シーランド帝国は絶対帝政を敷く権威主義的国家体制となっている。これは建国当時から変わる事がない政治体制であるがこれをよく思っていない者も一定数存在する。代表的な者としてかつてのイギリス統治に未練がある者達や民主主義・共産主義による統治を目指す者、自分が上に立ちたい者などがおり、これらはシーランド帝国を蝕む厄介な問題となっていた。何しろいくら粛清をしたところでこれらが潰える事はなく、常に一定数存在するのだから。故にシーランド帝国はこれらが力をつけないように徹底的に監視・管理する事で国家転覆に陥るリスクを最小限に抑えてきた。
そんなシーランド帝国でも一つだけ、把握出来ていない組織がある。ブリテン・コミューンと名乗る共産勢力は元は第一次ブリテン戦争においてイングランドとウェールズから追い出されてスコットランドに亡命政府を建国した北部イギリス政府内の党の一つであり、第二次ブリテン戦争でブリテン島が統一されると党首だったクリントン・ジュリアス・ミッドフォードは命からがら隣国のフランスに亡命。そこで力を蓄え、ブリテン島全体で戦争となった第三次ブリテン戦争時に密入国し活動を開始した。
20年以上に渡り存在していながらシーランド帝国でも全体像を把握出来ない程組織内は徹底して統制されており、末端をいくら捕まえても大元にたどり着く事が出来ないようになっていた。そんな彼らがこれまでに行ってきたことは大胆かつ無視できない物ばかりであり、後にブリテン・スキャンダルと呼ばれるようになる日本国内での組織からの金銭の受領を暴露された事による政治的混乱やシーランド帝国から独立を目論んでいるタスマニア共和国との同盟締結などシーランド帝国と言う国家を崩すべく国際的にも大きく動いていた。
本拠地がブリテン島にあるという事で彼らもこの世界に転移してきており、結果としてブリテン・コミューンがこの世界に伸びる事となった。シーランド帝国はまだ把握していないものの、クワトイネ公国やクイラ王国などの隣国ではブリテン・コミューンの影響を受けた共産主義者たちが共産党を結成しており、共産主義国家の建国を目指し始めている。もし、彼らの準備が全て整う事となればシーランド帝国はもちろん自治領から友好国などの隣国もすべてが赤く染まる事になるだろう。
a.t.s56(皇歴56年)/3/5/14:00 シーランド帝国ブリテン島某所
「動くな!」
シーランド帝国が誇る特殊部隊はこの日、イングランド直轄領のとある都市にあった廃ビルに乗り込んでいた。しかし、そこには多少の埃以外には何もなく、割れた窓から風が入って来るのみだった。
「くそっ! またか!」
乗り込んだ隊員たちから報告を受けた隊長は机をたたきながらそう声を漏らす。特殊部隊はいくつかのグループに分かれてブリテン・コミューンの拠点と思われるビルなどの建物に乗り込んでいた。しかし、その全てがもぬけの殻となっており、特殊部隊の作戦が失敗したことを意味していた。
「一体奴らの隠密性はどうなっているんだ! 俺達が情報を手に入れたのは
異常な隠密性と情報取得の速さ、そして移動の速さがシーランド帝国が未だに全力を持って捜査しても見つけ出す事が出来ない状況を生み出していた。
「こうなっては再び情報が入るまで動く事が出来ない……! 千載一遇のチャンスだと思ったのに……!」
とは言えこの様な風景は今に始まった事ではない。ブリテン・コミューンを捜査し始めてから見かけるようになった
「総員に告げる! 撤退せよ」
隊長は結局、隊員たちに撤退命令を下し、次に備える為に準備を始めるのだった。
a.t.s56(皇歴56年)/3/5/16:00 シーランド帝国ブリテン島某所
ブリテン・コミューンでは今回のような事がない限り拠点を一週間で交換する事となっている。更に政府や軍部に存在する同志たちから情報を受ける事でこれまで逃げ延びる事に成功していた。今回も特殊部隊が動き出すと同時に逃走を始めたために乗り込む前には逃げ出す事に成功していたのだ。
「我らがこのブリテン島に共産主義国家を建国するまで倒れる訳にはいかないのだ」
ブリテン・コミューン党首クリントンは無人となった廃ビルに乗り込む特殊部隊の様子をカメラで確認しながらそう呟く。既に老人の域に入っている彼はそれでもなお鋭い眼光を放っており、耄碌していないことが一発で理解できた。
「この世界に来たことは……、我らが言う事ではないがまさに天のお告げに違いないだろう。この世界には共産主義国家は一つしかない。それも真の共産主義国家とは言い難いものだ。だからこそ我らがきちんと教え、導かねばならない。何十億といる同志たちが約束された日を待っているのだ」
誰もが心の中では共産主義に傾倒していると信じて疑わないクリントンは壮大過ぎる夢を持ちつつ行動は冷静且つ緻密に今後もブリテン島を中心に暗躍していくのだった。
ちょっとした用語説明
第一次ブリテン戦争
シーランド帝国が建国後にイギリスに宣戦布告して始まった戦争。当初はまともに取り合われなかったがロンドン付近に傭兵が上陸したことで戦争が起きていると理解するも時すでに遅し。ロンドンは陥落してイギリスは北部に逃れる羽目になった。
第二次ブリテン戦争
シーランド帝国がブリテン島統一を目指して北部イギリス政府に宣戦布告して起きた戦争。その直前には初代皇帝がクーデターで殺されるなどしていたがライオネス・ロバーツ・ペンドラゴンが直ぐに二代目皇帝になる事で国家を安定させている。シーランド帝国の圧勝だったがブリテン・コミューンの結成の原因を作ったり、国際的孤立化を確定させる原因にもなった。
第三次ブリテン戦争
新キリスト教と呼ばれる新たな宗教関係者による蜂起が原因で始まった戦争。実質的に内乱に近く、イギリス復古を目指すものなども合流した結果イングランド、ウェールズ両方の半分近くを奪われる程ひっ迫したが国外に散らばっていた軍隊が戻って来た事で鎮圧に成功した。
タスマニア共和国
オーストラリア南部のタスマニア島を国土とする共和制国家。元は王政だったがシーランド帝国の侵略を受けて自治領になったが第三次ブリテン戦争に便乗して共和国として独立したが再び侵攻を受けて従属した。絶滅政策とも取れる条約などを受けて国民の多くが犠牲となったが現在の与党が政権を握り粘り強く交渉したことで普通の属国まで待遇を改善する事に成功した。しかし、結果として反シーランド帝国の感情が強くなり、独立を虎視眈々と狙っている。
本編に出てくる予定は今のところない。属国だし転移されなかったという形で進めてもいいかもしれない
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了