第三盧生が幻想入り   作:ヘル・レーベンシュタイン

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いよいよ決着の時です!


第八話 決着

 

「.....」

「.....」

 

クリームヒルト、そして佐々木小次郎の両者は沈黙している。そしてそれを見守る霊夢と妖夢、そして朱音も口を閉じてその光景を見守ってる。細波と木の葉を揺らす風だけが音を彩っていた。

勝負は一瞬、両者の放つ渾身の一手が勝負の行方を決めるだろう。

 

(ああ、思えば懐かしいな....かつてあの男と戦った時も、この場所でこんな風にやってたっけなぁ)

 

その最中、小次郎の脳裏にはかつて敗北(かこ)のが浮かび上がってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女は家族と縁を切り、そしてかつての名を捨て『佐々木小次郎』と名乗って旅をしていた。旅の中で数多の剣豪と結び、時には妖怪退治を行うことも珍しくなく、そうしている内に大衆から剣聖と呼ばれるようになった。もっとも、当の本人はその事には何とも思っていなかったが....

そんなある日、彼女の元に1人の老人が現れた。

 

「失礼、佐々木小次郎という剣豪はここに居るか?」

「.....如何にも、佐々木小次郎は私だが?」

 

その老人は当時の小次郎から見てもあまりに異質だった。過去に手合わせをした剣士たちと文字通り比較にもならない。まるで数千年の時を生き、今もなお修羅の道を突き進む剣鬼に他ならなかった。

その男は、不思議そうに眉を顰めた。

 

「ほう、名前からして男かと思っていたが、その容姿から見るに女であった。」

「女が剣士をしてはいけないかねぇ?」

「まさか、その様なつもりで言ったのではない。力の有無に性別は関係ない。儂は決闘の申し込みに来たのだよ。」

「.....決闘?」

 

すると老人は懐から紙を取り出し、それを小次郎へと渡した。そしてその後に何も言わずにその場を立ち去った。

 

「.....変な男だ。」

 

小次郎は訝しみながらもその紙の内容に目を通した。そして小次郎もまた、その場を後にしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数日後。巌流島にて。

 

「約束通り来たか、佐々木小次郎よ。」

「ええ、あんたの首をもらいにね。」

 

海岸に2人の老剣士が邂逅を果たした。互いに視線を交わすと、小次郎の方から口を開き質問をした。

 

「その前に、あんたの名前を教えてもらおうか。」

「おお、これは失礼した。すっかり忘れてたな....儂の名は『宮本武蔵』だ。」

「へぇ、宮本武蔵ね....」

「....だが、これも偽りの名だ。せっかくだ、貴様に伝えておこう。儂の本当の名は■■■■だ。」

 

確かに当時は聞き漏らしていなかったが、長い時を経て女の記憶から、その老剣士の本当の名を忘却してしまった。

そして今度は、武蔵の方から質問が返される。

 

「佐々木小次郎よ、戦う前にこちらからも一つ問いたい。」

「ほう、何だい?」

「汝にとって『剣』とは何だ?」

「....何だいそのつまらん質問は?言うまでもなく、『人殺し』の象徴だろうに....」

 

武蔵の問いかけに小次郎は鞘から剣を抜き、鞘を捨てながらそう答えた。すると、老人もまた失望した様な表情を浮かべて言葉を返す。

 

「そうか、汝はそこで止まっているのだな....ならば言わせてもらおう。小次郎敗れたり!」

「なん.....だと?」

「否と思うのならば儂に勝ってみせよ、佐々木小次郎よ!」

「......応とも、■■■■よ!」

 

そうして、両剣豪の決戦が始まった。そしてその結果は語るまでもなく....そうした過去を経て小次郎は今に至るのであった。

 

(あの時、武蔵も私の出した答えに不服を抱いていた。そしてあんたは別の答えを出そうとしている。ならば見せてもらおうとするかね。ただし、私に勝てない様な答えならば、その首斬らせて貰うよ。)

 

そう思いながら、小次郎はクリームヒルトの姿を見据えていた。彼女の答えを見定め、落第点ならば斬り捨てる決意を抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....さて」

 

眼前から放たれる弩級の殺意を浴びながら、私は鞘に収めた剣に夢を集中させていた。今この瞬間こそ大一番、失敗は決して許されない。何故なら、おそらく過去に誰も試したことのない5種の夢の同時使用を行うのだから。

 

「戟、楯、咒、解、創.....剣を納めると同時にこれらの夢を融合させ集中する。」

 

その瞬間、かつてないほどの領域で夢が全身を駆け巡る。かなり無理な夢の行使だったが、どうにか制御はできた。

そして次にアラヤへと意識を向ける。

 

「うまくいったようだな、では次は私の番だな。覚悟はいいな?」

「ああ、頼む。」

「では....」

 

その瞬間、私の脳裏には膨大な量の情報が押し寄せてきた。それはかつて八層試練の記憶統合にも勝るとも劣らない量だった。阿頼耶識と結合した盧生は、全人類の心の海の過去から現在、そして未来の情報を知ることができる。その中から、まずは幻想郷で私に関わった人物達の情報を最優先でかき集める。

まずは幻想郷の大まかな概要から、土地の情報、そしてレイムにヨウム、ユカリにアカネ、そしてコジロウの意志や情報などなど.....ありとあらゆる情報が私の脳裏へと刻まれていく。常人であれば今頃廃人になってもおかしくないだろう。だが私は、その情報の海から目を逸らさず、一つ一つ見極めて吟味していく。

 

「そしてその中から、私が討つべきモノを見極める。」

 

そう、この判断を見誤れば私自身の真を貫くことができない。故に私は天上から奈落に続く情報全てを見極める覚悟で、この情報の海を処理していく。

そして.....

 

「....見極めたぞ」

 

この瞬間、私のやるべき処理を終えた。あとは実行に移すだけだ。さあ、覚悟するが良い佐々木小次郎。貴様の妄執をここで終焉を迎える。

抜刀の意思と同時に私は最後の切り札の名を口から放つ。

 

「.....ラストワード『デスサイズ』」

 

そう呟くと同時に剣の柄を握り、鞘から刀身を引き抜く。それと同時に内包していた5種の夢を全力で解放した。膨大な密度を纏った剣戟を放つ。だがその瞬間.....

 

「はぁッ!」

 

10mはあったであろう距離を、コジロウは一瞬にして詰めて私の居合切りを阻止した。しかも刀身で止めるだけでなく、闘気(オーラ)を身に纏っている。

その光景を見てレイム達は驚愕の声をあげる。

 

「なっ、嘘....何でわざわざ?」

「全くです.....ヘルはその場で居合切りをしようとしていた。普通に考えれば、敵が剣の間合いに居ないそれはまさに無意味。であれば空振りの後を狙えば小次郎の勝ちが確定でしょうが....」

(ああ、私も最初は剣の娘の言う通りの手順を考えたさ....だけど、私の本能が告げてたんだよ。このまま『剣を振らせたら危険』だと!理由はわからないが、そうだとしたら振り切るのを阻止するまで!)

 

闘気と死が激突する。衝突している空間が蜃気楼の如く歪み、火花が辺りに飛び散る。その最中、私の剣戟を受け止めているコジロウは表情を歪ませながらも、その瞳に宿る意思は決して揺らぎがない。

 

「うっ、おぉぉぉぉぉぉ!!」

「.....」

 

一方で奮起するコジロウに対し、私自身言葉一つを漏らすことができない状態となっていた。何故なら5種の夢を同時に操っているのだから。いくら盧生と言えど、その行使は決して容易いモノではない。夢を操る意思の集中力が僅かでも揺らげば無茶の代償として肉体が崩壊し、私の決断と行動が全てが無意味無価値になり得るのだから。

 

(しかし、この居合切りは何て威力だ。意識を全て防御に移さなければ一瞬で飲まれてしまう....クソッタレ、絶影の一体すら動かすことがままならない。だが見てろ死神、この一撃を回避したあと、私と私の絶影の全てがお前に燕返しを叩き込んでやる。)

 

そしてどうやら、コジロウは私が無防備になった瞬間にあの技を叩き込むつもりらしい。確かにそれは正解だ、無防備になった敵を見逃す馬鹿はそうはいない。ましてやその瞬間の私は文字通り丸裸、全ての夢を一気に放出した反動として夢の一欠片すら絞り出せない状態になるのだから。

まあもっとも、それを『狙う』ことができたらの話だがな。

 

「くっ、ううっ....」

 

そしてこの均衡も僅か、コジロウの纏っていた闘気(オーラ)に亀裂が刻まれ、あと僅かで崩壊するだろう。そう考えた時だった。

 

「はあぁぁぁッ!」

「あっ.....」

 

コジロウが全力で刀を振り払ったことで、そして私の剣戟が大きく逸れた。剣先がコジロウの毛先にすら触れることなく空を斬る。即ち、私の放った剣戟は空振りをしたことに他ならない。

 

「....良い一振りだったよ。だけど、私の勝ちだ....」

「へ、ヘルゥゥゥゥッ!」

「ダメ、行ったら巻き込まれるわよ!」

 

アカネが悲鳴のように私の名を叫ぶ。そして、勝ちを確信して笑みを浮かび上げるコジロウ。そしてゆっくりと、彼女と彼女の分身が剣先を私に向けようとする。無論、今の私に燕返しを防ぐ手段は持ち合わせていない。だが.....

 

「....え?」

「へ?」

「あっ.....」

 

次の瞬間、コジロウの刀の刀身が割れ、その破片が宙を舞って地面へ突き刺さった。その唐突な出来事に私以外の全員が目を見開く。

そして異変はこれだけに収まらない。

 

「な、馬鹿な....私の絶影が!?」

 

視界を埋める程に存在していたコジロウの分身全員が『斬撃』を刻まれ一瞬にして消滅していた。一体でも残っていれば再び増殖したであろうが、これで分身の脅威は無くなった。

 

「これが....ヘルのラストワード?」

「....これはまた、とんでもない剣術ねぇ。」

「馬鹿な、アレはただの居合切りでは無かったと....」

 

ヨウムは感嘆の声をあげ、レイムは呆れたように苦笑していた。ああ、私自身もなんだかんだ成功して良かったと思っている。

そしてコジロウは驚愕の顔を浮かべていた。まあ詳細は後で話すとしよう。何より、1番の狙いは.....

 

「ッ!ガァッ.....」

「な、小次郎!?」

 

コジロウが小さな悲鳴をあげ、そしてゆっくりと倒れていった。出血もなければ身体のどこにも傷は付けられていない。だが何故倒れたか?

それは、私のラストワードでコジロウの中の『ソレ』を殺したからに他ならないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、今回で佐々木小次郎戦は終了となります。
そしてクリームヒルトのラストワード『デスサイズ』のお披露目となりました。本当に出したくて出したくて仕方ありませんでしたよ.....

ラストワードの詳細は次回のストーリーの中で、そして足りない分の説明は後書きの方で詳しく掘り下げていきたいと思います。
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