「ようこそおいで下さいました、御二方。どうぞ、こちらにお座り下さい。」
私が生徒会室の扉を開けば、そこには貴族のような雰囲気を感じさせる少女がそこには座っていた。年齢は恐らく17〜18歳程だろう。
しかし彼女から放たれる妖艶な香は、男女問わず魅了していくだろう。事実、同じ女であるはずのアカネですら、彼女の容姿と香りに目を奪われている。心を持たぬ私ですら、無意識に彼女を警戒しようとする意識すら忘却してしまいかねないほどに。故に私はその雰囲気を断ち切るために、アカネの前に出て声を出す。
「生憎だが、それは断らせてもらおう。私たちは談笑しに来たのではない。この異変を解決するための鍵を探しにきた。」
「……そうですか、それは残念です。ああ、申し遅れました。私の名は、辰宮百合香と申します。どうぞ、よろしくお願いします。」
「ど、どうも……私はアカネです。」
「……クリームヒルトだ。」
柔らかな微笑みを浮かべながら、ユリカという少女は名乗りを挙げた。それに応えるように、私とアカネも名乗り返す。
「さて、単刀直入に要件を伝えますか……結論として、私は貴女達を此の場に留めなければいけないのですから。」
「な、何故ですか!?それも芦角さんみたいに、貴女達を呼び出した何者かに操られてるからですか?」
アカネの悲願するような問いかけに対し、少女は儚さを感じせる苦情を浮かべて返す。
「それに関しては黙秘させて頂きます。私も出来る限り荒事を避けたい為にそう進言したのですが、貴女達の御返事は変わらないという認識でよろしいでしょうか?」
「……はい、私達は止まるわけにはいきません。」
「私もアカネと同じ答えだ。」
「……はぁ。」
私とアカネがそう答えると、少女はため息を吐く。まるで仕方ないと言いたげに。
そして目を見開くと、先程の雰囲気とは一変し、まるで戦乙女の様な鋭い視線をこちらへと向けながら言い放つ。
「出てきなさい宗冬、そして鬼面衆。アレの始末を命じます。」
「御意」
彼女がそう言い放つと同時に、何処からか4人の刺客が現れこちらへと迫り来る。
そのうちの3人は顔面に仮面を被りまるで暗殺者のような装飾をしていた。一方でもう一人は、全身が黒い影のようなもので覆わられおりハッキリと見えない。しかしサーベルを握ってこちらへ刺突を放とうとしている。故に敵意は明らかに窺える。
「ふッ!」
「私も手伝う!」
まず一番最初にこちらに迫ったのは、サーベルを持った影だった。私も即座に抜剣し、鍔迫り合いとなる。この時点での手応えとして、純粋な力の押し合いでは私の方が上。よってこのまま押し飛ばし、次は鬼面の集団を仕留めることを考えていた。しかし……
「な?グゥッ!?」
しかしその考えを浅いと言われたかのように、予想外の出来事が発生する。力では私のほうが上のはずなのに、逆に私のほうが飛ばされて壁面に叩きつけられる、という真逆の結果が引き起こされた。まるで“薄紙のように軽い”と言わんばかりに。だがすぐさま、それが夢によって構築された機能なのだと理解した。ならば、鬼面衆も同様に固有の夢を行使していてもおかしくないだろう。
幸い、アカネが剣士の霊、九尾の妖怪、氷の妖精の影たちを召喚して注目をひいてくれている。奴らが暗殺者である以上、僅かな隙すら見せてならない。だが、それでもこの立ち回りは助かる。ならば私は一秒でも早く、この影の剣士を倒さねばならない。
「ならば……」
もう一度接近し、今度は刀身に解法を纏わせて剣を振り下ろす。この剣士は戟法が特に長けている為単純な物理攻撃での突破は困難だと判断する。ならば物理的な障壁を透過し、解体する夢ならば突破できるのかもしれない。
「くっ……」
しかし、当たらない。悉くがまるで闘牛を翻弄させる
それどこら時折針に糸を通す様な鋭いカウンターがこちらの地肉を削り、的確な損傷を負わせていく。当然ながら楯法を固めて防御するが、軽化の夢の影響でまるで意味を成していない。
「破段-顕象 怪士面・黒式尉」
「グッ……ガァッ!」
「ヘル!」
加えて、背後から詠唱が聞こえたと同時に激痛が走る。振り返れば拳を握り締めた鬼面の暗殺者がそこに居た。こいつは徒手空拳を得手とする鬼面の様だが、それだけでは無いとこの瞬間理解する。
背中から生気を喪失する感覚がする。自分でも触れて確認したわけでは無いが、間違いなく皺が発生しているだろう。体力が一気に低下し、呼吸が荒くなっている。
「おのれ……グゥッ!」
振り向くと同時に鬼面に向けて拳を振るうが、それを掌で受け止められ握り締められる。拳から伝わる激痛、それと同時にそこから老化の夢が浸透する。正気に満ちていたはずの手が、一瞬にして老人の様に皺が発生する。
楯法で回復を図るも、その癒しの生気そのものを蝕む。故に下手な回復は皺の進行を加速させてしまう。故にほぼ無意味と言えるだろう。
「おやおや、これはもう対抗する術もないですかね?」
「なんの、まだ……」
「妖夢ちゃん!」
私が追い詰められた瞬間、アカネが召喚した霊剣士が縦横無尽に駆け巡り、無数の斬撃を放つ。
「人鬼『未来永劫斬』」
放たれた無数の斬撃が、鬼面衆と影の剣士の進撃を阻む。不覚、助ける側が助けられる側に救われるとは……などと悠長に考えていたのが不味かった。
「止まってください、剣士さん。」
「グゥッ!?」
百合の香を撒き散らしながら放たれた言葉は、まさに女王の重みがあった。その言葉を聞いた瞬間、アカネと霊剣士は動きを止める。まるで鎖を身体中に巻き付けられたかのように。
「どうか、戦う意志を治めてください。ここでゆっくりして世界の終末を見届けましょう。」
「そ、んな……それに、霊力が操れなく……なってるなんて。」
百合香の言葉を振り切り、アカネはどうにかして召喚した者達を動かそうとする。しかし百合香が付け加えた発言によって、更なる負荷が絡まった様だ。これで更に戦況は過酷さを増していった。
加えて、敵の標準がアカネを重点的に定め始めた。
「ヒッ……」
「グッ、オォォォォッ!」
背丈の高い鬼面が刃の雨を放ち、小柄の鬼面が姿を消して不可視の斬撃をアカネへと放とうとする。私は咄嗟にアカネの前に出て、まず刃の雨をその身で受け止めた。不可視の斬撃をこちらの剣戟で弾き飛ばし、刃の雨は楯法で体を固めて防ぐ。完全に防ぎきれず流血するが、まだこの程度は対価として安いものだ。
この生徒会室の端に追い詰められる。背後にアカネを位置させ、私は盾代わりとして身体を楯法で固めて敵の攻撃を全て受け続ける。
「ヘル、ごめん…….私のせいで!」
「構うな。お前がロストワードを解き明かさねば、全てが終わる。私如きの損傷なんぞ、大したものでない……」
なぜならば私は、人殺しをした罪人だ。いつ何処で何らかの形で傷を負っても、文句は言えない。しかし一方で、彼女は普通の人間。血の匂いなんてかけらもない。少なくとも今の時点では。
故に本来ならば、この戦地で隣立つ義務すらないはずだ。だから彼女だけは無傷のまま、元の世界の朝に返してあげなければならない。
「アカネ、隙を作るからこの場から逃げろ。そして他の者達と一緒にロストワードを探すんだ。」
「……その必要はないよ、ヘル。」
「なんだと?」
「逆だよ、この場は私に任せてヘルは休んで。」
私の肩を掴み、アカネは私の前に出ようとする。なんて愚かな事を、自分の立場というものをわかっているのだろうか?
私はここで最悪死んでも致し方ないが、お前が死ねば取り返しは一切効かないだろうに。
「何血迷った事を言ってる……お前が前に出れば間違いなく死ぬぞ。」
「それを言うなら、そうやって攻撃を受け続けていればヘルの方が間違いなく死んじゃうよ。だから私が……」
「甘い事を抜かすな。」
アカネの言葉を遮る様に、私は食い気味に言い放った。戦地においてその様な甘い理屈は通じない、生き残れば勝利、死ねば負けが原則の世界なのだから。
だからこそ、戦場において人は死を受け入れる精神力こそが求められるだろう。死ぬ覚悟を持たずに戦地に立った者は、その恐怖に打ちのめされ、何の成果も出せず恐怖と苦しみに溺れながら死ぬのが古今東西決まっている。そういう人間を何人も見てきた。
「戦場に立てば、死ぬ覚悟を持たねばならん。これは戦士であれば常識の事であり、今回は私がその時期が来ただけだ。ならば、受け入れなければならんだろう。」
「…….違うよ、ヘル。覚悟というのは、捨て鉢になる事じゃない。」
「……何?」
それでも尚、決して引かずアカネは反論して言い返す。その意思は断固として固く、一歩も引く様子が感じ取れない。
「確かにこういう戦いの場はでは、死ぬ覚悟も必要なのかもしれない。だけどそれだけじゃ、命を犠牲にする覚悟しか生まれない。ダメなんだよ、それだけじゃ……」
「……ならば、他に何が必要だという?」
そう私が問いかけると、アカネは柔らかく微笑みながら答えたのだった。
「生き残る覚悟だよ。最後まで諦めず生きようとする勇気が、希望を生み出し私たちの進むべき道を示すと私は思う。」
「……その根拠はあるのか?」
「あはは……ごめん。それは無いかな?だけど今までの異変を振り返ると、何となくそれが正しいんじゃ無いかなって思うんだ。どんなに絶望的な状況でも、私は最後まで人として真面目に生き続けることを諦めたく無い。」
「………」
アカネの解答は、ハッキリ言って今の私には理解不能だった。仮に理解できたとしても、その様な無根拠な理屈では役に立つ理論とは思えない。だがしかし、不思議と私の記憶の蔵に焼き付けられた。
まるで、それこそがずっと私の追い求めた答えの様で……
「だから、そこで待ってて。今度は私が、ヘルを護る番だ。」
「あっ……」
そう言いながらアカネは、手帳を片手に私の横をすり抜けて前に出ようとした。その瞬間、私は無意識に呆けた声を出して見届けるだけだった。
勝手な理由で勝手に戦地へ躍り出る。ならばその責任は、本人自身のものとなる。故に勝手に戦わせ、勝手に死ねば良い。それは私の責任にならないのだから。筋としては、それが通っている。
「だが、私は……」
しかし、私の思考の中で『死なせたく無い』という結論が優先して出始めだ。何故だ?
ロストワードを解けるのは、現状彼女だけだから?それはその通りだ。実に重要なこと。私の求めてた答えを出し、その義理を返すため?それも理由としてあり得るだろう。
「……」
ああ……だがしかし、どちらも根拠として強く無いと思う。ならば一体、何故私はその様な思考に辿り着いたのか。
前線に出たアカネの前に拳の鬼面が接近し、顔面に老化の拳を直撃させようとする。彼女と縁を結んだ者を呼び出すのが間に合うか、曖昧な距離と速度だ。ならば私は……
「……私は。」
「………ヘル?」
「破段-顕象
気が付けば私は、破段を発動しつつアカネの前に立って鬼面の拳を受け止めていた。自分でも全く、無意識な行動だった。拳を受け止められた鬼面も、驚愕したように僅かに体を震わせる。そもそも起こるべき老化現象が起きてないのだから。それはひとまず、置いておこう。
今の私が優先して考えるべきことは、不思議な程に頭が冴え渡り、歯車と歯車がしっかりと噛み合ったような快適さが全身を巡らせていた。ああ、私が見つけた答えは……
「アカネ、お前の答えは確かに私の記憶に刻まれた。だから今度は、私の答えをどうか聞き届けて欲しい。」
「……うん、聞かせて。」
「お前言った通り、今の私には生きようとする意志が圧倒的に足りなかった。だから、その気持ちに決着をつけるために、どうか私の力で『友』であるお前を護らせてほしい!」
それこそが私の答えだ。母が聞けばなんて低俗な、なんて返答がきそうだ。だが、それこそが正しい進むべき道だと確信している。
さて問題は、アカネ本人が私の事を友と思ってくれてるかどうかだ。もしも友になるための条件があるのならば、まずそれを全て満たす必要があるが……
「うん、分かった!私もヘルの友達として、それを見届けさせてもらうね。」
「心得た、そこで待っているが良い!」
どうやらその問題もなさそうだ、ならば全力で護るために戦える。私が何者か、記憶も少しずつだが戻ってきた。
さあ、今度はこちらの反撃開始だ。私は掴んだ拳を握り締め、驚愕している鬼面を遠くへと投げ飛ばした。
「……茶番は終わりましたか?ふざける様ならば、死んでください。」
「破段-顕象 夜叉面・阿修羅」
「破段-顕象 泥眼面・橋姫」
ユリカがそう言い放つと同時に、二人の鬼面が夢を解放しながらこちらへ攻撃を放つ。
まず長身の鬼面が跳躍し、今までと比較して3倍程の量の刃の雨を降らせる。眼前に迫りくるそれらを全て、一本一本剣で弾き飛ばす。
「ッ!?」
長身の鬼面はその光景に困惑した様子を見せ、その隙に私は一気に距離を詰める。
その直後に長身の鬼面は、破段で増やした4本の腕を巧みに操り、退路を可能な限り出さないよう巧みに動かして攻撃を放ってくる。
「ならばその全ての腕を、粉砕するまでだ。」
迫り来る四本の腕を剣で両断し、時には拳で握った刃ごと粉砕する。これで白兵戦の手段が殆どなくなった鬼面に、トドメとして顔面の鬼面に拳を叩き込んだ。
「ッ!」
悲鳴を上げることなく鬼面が粉砕されれば、まるで最初からいなかったかのように長身の鬼面は消失した。
これで一体討伐完了、などと油断はしない。
「狙って来ているのはわかるぞ。」
「ッ!?」
私はそう言い放ちながら、裏拳を背後へと振り返りながら放った。そこには一見何もいないように見えるが、拳が小柄な鬼面に直撃した。奴らの本質は暗殺者、味方がやられればその隙に獲物を狩るのも手段の一つだ。
だが流石にそれくらいは私も熟知している。故に拳を叩き込むと同時に、解法を纏わせ透過の夢を無効化させた。かなりの解法の使い手のようだが、今は私のほうが上だ。
「貴様と長身の鬼面は相性が良いからな、奴がやられればその瞬間狙ってくるのは見えていたぞ。だが、貴様の暗殺もこれで終いだ。」
「……」
そしてとどめの刺突を放とうとしたが、それは回避され姿を消した。だがしかし、逃がすつもりは毛頭無い。視線に解法による解析の夢を打ち込む。
結果、透過してアカネの方へと迫っている姿を視認する。それと同時にこちらが奴を視認したのを実感したような動きを見せた。どうやら奴は、こちらの思考を読み取る夢を持っているようだ。急いで油断しているアカネを始末するつもりだ。
「そんな事を、許しはしない。」
奴との距離は10m程だ。奴がアカネを始末するよりも、私が接近するほうが早かった。加えて獲物のリーチが大きく働いた。奴の場合は対象にかなり接近しなければ届かないが、私の場合は刺突を放てば、中距離を一気に稼げる。
よって、半ば跳躍しつつ刺突を放ちながら接近した私のほうが奴に早く届き、細剣の刃が小柄な鬼面の胴体ごと貫き消失させた。
「…….」
その直後、一瞬だけアカネと視線がぶつかった。そして刹那微笑みあって再び戦況へと戻る。
振り返れば、こちらに接近するのは拳を振り翳す鬼面だ。その拳には明らかに老化の夢を纏わせていた。
「フッ!」
故にこちらも拳を振り上げ、互いに衝突させた。その直後、血飛沫を上げながら砕けたのは基面の方だった。
小さな悲鳴が聞こえた気がするが、僅かに笑い声が聞こえた。なるほど、誰かの血を見るのが余程好きなようだ。
「ならば来い、相手してやる。」
私は手をこまねきながら、そう挑発した。すると喜んだような声を上げながら、もう一つの拳を振り翳した。それを私は掌でしっかりと受け止め、握り締めた。アカネを守った時と全く同じく、老化現象が起きていない。
これで偶然の出来事ではないと改めて認識したようで、拳の鬼面は身体を硬らせる。
「貴様の夢はもう“理解”した、だから同じ夢の密度ならば最早通じぬぞ。」
そう、私の破段はそう言うものだ。一度、自身の体で受けて理解した攻撃や夢、それに対する耐性を得た肉体へと成長することが出来る。即ち再生と無効化を体現した夢と言えるだろう。
よって、老化現象の夢をこの身体で受け、その夢に対する耐性のある肉体へと成長した。よって、奴の夢が更なる高みへと至らない限り、この肉体に影響を及ぼすことは不可能だ。
「これで終わりか?ならば、今度はこちらが殴らせてもらうぞ。」
そう言い放ち、逃さないように掴んだ拳をしっかりと握る。そして剣を床に突き刺し、お返しと言わんばかりの拳に戟法と解法を纏わせた拳を奴の鬼面へと叩き込む。
奴は回避すること敵わず、鬼面が粉砕されながらその姿を醒めた夢のように消失していった。これで残るは影の剣士とユリカだけだ。
「そこ迄です、どうか闘う事をやめてください。」
「……」
変わらずユリカは女王の様に椅子に座りながら、百合の香を撒き散らしながら静止の言葉を私に向かって言い放つ。
私は真に破段を獲得した事で、当然ながらこの香りに対する耐性も得ている。しかしそれでも、何者かに足を掴まれているかの様な動きにくさを感じる。だが、言い換えればその程度だ。強引に動かせば気にする程でもない。
「来い。」
「ッ!」
そう呼び掛ければ、ユリカの側で待機していた影の剣士がこちらへと迫った。私もそれに応えるように、疾走して正面からぶつかり合う。
軽化の夢も、破段によって耐性を得た。故にこちらの攻撃も防御も無力化される事なく、後は強引に力押しで勝てる…….なんて簡単にことが運ぶことはなかった。
「……ッ!」
「ヘル!?」
この剣士、夢だけでなく純粋な技量も高いのだ。軽化の夢に依存せずとも、巧みな足運び、そしてこちらの筋肉の動き、予備動作で剣筋や拳の軌道を予知し、あらかじめ回避している。
そして返し技として放たれるカウンターの一閃、こちらの隙と力を利用している。故に破段で強化した筈の肉体に確かな損傷を刻み込む。
「だが、ここで引くわけにはいかないッ!」
影の剣士とは、ここで決着を付ける。技量面では確かにあちらが上だが、力も身体能力面でもこちらが優っている。多少雑で強引だろうと、こちらの流れに持ち込めば良い。
故に力と速度を惜しみなく、過去最高の出力で接近して剣戟を絶え間なく出し続ける。刺突、横薙ぎ、振り下ろしなどひたすら剣を振り続ける。
「ッ!」
一方で影の剣士は、防戦一方の状況となった。やはり軽化の夢が通じなくなったことで、突破口が無くなったに等しいのだろう。今も尚出し続けているが、先も言ったように私の破段と圧倒的な夢の出力によって、事実上無効化されている。剣の技量による応戦も、最後の足掻きに等しかったのだろう。
故に、ここで荒々しい戦法だが決めさせてもらおう。激しい剣戟で足元への集中が疎かになっており、その隙を突いて大雑把に接近し、震脚する勢いで思い切り影の剣士の片脚を抑えつける。その余波で、生徒会室全体が地震が起きたように激しく揺れた。
「きゃあああっ!?」
「……」
「ッ!?」
「これで、終わりだ。」
アカネは悲鳴をあげ、ユリカは静かにこちらを見届けている。
脚を粉砕されながら押さえつけられ、影の剣士は動けなくなった。その隙を突いて私は剣を全力で振り下ろす。軽化の夢が“軽くなれ”という意志の力で剣戟を防ごうとするが、最早それは通じない。死神の鎌が首を刈り取るように、細剣が影の剣士の胴体を袈裟斬りで両断し消滅した。この勝負の決着がついたのだ。
オマケ
「
第三盧生 クリームヒルトの五条・破ノ段。
その効果は「肉体の再生と成長、そして受けた力に対する攻撃や能力に対する耐性を得る」というもの。基本的にこの夢の強度は、クリームヒルト本人の精神力が主柱となっている。その為、受けた力や能力の本質を理解し生き残ることで、それらの耐性を得て事実上無効化することが可能。突破するためには、クリームヒルトが耐性を得た時以上の密度や練度が求められる。ミオスタチン関連筋肉肥大化という、異常体質を体現した夢と言えるだろう。
簡潔な概要を纏めると以下の通り。
・無効と再生、成長を加速させる夢。
・一度体で受けて理解した攻撃や能力に対する耐性力を得る。(そのため逆サ磔は原則効かないことになる。ただし万仙陣は例外)
・純粋に耐えられる火力の上限は、盧生の精神力を凌駕する攻撃力が無ければ突破できない(具体例:ラインハルトの黄金の髑髏が放った国破壊ビームや、ヴァルゼライドのケラウノスクラスの攻撃)
・邯鄲の夢の埒外、かつ極限の技術であれば突破可能。(水希レベルの剣術)
前回と比較して、明らかに長くし過ぎた内容となりました。
この戦闘は書いてて楽しかったのですが、その反面上手く纏め切れなかったのが反省点ですね……複数戦はまだ慣れてないと改めて実感しました。
ひとまず、ヘルの創作した破段の性能はこんな感じです。接近戦をより有利に立ち回り、fateのヘラクレス並みに並の戦法じゃ突破が難しいややチート気味な夢にしました。折角あんな白兵戦向きのステータスをしてるのですから、それを活かせる夢を得るべきだと考えたので。感想や意見をいただければ、リメイクでもその改善点や反省点を反映させてみようと思います。