本当は1月の頭くらいに更新したかったのですが、イベント盛りだくさんやリアルの事情でなかなか出来ませんでした。さて、細かいことはさておき、いよいよこの物語も終盤へと入り込みました。
憎い
憎い、憎い
憎い、憎い、憎い
我が魂に滾るは憎悪の炎、憎しみの感情。その矛先は、我を排除した神々と人類に向けると決まっている。
傷は殆どが癒えた、唯一の協力者の人間に情報を提供する代わりに、じっくりと傷を癒せる空間を貰った。しかしもうすぐこの空間も不要となる。
外の時間がどれ程経ったのかは知らないが、我には関係ない事。あの人間が目的を達成する前に出ればいい。
さあ、行こう……人類鏖殺の始まりだッ!
「はあぁぁぁぁッ!」
「キャハハハハッ!」
相模湾の海岸にて、少女たちが戦闘を繰り広げていた。その中心となっていたのは、背中から羽を生やし赤い服を着た少女フランドール・スカーレット。そしてそれと相対するのは日本刀を握った黒髪の少女、世良水希だった。
その余波によって砂浜に深い溝が出来、時に海面に爆撃が炸裂したかのように巨大な水柱が発生したりする。しかしその戦闘の痕跡も、瞬く間に回復していった。それを成したのは……
「水希、あんま無茶な動きして私の範囲から出るんじゃねぇぞ!」
「分かってる!」
黒髪の少女の背後に陣取っている少女、真奈瀬晶が、癒しの光を発する帯によって周囲に癒しを施していた。無論、あくまで対象は刀を握る少女。敵対している者達を範囲内に含めないように帯を巧みに調整している。
その様子を見て、羽の少女は苛つき悪態をつく。
「あーもうあの帯が鬱陶しい!折角の弾幕のダメージが無駄になっちゃうじゃん!」
「落ち着いてフラン、焦ったら益々向こうの思う壺になるわ……はぁ、はぁ。」
「パチュリー様も、あまり無茶をしないでください。し、しかし中々厄介な相手ですね……」
フランドールの背後には、パチュリーと小悪魔がいた。彼女達はフランドールを支援する形で弾幕を放っていたが、それでも今までの全弾を含めて被弾したのはたったの一割だ。の悉くが水希の純粋な回避、時には夢を巧みに操って迎撃、直撃を防いでいた。その様子を見てパチュリーは舌を巻かずにはいられなかった。
(この子達の名前は、確か世良水希と真奈瀬晶って言ってたしら。厄介な組み合わせね……大抵のことはこなせる万能剣士と回復特化のヒーラー。ヒーラーを奥に添えて回復に専念させ、剣士に好きなように戦場に出させる。シンプルだけど、だからこそ突破方法が思いつかない……フランを雑にでも暴れさせればいけると思ったけど、これはダメそうね。なら……)
「ならば、まずは回復役から!」
そう言いながら小悪魔が、猛スピードで突進を開始する。狙いは帯を操る晶、水希はフランドールに集中しているため、狙い目と判断する。
実際、水希が進路を阻むことはなかった。そのまま晶へと直撃する……かに見えた。
「なんの、それくらい読めてるぜ!」
「え、ちょっ!?」
しかし晶は、小悪魔へと目がけて帯を閉じ始めた。ヤケクソになって単純に帯で攻めてきたか?いいや、それだけでないとパチュリーは判断する。
すると、帯が帯電しているを見て危険だと理解した。
「日符 『ロイヤルフレア』」
「ちぃッ……」
パチュリーは頭上に炎熱を発生させる魔力を放出させ、帯を焼き払った。晶もそれに巻き込まれまいと一旦距離を取る。
「今よ小悪魔、そこから距離を取りなさい。」
「は、はい……しかしパチュリー、今のは……」
「恐らく、回復の反転作用が施されてたわ……もしもわずかでも触れてたら、貴女はバラバラになっていても可笑しくなかったわ。」
「ヒィッ!?そんな恐ろしい効果があったなんて……」
「あくまで直感だけど、何にせよ下手に直撃しないに越したことはないわ……」
「ですがどうしましょう……このままでは妹様も、私たちも持ちません。」
「そうね……かなり厳しい状況だわ。」
小悪魔の言葉を聞き、パチュリーも疲弊した声を上げる。実際互いに冷や汗だらけで限界なのが素人目から見てもわかるだろう。
しかし、その様子を見てフランドールは声を荒げる。
「もう、パチュリー考えすぎ!」
「……フラン?」
「あれもダメ、これもダメって悩んで考えてれば戦いに勝てるの?そんなことやってるなら、適当でも良いから攻撃してちょっとでもマシな状況にしたほうがいいでしょう。」
「い、いや……下手に攻撃したら痛い反撃を喰らうと思うのですが……」
「そんなの知らないわよ、どうあれあっちは攻撃してくるんだから。」
「………」
小悪魔の返した言葉に対し、まるでそれを鼻で笑うようにそう言い返すフランドール。その様子を見てパチュリーは思わず口端が緩む。
「とにかくパチュリー、貴女はあまり悩みすぎないで。時には適当にやったほうが、案外上手くいくものよ?じゃ、私行くから。」
「……えぇ、わかった。」
そう言い残してフランドールは飛び立ち、水希に向かった無数の弾幕が放たれる。まるで絨毯爆撃を連想する量で、相模湾の海岸の砂浜に土煙が広い範囲で撒き散る。
「……全く、凶暴な子ね。」
「きゃはははは、だって退屈なんだもん!」
「そう、なら何度だってあってになるわ。かかって来なさい。」
「上等よ、禁忌『レーヴァテイン』」
しかし水希は傷一つ無い姿で土煙の帳を開き、一気にフランドールとの距離を詰める。フランドールはすかさずスペカを解放し、紅い一条のレーザーを縦横無尽に振り回す。目に見える範囲のビル群が綺麗に両断され、海岸と海面に深い溝を刻んでいく。
「甘い」
「くッ!」
しかし水希はその攻撃を全て見切り、無駄な動きを一切せず回避していく。その身体にレーヴァテインが被弾する事なく、まるで水中の魚の様に流暢な動きで潜っていく。
「ハアァァァッ!」
「え……キャアッ!?」
間合いまで距離を詰め、白刃が煌めきを放つ。即座にフランドールは至近距離で無数の弾幕を放つが、当然の様に回避、時には刃で切り落として一閃を放つ。咄嗟に障壁を張るがまるで薄紙をハサミで切る様にあっさりと刃が障壁を貫通する。
しかし、頬を切り裂かれはしたもののどうにかフランドールは回避した。そして目の前で起きた現象を、自分でも驚くほどに冷静に分析する。
(今のは……恐らくこいつらが操っている能力は無関係。まるで私の能力の様に、あらゆる物にある“一番弱い箇所”に刃を通していた気がする。或いは、作り出した?それは分からない……だけど、一体どうやって?)
フランドールの所有する能力は“ありとあらゆる物を破壊する程度の能力”というもので、それは万象に偏在する一番脆い箇所を自身の掌に手繰り寄せ、それを粉砕する事で対象を破壊すると言うものだ。当然弾幕勝負では、不平等が発生するためまず使われない能力だ。しかし過去の異変では隕石を破壊した功績もあり、破壊するという点では幻想郷の中でもトップクラスの異能と言えるだろう。
しかしフランドールは、水希の剣術もそれに近しい原理で障壁を貫通させたと感じ取った。具体的な詳細は不明、しかしそうとしか思えなかったのだ。だが結局は答えが出ず……
「フラン、下がって!」
「パチェ……ッ!」
などと頭を巡らせている最中、パチュリーの張った声が聞こえた。すると即座に水希から距離を取る。
それを確認すれば、パチュリーの周囲に膨大な魔力が渦巻き水希と晶を包み込む。
「これは……」
「ちょ、おいおい……」
「錬金術の到達点、五大元素の結晶……出し惜しむと思ってたなら、大間違いよ。」
フランドールは言った、時には思考を捨てて適当にやったほうが良いものだと。体力が無いからこそ、慎重かつ安全に事を運びたいパチュリーにとってはその考えは基本的には反対だ。
しかし、ここで敢えてその意見に従うことにした。実際もう他に手段は思い浮かばないからこそ、思い切り自分の
『最後の賢者の石』
「ぐっ、ガァァァァ!」
「晶ァッ!」
瞬間、パチュリーが地面に手を付ければ5つの魔法陣が二人の足元から発生する。そしてそこから火、水、木、金、土の属性を帯びた五色の結晶が発生し、炸裂する。
水希は咄嗟に跳躍、それと同時に体を透過させ被害を最小限に抑えた。しかし晶はそうもいかず直撃し、激しく弾け飛んでいった。
「はぁ、はぁ……どうよ?私だって体張ってやる時はやるのよ……」
「パ、パチュリー様!なんて無茶を……」
「はぁ……そうは言っても……みんな無茶でも何でも、やらなきゃどうにもならない状況だったでしょ。まあ、もうこれ以上のことはできないけどね。」
フラフラな状態のパチュリーを、小悪魔は支えつつそう言った。しかしパチュリーは額の汗を拭いつつそう言い返す。とはいえ、もう手札は出し尽くした。せいぜいが護身用の弾幕くらいしか出せない状態だ。
しかしそんな二人の前に、水希が立ち塞がる。
「そう、だけどお生憎様。まだ私が残ってるわよ。」
「ヒッ!?」
「……まあ、そうなるでしょうね。だから次は貴女の番よ……フランドール。」
「ッ!?」
背後から強烈な殺意を感じ取った水希、振り返るとそこには膨大な魔力を溜め込んだフランドールがいた。心臓を射抜くかの様な視線、獰猛な笑みを浮かべながら渾身のエネルギーを叩き込む。
『閉じ行くシュワルツシルト半径』
「ガァッ……あぁぁぁぁぁぁっ!」
フランドールのラストワードは、端的に表現するならば擬似的なブラックホールの発生と言えるだろう。巻き込まれれば恐らく光ですら逃れられまい。
事前にパチュリーは小悪魔に範囲外まで運んでもらったが、水希は直撃を喰らっている。極限まで透過させて逃げ込もうとするものの邯鄲の夢は万能にあらず、限界がそこまできている。どれほど水希が天才であろうとも無理なものは無理だ。
「……あぁ、駄目だ。そろそろ限界かも。」
「へぇ、まだ生きてたんだ。人間なのに意外と頑丈なんだね。」
「だけど……これだけは伝えなきゃ。お願い、月が無くなる前にどうか失ったモノを取り戻して。」
「……月が無くなる前?」
「どういう、事でしょうか……」
不思議に思い、パチュリーは頭上の月を見上げた。するとさっきまで半月だったはずの月が、既に三日月へと変わっていた。明らかに闇が広がっている。
「もしかして、新月になった時に何か起きる?」
「はい、どうやらその様です!」
「美鈴、それに咲夜も!」
背後から声が聞こえ、振り返ると辰宮邸から戻ってきた咲夜と美鈴がいた。損傷だらけの姿を見るに、交戦していた様子が見られる。
「その様子じゃ、貴女達も?」
「はい、新月になると何か脅威が弾き起こると聞きました。恐らく、ロストワードを早く探さないと取り返しのつかないことに……」
「そのようね、ならまずは朱音と合流を……」
そう行動に移ろうとしたその時だった、足元で何かが蠢くのが見えた。それは全身が黒く塗り潰された蛇だ。しかも大量の蛇が足元を通過し、海の方へと向かっていく。
「ちょっ、気持ち悪っ!?」
「しかも一体何が目的で……」
美鈴と咲夜がそう訝しんだ声を上げる。その直後、海面が脈動を打ち、鎌倉全域に地震が発生する。海面を見るパチュリーたちに緊張が走る。何か恐ろしいものが、海面から浮上しようとしている。そして、大きな水飛沫を撒き散らしながら現れたのは……
「……竜?」
全長50mはある、漆黒の西洋竜だった。
霊夢は歩いている、薬品の匂いがプンプンとする廊下を。汗の滴がタラリと床に落ちるが、それを気にする余裕が無い。最奥に近付くに連れて、心臓の鼓動が早くなる。この奥に、この異変を引き起こした犯人が待ち構えている。
扉が視界に映る、それをひらけば恐らくご対面だ。今更引き返せないし、そのつもりは微塵もない。私たちの幻想郷に帰るために、そう胸に抱いて扉を開いた。
「……此処は。」
扉を開き、目に映ったのは中心に奇妙な機械が陣取った不思議な空間だった。周囲には奇妙な機械が所々置かれており、どこか実験場の様な雰囲気を感じさせる。
「ようこそ私の実験場へ、歓迎しますわ博麗の巫女様。」
「……へぇ、あんたがこの異変の犯人ってわけね。」
奥から女性の声が聞こえ、そこへ視線を移す。そこには銀髪と翡翠色の瞳が特徴的で、右目を眼帯で覆い科学者らしい白衣を羽織り、その下にはドイツ帝国の軍服を身に纏った妖艶な女性が笑みを浮かべながら霊夢へと歩み寄ってきた。
「で、私の事は知ってる様だけどあんたはの名前は?大体もう察しはついてるけど。」
「私の名はカリーナ・レーベンシュタイン、娘がお世話になっています。」
そして彼女こそ、第三盧生の生みの親であった。
そんな訳でいよいよ現れました、第三盧生のお母さん(オリキャラ)です。
次回はいよいよ彼女の戦闘を予定しています。どうぞ次回の更新をお待ちください。