シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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今日は二話連続投稿です。次話は16時頃に投稿します


第二十二話「前哨戦5~激怒~」

a.t.s52(皇歴52年)/11/25/13:40 パーパルディア皇国皇都エストシラント

シーランド帝国の外交官カラムは怒りで我を忘れそうになる心を必死に押し殺していた。彼の目の前には第3外務局局長のカイオス、ではなく彼からシーランド帝国との交渉を引き継いだという皇族のレミールがおりカラムを見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。レミールは見た目麗しい女性だが生理的に受け付けない何かをカラムは感じていた。

 

「……さて、愚かにも我が国に対して無礼な態度を取ったシーランド帝国が一体何の用かな?」

「貴国が捕虜とした我が国の皇太子妃様を返却願いたい」

 

カラムは外交官としては有るまじきシーランド帝国の希望をいきなり伝えた。しかし、レミールはその事に気にする様子はなくむしろその言葉を想定していたのか更に笑みを深めた。

 

「ほっほっほ、何のことかな?我が国はフェン王国から手に入れた領土にてスパイ活動をしていた犯罪者を捕縛しているだけだが?」

「彼らは我が国の大切な臣民です。決してスパイなどではない!」

「それはそちらの言い分であろう?将兵の中には実際にスパイ活動をしているところを目撃したという証言(・・)も得ている。状況から察するに十分だと思うが?」

「なっ……!」

 

カラムはその言葉に絶句した。まさか証言のみでここまで言ってくるとは思っていなかったのである。しかし、カラムには分かっている。これがなんの意味もなくシーランド帝国に対する手札として利用している事に。

 

「貴国は我が国に対して無礼を働きあまつさえ監査軍を撃退するという愚行を行った。しかし、皇帝陛下は寛大でいらっしゃる。貴様等に厚生の余地をお与えになった。貴様等がこれを受け入れるのなら今までの無礼を許してやろう」

 

そう言ってレミールは呼び鈴を鳴らし使用人が持ってきた紙をカラムに渡す。そこには以下の様に書いてあった。

 

〇シーランド帝国はシーランド王国と改名し国王には皇国から派遣された皇国人を置く事

〇シーランド帝国内の法を皇国が監査し、皇国が必要に応じ、改正できるものとする

〇シーランド帝国は皇国の求めに応じ、軍事力の必要数を指定個所に投入しなければならない

〇シーランド帝国は皇国の求めに応じ、毎年指定数の奴隷を差しだす事

〇シーランド帝国は今後外交において、皇国の許可なくして、新たな国と国交を結ぶことを禁ず

〇シーランド帝国は現在把握している資源の全てを皇国に開示し、皇国の求めに応じて差しだす事

〇シーランド帝国は現在知りえている魔法技術のすべてを皇国に開示する事

〇パーパルディア皇国の民は皇帝陛下の名において、シーランド帝国民の生殺与奪の権利を有する事とする

〇シーランド帝国は……

 

まだまだ書いてあったがこれだけでも飲める内容など一つもなかった。カラムは怒りを通り越して頭がすっきりとする感覚を感じた。それどころか「ああ、怒りを通り過ぎるとこうなるのか」という達観した意見すら出てくる程だ。

 

「……貴国のような国力に見合わない要求をして来る国は初めてですよ。まだロウリア王国の方が理知的な国家でしたよ」

 

カラムは思い出す。処刑される寸前までロウリア王国の国王として堂々としていたハーク・ロウリア34世を。見せしめの意味合いが強かったが彼の者の姿勢はシーランド帝国臣民に国王としての姿を見せ人気を高めていた。彼に続くはずだった一部の者は処刑を免れており強制労働の後に釈放される予定となっている。カラムは彼と今のレミールを比べ侮蔑的な視線を送る。

その視線に気づいたレミールは顔を真っ赤にして怒りを露にする。

 

「貴様……!その様な態度を取って只で済むと思うなよ。……おい!あれを持ってこい!」

 

レミールは怒りのままに控えていた使用人を怒鳴り命令する。使用人は顔を青くしつつ部屋を出てとある装置が運ばれてくる。一昔前のテレビに似ているそれをカラムの正面へと向ける。

 

「これは魔導通信を進化させ、音声だけでなく映像まで見れるようにした先進魔導技術の結晶だ。この映像付き魔導通信を実用化しているのは、神星ミリシアル帝国と我が国くらいのものだ」

 

カラムは「この世界のテレビのようなものか」と冷めた目で見ている。シーランド帝国では自治領ですら売れないな、と思いつつ何がしたいのかレミールの意図が分からず眉を顰める。

 

「貴様等には理解しづらいかもしれないがそんな事はどうでもいい。これを見るがいい」

 

そう言ってレミールが指を鳴らすと画面に質の悪い映像が流れ始めた。そして、それを見た瞬間カラムの目は大きく見開かれた。

 

「なっ!?皇太子妃様!?」

 

そこに移っていたのはボロボロになった皇太子妃グィネヴィア・ロバーツ・ペンドラゴンだった。奴隷が着ているようなボロボロの布を着せられているが局部は全く隠されておらず大事な部分を守るという衣服としての機能は全く果たせていなかった。

加えて、グィネヴィアの体中には拷問されたであろう痕が大量に残されていた。カラムがかつて見たグィネヴィアの一切の傷跡のない肌は赤く腫れあがり無数の切り傷やミミズ腫れがカラムの視覚を通じて痛みを送って来る。

グィネヴィアの両手には鉄の枷が填められそれと直接つながっている鎖は天井に繋がっておりぐったりとするグィネヴィアを無理やり立たせていた。手足の爪は全てはがされており赤黒く変色している。

それだけではなくグィネヴィアの股からは白く濁った液体が垂れており凌辱を受けていたことを示していた。明らかに一国の皇太子妃に対する扱いではなかった。

 

この時、カラムは漸く悟った。パーパルディア皇国に前の世界のような文明国家として対応をしたことは間違いであり彼らは野蛮な獣と変わらないという事に。しかし、時すでに遅くもう引き返すことなど出来ない状況に陥っていたのであった。

 




パーパルディア皇国、さらば

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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