シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第百三話「海戦の影響7~グラ・バルカス帝国~」

a.t.s56(皇歴56年)/3/1/9:30 グラ・バルカス帝国帝都ラグナ

 この日、帝都ラグナは歓声に包まれた。レイフォル州に向かってくる敵艦隊を見事打ち倒したという報告が届いたからである。この報告に国民は湧き、各地でお祭り騒ぎが起こっていた。誰もがこう叫ぶ。「我らこそ世界最強の国家である」と。

 しかし、この報告は政府上層部により意図的にぼかされた状態で発表されたものであり、実際はグラ・バルカス帝国艦隊は生き残りつつ敵に損害を与えたが空中戦艦パル・キマイラの登場で撤退を余儀なくされたのだ。決して勝利には程遠い戦果であった。

 

「馬鹿な……! なんだこのふざけた兵器は!」

 

 空を飛ぶ戦艦と言っても過言ではない空中戦艦パル・キマイラを見た上層部は怒号を上げていた。主砲が当たるには高すぎる位置を飛び、対空砲が届いても表面に傷をつけるだけ。更にはバリアのようなものが展開されると一切攻撃が効かなくなった。

 敵の攻撃は小型艦を沈められる程度の主砲と未知数の対空火器が備わっている他に大型艦の乗組員を全滅させられる高威力爆弾を投下してくるという厄介な代物だった。

 

「対空火器で撃ち落とせないのか?」

「それが出来ていればこの5機相手に撤退などしてないだろう!」

「もしかした戦闘機で落とせるかもしれないぞ? 見た限りでは対空火器は少ない。これなら我らの敵ではない」

「お前ら馬鹿か!? この空中戦艦もそうだが構想段階のジェット戦闘機で前衛艦隊を全滅させたシーランド帝国の方も話し合うべきだろうが! 明らかに切り札といった空中戦艦と通常兵器となっているジェット戦闘機ではどちらが重大かぐらいわかるだろうが!」

 

 グラ・バルカス帝国で行われている会議ではあまりの混乱具合に話し合いは全く進展せず、怒号が飛び交う無法地帯と化していた。このまま続けばいずれ乱闘が始まってしまいそうな勢いである。

 

「帝国の三将と言われたミレケネス殿は戦死され、戦艦、空母共に半数が沈められた。更には我らの象徴とも言えるグレートアトラスターは敵に奪われてしまっている。まさかここまでしてやられようとは……」

「……グラルークス様は正しかったのかもしれない」

「おい、それを陛下の前で言うなよ? 切り殺されるぞ」

 

 バルチスタ沖海戦の結果を聞き、現在の帝国内部でもシーランド帝国の力を知る者が出始めていた。彼らは総じてこのままではグラ・バルカス帝国は滅びてしまう可能性があると思い至り、クーデターを起こした事を後悔し始めているがこうなってはどれだけ被害を抑えてシーランド帝国と講和するかにかかっていると彼らは周囲を説得しつつ生き乗る道を模索し始めるのだった。

 

 

 

 

a.t.s56(皇歴56年)/3/3/12:30 シーランド帝国ブリテン島某所

 元グレートアトラスターの乗員及びシエリアはブリテン島に存在する収容所に入れられていた。捕虜としてこの地に連れて来られた彼らは毎日のように畑仕事を行い、汗を流していた。機械による手助けはなく、土を耕すところから始める必要があった。

 

「はぁ……」

 

 シエリアは土と汗で汚れた囚人服に身を包みつつ、食堂で突っ伏していた。彼女の周囲には同じように収容されているグレートアトラスターの乗組員がつかれた表情で休憩時間を思い思いに過ごしている。中には少しでも体を休める為に寝ている者もいるがシエリアはそう言う気分にはなれずにただただため息を吐いていた。彼女の手元にはシーランド帝国の新聞があり、その一面にはでかでかとこう書かれていた。

 

-驚愕! グラ・バルカス帝国軍相手に統合軍劣勢! 誰もが予想していなかったバルチスタ沖海戦の結末!

 

 それは意外にも祖国が奮戦している内容であったがその原因を知れば無邪気に喜ぶ事も出来ない。今回のような奇跡は何度も起こるものではないのだから。それが分かるからこそシエリアの表情は暗く、自分たちに訪れる最悪の未来を予想せずにはいられなかったのだ。

 

「今にも処刑台に上がりそうな表情だな」

「艦長……」

 

 俯くシエリアに声をかけてきたのはグレートアトラスターの艦長だったラクスタルである。彼は空になった容器を乗せたトレイをもっており、食器を下げる所だったのだろう。一旦それを止めるとシエリアの隣に座った。

 

「その新聞、あなたも見ましたか。祖国がこれで調子に乗らないと良いですが……」

「シーランド帝国ははっきり言って化け物です。対策しようがしまいが、どちらも変わりはありません。シーランド帝国が本気で動けば本国は火の海になって終わりです」

 

 シーランド帝国と言う国家を嫌と言う程見せられたシエリアに、祖国がこの世界で覇を唱える事は不可能だと理解した。そして同時に心も折られ、抵抗する気力もなくなっていた。抗うだけ無駄だと諦めのような気持ちを抱く様になっていた。

 

「確かにそうですね。グラルークス様が皇帝をしていれば講和の道もあったでしょうが……」

「講和の道は我々が潰しました。今思えば陛下は理解していたのでしょう。それを私達が理解できなかったせいで全てを失う事になった。この世は弱肉強食。強くなれない者に生きる道はない」

 

 虎や獅子だと思っていた祖国は狐の様にしたたかにもなれずにやがて滅亡する。シエリアはその事がはっきりと理解でき、ラクスタルもその未来を想像して顔を曇らせるのだった。

 

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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