シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第百十一話「パーシヴァル基地へ」

a.t.s56(皇歴56年)/5/1/8:00 グラ・バルカス帝国レイフォル州 レイフォリア 統合基地ラルス・フォルマイナ

 シーランド帝国の軍勢がムーに入国したという情報は直ぐにグラ・バルカス帝国も知るところとなった。ムー大陸最後の防衛拠点とレイフォル州統治の為の総合指令基地として建設されたこのラルス・フォルマイナでは現地の軍人達によって防衛戦術が急ピッチで練られていた。

 

「全ての道に地雷を設置するんだ! そして塞げるところは瓦礫などで塞いで物理的に移動できないようにする!」

「いや、そんな事よりも伏兵を置いて奇襲する方が良い! それなら敵に損害を与えつつ防衛を行う事が出来る!」

「馬鹿な!? そんな事が上手くいくわけがないだろう!」

「そちらの案とて時間をとても必要とする! 短時間で出来る訳がないだろう!」

 

 ……軍人たちは理解していた。シーランド帝国軍を防ぎとめる事など不可能だと。海軍では負けているからと言って陸では勝てるなどと言う甘い期待はしていない。そんな事を考えているのなら通商破壊が本格的になった時点でムーに侵攻しているし、ここまで手をこまねている事はなかった。

 

「……海戦の時のような奇跡がもう一度起これば……!」

「確か古の魔法帝国とかいうおとぎ話の国家の復活の前触れらしいな。何故そんなおとぎ話を信じているのかは分からないがな」

 

 グラ・バルカス帝国では未だに古の魔法帝国の復活をおとぎ話として一蹴している。彼らの世界ではそんな存在などなく、遠い昔にあった国以上の認識は持てずにいた。

 

「今は起きるかもわからない奇跡よりも目の前の現実に向き合うべきだ。このままではレイフォル州が陥落してしまうんだぞ!」

「いっそのこと攻め入るのはどうだ? 奇襲で攻撃を仕掛ければあるいは……」

「それは前に話したであろう? 補給物資が本国から届かない以上燃料弾薬が心もとない。燃料はムーも保有している事もあって問題ないが弾薬は別だ。これらは全て防衛時に役立てるべきだ」

「くそっ! 海軍において最強と言っても過言ではない我らが制海権を奪えずに補給を絶たれるような事態に陥るとは……!」

 

 軍人たちは必死に防衛計画を練っていくが具体的なものなど出て来ない。例え出てきたとしても圧倒的に戦力・物資・技術で劣るグラ・バルカス帝国では一瞬で防衛計画は破綻するだろう。それだけの差が両国には存在した。そして、悲しい事に今のレイフォル州に駐留する軍人たちはその事実に気付きつつも本当の意味で気付く事が出来ないでいた。

 そして、その事による破綻が少しずつ近づき始めているのだった。

 

 

 

 

 

 

a.t.s56(皇歴56年)/5/4/20:00 ムー キールセキ ムー陸軍駐屯地

 この日、遂にシーランド帝国軍が到着する。キールセキに到着した後はキールセキより西方に建設されたパーシヴァル基地に向かう事となっている。ムーの国鉄を優先的に利用して運ばれたそれらは比較的早い段階で到着に至っていた。

 

「全く。何故我が国に他国の軍勢が……」

 

 そんなシーランド帝国軍に対して良い感情を持っていない人物が一人。ムー陸軍キールセキ駐屯地の司令であるマクゲイル大佐である。彼は祖国を愛してこそいるがその防衛は自分たちとの手で、と言う思いが強かった。それゆえに、シーランド帝国軍の力を借りてレイフォル州に侵攻するという事が我慢ならなかったのだ。

 

「(我らは道路ではないのだぞ! こんな屈辱、絶対に忘れない! いつか見返してやる!)」

 

 マクゲイルは心の中で怨念とも言える恨みをシーランド帝国にぶつけながらシーランド帝国軍を出迎えた。そして驚愕した。

 

「な、な、な……!」

 

 マクゲイルは驚きのあまり声が出て来ない。先ず彼の目に飛び込んできたのはシーランド帝国の最新鋭戦車群である。この基地にも極秘裏で配備されている試作戦車と比べるのもおこがましい洗練された外観に見るからに強いと分かる砲塔。無駄をなくし、技術をつぎ込んだと一目でわかるその戦車にマクゲイルは最初の衝撃を受けた。

 次に銃火器などの武器弾薬。銃火器は戦車に比べれば地味かもしれないが見ただけで洗練されているのが分かる。これだけでもムーを圧倒できるかもしれない。更に携帯式と思われる魔導砲らしきものに加えてそれを超えるカノン砲を見せつけられて第二の衝撃が走った。

 そして、最後に兵たちの様子である。ほぼ私語をする事なく黙々と荷下ろしなどを行っており、その様子だけでここに居る兵たちの練度と士気の高さをうかがわせていた。少なくとも兵の質においてもムーはシーランド帝国に勝っている訳ではないと理解できてしまった。

 

「……シーランド帝国とは、これほどの国なのか……!」

「ご理解いただけたようで良かったです」

 

 マクゲイルの独り言にも近い呟きを拾ったのはこの侵攻軍の司令長官であるハリーだった。彼はマクゲイルの反応に気をよくしたのだろう、ニコニコと笑みを浮かべながら彼に近づいて行った。

 

「初めまして。シーランド帝国軍司令のハリー・K・パワーと言います」

「……マクゲイル・セネヴィル大佐です。あ、あなた方は凄まじい兵器を持っている様ですね」

「勿論です。前の世界で我が国の最大の敵国が同等の戦力を有していましたので自然と技術を鍛えるようになっていったんですよ」

 

 シーランド帝国と同等の国が存在する。その事実はマクゲイルを恐怖させるには充分だった。ムーでは絶対に勝てないグラ・バルカス帝国を軽く捻り潰せるシーランド帝国と同じ戦力を有する国。マクゲイルはこの世界がどれほど低レベルにいるかを様々と思い知らされる気分となってしまった。

 

「では我々はこのままパーシヴァル基地に向かいますのでこれで失礼させていただきます。……ああ、安心してください。我々がレイフォル州を取ればあなた方はグラ・バルカス帝国と言う脅威から解放されるでしょう。どうぞこれからも平穏な生活を享受してください」

 

 小馬鹿にしたような言い方のハリーに対して、マクゲイルは何も言えず、あっという間に見えない所まで移動していったシーランド帝国軍を茫然と見送るのだった。

 

グラ・バルカス帝国戦が終わった後の展開に関して(なお、あくまで参考にさせてもらうだけなのでアンケート通りにいくとは限りません)

  • そのまま年代飛ばして魔帝戦
  • ブログ更新を待ちながら原作準拠
  • 書籍版重視して発売まで待つ
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