「貴様、我が国の皇太子妃様にこのような事をしてただで済むと思っているのか!?」
「ほっほっほ、蛮族の国の者はさわがしいのぅ」
先ほどとは違い落ち着いているレミール。その口元には隠しきれない笑みが浮かんでおり瞳にはカラムを見下す冷たい視線があった。
「今すぐ皇太子妃様を解放しろ!」
「『解放しろ』だと?貴様はまだ立場が分かっていないようだな」
そう言うとレミールは魔導通信を手に取り命令する。
「やれ」
「!何を……」
直ぐに画面に変化が起きる。扉の開閉音とともに画面上に複数人の男が入ってきたのである。彼らは全員下種な笑みを浮かべてグィネヴィアを舐め回すように見ている。彼らがこれから何をするのか、その事に気付いたカラムが思わず立ち上がりレミールに掴みかかろうとした。しかし、いつの間にか後方に立っていたパーパルディア皇国の衛兵に抑えられ無理やり画面を見せられる。
『へへっ、蛮族の姫様にしては極上の体つきだな!』
『ほらほら!いい声で鳴いてくれよ!』
『うっ、ぐぅ!……あぁっ!』
カラムは流れ出る涙をこらえることも出来ずに画面を凝視する。敬愛する皇太子妃様が汚されていく様を押さえつけられたカラムはただ見る事しか出来ない。カラムはこの時ほど自身の無力さを痛感することはなかった。
一体どれ程の時が流れただろうか?体中を汚されたグィネヴィアはぐったりと床に倒れ込んでおり体中を痙攣させるばかりでそれ以上の反応は全くなかった。
「ふむ、そろそろか」
楽しげに見ていたレミールはもう一度魔導通信機を使って命令を下す。
「処刑せよ」
「なっ!?」
「シーランド帝国の外交官よ。よくその目に刻み込め。これが、我が国の意志だ」
倒れ込むグィネヴィアの体を男たちが抑える。そして一人の男がのこぎりをグィネヴィアの首に這わせる。
そして、
『おらぁっ!』
『ギッ!?ガ、ぁっ!』
男はわざと全力でやらないようにしているらしくグィネヴィアの声にならない苦痛の悲鳴がカラムの耳を侵食する。既に瞳には先ほどの光景と今の処刑の光景が焼き付きカラムの心を少しづつ壊していた。
『しねぇっ!』
ブチィ!
その音とともに乱暴に引っ張られたグィネヴィアの頭が胴から離れる。頭を失った体はビクッ!ビクッ!と痙攣しグィネヴィアの苦痛を現すように震えている。頭には絶望し苦痛によって歪んだグィネヴィアの表情が浮かんでいた。そんなグィネヴィアを当然とばかりに蹴ったり頭を転がしたりして侮辱する男たち。やがて満足したのか頭と胴を放置して出ていく男たち。画面には放置されたグィネヴィア以外が映らなくなり、そこで画面は消えた。
「ほっほっほ、中々面白い余興であったであろう?本来なら捕らえたほかの百人も処刑を見せたいのだがそれはこちらで処理をしよう。貴殿は我が国の意志をそちらの皇帝に届けるといい。時間をやろう。次に会う時は貴国の誠意を見せてもらうぞ。ああ、あの女の死体は返却しよう。我が国には必要ないからな」
こうして、パーパルディア皇国は何時もの様に見せしめを行った。相手がどんな国なのかも把握できずに。外交官カラムにもたらされた情報はシーランド帝国を震撼させた。ウィリアムと同じく国民、臣民問わず慕われていた皇太子妃が死んだ。それも一国の皇太子妃を扱ったとは思えない悲惨な殺され方で。シーランド帝国中で怒りが巻き起こったが一番怒りが激しい場所があった。帝都ロンドニウム、キャメロット城である。
a.t.s52(皇歴52年)/11/27/11:19 シーランド帝国帝都ロンドニウム
「ウィリアムはどうしている?」
「まだ部屋に引きこもっています」
政務に復帰したライオネスの質問に宰相は淡々と答える。ウィリアムは昨日からずっと部屋に引きこもっており時折怒鳴り声と泣き声が聞こえており使用人たちに心配されていた。
ライオネスとしてもパーパルディア皇国の行いに怒りを感じておりパーパルディア皇国への攻撃の準備を急ピッチで完了させていた。
「ウィリアムには立ち直れとは言わんがせめて顔を見せる位はしてほしいものだ。二日間も部屋にいられては心配にもなろうて」
「ですが殿下と皇太子妃様の仲を考えればひと月は確実に出てきませんよ?」
ウィリアムとグィネヴィアの仲の良さはシーランド帝国の誰もが知っていると言っても過言ではなく仲睦まじい姿を何度も見せていたからだ。それだけに今回の一件でこうなるのは予想できていた。しかし、ウィリアムは皇太子でありライオネスの死後は皇帝となる者だ。いつまでも部屋に引きこもっている事を許される立場ではなかった。
「パーパルディア皇国侵攻の総司令はウィリアムに任せようと思っている。今のあいつならパーパルディア皇国に手心を加える事は無いし皇太子自ら指揮を執るという事で内外へのアピールに繋がる」
「むしろみなごろしにしてしまわないか心配になるほどですね」
ライオネスと宰相にパーパルディア皇国に負ける、劣勢になるという考えは無い。確実に勝てるという絶対の自信があり負けるという事自体があり得ないと思っていた。パーパルディア皇国の事を知れば知るほどその傾向にあった。
「まずはフェン王国の救援だ。次にアルタラス王国の開放。こちらはルミエス殿に総司令をしてもらう」
占領されている自国を王女自ら率いて開放する。こちらも内外へのアピールにはうってつけであった。
アルタラス王国は既にパーパルディア皇国によって全土を占領されておりアルタラス統治機構と呼ばれる機関によって統治されている。ライオネスとしては自分の親族と王女が恋仲にあり婚約関係もあるためアルタラス王国開放に関してはパーパルディア皇国戦よりも密に準備を行っていた。
戦争の準備は完了しあとは最後のピースであるウィリアム次第だがこれは意外にもあっさりと解決した。数時間後に泣きはらした顔であったが部屋から顔を出したのだ。そしてライオネスの命を受けてパーパルディア皇国遠征軍総司令に就任しグィネヴィアの仇を討つべくブリテン島より出兵するのだった。
パーパルディア皇国遠征軍
シーランド帝国が入念な準備の末に誕生した遠征軍。歩兵戦力40万、機甲戦力約10万、航空機約1万機。更に第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊、第一潜水艦隊を指揮下に置く大規模な物となっている。総司令にウィリアム・ロバーツ・ペンドラゴンが就きパーパルディア皇国によって殺されたグィネヴィアの仇を討つべく士気は高い。一方で今までのウィリアムからは考えられない眼光を放っているため周囲からは心配されている。
アルタラス解放軍
アルタラス王国王女ルミエスを総司令とした軍勢。パーパルディア皇国遠征軍よりも規模は劣るがアルタラス王国を開放するだけには過剰とも言える戦力となっている。
フェン王国救援軍
上記の二つよりも規模は小さいがそれでも侵攻中のパーパルディア皇国監査軍を殲滅するには十分な戦力を有している。更にこの軍には別の命令もありグィネヴィアがパーパルディア皇国に捕まる原因となったテオリの生きたままの捕縛でありフェン王国の救援よりもそちらを重要視するように厳命されている。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了