第三盧生が幻想入り   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回は歩美vs美鈴です


第十七話 真相

 

咲夜が静乃と戦闘をしている一方で……

 

「はぁっ!」

 

周囲から迫り来る弾丸を、美鈴は蹴りや弾幕で弾き飛ばして回避を続けていた。しかし、その対処法にも限界があり……

 

「脇が甘いよ。」

「ぐっ!このぉ……」

 

タイミングが遅れて発射された弾丸が、美鈴の死角から払いして肉を抉る。そのダメージ自体は決して大きくないものの、美鈴の体力をゆっくりと削って行く。

 

「中々の射撃能力だね、えっと……良ければ名前教えてくれない?私の名前は紅美鈴(ほんめいりん)だよ。」

「いいよ、めーちゃん。私の名前は龍辺歩美(たつのべあゆみ)だよ、覚えてね。」

「め、めーちゃんって……まあ良い、歩美だね。」

「そうそう、それでめーちゃんはこれからどうするのかな?そこで立ち止まるんなら、蜂の巣になっちゃうと思うけど?」

「うっ、確かにこのままじゃジリ貧だな……なら、少し危ないけどやるしかないか。」

 

すると美鈴は呼吸を整え、そして両目を閉じた。無論、それは直立したまま行なっているが、まるで静かな場所で瞑想しているかの様に見えた。その姿を不思議に思いつつも、歩美は再び破段を用いた発砲を開始した。

 

「……よし、見える。」

「なっ!?」

 

だが飛来してくる弾丸を、美鈴は悉く回避した。正面、左右だけでなく、背後や真下から迫る弾丸を皮一枚散らすことなく回避しながら前進していった。

 

「安易に目に見える弾を態々迎撃しようとしたから、行動に無駄が生じていた。ならば、あえて視界を消し、弾丸の風を切る音を聞き分けて回避すればいいだけのこと!」

「……なるほどね。普通ならできないことだろうけど、貴女はそれができる下地があったというわけだね。」

「その通り。私だって、伊達に紅魔館の番人をしていたわけじゃあない!」

「うーん……頑張るねぇ。なら、その調子で私のところに来れるんだよね?」

「勿論、首を洗って待ってなさい。」

 

この調子で美鈴は弾丸の雨を掻い潜り、殺気の根源へと迫っていく。そして遂に……

 

「ここだ!」

 

扉を蹴破り、美鈴は寝室内へと入り込む。この部屋の何処かに本体が確実に潜んでいる。ここで勝利の未来を勝ち取る、その瞬間だった。

 

「我、ここにあり。倶に天を戴かざる智の銃先を受けてみよ。」

 

寝室の中にいたのは、確かに射撃主たる龍辺歩美だった。だが彼女の狙っていたのは、殺気の飴を潜り目的の場所へ到着し、勝利を確信した瞬間だった。

 

「急段-顕象」

 

何故ならば美鈴が扉を蹴破り、勝利の未来を確信した瞬間こそ、協力強制が成立するのだから。その条件とは即ち「未来が見たい」という意思に他ならない。故にこの瞬間こそ、急段発動の絶好の機会なのだから。

 

犬坂毛野胤智(いぬさかけのたねとも)

 

そして放たれる弾丸、それ自体は今まで放たれた弾丸とそこまで大差がない。だが、美鈴はその弾丸を察知する事はできない。何故ならばそもそもこの急段によって放たれる弾丸は、過去の時間軸から因果律を超えて飛来しているから。例えどれだけ気を読み取ることに長けている美鈴であろうとも、この弾丸を察知し、回避することは能わない。よって、ここに美鈴の敗北が決定した。

 

「おぉぉぉぉぉッ!」

 

しかし美鈴は諦めなかった。何が起こっているのかわからなかったが、自身の敗北が迫ってきていることを直感で感じ取った彼女は切り札を手に取った。肉を切らせて骨を断つ、その覚悟を満たし、敢えて前に出る。

 

「これぞ我が究極奥義……これに全てを託すッ!『真紅星脈地伝弾』」

「ッ!?」

 

ラストワード「真紅星脈地伝弾」が発動された。自身に渦巻く気を極限まで練り込み、そして歩美に向かって一気に全力で放った。放たれた気は巨大な龍の形となり、その顎が室内ごと巻き込んで歩美を粉砕する。

同時に過去より飛来した弾丸が美鈴の腹部へと直撃した。協力強制によって強化された分の威力が直撃し、美鈴にとって過去最高のダメージが襲い掛かる。だが……

 

「ぐっ、はぁはぁ……ううっ」

「………」

 

なんとラストワードが直撃して倒れた歩美に対し、美鈴はギリギリ耐え抜いた。本来ならば美鈴に耐える道理はなく、よくて相打ちとなる未来が訪れるはずであろう。だが、美鈴が放ったラストワードと弾丸が奇しくも同じ交差する軌道となり、その結果どちらも威力が幾らか削られたのだ。よって弾丸は美鈴を倒すほどの威力に至らなかった。逆に歩美の場合、耐久力の適性が極端に低いため、例えラストワードの威力が落ちようとも、直撃すれば致命に至るのは変わらなかったのだった。

 

「あーあ、やられちゃったなぁ……やっば私は一人で戦うのあまり向いてないのかもね。」

「ははは、いやぁそんな謙遜しなくても。私もこれはダメだと思ったよ。」

 

ボロボロになった寝室で、仰向けに倒れながら歩美はそう呟きた。そんな彼女に身を引きずりながら美鈴は苦笑しつつそう返す。

 

「ま、それはそうとして……約束だし貴女に今回の異変のヒント伝えないとね。」

「ああ、そうだ。それを是非教えて欲しい。今私たちには、とにかく手掛かりが必要なんだ。」

「うん、わかった。それはズバリ、「月」だよ。」

「月?」

 

歩美は崩壊した壁面から覗き込む、夜空の月を指さした。それを見て美鈴は疑問を浮かべる。

 

「月と今回の異変に、何の関係が?」

「よく見て、徐々にだけど月が欠けて来てない?」

「え、あ!そういえば確かに最初は満月だった気がする!」

 

よく見ると、月はゆっくりとだが影に塗りつぶされようとしていた。もしも影が全体にまで広がったら、新月となるのは想像に難しくない。

 

「えっと、つまり新月になったら何か大変なことが起こるって事なのかな?」

「うん、今はそう考えていいはず。ごめん、正直証拠不十分だと思うけど、意識しておいて損はないはず。具体的にはわからないけど、どうも無関係とは思えないから。」

「いやいや、何の成果もなしよりかは遥かにマシだよ!了解、とりあえず新月になる前に異変解決を意識する様にするよ。他のみんなにもそう共有しておく。」

「ありがとう、それじゃあ後はよろしくね。」

「ああ、任された!」

 

そう言い残して歩美は姿を消していった。それを見届けた美鈴は、咲夜のある場所へと向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

場所は変わって朱音とクリームヒルトは……

 

「ぐっ、うぅ……頭が、痛い……」

「アカネ、どうかし……ぐっ!?」

 

崩壊した教室を後に、私とアカネは生徒会室に向かおうとした。しかし突如アカネが頭痛を感じたらしい。どうにか私は回復を施そうとしたが、私の頭にも激痛が走った。その痛みの原因は、唐突に襲った記憶の奔流だった。

初めて見る……否、忘れていた私の記憶が蘇ってくる。そうだ、私はこんな経験をしたことがあったのだった。

 




vs歩美戦は比較的短くなってしまいました、申し訳ない……射撃系の能力者を扱うのは中々苦手でして……精進します。
次回は同時更新、そして今までと比較して非常にハードな内容となってます。
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