a.t.s52(皇歴52年)/12/10/9:11 トーパ王国城塞都市トルメス
魔王ノスグーラは撤退の決断をした。
レッドオーガとブルーオーガが敗れ一万近い数の軍を失った事を知ったのは魔王とレッドオーガとブルーオーガが率いていた魔王軍の残党が城塞都市トルメスにほぼ同時に到着してからだった。もはや魔王軍に残っている戦力は微々たるものでこの世界で上位に入る実力を有する魔王ノスグーラを除けばトーパ王国にすら敗れる程度しかいない。ゴブリンはまだまだいるがロードやオークは二桁前半程しか存在していない。魔王軍全体で見れば合計で漸く一万いくかいかないかだ。これ以上ここにいても自らを降した敵がやって来るだろう。その前に撤退しなければ。魔王はそう考えていた。
古の魔法帝国によって作られ人間の技術力を抑える役目を追っている魔王ノスグーラとしては撤退するのは違反とも取れるものだがそもそも意地を張って死んだのでは意味がないと無理やり納得させた。
そして彼はゴブリンたちに命じて今回の攻撃で手に入れた人間たちを出来る限りグラメウス大陸に運び込んだ。戦力を回復するためには食料である人間は多いに越したことはなく同時にこれらを交配して繁殖させようと考えていた。現在魔王軍は手に入れている人間の総数は1000人近い数が居りそれらすべてを極寒のグラメウス大陸に運ぶには手間と時間が掛かる。魔王ノスグーラは配下に撤退の準備を優先させると同時に自らはトルメス城に赴く。目的はトルメス城に籠る人間の殲滅である。本来なら食料として生きて捕まえるのがいいのかもしれないがそんな事をしている暇はない。
魔王ノスグーラは自身を見て騒ぎ立てる城内の兵士を見ながら短期で終わらせるべく魔力を籠め始めた。
a.t.s52(皇歴52年)/12/10/17:20 トーパ王国城塞都市トルメス
ヘイグ達駐留軍が到着した時トルメスに生きた人間はいなかった。同時に魔王軍の姿もなく周囲の物の散乱具合から慌てて撤退したという事がうかがえた。
「手分けして生存者を発見しろ!それと魔王軍が周囲に潜んでいる可能性もある!十分に気を付けよ!」
「「「はっ!」」」
ヘイグの命令に駐留軍の兵士は忠実に従い生存者の捜索を開始する。トルメスに一刻も早く着くために合流したトーパ王国軍は置いてきているためこの場で戦えるものは駐留軍しかいない。
「ちゅ、中将!」
「どうした!?」
ヘイグは一人の将兵の言葉にすぐに反応する。その将兵は直ぐ近くにおり彼の視線はヘイグのところからは見えない建物の影の方を向いていた。ヘイグはその将兵に近づき同じ場所を見る。
……そこには、トーパ王国の民が着ているような服ではなく現代風の衣装に身を包んだシーランド帝国の国民の死体があった。首から上は存在せず服装と体つきから辛うじて女性という事が分かった。ヘイグは一瞬愛娘か!と思ったが直ぐに特徴と違う事が分かり安堵の息と同時に焦りを感じ始めた。ヘイグは陸軍中将として全体を見つつ愛娘を探し始める。居てほしいと思いつつも居てほしくないと思いながら死体を一つ一つ確認していく。頭がない者、四肢を切断され達磨となっている者、下半身もしくは上半身を欠損している者などバリエーション豊かと言っていい程死体は様々な状況となっていた。
「中将!」
「……なんだ」
「トルメス城ですが、城壁が爆弾でも使ったかのような壊れ方をしていました。生存者は……、今のところ見つかっていません」
その将兵はトルメス城を見に行った者の一人の様で悲痛な表情で報告をした。ヘイグはそれを聞きトルメス城の方を見る。城壁で囲まれたその城は確かに北部の方が崩れておりそこから敵が侵入したことがうかがえた。ヘイグはその城の中に愛娘がいないか探し始める。トルメス城はまだ煙が上っており攻撃を受けてからそこまで時間が経過していないことがうかがえた。城内にいる兵士の死体は皆絶望したような表情で死んでいた。
「……ここには魔王でも攻め入ったのか?」
「可能性は高いですね。レッドオーガとブルーオーガと思われる個体を倒した今魔王軍で突出した実力を持っているのは魔王くらいらしいので」
ヘイグの疑問に将兵が答える。やがてヘイグ達は総司令部と思われる場所にたどり着くがそこにも生存者はいなかった。中には指揮官と思われる人物とそれを守る二人の兵士、ヘイグは知らないが二人の名前はモアとガイと言う。ほかにも肉片と化した死体や外傷がない死体などばかりが見つかり生存者はいなかった。
結局、12月20日に世界の扉までトーパ王国が奪還する事で魔王軍を撃退したと王国中に発表された。今だ魔王が健在であるがその両腕たるレッドオーガとブルーオーガを討伐できたことでトーパ王国の民たちの表情は明るかった。
……もし、魔王軍が生き残りを攫って行ったという事を知っていれば討伐軍なりを起こして奪還に向かっただろう。しかし、生存者はいないという内容が一般的となった彼らは世界の扉の復旧を行うのみで攻めようとはしなかった。
トルメスの民とシーランド帝国の観光客の生き残りがいたという事を知るのはシーランド帝国によるグラメウス大征伐終了まで待たなければいけなかった。
それまでの間、一人の将校が絶望し、シーランド帝国軍を去ることとなるが今の段階ではどうしようもなかった。
未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して
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原作での登場まで待つ
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作者が想像して書いて
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別のオリジナル国家とかに変更する
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魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了