列強においてこのバルチスタ沖海戦はとても重要な物であったがだからと言ってそれ以外の国家が何の関係もなかったわけではない。ヒノマワリ王国ではグラ・バルカス帝国の圧力に屈する事となり、属国化してムー侵攻の前哨基地へと変貌しつつあった。それ以外の第二文明圏の国家でも少なからずの衝撃が駆け巡っており、特に自らの沿岸で起こったニグラート連合ではグラ・バルカス帝国に降伏するべきなのではないか?と言う意見が一定する出てきている程だ。
しかし、そんな一方でそれ以外の第一、第三文明圏は真逆の反応となっている。そもそもグラ・バルカス帝国からかなり離れている事もあって彼らの事を知る事は難しく、バルチスタ沖海戦が列強艦隊の勝利と言う事でお祝いムードとなっていた。
「シーランド帝国はかなりの損害を受けているがその対策も始まっている。グラ・バルカス帝国がこれ以上の勝利を得るのは不可能だな」
ルミエスと結婚し、婿養子に入ったアーロンは近代国家として発展しつつあるアルタラス王国を眺めながらそう呟いた。親族がいるからだろう。アルタラス王国は最もシーランド帝国の恩恵を受けてその国力を大幅に伸ばしつつあった。フィルアデス連邦で格安で販売されている銃火器を主要武器とする軍隊の編成も行われており、1個師団1万5000人程の戦力を有していた。海軍においては将来更新する事を前提にパーパルディア皇国の魔導戦列艦がそのまま運用されている。アルタラス王国はかつてのパーパルディア皇国並みの軍事力を持つ国家へと成長していたのである。
無論、軍事以外の面でもアルタラス王国は発展している。王都ル・ブリアスを中心に自動車の走行を前提とする巨大道路が島中を通っており、それらは全てアスファルトで補強されている。町は摩天楼こそないものの近代と言われても可笑しくない建造物が建つ都市となりつつある。
魔石の採掘も今まで通り行われる一方でクワトイネ公国から様々な食料が入って来ると国民の食生活も豊かになっていき治安は格段に良くなっていった。戦争孤児は全て王家が運営する孤児院が引き受ける事となった為に浮浪者は大幅に激減している。
「クワトイネ公国もフィルアデス連邦への食糧輸出で恩恵を受け始めているからな。ロデニウス大陸は好景気を迎えているな」
当初こそ関係が微妙だったクワトイネ公国だがつい最近食事ブームがブリテン島で起きている事、シーランド帝国の企業が料理の質の向上を目指してクワトイネ公国の食料に目を付けている事、フィルアデス連邦への大量輸出などが合わさり好景気を迎えている。シーランド帝国に対する恐怖はあるものの、自分たちに向けられる事はほとんどないと理解してからはその矛先が向かないように愚かな行為をしないようにしていた。
そして、この好景気はクワトイネ公国でのみ起きている訳ではない。クイラ王国は石油の需要が高まりつつある第三文明圏で最も多くの産油国として大量に輸出する事で現実世界の中東のような好景気を迎えていた。既に作物が育たない貧困国としての姿は無く、僅か数年で世界でも有数の富裕国へと変貌していた。石油を用いたエンジンが開発・普及すればするほどクイラ王国の需要も上がっていくだろう。彼らの国土の石油が尽きない限り、彼らの富は約束されているのだから。
「トーパ王国は漸く魔王襲撃の傷が癒え始めたか。最近ではグラメウス大陸への遠征の話も出ているそうだがいったいどうなるのやら……」
レッドオーガとブルーオーガと言う魔王軍の主柱を破壊したことで魔王軍の動きは沈静化している。その間にシーランド帝国の力を借りつつ世界の扉と呼ばれる防壁の修復も完了し、二度とあと悲劇が繰り返されないようにと軍事力の強化を行っている。シーランド帝国でも魔王軍と言う潜在的敵勢力を今のうちに倒すべきではないか?と言う意見が出ているが、それがなされるとしてもグラ・バルカス帝国との戦争に決着を付けないといけないだろう。
「アーロン? どうかしましたか?」
「ルミエス……。いや、何でもないよ」
いつまでも窓の外を眺めているので不思議に思ったのだろう。ルミエスがアーロンへと声をかける。そこが寝室で、二人とも裸と言う事が何が行われていたかを様々と見せつけて来るが二人にとっては日常の一コマでしかない。
「俺は君と結婚出来た事が嬉しいと改めて思ってね」
「私こそ……。アーロンを始めシーランド帝国の方々には感謝しています。一度は滅びたとはいえこうしてアルタラス王国の女王となれているのですから」
アルタラス王国に攻め入ったパーパルディア皇国軍を殲滅した後、シーランド帝国がそのまま統治する可能性が高かった。アーロンでさえそう予測する程だったのから事実に近かった。しかし、結果的にアルタラス王国に全土を引き渡し、これまでのような関係を続けていくこととなったのだ。これは単純にパーパルディア皇国の愚かな行為に目が行きがちとなったせいでもあるが結果として王国を復興できたことに感謝を感じていた。
「時間が出来た時に皇帝陛下に挨拶をしましょう。これほどしてもらっているのに感謝を伝えられていないのですから」
「そうだな。最近は国内の状況も落ち着いているし時間を見つけて会いに行くのもありかもしれないな」
二人はそんな会話をしながら仲良くベッドに戻っていく。
しかし、ルミエスがシーランド帝国を訪れる話は流れてしまった。数日後に判明した懐妊と言うおめでたい話によって。バルチスタ沖海戦の損害で若干暗くなっていたシーランド帝国の勢力圏において発生したこの明るい話は勢力圏内の人々に再び活力を与えていく事になる。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
-
原作での登場まで待つ
-
作者が想像して書いて
-
別のオリジナル国家とかに変更する
-
魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了