シーランド帝国召喚   作:鈴木颯手

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第三十六話「列強の落日4~北と南~」

a.t.s52(皇歴52年)/12/1/11:56 パーパルディア皇国商業都市ヴェヌ(シーランド帝国占領中)

商業都市ヴェヌを占領したシーランド帝国軍は三つの軍勢に分かれて進軍を開始した。一つは壊滅したデュロを占領するための北東軍。一つはパーパルディア皇国の属領の占領を目的とした北部軍。そして最後の一つは皇都エストシラントに侵攻する西部軍。それぞれ10万を超える大軍であり現代装備で固められた彼らはパーパルディア皇国より数で劣ろうと何倍もの力を持っていた。

皇太子ウィリアムは西部軍の指揮官として同行しており商業都市ヴェヌは部下に任せていた。

 

「グィネヴィア……。必ず、仇を取るからな」

 

ウィリアムは濁った瞳でそう呟く。彼の首にはグィネヴィアの顔写真が入ってあるペンダントがあった。転移前にキャメロット城の庭で撮った写真であり恥ずかしそうにしつつこちらに向けて微笑んでいるグィネヴィアが写っている。ウィリアムはこの写真を見るときだけ穏やかな顔になるがそれと同時に怒りと憎しみが込め上げてくる。今のウィリアムにとってこのペンダントは大切な動力源となっている。精神的に崩れ落ちそうになるウィリアムを支えている物であるため彼の部下もペンダントを見ないように言う事は出来ず不安そうに見る事しか出来なかった。

 

「殿下!先鋒より連絡です。近くの村の長を名乗る者が降伏しに来ました」

「そうか」

 

ウィリアムはそれだけ言うとペンダントを握り締める。そして目を閉じると数秒後に命令を下した。

 

「殺せ」

「は、はっ?」

「殺せと言ったんだ。その者たちはパーパルディア皇国の民なのであろう?皇国の為に働き皇国の為に死ぬ愚か者であろう!我らは皇国を滅ぼすために来ているのではない!()()()()()()()()()()()()()来ているのだ!皇国に従う民は我らにとって不必要だ。故に、殺せ」

「……分かりました」

 

ウィリアムの命令に兵士は一言だけ答え戻っていく。数分後、一発の銃声がウィリアムの耳に聞こえてきたが関係なかった。死んだであろう村長の事も、パーパルディア皇国という国さえどうでも良かった。

ウィリアム率いる西部軍は三つの軍勢の中でも最も速度が遅かった。しかし、その分殺傷した数は最も多く彼らの進んだ道に皇国の民は誰一人として存在しなかった。皇都エストシラントに到着する頃には東部における人口は大きく減少しその後のシーランド帝国の統治者を悩ませることとなるが今は関係のない話である。

 

 

 

 

a.t.s52(皇歴52年)/12/1/11:56 リーム王国王都ヒルキガ

「今こそ好機ですよ」

 

王都にある王城にて国王バンクスはとある人物と会談していた。その人物はリーム王国と同じ文明国であり隣国のシパールケ共和国の人間だった。

シパールケ共和国はリーム王国よりも強大な力を持っている。何せ元は()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。第三文明圏の国々の中で唯一パーパルディア皇国と対等の関係を維持しパーパルディア皇国と同等の軍事力を持っている国だった。

そんなリーム王国からすればパーパルディア皇国並みに雲の上の存在ともいえる国から連絡があり会談を持ったわけだが彼らの提案は簡潔だった。

 

「共にパーパルディア皇国を攻める、か」

「パーパルディア皇国は現在滅亡の淵にあります。このまま全土をシーランド帝国に取られるのは貴国とて面白くはないでしょう?」

 

シパールケ共和国からの代表者の言葉にバンクスは眉を顰める。そもそもリーム王国はパーパルディア皇国の現在の情勢を掴んでいなかった。シーランド帝国という文明圏外国と戦争にあるという情報しか回ってきていないためパーパルディア皇国が負けるとは思えなかったのだ。

その為、バンクスの返答は決まっていた。

 

「我々は動かない。攻めるというのなら貴国らだけでやればいいだろう。我が国を巻き込まないでもらいたい」

「……そうですか」

 

シパールケ共和国の代表者は失望ともとれる視線をバンクスに向けるが直ぐにその視線を消した。

 

「分かりました。ならば我々だけでやらせてもらいます。……ですが、貴国らは何があってもパーパルディア皇国に攻めないでくださいよ?侵攻したら我々が貴国に攻め入りますので」

「むろんだとも」

 

バンクスはシパールケ共和国の代表者の殺気ともとれる圧に冷や汗をかきながらもリーム王国の国王として堂々と返答する。シパールケ共和国の代表者はそのまま部屋を出ていきそれを確認したバンクスは冷や汗をぬぐいながらため息をつくのだった。

 

こうしてシパールケ共和国の提案はリーム王国によって却下された。しかし、シパールケ共和国にとってリーム王国への提案はハイエナ的侵攻を防ぐ意味合いが強かったため特に気にした様子はなかった。

 

 

a.t.s52(皇歴52年)/12/2/14:02 シパールケ共和国は共和国統制軍指揮官ヨアン・スマイラスを指揮官とした15万という大軍勢でパーパルディア皇国北部に侵攻。周辺の反パーパルディア皇国勢力を取り込みながら一気に南下を始めたのだった。

 




シパールケ共和国
パーパルディア皇国の前身であるパールネウス共和国時代の貴族が建国した国家。人口は3000万程。パーパルディア皇国に次ぐ国力を持っているがパーパルディア皇国の様に属領任せの国家運営はしていないためこっちの方が余裕はある。名前の通り共和制だがそれは十数年前までで現在は軍部によるクーデターで軍事政権となっている。それでもリーム王国なら片手間で倒せる程度には強い。


【挿絵表示】

フィルアデス大陸南東部の様子。

未だ本編に出て来ない魔法帝国に関して

  • 原作での登場まで待つ
  • 作者が想像して書いて
  • 別のオリジナル国家とかに変更する
  • 魔法帝国ではなくグラ・バルカス編で終了
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