シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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いよいよ第8章に入ります。遂に書籍版6巻に追いつきました。……マジで7巻何時出るんだろう……
それとアンケートを実施します。協力お願いします


第8章【揺らぐ大帝国】
第百九話「二つの帝国」


a.t.s56(皇歴56年)/4/1/10:00 シーランド帝国ブリテン島

 この日、シーランド帝国ではムー国内に建設された基地へ向けての兵員輸送が開始された。約1年と言う長い時間をかけて作り上げられた基地は収容人数10万を軽く凌駕し、レイフォル州侵攻の前線基地兼侵攻軍司令本部として機能するようになっている。

 既にジェット戦闘機を始めとする各航空機はパーシヴァル基地と名付けられたそこに向かって航行中であり、続けてシーランド帝国第二艦隊護衛の元、シーランド帝国陸軍5万と各補給物資を搭載した揚陸艦・補給艦が向かう事となっている。

 その規模は以下の通りである。

 

○シーランド帝国第二艦隊

シーランド級戦艦3隻

クイーン・グィネヴィア級航空母艦8隻

リヴァプール級巡洋艦4隻

エディンバラ級巡洋艦5隻

D級駆逐艦シリーズ15隻

揚陸艦(5万人収容)・給油艦・補給艦・病院船計約100隻

 

 揚陸艦だけで30隻近くが存在し、非戦闘艦は100隻近くに上る。それを第二艦隊のみが護衛するという少し不安の残る編成となっているがグラ・バルカス帝国もバルチスタ沖海戦でそれなりの被害を受けた事、これ以上の艦隊を出すには受けた被害が大きすぎた事もあってこのような結果となっていた。

 

「漸く、我らの力を見せられる……!」

 

 しかし、そんな不安要素がある中で第二艦隊司令長官であるトム・リー・フォックス中将は感動の涙を流しながら歓喜で震えている。地球ではシーランド帝国と自治領をつなぐ重要な海域である大西洋南部の哨戒と警護をしていた第二艦隊だがこの世界における戦果は第一艦隊に劣っていた。統合軍においても第一艦隊が中核をなしており、第二艦隊はその補助と言う形となっているせいで悔しい思いをしていたが、遂に自分たちが主役となれる任務が舞い込んできたのである。

 

「グラ・バルカス帝国も被害を受けているが嫌がらせ程度は最低でもしてこよう。そもそもこれだけの大規模な艦隊だ。グラ・バルカス帝国が分からないはずがないし揚陸艦を見てレイフォル州への侵攻の可能性を考えるはずだ。となるとこれを防ごうと艦隊を出してくる可能性もあるか……」

 

 戦術家として多大な評価を受けるフォックス中将はその実力を遺憾なく発揮していく。浮かれていると思われようともそれで慢心する事はない。

 

「よし、駆逐艦は対潜・対空警戒を欠かさないように。哨戒機もあげて敵の奇襲に備えつつムーに向かう!」

 

 グラ・バルカス帝国がどのような手を打って来るのか? それを相手側の目線である程度考察した彼はそれに対する動きや対策を考え、その準備を行いつつ出航する。彼が乗艦する旗艦であるシーランド級を先頭に空母を中心に、揚陸艦と補給艦などで囲む。それらを絶対防衛対象として巡洋艦と駆逐艦は周囲を警戒する。対潜・対空警戒を厳重にした輪形陣であった。シーランド帝国の勢力圏であるフィルアデス連邦を抜けるまでは陸上基地より哨戒機とジェット戦闘機が護衛と索敵の為に常に上空を飛ぶ事となっており、東方世界にいる間は艦隊の安全は完全に保証されていた。

 その証拠として、早速グラ・バルカス帝国の潜水艦がベスタル大陸北部の沖合で撃沈された。艦隊が目視で確認する前に水柱を上げながら潜水艦は一瞬で沈んでいき、その上を艦隊が悠々と進んでいく。第二艦隊は何の心配もなく東方世界を進んでいったがブリアンカ共和国を抜け、第一文明圏に入るとその安全も一気に消え去った。空母に搭載されている航空機のみが航空戦力となるために索敵能力は一気に減る事になる上にグラ・バルカス帝国の潜水艦が進出するようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

a.t.s56(皇歴56年)/4/8/2:00 神聖ミリシアル帝国 南西海域 ケイル島沖南部

 ムーまで約半分の距離まで約半分の所にある神聖ミリシアル帝国のマグドラ群島はかつて先進11ヶ国会議にて基地と共に第零魔導艦隊をグラ・バルカス帝国に沈められた場所でもあった。そんなマグドラ群島の基地は約一年の時をかけて完全に修復されていた。更に神聖ミリシアル帝国が先進的な基地とするために様々な新兵器を配備している事もあり、実験基地的な要素が強くなっていた。

 

「っ! ソナーに反応!」

「潜水艦か?」

「おそらく……。深度はおおよそ50m。東に向かって航行中です!」

 

 マグドラ群島新基地はシーランド帝国からもたらされた潜水艦の情報を基に、国内の技術者が総力を上げて完成させたソナーが設置されている。これは空中戦艦パル・キマイラに搭載されていた魔導電磁レーダーを一つ解体したうえでその応用として試験的に開発されている。未だに欠点も多く、深度50を超える対象の捕捉は難しかったが今回は運良く深度50の位置を潜水艦が航行した事で発見に至っていた。

 

「シーランド帝国の潜水艦か?」

「おそらく違うと思われます。シーランド帝国の船が態々こんな浅い所を低速で拘束するとは思えません」

 

 東に向かって航行している潜水艦の速度は僅か3ノット。この程度の速度でシーランド帝国が航行する意味が分からなかった。その為、シーランド帝国の船ではないと判断し、それ以外に潜水艦を運用している国を予測する。

 

「グラ・バルカス帝国の潜水艦と予測します」

「よし! 航空機隊を発進させる! 対潜航空隊! 発進せよ!」

 

 基地司令の対応により基地は騒がしくなる。対応するのはこちらもまたシーランド帝国の情報提供で開発に漕ぎつけた試作爆雷を搭載した対潜型ジグラント(ジグラント4)である。パイロットたちは常に臨戦態勢で待機していた為にすぐさま機体に登場して離陸していく。

 離陸したのは10機。対潜型ジグラントを全て投入した形となった。

 

『敵は南西約10㎞の位置にいる。深度は50』

「了解! 去年の借りを返してやるぞ!」

 

 ジグラント隊は士気を高く維持したまま指定された座標に向かう。そして、最大爆発深度である50用の爆雷を一斉に投下した。数は一機につき4、総数は40と潜水艦一隻を沈めるには十分すぎる数だった。そして、その証拠にジグラントが離れてから直ぐに巨大な水柱を立てながら爆発が起こる。その中に金属片が含まれている事から潜水艦は逃げる事も出来ずに吹き飛んだことがうかがえた。

 

『……目標の撃沈を確認! 全機帰投せよ!』

「よし! 全員聞いたか!? 俺達は借りを一つ返す事に成功したぞぉ!」

 

 ジグラント4の隊長は知らなかったが故に犠牲となった第零魔導艦隊の恨みを一つ返す事が出来た喜びを露にした。

 シーランド帝国から見ればまだまだ改善点が多く、艦艇に搭載するにはまだまだ時間がかかる上に制度も酷いものだったがそれでも古の魔法帝国の遺跡に頼って来た神聖ミリシアル帝国が情報提供を受けたとはいえ自力で完成に至り、そして戦果を挙げたという事は紛れもない事実であった。

 これ以降神聖ミリシアル帝国では今回の戦闘を参照に、対潜兵装の開発と研究が進められていくことになる。

 




ジグラント4
こう名称がついているけどジグラントに爆雷を積んだだけで性能は変わっていないです。

ソナーと爆雷
神聖ミリシアル帝国が情報を基に作り上げた兵器。ただし、試作品であるためにソナーは深度50以上の対象を発見できない、爆雷も同深度までしか届かないと言った欠点がある。

グラ・バルカス帝国戦が終わった後の展開に関して(なお、あくまで参考にさせてもらうだけなのでアンケート通りにいくとは限りません)

  • そのまま年代飛ばして魔帝戦
  • ブログ更新を待ちながら原作準拠
  • 書籍版重視して発売まで待つ

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