艦隊が新たに発見された大陸に向かった頃、ライオネス・ロバーツ・ペンドラゴンはそれとは別に周辺の島々への侵略を行っていた。
シーランド帝国の本土であるブリテン島の周囲には小さな島が存在していおり中には中世的な国を形成しているところも存在した。ライオネスはそこに侵攻する事で情報を得ようと考えたのだ。
「……という状況からここが異世界であると推測されます」
「ほう、中々に奇想天外な事になっておるな」
ライオネスは閣僚の報告に面白そうに答える。技術状況は分からないがシーランド帝国を打破しうる国は存在しないと考えられた。とは言え今まで征服したのは小さな島国のみだ。新大陸にはもっと技術が進んだ国がいても可笑しくなかった。第二次世界大戦の時の各国の植民地を征服して技術力を侮る様なものだ。その様な事をしては国が亡ぶとライオネスは考えている。
「……ウィリアムが送り込んだ艦隊はこの大陸に向かっておるのだな?」
「はい。その通りです」
ほぼブリテン島の西に存在する大陸を指さしライオネスは考える。島々から手に入れた情報と戦闘機などの偵察から西側には様々な大陸が存在しているのを確認していた。特に北西にある大陸はデカい上に周辺諸国の中心となっているとあった。
「……新大陸を見つけたイギリスもこの様な感じだったのだろうか」
「は……?」
「この大陸に使者を出せ。船は途中までは艦隊を出し近づいたら島々から鹵獲した帆船を使え。そうだな……、国名はシーランド王国と名乗らせろ。帝国と言うよりは問題ないだろう」
「分かりました。直ぐに手配します」
閣僚は皇帝の命を伝えるために部屋を後にした。執務室に一人残されたライオネスは自身の後ろに貼ってある旧世界の地図を見て笑みを浮かべるとそれを引き裂いた。
「この世界に何があるかは分からんが我が覇権の邪魔をするインド共和国も愚かな三重帝国も世界の中心を気取るエーレスラントもおらん。我が帝国はこの世界で!覇を唱えるのだ!」
ライオネスは希望に満ち溢れる未来を想像し高らかに笑うのであった。
一方、ウィリアムの命で派遣された艦隊は大陸にあるクワトイネ公国との接触に成功していた。同艦隊に同行していたウィリアムは直接交渉する事でクワトイネ公国との国交を樹立させた。更にクワトイネ公国南部に位置するクイラ王国との国交樹立にも成功しシーランド帝国の孤立状態を何とか回避させることに成功したのである。
「殿下、ロウリア王国は潰すしかありません」
「そうか……」
クワトイネ公国の公都にて用意された屋敷で寛いでいたウィリアムは一緒に来ていた閣僚や軍人からの報告を受けていた。内容はクワトイネ公国の西に存在するロウリア王国についてだ。クワトイネ公国からの情報提供である程度の情報を得たウィリアムだったが確実に相容れない存在だった。
「殿下が望んでいた友好関係も今の人間至上主義はともかくとしてもいろいろな面で敵対しかねません。また、国交を樹立したクワトイネ公国やクイラ王国とも仲が悪く近いうちに侵攻する可能性すらあります」
「そうなれば国交樹立も水泡に帰す、か」
ウィリアムは悲し気な表情で外を見る。彼とて軍事力の大切さなどは知っているがそれでも好きには慣れない上に
「父上は、これを聞いたら悠々として侵攻するだろう」
父はそう言う人だからな、と呟く。40年に渡り皇帝の座につき祖父が興した帝国を反江尾に導いた人物だが好戦的なうえでの覇権主義者であった。今頃ライバルが消えた事で狂喜乱舞しているかもしれないとウィリアムは思う。
「しかし、陛下にお伝えしないのは流石に……」
「分かっている。この件は私が父上に直々に話す。成るべく被害を抑えられるように務めるつもりだ」
ウィリアムは決意と共にそう宣言するのであった。