、わからない、わからない.....)

 

深夜1時、少女の両親も既に就寝している時間だ。だが少女は毛布でくるまりながら、そう思考を巡らせていた。人より一歩強い興味、関心、好奇心が神という魅力的な単語を掴んで、決して話そうとしない。少女中で、強欲という原罪が芽生えた瞬間だった。

 

(カミサマ.....わからない、わからないからとても魅力的だ。欲しい、欲しい、欲しい!神の力が、欲しい!そのためなら、なんだってやってやる....そう、どんなものでも利用してでもッ!)

 

その日、少女は確かな夢を見た。そしてそれが、少女の運命を大きく動かすこととなった………

 

 

 

 

 

 

 

 

時が経ち、女は学生となった。無論成績はトップクラスで、このまま彼女は順風満帆な人生を送るのだと誰もが思った。だが同時に、同年代の学生が行方不明となる件数も多くなっていたのだ。痕跡は見つからず、まるで最初から居なかったかのように、行方不明となったものは2度と人の目につくことはなかった。

 

「そうか....私ももうそろそろ、大人になるのね。」

 

そして少女は、学業で優秀な成績を重ねると同時に本の虫となっていた。特に考古学や宗教学に触れることが多く、図書館の閉館時間ギリギリまで居座っていたという。ある日、両親が将来何になりたいかと聞くと....

 

「私は軍に入ろうかなと思っているわ。私の知識を活用して、この国のお役に立ちたいの。」

 

少女は満面の笑みを浮かべながら、そう答えた。両親は今まで軍事に興味を示さなかった少女が何故と思いつつも、本人がそう思うならとその背中を後押しした。そして少女は大学を卒業し、大人の女となって軍の門を潜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして更に月日は流れ、女はとある男と結婚した。パートナーとなった男とは大学の時に女と知り合い、教師となった後にその女と結ばれた。そして女は妊娠し、無事出産した。生まれてきた子は女の子で、その名は....

 

「クリームヒルトにしましょう。この子は英雄の花嫁となり、みんなに幸せをもたらすのよ。」

 

そう、この生まれた子が後にドイツの稀代の殺人鬼と呼ばれ、人のアラヤから選ばれた第三盧生、死神となる女だったのだ。そして....

 

「そうか、君がそう決めたのならそれにしよう.………″カリーナ″」

 

そしてそれがクリームヒルトの母親の名前……『カリーナ・レーベンシュタイン』である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某所にて

 

「あたたっ....ここは?」

「....どこかの神社、みたいだね。」

 

霊夢と朱音は、気がつくとどこかの神社の中心にいた。赤く伸びた鳥居に神宮、そして周辺の木々が視界に入る。そして空を見上げると、漆黒の夜空と星々が輝いていた。

 

「そうみたいね....て、レミリア達は?それに、ヘルもいないわね。」

「本当だ、別々になっちゃったみたいだ....」

 

周辺を見渡しても、他の人物の気配を感じなかった。自分達以外誰もいないと判断すると、霊夢はため息を吐いて呟いた。

 

「仕方ないわね、まずは人里に向かいましょうか。この先にあるみたいだし。」

「あ、本当だ。明かりがあるし、人も居そうだね。」

 

霊夢が指さした方向を見ると、数百m先にポツポツと灯が照らされている場所が見えた。そこに人がいるかもしれない。そう思い2人はその方角へ向かって移動を始めようとしたその瞬間、背後から茂みを歩く音が聞こえた。

 

「っ!?」

「待って朱音、ゆっくり音の方向に向かいましょう。」

 

霊夢は走り出そうとした朱音の手を掴み、そう言った。朱音は頷きつつ、霊夢と一緒に忍足でゆっくりと音のした方向へと歩いていく。草木を分けてそのまま進んでいくと人の姿が見えてきた。

 

「…えっ?」

「.....」

 

そこには、朱音と霊夢の知らない少女が立っていた。年齢は目測10歳前後、黒いシャツとスカートを着ており、ウェーブのかかった金髪と翡翠色の瞳が特徴的だ。そして、その特徴から一つの答えが脳裏を駆け抜ける。

 

(この特徴……もしかして、小さい頃のヘルさん!?いやでも、なんで子どもの姿に?)

「えっと、こんばんは。君は誰かな?こんな夜遅くの時間に、小さい子どもがいる外に出たらダメでしょう。」

「....申し訳ございません、目が覚めたらここにいたので。」

「そ、そうなのね……」

 

少女の声を聞いて、霊夢は眉をひそめた。声色自体は日本人とは違ったトーンを感じるが、それ自体はそこまで驚くに値しない。だが問題は、子ども離れした流暢な口調で敬語を使ってることと、言葉の節々から子ども特有のあどけない雰囲気が一切感じられない。まるで子どもの形をしたロボットと会話しているような気分になったのだ。

 

「ところで、君の名前は?私は霊夢といって、こっちは朱音よ。」

「こんばんは、よろしくね。」

「……クリームヒルトです、よろしくお願いします。」

「……嘘でしょ。」

「?」

 

朱音の予想通り、どうやらこの少女はクリームヒルトの幼少期の姿のようだ。名前を聞いて、霊夢は衝撃のあまり手で顔を覆った。朱音は霊夢の近くに寄り、小声で話しかける。

 

(れ、霊夢。これどうなってるの?なんでヘルさん小さくなってるの!?)

(こっちだって知りたいわよ!この世界の影響かもしれないけど、原因がまるでわかないわ。)

(だけど、このまま放っておくわけにはいかないよね……)

(……そうね、ひとまず同行させますか。誘拐でもされたら最悪だろうし。)

 

2人はそう決断すると、改めてクリームヒルトの方へと向き直る。その様子を見て首を傾げるも、なるべく自然な笑みを浮かべながら霊夢は話し掛ける。流石にヘルという渾名で呼ぶと混乱を招くと思い、渾名ではなく本名で呼びかけることに心掛けつつ。

 

「えっと....クリームヒルトはここで他に誰か見なかった?」

「いいえ、私もある程度この辺りを歩きました。ですが、貴女達が初めて鉢合わせした他人です。」

「そうなのね....あと、別に敬語とか良いわよ?こう、堅苦しいしさ。」

「.....何故?貴女達は明らかにわたしよりも年上です。目上の者には敬意を示すために敬語を使う者だと把握してますが?」

「と、とりあえず君をここに置いていくわけにはいかないわ。私達と一緒に行きましょう?」

「……知らない人物について行くなと言われてますが、やむを得ませんね。わかりました。ですが、両親と出会ったらその時点で帰らせてもらいます。」

「……ええ、それで良いわよ。」

 

霊夢と朱音は唖然とした表情を浮かべつつもクリームヒルトの手を掴み、移動を始めた。どうにも彼女の口から放たれる、子ども離れした口調と理論展開に混乱してしまう。ひとまず2人は彼女の手を掴み、このまま移動しようとしたその時だった。

 

「っ!?これは....」

 

突如草陰から漆黒の大蛇が現れた。それも小さな子ども程度なら丸呑みできるほどの大きさで、鎌首をもたげ朱音へと殺意を向け、飛びかかった。

 

「この、やめなさいッ!」

 

霊夢はすかさず妖怪退治の鋭針を、大蛇へと放った。無数の針が蛇に突き刺さり、朱音に噛み付く直前で力尽き黒い霧となって霧散した。霊夢はホッとしたと同時に考える。

 

(つい無意識に攻撃したけど、こっちの世界でも弾幕はできるみたいね....)

「霊夢!い、今の蛇は....」

「わからない、けど明らかに普通の蛇じゃないわ。」

「.....」

 

朱音の質問に霊夢はそう答える。死体が残らず消滅したあたり、明らかに普通の蛇ではないのは確実だろう。だが正体は至って謎であり、考える余裕も与えてくれない。

 

「ちょっ、あの一匹だけじゃなかったの!?」

「あーもう、面倒ね!」

 

さっきの一匹から出てきた茂みから、更に2匹3匹とどんどん矢継ぎ早に蛇の軍団が現れてきた。大きさにもばらつきがあるものの、どれも人間を喰らうには十分の大きさだった。

 

「朱音、ヘルを守りながらここを切り抜けるわよ!」

「うん、任せて!」

 

朱音はそう言いながら手帳を取り出した。そして手帳を開くと、そこから妖夢の姿が具現化し、ヘビに向かって戦闘を始めた。

 

(よし、出てきた!)

「....」

 

具現化した妖夢が、迫り来る蛇達を切り刻んでいく。その様子をクリームヒルトは朱音の後ろから見ていた。その顔は変わらず平静なままである。それを見て霊夢は声を張り上げた。

 

「ちょっ、アンタなに棒立ちしてるのよ。速く逃げなさい!」

「....それはもしかして私に言ってるのですか?」

「そ、そうだよ!ここは危ないから、速く遠くに逃げ....」

 

次の瞬間、針と斬撃の弾幕を潜り抜けた蛇が霊夢と朱音の間を通り抜け、クリームヒルトへと迫った。蛇の牙が少女の首元を喰らおうと迫る。

 

「あっ....」

「クリームヒルトォッ!」

「大丈夫です、私は負けませんよ。何故なら....」

 

だが蛇の口は少女の肌に触れることは叶わなかった。蛇の胴元には拳が突き刺さり、常人を凌駕した速度と破壊が少女から繰り出された。拳が振り抜かれると、蛇は血飛沫を上げながら粉砕された。

 

「....え?」

「何故なら私は、″巨人″ですから。」

 

唖然とした表情を浮かべる朱音を他所に、幼き少女クリームヒルトはそう呟きながら戦闘を行う。蛇の胴体を掴み握りしめると、掌から放たれる万力が蛇を握り潰す。続いて地を這う蛇を逃すまいと振り下ろした震脚が大地を震撼させ、脚元の蛇をトマトのように踏み潰す。もはやその所業は少女のそれとはかけ離れており、阿鼻叫喚を賛美する殺人鬼の所業のようだった。だが、少女顔は徹底して鉄仮面。そこに歓喜や悲哀の感情はなく、ただただ虚無一色であった。

 

「な、なんなのよあいつ……」

 

そしてクリームヒルトは徒手空拳では殲滅力が足りないと判断すると、近くの長い枝を拾い上げ、剣のように横薙ぎに振るい上げた。そこから放たれた衝撃が辺りにいた蛇を残らず消滅させたのだった。

 

「....これで完了ですね、お疲れ様でした。」

 

クリームヒルトはそう呟きながら、服についた汚れを払い落とした。少女の圧倒的な膂力を見せられた霊夢と朱音は、ただ顔を青ざめながら見ているだけしかできなかった。

 




というわけで、とある事情でヘルはロリっ子になってもらいました。肉体と精神年齢は共に10歳前後です。
そして過去話の中でですが、彼女の母が登場しましたね。もちろんオリキャラで、今後のストーリーに深く関わってくる予定です。
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