a.t.s52(皇歴52年)/10/6/15:35 シーランド帝国帝都ロンドニウム
「殿下、この書類のサインもお願いします」
「分かった」
シーランド帝国の皇太子ウィリアムは宰相の手伝いを受けながら皇帝の仕事を代理で行っていた。皇太子として既にやるべきことを把握しているウィリアムは滞る事無く書類をさばいている。
皇帝ライオネスは現在頭痛や吐き気などに襲われて寝込んでいる。シーランド帝国でも最高峰の医師の話では病気とかではなく単純な老衰とのことでライオネスは寝室で休んでいる。回復するまでは皇太子であるウィリアムが代理で仕事を行う事になっており三か月ほど前にクワトイネ公国より戻ってきたウィリアムが行う事になったのだ。
ウィリアムは代理ではあるが皇帝と同等の権力を保有したことで自分のやりたかったことを試験的に行う事にした。その一つが各国への使者である。シーランド帝国と国交を結んでいる国は少ない。クワトイネ公国、フェン王国、クイラ王国、アルタラス王国を除けば民間レベルでの交流程度しかない。特にフィルアデス大陸の国々とはそれすら行われていない。この孤立状態をウィリアムはなんとかしたいと考えていた。
しかし、フィルアデス大陸のパーパルディア皇国とは戦闘行為があったため宰相以下政治家たちは難色を示したためフィルアデス大陸、特に南部との交流は見送られることとなった。現在シーランド帝国では対パーパルディア皇国戦を想定した軍備の拡張を行っている。計画は既に完成しパーパルディア皇国全土の占領後の統治計画まで作られている程だ。ただの代理でしかないウィリアムにこれを止める術はなくパーパルディア皇国で人々が少しでも犠牲が出ないようにさせるのがせいぜいだった。
そんな訳でウィリアムが選んだのはフィルアデス大陸の先、中央世界と呼ばれている大陸やその先、ムー大陸への外交官の派遣である。特にムー大陸は伝説の大陸名故に力を入れており国交樹立後は歴史などの情報が欲しいと考えていた。中央世界に関しては国交を結ぶ事よりも繋ぎをつくることを優先させている。中央世界と言うだけありプライドが高く今まで関わった事のないシーランド帝国と国交を結んでくれるとは思えないからだ。
「殿下、トーパ王国の使者がフェン王国を通して連絡を送ってきました。どうやら国交を結びたいとのことです」
「分かった。使者殿にはこちらから使者を派遣すると伝えてくれ」
「了解しました」
さすがに相手から求められては否定しづらいのかこの件に関して宰相が特に言う事はなかった。ウィリアムはその間も仕事をつづけながら自分のやりたい事を整理していく。
初めて持った強大な権力に興奮と緊張感、そして恐怖を持ってウィリアムは父ライオネスのような政策をしないと心に誓いながら今日の分の仕事を終わらせるのだった。
フェン王国にとって幸いだったのはライオネスの代わりにウィリアムが処遇を決定したことだろう。ウィリアムは「次からはきちんと事前連絡を貰えれば問題ない」として懲罰の類は一切しないと発表した。宰相などはこれに反対したが最終的に押し切りフェン王国との国交を回復させた。シーランド帝国ではロデニウス大陸以外の他国の為様々な人が観光に訪れた。フェン王国の堅い雰囲気を持つ民族性も好感度を上げるのに役にたち観光業界では新たな観光スポットとして注目を浴びつつあった。それに伴い定期便の設定やそれらが入港できる港の整備などフェン王国に次々と幸運とも呼べる出来事が入って来るようになった。
シーランド帝国の発表に剣王シハン以下政治を行っている者全てが安堵しシーランド帝国との関係をより強固にするべく様々な交流を行うようになる。
「兄上、大丈夫ですか?」
ライオネスの寝室を知っている者は少ない。皇帝である以上暗殺の危険性を考えこのような処置をされている。知っている者は皇族の各分家の当主に宰相などの一部の政治家のみで皇太子のウィリアムですら知らず、また調べる事を禁止されていた。
そんな寝室に一人の男性が訪れる。彼の名はアブロシウス・アレン・ペンドラゴン。分家のアレン家当主でライオネスの弟にあたる。彼はライオネス並みの野心家であり一時期は皇帝を狙っていたことすらあった。現在は長男に当主の座を譲り楽隠居状態にあった。
「ああ、少し寝ていれば回復するそうだ」
「そうですか……。それで?私をここに呼んだ理由とは?」
アブロシウスは態々今住んでいるウェールズ自治領から遠く離れた帝都のキャメロット城に来ているのはお見舞いのためではなくライオネスに呼ばれたからであった。そもそもアブロシウスとライオネスの仲はお世辞にも良好とは言えず一時期は皇帝位の座を巡り争ったほどだ。今の本人にその気持ちがなくてもそうであった事実に変わりはなくアブロシウスの入城に警戒する者も居るほどだ。その為アブロシウスとしてはさっさと要件を終わらせて戻りたいと考えていた。
「何、お前にとっても悪い事ではないぞ。ウィリアムに関してだ」
「む?お前の息子がどうかしたか?」
「あいつは国家のかじ取りをする能力は高いし人を惹きつけるカリスマ性も持ち合わせている。前の世界でなら十分にやっていけただろう。だが、この異世界ではあいつでは渡り切るのは困難だろう」
「ふむ、確かにな」
アブロシウスはライオネスの言葉に同意する。ウィリアムは次期皇帝としての素質は十分すぎるほどに持っているがこの世界を乗り切る器量を持っているかと問われれば微妙であった。現在は各国に外交官を派遣し各国との繋ぎを持とうとしているらしいがうまくいくとは思えなかった。
「そこでだ、ウィリアムには悪いがあることを頼みたい」
「いいだろう、といいたいところだが先ずはそのあることを聞いてからだな」
「勿論だとも。あることとはな……」
その後、アブロシウスとライオネスは数時間に渡り話を続けアブロシウスはウェールズ自治領の家に帰っていった。様々な人が何を話していたのか聞いたそうだが一切話すことはなかったという。
ルミエスの今後は?
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アーロンに嫁入り(アルタラス王国併合√)
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アーロンが婿入り(アルタラス国王戴冠√)
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アーロンの戦死(復讐のルミエス√)
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作者の思い描くままに